ゆるめるモ!(You'll Melt More!)とは【徹底解説まとめ】

ゆるめるも!(You'll Melt More!)とは、フリーライターの田家大知がももいろクローバーの「ピンキージョーンズ」に触発されて、「辛い時は逃げてもいいんだよ」をテーマとして自ら街頭でスカウトして集めてきたメンバーで結成された女性アイドル・グループ。名前の由来は「(窮屈な世の中を)ゆるめる」というメッセージと「You'll melt more!(あなたをもっとトロけさせたい)」という2つの意味が込められている。

ラブリーサマーちゃん。


楽曲概説

01. モモモモモモ!世世世世世世!
作詞:小林愛
作曲:田家大知・松坂康司
編曲:松坂康司
Programming:松坂康司

「ゆるトロ (slo-モ!)」に替わるオープニング曲として制作されたが、実際のライヴではオープニング曲としてや、「ゆるトロ (slo-モ!)」の次の曲として、あるいは中盤に披露されることもある。

田家氏 :「モモモモモモ! 世世世世世世!」は、松坂くんテイストをすごくいい感じにプラスしてくれて。最初、僕のメロディのイメージをそのまま伝えたら、松坂くんが「サビはシリアスな方がかっこいいと思う」って提案してくれて、それでできたのがサビメロで、僕もこっちの方がいいと思ったんです。当初はスクエアプッシャーとかジェフ・ミルズとか、90年代テクノとかドラムン・ベースみたいなものが幕開けにあって、ハード・ミニマルみたいな感じでひたすらに踊らせて、かっこいい歌回しのメロディが乗るイメージだったんですけど、そこに泣きの切なさを足してくれて。最初は「ゆるトロ2」みたいな感じで、ただただ盛り上げるだけの曲にしようと思っていたんですけど、「ゆるトロ(slo-モ!)」とは違うシリアスさもあったほうがいいんじゃないのという話になり、たしかに! と思ったんです。
今作は狂った感のある「Only You」で締めることを決めていたので、こいつら頭おかしいんだぞ、ぶっち切ってるんだぞってことを頭から出したくて。そしたら、ドリルン・ベースだろって(笑)。松坂くんはドリルン・ベースっていうジャンルも知らなかったんですけど、スクエアプッシャーとかエイフェックス・ツインとか、その辺の音源をいろいろ送ったら見事に格好よくしてくれて。テクノばかり聴いている人にオーダーしたら、まんま90年代っぽいのが出てきて、逆につまらないと思うんですよ。聴いたことがない人が作ってるからこそ、ちょっとズレていて、新しい曲が出てきたんだと思います(OTOTOY:2015年11月4日)。

ダブ・ステップの要素もふんだんに盛り込んだ楽曲で、「ゆるめるモ!」というアイドル・グループの存在意義や決意表明を力強く宣言している。

楽曲や歌詞の良さから「『ゆるトロ (slo-モ!)』に替わるオープニング曲として制作」以上の内容となっているため、ライヴの中盤で披露されるのも、さもありなんといったところ。

*Squarepusher(スクエアプッシャー):イギリスのミュージシャン「トーマス・ジェンキンソン」のアーティスト名。
打ち込みを中心としたエレクトロニック・ミュージックを制作しているが、ベーシストとしての評価も高い。

Squarepusher「Dark Steering」。

*Jeff Mills(ジェフ・ミルズ):アメリカ、デトロイト出身のミュージシャンで、ミニマルテクノを確立した人物とされている。

*Aphex Twin(エイフェックス・ツイン):イギリスのミュージシャンで、本名は「Richard David James」。テクノのみならず、多岐なジャンルに渡って活躍している。

Aphex Twin「T69 Collapse」。

*ドラムン・ベース:サンプリングやシンセサイザーで制作されたエレクトロニック・ミュージックの一種で、BPM(1分間に刻む拍子の数)が160以上で、バスドラやベース音を強調した重低音に特徴があるジャンル。

*ドリルン・ベース:ドラムン・ベースから派生したエレクトロニック・ミュージックの一種で、より複雑なプログラミングや、アーメンブレイクと呼ばれる6~7秒程度のドラム・ソロを用いる等の特徴がある。

*ハード・ミニマル:短いフレーズを反復させて延々と展開するテクノをミニマルテクノといい、そのミニマル・テクノをハードにしたジャンル。

02. 転がれ!!
作詞:小林愛
作曲:松坂康司
編曲:松坂康司
Programming:松坂康司
Guitar:藤井健太郎

アイドル・ファンがみんなで盛り上がれるようなサビの曲を、ということでオーダーされた楽曲。

イントロのシンセサイザーはVan Halen(ヴァン・ヘイレン)の「Jamp」のオマージュ。

松坂氏の作品であり、同氏は「逃げろ!!」「生きろ!!」も提供している。どの曲も「!!」が付くが、「これは続編ではなくて、スピンオフ的な楽曲です」と語っている。

田家氏:アイドル・ファンがみんなで盛り上がれるようなサビの曲を作りたいと思って、松坂くんにオーダーしました。それに対して「こんなのどうですか?」と提案してきた曲のメロディに可能性があると思ったんですけど、アレンジが普通だったんですよね。だったら思い切って80年代ポップスみたいにしようと思って、何年か前のパッション・ピットみたいな感じのキラキラした感じを目指して。a-haみたいなキラキラさとシンセの80年代感はそのままで、綺麗なロックに仕上げるために、参考音源をいろいろ送りました。イントロは80年代感のある感じにしてほしかったので、a-haとかヴァン・ヘイレンとかの曲を送って、松坂くんなりに提案してきてくれたのがこのイントロですね(OTOTOY:2015年11月4日)。

*Passion Pit(パッション・ピット):アメリカ・マサチューセッツで始まったエレクトロ・ポップ・プロジェクト。元々はMichael Angelakos(マイケル・アンジェラコス)のソロ・プロジェクトとしてスタートしている。

Passion Pit「The Reeling」。

*a-ha(ア・ハ):ノルウェー出身の3人組バンド。「Take On Me」は世界的な大ヒットとなり、アメリカではNo. 1に輝いている。

a-ha「Take On Me」。

*Van Halen(ヴァン・ヘイレン):アメリカ出身のハード・ロック・バンド。ギタリストのエドワード・ヴァン・ヘイレンはギター奏法の一つである「ライトハンド奏法」を普及させた。

Van Halen「Jump」。

あの:今回全体的にキツかったです。「転がれ!!」の落ちサビのところが歌えなくて何回も録り直して、ホントに嫌になっちゃって涙目で歌ってました。だから声が出てないと思います(笑)(ナタリー:2015年11月4日)。

ちーぼう:私は「転がれ!!」っていう曲が好きです。「逃げろ!!」「生きろ!!」と同じ松坂康司さんが作曲してくれた歌なんですけど、「逃げろ!!」と「生きろ!!」はファンからの反響が大きかった曲なので、これもみんな気に入ってくれるんじゃないかなと思います(ナタリー:2015年11月4日)。

Guitarの藤井健太郎は「生きろ!!」にも参加している。

ミュージック・ヴィデオの作成では、初めてエキストラの募集が行われた。抽選で選ばれたファンには「モ!リンピック」のロゴがプリントされた非売品Tシャツが配布された。
監督は加藤マニ氏。

ポップでライヴ受けしそうな楽曲。所々に挟まれる合いの手が非常に可愛らしい。

「何があってもがんばる たぶん途中悲惨になる 努力が輝かしくなる 保障ないし」「それでも進んでみる どうなるかはわからないな 覚悟を決めてみたんだ それだけでいい」という歌詞をはじめとして、ここで歌われている内容は、うわべだけの覚悟や奨励を歌った凡百な応援ソングなんかよりも、ずっとずっと説得力があり、現実的であり、それ故にストレートに響いてくる。

ゆるめるモ!「転がれ!!」。

03. Hamidasumo!
作詞:ハヤシヒロユキ
作曲:ハヤシヒロユキ
編曲:ハヤシヒロユキ
Guitar&Programming:ハヤシヒロユキ(POLYSICS)
Guitar Solo:あの
Vocoder:しふぉん

セカンド・シングルであり、6人体制になってからは初のシングルの表題曲。

POLYSICS(ポリシックス)のハヤシヒロユキが楽曲を提供している。

各メンバーがメイン・ヴォーカルを取る限定盤もリリースされたが、そのヴァージョンは本アルバムには収録されなかった。

曲中ではしふぉんがヴォコーダーを、あのが即興によるギター・ソロを披露している。

あのは即興のギター・ソロについて、ツイット・キャスティングにおいて「1回自由に弾いてみて、ハヤシのアドバイスを元に弾き直した2テイク目を採用した」と語っている。

「転がれ!!」がアイドル路線の楽曲だったとすると、この「Hamidasumo!」はまさに「ニュー・ウェイヴ・アイドル」の面目躍如的なハイ・テンションの楽曲。こうしてアルバムの1曲として収められていても、全く違和感を覚えないのは、ゆるめるモ!というグループの持っている、いい意味での「音楽的になんでもありのごった煮感」がリスナーやファンにきちんと容認されているからだろう。

04. 1!2!かんふー!
作詞:田家大知・小林愛
作曲:田家大知・松坂康司
編曲:松坂康司
Programming:松坂康司

セカンド・シングル「Hamidasumo!」の限定盤にのみ収録されていたカップリング曲。

1曲目からこの4曲目まで、全てのタイトルに「!」が付いている。

歌詞に関しては、田家大知氏と小林愛氏による初の共作となる。

小林氏:1!2!かんふー!は、たけさんと共作です。でもほぼ私です。たけさんの気持ちをくんで優しく柔らかく書いてみました。たけさんは、出会った頃(大昔)から音楽が好きで音楽を作りたいという気持ちをずっと消さずにいた人です。私も、製作の灯火を消さずにいてよかったなと思います(ひどもやま日記:2015年3月18日)。

「1!2!かんふー!」は「いーあるかんふー」と読み、1985年にコナミから同名のゲーム(「イー・アル・カンフー」 (Yie Ar Kung-Fu))が発売されている。

聴けば聴くほどに、ポップでキュートでどんどんと好きになれる楽曲。

ラスト近くに登場する「星屑みたいだ~」で始まるメロディが、一瞬楽曲を別の世界に導いてくれているようで、ステキなサプライズ感がある。

05. 難
作詞:小林愛
作曲:Tamptin
編曲:Tamptin
Programming:Tamptin

セカンド・シングル「Hamidasumo!」の通常盤、限定盤共に収録されていたカップリング曲。

しふぉんが最も好きな曲として挙げている。

小林氏の歌詞「受難 UP TO 楽しい兆しだ」のリピート感溢れるフレーズ、メンバー各自に振り分けられた歌割の妙と、それを歌いこなす各メンバーの歌唱、Tamptin氏の煌びやかで的確なプログラミング、とどれをとってもポップスの大傑作。作曲家としてのTamptin氏はもっともっと評価されて然るべき。

06. 不意打て!!
作詞:ハヤシヒロユキ
作曲:ハヤシヒロユキ
編曲:ハヤシヒロユキ
Guitar&Programming:ハヤシヒロユキ(POLYSICS)

「Hamidasumo!」に続くPOLYSICSのハヤシヒロユキ氏による楽曲。

曲中に「もね けちょん しふぉん ようなぴ あの ちーぼう ゆるめるモ!」と歌われる箇所があるが、2016年7月10日のもね、ちーぼう卒業後のライヴでは「けちょん しふぉん ようなぴ あの モ! モ! ゆるめるモ!」と歌われる。

曲中のしふぉんの「ん~どうでしょう~」は長嶋茂雄氏の物まねになっている。

田家氏:ハヤシさんがゆるめるモ! で次に曲を作るなら、こういう感じがいいと言ってくれていて。「ぜひそのデモを聴かせてください」って聴いたら、めっちゃかっこよくて。これはすごいと思って、そのまま完成に向かって進んでくださいってできたのが「不意打て!!」です。
1回本気でレコーディングしたものをハヤシさんに送って、ハヤシさんの要望と意図にそって細かく直しました(OTOTOY:2015年11月4日)。

ようなぴ:私はPOLYSICSのハヤシさんが作ってくれた「不意打て!!」の「湿度が」って歌詞が、舌が回らなくて歌えなくて。「これが限界!」っていうくらいの早口で1回OKもらったんですけど、ハヤシさんから「もっとはっきり言ってください」ってNGが出て(笑)。「もう無理だよー」って思いながらがんばりました。こんな奇跡の一発みたいなテイクが音源になっちゃって、ライブでどうなるんだろって思ってます。滑舌よくしないと(笑)(ナタリー:2015年11月4日)。

しふぉん: ハヤシさんの要望で、ミスターの「ん~どうでしょう~」を是非しふぉんに!ということで指名してくださったので、これから似ていくように練習します(笑)でも、こういう要望ってすごく嬉しいし光栄です(Marunouchi Muzik Magazine:2015年12月9日)。

突然変異的な滑稽さを持った不思議で、かつ妙な可愛さが充満している楽曲。早口言葉のオンパレードなので、歌入れに苦労しているメンバーの姿が目に浮かんでくるようである。この曲も「受難 UP TO 楽しい兆しだ」と同様に脳内で無意識にリピートされてしまうフレーズに富んでいる。

07. 眠たいCITY vs 読書日記
作詞:小林愛
作曲:マモル
編曲:マモル
Programming::マモル(nhhmbase)

通算4枚目のミニ・アルバム「SUImin CIty DEstroyer」に収録されていた楽曲。

nhhnbase(ネハンベース)のマモルが楽曲を提供している。

最初に作詞を依頼した時点では、小林氏から「この曲でそのテーマは書けない」と言われたため、テーマを変えて書かれたとのこと。

小林氏:nhnbaseのマモルさんの曲です。すんごく曲が難しくて大変でしたが絶対いい歌詞書きたいなと思って
がんばりました。ゆるめるモ!版千夜一夜物語みたくしたのですがいかがですかね。毎曲、いい曲にしない
と命がないみたいな…。でも実際の千夜一夜物語って超つまんないどうでもいい話しもありますけど…(ひどもやま日記:2015年1月6日)。

「不意打て!!」が突然変異的な楽曲ならば、この「眠たいCITY vs 読書日記」も充分に突然変異的。もしかしたら「不意打て!!」はゆるめるモ!に馴染んではいるが、この「眠たいCITY vs 読書日記」はまだ馴染み切れていない印象が強いので、こちらの方が突然変異的な要素は強いかもしれない。おかしな話にはなるが、この馴染み切れていない感が、逆に魅力的になっていたりもする。

08. 波がない日
作詞:小林愛
作曲:大星徹
編曲:大星徹
Programming:大星徹

通算4枚目のミニ・アルバム「SUImin CIty DEstroyer」に収録されていた楽曲。

歌詞にはメンバーの名前が盛り込まれており、そこには卒業していったゆいざらす、ゆみこーんをもじったフレーズも登場する。

小林氏:夏のキラキラを感じる大星徹さんの曲は、好きな人が多いと思います!CDタイトルを聞く前に書き始めていたので、「ああ、なんか街って入ってるしいいかも」と思いました。そして他の曲にも「街」と「破壊」という言葉を入れることになります。色々をぎゅっと詰め込む樋口一葉スタイルでGO!(ひどもやま日記:2015年1月6日)。

「モモモモモモ!世世世世世世!」同様に、ダブ・ステップの要素を含んだ楽曲。メロディをあえて字余り気味の歌詞に合わせて変拍子にしたり、学校のチャイムを効果的に挿入したりと、結構色々な要素がてんこ盛りとなっており、一見賑やかなエレクトロ・ポップ作品のようだが、なかなか一筋縄ではいかない楽曲になっている。

09. Refresh Your Jewellery Box
作詞:小林愛
作曲:HALIFANIE
編曲:ゆるめるモ!バックバンド
Guitar:ハシダカズマ(箱庭の室内楽)
Guitar:上野翔(箱庭の室内楽、毛玉)
Bass:三島想平(cinema staff)
Drums:張替智広(HALIFANIE、キンモクセイ)
Percussion:加藤みどり
Trumpet:高橋三太
Trombone:荒井和弘
Sax:立花佳祐

通算3枚目のシングル「文学と破壊EP」に収録されていた楽曲。

アレンジのクレジットは「ゆるめるモ!バックバンド」となっているが、バンド名がクレジットされるのは初。
「ゆるめるモ!バックバンド」のメンバーは、上記の2014年8月9日、渋谷区恵比寿のLIQUIDROOM ebisuで行われたライヴや、2015年5月2日、赤坂BLITZで行われたライヴに参加したミュージシャンが中心になっている。

初出である「文学と破壊EP」では、素敵なメロディに溢れていた「夢なんて」と、衝撃的な「Only You」に挟まれて、少し分が悪い印象があったが、こうしてアルバムに収録されると、楽曲の良さがグイと引き立ってくる。軽やかなシャッフル・リズムを用いており、ゆるめるモ!としては今までになかったタイプの曲調なのだが、そこが新鮮でもある。

10. よいよい
作詞:小林愛
作曲:ハシダカズマ
編曲:ハシダカズマ
Guitar&Programming:ハシダカズマ

カウベルをチンドン屋のカネのように乱打している楽曲。

ラストはお囃子のように、合いの手が飛び交う賑やかなパフォーマンスになる。

田家氏:「よいよい」は、邦ロック好きのキッズたちが初見で暴れられるような曲がほしくて、おしゃれダンス・ロック感を混ぜた曲を作りたいって、ハシダさんに相談したんです。そもそもは、ヴァンパイア・ウィークエンドみたいなトロピカル・パンクな曲がほしくて、ちょっとナードっぽい人たちをおしゃれに踊らせてみましたよって曲をお願いしたんですけど、そこにサークル・モッシュするような分かりやすいサビがほしいとお願いしたらハマって。これまでの道筋でカウベル曲の下地もできていたんで、カウベルもアレンジに加えてくれて。最初のデモでは、最後の展開はなかったんですが、ここにみんなが踊れるようなCメロ的展開を足してほしいと頼んだら、最高のお祭りっぽいメロディを付けてくれて。そこに小林愛ちゃんが「よいよい」って歌詞を考えてくれて、さらにレコーディングで合いの手がほしいねってエンジニアさんと話しているなかで「さーよいよい!」みたいなのを入れたら、お囃子みたいな感じに仕上がったんです。
愛ちゃんには途中から『YOU ARE THE WORLD』っていうコンセプトを伝えたんですけど、「よいよい」の歌詞に〈音楽は皆を主役にしなくちゃ〉〈音楽が鳴り出すたびに あっというま 自分がこの世の真ん中なんだ〉っていうラインがあって、見事にこのアルバムのコンセプトを言い当てていて、これはどんどん繋がってくぞと思いましたね(OTOTOY:2015年11月4日)。

これまた性急で目まぐるしい楽曲で、「Refresh Your Jewellery Box」の正統的な落ち着き加減から、いきなりクルクルと目を回されたような快感に浸れる。この落差が気持ち良いのだ。後から追加されたという、後半のお祭り騒ぎ的なアジテーションが、見事にこの楽曲を締め括ってくれる。

*Vampire Weekend(ヴァンパイア・ウィークエンド):2006年にアメリカ・ニューヨークで結成されたロック・バンドで、非常に高い評価を得ている。

Vampire Weekend「Cousins」。

11. KAWAIIハードコア銀河
作詞:小林愛
作曲:田家大知
編曲:田家大知
Guitar:ハシダカズマ
Bass:三島想平(cinema staff)
Drums:高石晃太郎

田家氏が単独で作曲と編曲を手掛けた初の楽曲。

ギター、ベース、ドラムス、といういわゆる3ピースのバンド演奏で、レコーディングも一発録りで行われた。

田家氏:初期ビースティ・ボーイズのハードコアぽい感じとか、マイナー・スレットみたいな高速ハードコアみたいな曲がほしくて。でも、ポップさがないとゆるめるモ! じゃないので、ちゃんとサビはポップに仕上げて、三島さん(cinema staff)もすごいかっこいいベース弾いてくれてできた曲ですね(OTOTOY:2015年11月4日)。

これは非常に格好良い楽曲。スピーディなパンクなのだけれど、ゆるめるモ!のヴォーカルが楽曲にきちんとはまっており、それによってまさに「アイドル」な楽曲になっている。2分程度の短い曲で、あっという間に目の前を通り過ぎていってしまうが、次の「id アイドル」というとんでもない楽曲に移る前の、簡単な準備運動といったところなのかも知れない。

*Minor Threat(マイナー・スレット):1980年にアメリカ・ワシントンD.C.で結成されたハードコア・パンク・バンド。ハード・コア・シーンに多大なる影響を与えた。

Minor Threat「In My Eyes」。

12. id アイドル
作詞:後藤まりこ
作曲:後藤まりこ
編曲:後藤まりこ・ハシダカズマ
Guitar&Programming:ハシダカズマ(箱庭の室内楽)

後藤まりこの楽曲。

元々は後藤氏からゆるめるモ!に楽曲を提供したい、という打診があり、実現した。

かなり紆余曲折があり、楽曲完成までに苦労されている。そんな後藤氏のコメントは「『ゆるめるモ! 2nd Album 「YOU ARE THE WORLD』特設サイト」に掲載されたコメント」を参照のこと。

*後藤まりこ:日本のニュージシャン。ハードコア・パンク・バンド「ミドリ」のヴォーカリストだった。バンド解散後にソロで活動を始める。

後藤まりこ「あたしの衝動」。

田家氏:(「後藤まりこさんへの指示は結構あったのでしょうか」という質問に対し)そうですね。1曲まるまる書きなおしてもらったんです。最初に書いてもらった曲もポップでよかったんですけど、なにかが足りないですって伝えて、後藤さんから再度上がってきた曲が「id アイドル」のすごくラフなデモだったんですけど、「これはいける!!」と思って、完成させてくださいって言いました。ただ、後藤さんはアレンジャーではないので、ハシダさんにフレーミング・リップス感、ブロークン・ソーシャル・シーン感、USインディーっぽさを足すようにしてほしいって細かく言ったら、スマッシング・パンプキンズっぽさも足されてきて(笑)。90年代っぽい感じで、フレーミング・リップスっぽいでっかい風船がライヴ中に舞うような感じになりました。
Aメロ、Bメロだけだったら、オルタナ色が強くなってしまうので、そこにキラキラ感が欲しくて。なので、サビも結構直してもらいましたね。
(直してもらう時の言い方について)具体的に言う時もありますし、サビがあっさりしすぎてるので、もうちょっと長くしてくださいとか、真ん中に詰めるか、おしりに詰めるかどっちかにしてくださいってことは言いましたね。そしたら膨らませてくれて、サビが不穏なAメロ、Bメロと等しく張り合えるなと思って、僭越ながらオッケーを出させていただいたって感じです。
今回、後藤さんから書きたいってご連絡をいただいて、最初はキャッチーで大衆的な曲をお願いしますって言ったんですけど、僕の伝え方が言葉足らずで、もう少しアクの強さがほしくて。後藤まりこさんが書いてくれた曲で、これじゃあ癖がなさすぎるかなと。キャッチー、キャッチー言っちゃったんですけど、キャッチーから1回離れてしまって、腰にクル感じにしてくださいって言ったら、これをいただいたんです(OTOTOY:2015年11月4日)。

*The Flaming Lips(フレーミング・リップス):1983年頃からアメリカ・オクラホマで活動を開始したロック・バンド。幻想的なライヴ・パフォーマンスで知られる。

The Flaming Lips「She Don't Use Jelly」。

*Broken Social Scene(ブロークン・ソーシャル・シーン):1999年にカナダ・トロントで結成されたバンド。メンバー編成が流動的であり、20人を超える時期もあった。

Broken Social Scene「Cause=Time」。

*The Smashing Pumpkins(スマッシング・パンプキンズ):1988年にアメリカ・シカゴで結成されたロック・バンド。90年代のオルタナティヴ・ロックを代表するバンドの一つ。

yamada3desu
yamada3desu
@yamada3desu

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