ゆるめるモ!(You'll Melt More!)とは【徹底解説まとめ】

ゆるめるも!(You'll Melt More!)とは、フリーライターの田家大知がももいろクローバーの「ピンキージョーンズ」に触発されて、「辛い時は逃げてもいいんだよ」をテーマとして自ら街頭でスカウトして集めてきたメンバーで結成された女性アイドル・グループ。名前の由来は「(窮屈な世の中を)ゆるめる」というメッセージと「You'll melt more!(あなたをもっとトロけさせたい)」という2つの意味が込められている。

――4曲目の「モイモイ」も『ディスコサイケデリカ』から。こういうみんなで踊る楽曲をライブでやってみた結果はいかがでしたか?

田家:狙い通りでしたね。より多くの世代の人が入ってきやすいBPMで、踊れる曲というテーマでハシダカズマさんに作ってもらったんです。サウンドが面白くて、歌詞や踊りが親しみやすい。いろんな人が入ってきてほしいので布石として作った感じですね。ディスコとグラムロックを混ぜてみたんですけど、これをなかなかやってる人はいないかなと思います。

――5曲目の「しんぼりくむ れすぽんす する」はPOLYSICSのハヤシヒロユキさん作編曲。ゆるめるモ!が「ニューウェーブ・アイドル」だとすっかり忘れていましたが、アルバムの中で初めてニューウェーブが出てきました。

田家:実はこの曲は『ディスコサイケデリカ』のときにはできていた曲なんです。ただ、ハヤシさんと話したら、歌詞は愛ちゃんが書いたほうがいいんじゃないかという話になって、初めてのタッグを組んでもらいました。

――6曲目の「Youとピアザ」はアルバムを象徴する楽曲ですね、<ユートピア>という言葉も出てきますし。しかも四つ打ちかと思いきやサンバのリズムも入ってきます。

田家:これは最後のほうにできた曲です。最初のほうに「天竺」や「ごろごろ物思い」や「歩くの遅い犬」みたいな飛ばしてる曲がいっぱいできて、最後のほうになって「明るくてみんなで騒げる曲があるといいな」と思ってM87さんに作ってもらったんです。4人の少年漫画感、ヒーロー感みたいなものを出したくて、愛ちゃんにそういう感じをお願いしました。君と<ピアザ>、つまり<広場>を作ってきたんだという歌詞で、ゆるめるモ!が5年やってきたことにピッタリなものができたと思いますね。

――7曲目の「サマーボカン(Remastered)」は『WE ARE A ROCK FESTIVAL』からです。4人になったゆるめるモ!混乱期に生まれたことを感じさせない爽快な楽曲ですね。

田家:「サマーボカン」はそれまでのファンからは賛否両論あった曲で、「今風の売れ線の曲を出してきた」みたいな反応もあったんです。僕は全然ブレてないですけど、それをロックっぽくしたときに「遠い」と感じた人がいたみたいですね。でも、充分変な曲ですし、和のリズムで踊れる感じを作ってるんです。『YOUTOPIA』は無国籍、多国籍でいろんなリズムを入れてるので、「サマーボカン」や「モイモイ」も同じベクトルで作っていることがより伝わるんじゃないかな、と思ってアルバムに入れてみました。

出典: realsound.jp

――8曲目の「やる」は、ゆるめるモ!としては珍しいほどエレクトロに傾斜していますね。

田家:エレクトロクラッシュやニューレイブはみんな大好きだと思うし、僕も多大なる影響を受けてるんですけど、実はゆるめるモ!はそんなにやってなかったし、このタイミングでの4人にすごく合うなと思ってハシダカズマさんにお願いしました。ハシダさんなりの想いも詰め込んでくれて、いい具合にサビもマイナーな感じで、しかもサビのキーも3回とも違うんです。

――9曲目の「うんめー」は『ディスコサイケデリカ』から。大森靖子さんが作詞作曲した楽曲も、ハシダカズマさんのアレンジも、何度聴いても美しいですね。ラブソングにならない絶妙な距離感の「君と僕」が描かれていて。

田家:大森靖子さんが4人に会って、雑談をずっとしてて。「休みの日何してるの?」とか「好きな色は何?」とか「好きな食べ物は何?」とかずっと話して、そうしたら大森さんが「もう大丈夫、書けます」と言って。会話に出てきたことが絶妙に歌詞に出ていて、すごいなと驚きました。もちろん大森さんのオリジナルの言葉もありますけど、4人にすごく溶けこんでいる空気感だと思いますね。

――10曲目の「あ!世界は広いすごい」は『TALKING HITS EP』から。<あ、恥ずかしい これが”仲間”かも>という歌詞は、ゆるめるモ!を見守り続けた小林愛さんならではのものだと感じました。

田家:4人とも<仲間>なんて言葉を積極的に使うときはないし、うまいなと思いましたね。

――サウンド的にはパワーポップですね。

田家:僕の中ではThe Rentalsですね。アナログシンセのブヨブヨとはずむ感じを出したくて。「モイモイ」と同じベクトルで、ゆったりしたBPMですね。ファンキーに踊らせたい曲だと言うことを作曲のオータケハヤトさんに伝えたら理解してくれて、裏打ちで踊らせるリズムにしてくれて。ただWeezerのようなパワーポップで終わることなく、モーグ・シンセサイザーを入れるところにゆるめるモ!らしさが出ているかなと。

出典: realsound.jp

――11曲目の「ごろごろ物思い」はミドリカワ書房の緑川伸一さん作詞作曲。この楽曲で描かれる倦怠感と孤独は緑川さんらしいですね。

田家:緑川さんなりにゆるめるモ!のイメージがあるみたいで、もっと壮大な世界観でお願いしたこともあったんですけど、「こんな感じのほうがしっくりくるんですよね」って。

――あの、資料にあるCHAGE and ASKAの影響って何ですか……?

田家:深夜の妄想の中で、部屋でひとりで踊れるような曲にしたいなと思ったんです。「どんなゆっくりな曲でも16ビートで歌ってるのは誰かな?」と考えたら、CHAGE and ASKAなんですよ。(CHAGE and ASKAの真似をして小刻みに身体を動かしながら)<余計な物など無いよね?♪>って、体で歌ってるじゃないですか? 「SAY YES」と「LOVE SONG」の映像をメンバーに見せたら全部伝わるだろうと思って見せたら、完璧に伝わりましたね。

――田家さんの動きだけでも全部伝わってきますね(笑)。

田家:メンバーもレコーディングのときにCHAGE and ASKAみたいに動いてました(笑)。テロテロしたギターは、Tame ImpalaやFoalsの単音のギターが、CHAGE and ASKAのリバーブ感の中で鳴っている面白さが欲しいとハシダさんに言ったら、すぐに理解してくれて。

――よく理解してくれましたね(笑)。「CHAGE and ASKA+Foals」ってめちゃくちゃじゃないですか!

田家:発明だと思ってます(笑)。これでメンバーもCHAGEさんやASKAさんを身近に感じてると思うんですよ。こうやっていろんな音楽の良さを取り入れて大きくなればいいなと。

――ライブではどうなるんですか、これ?

田家:振り付けも特にないので、CHAGE and ASKAっぽく歌うかもしれません。

――12曲目の「ナイトハイキング(Remastered)」は『WE ARE A ROCK FESTIVAL』から。これも混乱期を感じさせない名曲ですね。

田家:世界観的にアルバムに合うなと思いましたね、「君に寄り添う」って感じがして。「ユートピアっていうのは君の日常の中にあるものだよ」って伝えたかったんです。「ナイトハイキング」は、深夜に空を見上げると楽園はそこにあるよ、っていう歌でもあるんです。

――13曲目の「永遠の瞬間」は後藤まりこさん作詞作曲。後藤まりこさんは、今なぜ<私が消える5秒前>と歌う、こんなせつない楽曲を書いたんでしょうね。

田家:3月のTSUTAYA O-EASTのライブを後藤さんが見てくれて、この曲を書いてくれたらしいんですよ。その瞬間にすべてを賭ける、生きるか死ぬかみたいなライブを見て。<私が消える5秒前>というのもたぶん比喩で、その覚悟で瞬間瞬間を生きているんだと解釈しています。

――後藤まりこさんとあのさんでギターを弾いてるんですよね。

田家:あのが狂ったようにギターを弾いて、後藤さんが「MELT-BANANAみたいやねー」って(笑)。ふたりでノイズを弾き散らかしてましたね。

出典: realsound.jp

――14曲目の「must 正」はチベット音楽のようなサウンドで、しかも東洋と西洋が混在していますね。

田家:宗教音楽を目指したんですよ。今回の裏テーマが「宗教」だったので、その宗教感を出したくて。バグパイプって、すごくトリップ感があるじゃないですか? 壮大で宗教的な音がひたすらループして鳴っていたら、祝祭感が溢れる感じになるかなと思ってやってみました。今回初めてお願いした全日本レコードの山さんもすごくかっこいいトラックを作ってくれて。

――15曲目の「天竺」は、「NEW WAVE STAR」同様にアフリカのリズムですね。ヨーロッパとの意図的な混乱も感じます。そもそもなんで「宗教」が裏テーマになったんですか?

田家:最も原始的で、言語を超えたプリミティブで原点みたいな音楽は宗教音楽だと思うんです。より壁を壊したい思ってて、誰彼かまわず入ってこられる空間を作るためには、人間が初めて音楽を作ったときの音楽を目指せば、ハードルが低くなるんじゃないかと思いました。だから衣装も無国籍な感じにしましたね。誰でも動物や野生に還れるように。

――田家さんはもう次のアルバムのことを考えていますよね?

田家:そうです(笑)。具体的に「こういう感じだな」っていうのもすでにありますね。

――あと何年ぐらいゆるめるモ!をやると思いますか?

田家:10年先は全然わからないけど、3年分ぐらいは「やるぞ」ということがちゃんとあります。その先への熱意もありますし、「早く形にしてあげないと」って感じですね。

――田家さんにとっては、ゆるめるモ!はまだまだ可能性に満ちていますか?

田家:可能性に満ちてます。というか、当たり前のように面白いことをしてきてると思っているので、可能性なんておぼろげなものではなくて、確信ですね。不安とか全然なくて、ただ確信に満ちたものをベルトコンベアのように順番にオートマティックに出している感じです。僕にはちゃんと見えているので、責任を持って世に出していこうと思いますね。まずは今回のアルバム『YOUTOPIA』を聴いていただいて、1月6日のZepp Tokyoに来てほしいです。会場に来てくれた全員が物語の主人公になれるように、新しいことにも挑戦しつつ、今できる最高のベスト・オブ・ベストなゆるめるモ!を見せますので。

出典: realsound.jp

2017年11月29日、rockin' on.comに掲載されたインタビューより。

――すごくいいアルバムですね。

ようなぴ:ありがとうございます。タイトルを『UTOPIA』ではなくて『YOUTOPIA』にしているんですけど、「私と君との距離感」っていう形での楽園を作れないかなと。そういう思いをこめて今回のアルバムを作っています。

――ライブでお客さんと作れる空間も、ある意味、今作で表現されているユートピアでは?

けちょん:そうですよね。自分たちもライブ中に感情が入るんですけど、お客さん自身も感情を露わにしてくれるのを感じるんです。「楽しい!」っていうものを一緒に作れていると、すごく嬉しいです。

あの:なかなか思ったようなことができない時もあるけど、自分たちとお客さんとの距離感というか、「そこでしか存在しない」っていうものがあるのがライブなんですよね。ひとりひとりのお客さんと会話している気持ちにもなれるからライブは好きです。

しふぉん:私はもともとライブが大好きで、よく観に行って泣いたり笑ったりしていたんです。今こうしてステージに立つようになりましたけど、泣いたり笑ったりしてくれている人が、めちゃくちゃよく見えるんですよ。言葉で感情を表すのは、難しいことがよくありますけど、音が鳴っていると素直になれますし、ライブハウスってそういう場所ですよね。

あの:ぼくはゆるめるモ!に入る前は、何ひとつやりたいことがわからない状態で、やることもなかったんです。「楽しい」とかいう感情も、もともとあんまりなくて。そこからゆるめるモ!に入って、音楽とかに触れて、「これが楽しいっていうことだな」というのがライブを通してわかったりするようになりました。やりがいも感じるようになって、ひとつの居場所というか、「ここで歌ってるのは、嘘がないな」と思えるようになっています。

――このアルバムの曲たちも、聴いた人にとっての大事な居場所になっていくんだと思います。サウンドも圧倒的にかっこいいですし。例えば“歩くの遅い犬”は、サイケデリックなサウンドが好きなロックファンが大喜びする音ですよ。

ようなぴ:この曲はメンバーそれぞれの歌い方で新しい挑戦をしています。音の中で酔い痴れると言いますか、トリップするような感じで歌いました。

あの:この曲はギターも弾いて、初めてアームを使ったんです。安原さん(編曲で参加した安原兵衛)のお家で録ったんですけど、「マイブラっぽい」って言って頂けたのが嬉しかったです。

出典: rockinon.com

――たしかに、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインっぽいです。“永遠の瞬間”にもシューゲイザーっぽいギターが入っていますし、こういう演奏する機会が増えていますね。

あの:はい。こういう音、かっこいいと思います。ライブで毎回違う音を出せるのも楽しいです。レコーディングの時もぶっつけ本番でやるんです。そういうものと曲のポップさが合わさって完成された音を聴くと、すごく「わあっ!」ってなります。

けちょん:アルバムの1曲目から面白いことができました。イントロが超長いですし。

――1分ちょっとありますよね。

けちょん:はい(笑)。「ちょっと長いなあ」って思っていたんですけど、何回も聴いている内に心地好くなってきています。ライブでどうなるのかが楽しみな曲のひとつですね。

しふぉん:1曲目のイントロで1分ちょっと経つまで歌が始まらないというのは、結構チャレンジャーだなと(笑)。でも、すごくこのアルバムのオープニングにふさわしいと思います。ロックが好きな人にも、ぜひ聴いてほしいですね。

――“天竺”も、聴いて仰天しました。アフリカの民族音楽的だったり、ミサ曲っぽかったり、いろんな展開を遂げるこんなサウンド、他で聴いたことがないです。

ようなぴ:この曲は、たしか『孤独と逆襲EP』の頃にはありました。でも、「今の自分たちでは、まだこの壮大さを表現できない。4人としてもっと成長した時にやりたい」っていうことになっていたんですよね。“天竺”は、『YOUTOPIA』の中でも軸になっていると思います。みんな「社会」っていうものの中でしかいろいろ考えられないですけど、人間の根本、「生命」としてこの星で生まれて生きるという部分を考えるきっかけになるのが、この曲だと思います。

出典: rockinon.com

――三島想平さん(cinema staff)がベース、張替智広さん(HALIFANIE)がドラムを叩いているんですね。

ようなぴ:はい。それも聴きどころです。コーラスも歌って頂いたんですけど、鳥肌が立つくらいグッとくるものになりました。

しふぉん:私たちがサルとかゴリラになった声も被せてあります。

ようなぴ:ガヤのレコーディングの時、私はけちょんと一緒に録ったんですけど、ふたりでゴリラセッションをしました(笑)。川村美紀子さん(舞踊家、コレオグラファー。水曜日のカンパネラ、amazarashi などの作品も手がけている)にお願いした振り付けも、すごい印象的なものになっています。頭で考えるんじゃなくて、身体から溢れ出たものを表現するような感じの曲ですね。

――“must 正”も、不思議な雰囲気です。テクノポップを下地にして、アイリッシュフォークっぽい要素も入っていたりして……これ、なんと表現したらいいか難しいですね(笑)。鳴っている独特な音色は電子バグパイプですが、頂いた資料によると、日本のレコーディングで使われたのは初らしいですよ。

しふぉん:そうなんですか? 今、初めて知りました(笑)。

――こういう新鮮な刺激が満載なのも、ミュージシャンとかの間でゆるめるモ!の人気が高い理由のひとつだと思います。あのさんも、いろんなクリエイターの間で大人気じゃないですか。

あの:音楽業界の人とかには褒めて頂けるんですけど、世間には受けが悪いです(笑)。

――ゆるめるモ!はいろんな発見もさせてくれるグループです。

けちょん:ありがとうございます。新しいことにどんどん挑戦している実感は、自分たちでもあるんです。みなさんは、そういうところに注目してくださっているんですかね?

――そうなんだと思います。参加しているクリエイターも、ワクワクしながら曲を提供しているのを感じますし。例えばPOLYSICSのハヤシさんが手がけた“しんぼりくむ れすぽんす する”なんて、聴いているとすごくキュンとなるテクノポップです。

ようなぴ:ハヤシさんもこの曲が気に入っているとおっしゃっていました。ゆるめるモ!は、ハヤシさんの愛を受けているなと感じています。「ゆるめるモ!の親なんじゃないか?」っていうくらいの目線で見てくださるので。私はもともとPOLYSICSが好きで、ライブにも通っていたくらいなので、とても嬉しいです。

出典: rockinon.com

――ゆるめるモ!は、クリエイターの創作意欲を掻き立てるところが、すごくあるんだと思います。“永遠の瞬間”も、後藤まりこさんの胸の内にいろんな思いがあったんですよね?

ようなぴ:はい。この4人なってからのゆるめるモ!のライブを後藤さんが観て、「今のゆるめるモ!はこの曲だ」と思って作ってくださったんです。

――大森靖子さんが作詞作曲をした“うんめー”も、みなさん各々の姿とゆるめるモ!が鮮やかに表現されていますし、すごく愛を感じます。《あげられるものはひとつ 絶対 全部うまくいく歌》とか《ここにあるのは 君と僕の透明な運命と境界線/こっち側なんてないんだから 君もおいでよ》とか、とても温かいです。

ようなぴ:今回のアルバムの『YOUTOPIA』ということと、すごく繋がっている曲だなと思っています。

けちょん:すごく反響があった曲でもあります。

――《ずっと誰にも言えなかったけど/僕は誰より 愛が上手いんだ》って、とても優しい言葉ですね。表に出せなかったとしても、感情や愛ってちゃんとあるものですし、尊重されるべきなんですから。

しふぉん:そうですよね。この曲をライブでやると泣いている子がすごく多くて。「わかってくれた」とか「自分が言いたかったことをゆるめるモ!が言ってくれた」という感想をよく頂くので、お客さんと繋がったなと感じられる曲です。

あの:「自分がお客さん側でこの曲を聴いたら、目の前にいるファンの子みたいに泣くかもしれないな」と思える空間が、女子限定のライブをやった時にあったんです。すごく好きな曲です。ゆるめるモ!は、境界線を作らずに活動してきたつもりなんです。住んでいる世界はみんな一緒だから。

出典: rockinon.com

――眠れない夜を描いたミドリカワ書房さんの“ごろごろ物思い”も、独特な雰囲気ですね。

ようなぴ:ミドリカワ書房さんには前にも曲を提供して頂いて、「またお願いしたいよね?」っていう話をずっとしていたんです。何曲かデモを作って頂いたんですけど、いろいろお話をして出来上がったのが、“ごろごろ物思い”です。

田家:他にも面白い曲があったんです。でも、シチュエーションとかが限定されている感じだったんですよ。新入社員が花見の場所取りをしている歌とか。

――ユニークな設定ですね(笑)。

しふぉん:めっちゃ面白い曲でした。

けちょん:インパクトがすごかったです。

あの:ミドシンさん(ミドリカワ書房の本名・緑川伸一の愛称)のいいところが出過ぎていたんです(笑)。前に“夢なんて”を作って頂いた時も、最初はDVの曲だったんですよ。

田家:その時は、僕が「さすがにエグ過ぎるので、もうちょっとソフトにしてください」と(笑)。

ようなぴ:そうでしたね(笑)。“ごろごろ物思い”も、ゆるめるモ!にとって新しいタイプの曲になりました。初めてのテンポ感ですし。

田家:みんなに今までになかったテンポ感で踊ってほしくて、CHAGE and ASKAの映像でイメージを掴んでもらったんです。「ASKAさんのこのテンポ感。ゆっくりなんだけど16分が染みついている、踊らせる感じ」と。

ようなぴ:その感じでリズムをとって、レコーディングの時も歌いました。いろいろ考えたりしながら音楽をやるのが、毎回楽しいんですよね。

出典: rockinon.com

――あと、“逃げない!!”も、注目するリスナーがたくさんいると思います。代表曲の“逃げろ!!”と関連付けて受け止めるんじゃないでしょうか。

しふぉん:タイトルだけ見ると“逃げろ!!”のアンサー曲のように捉える人もいそうですけど、そうではないんです。人生の中では逃げるのが必要な時と、「今はちょっと頑張れるかもしれない。頑張ってみたい」という時、どっちもあると思うんです。だから“逃げない!!”は、“逃げろ!!”に対する「私は逃げないぞ」っていうものではなくて、「私は術をふたつ持てる」という感覚の曲なんですよね。

――なるほど。各曲にたくさんのメッセージが込められていますし、『YOUTOPIA』は、様々な形でリスナーの心の支えにもなれるアルバムだと思います。

ようなぴ:ゆるめるモ!は、社会で窮屈な想いをしている人たちの心に寄り添いたいんです。

あの:ゆるめるモ!の曲にはそういうものがあるので、ぼくも歌っています。もし自分がゆるめるモ!に入る前に、この4人のグループが存在していたらと考えると、なんか変な気持ちになります。「人生変わってたかもしれない」って思うし、「そうだったらいいなあ」っていうことも感じます(笑)。でも、自分はゆるめるモ!のあのなので、今が一番いいです。

けちょん:ゆるめるモ!が、いろんなところに届いてほしいと思っています。地球外生命体のところにも行けたらいいなと、真面目に思っていますから(笑)。

――(笑)今作は、4人のゆるめるモ!になってから最初のフルアルバムでもありますけど、この編成になって、どういうグループになったと感じています?

しふぉん:最近、より個々がゆるめるモ!でいることについて考えるようになりました。しっかり感情を伝えられるようなグループになってきましたし、人間味も増してきたと感じています。

ようなぴ:自分たちを何かに当てはめる気持ちはないんです。ゆるめるモ!の昔の曲の“ぺけぺけ”という曲の歌詞に《道無き道をゆく》というのがあるんですけど、まさにそれだなと。今ある誰かが作った道じゃなくて、道がまだないところに自分たちなりの道を作っていく気持ちでいます。

しふぉん:どんな人に対しても刺さる曲がきっとあるはずなので、とにかく広げていきたいですね。最近家族連れが増えてきていて、「よし!」と思っています。

あの:道で歩いている家族連れを見ると、「こういう人たちに届いてほしいのに、まだ届き切ってないんだな」と感じて悔しくなったりするんです。だからなんとしても広めていきたいです。

出典: rockinon.com


4人体制になってから初のアルバムであり、テクノ・ポップ、シューゲイザー、パワー・ポップ、ニュー・ウェイヴ、オルタナティヴ、アンビエント、アイリッシュ・トラッド、サンバ、アフロ、宗教音楽etcと、とても幅広い音楽性を持った大傑作アルバムでもある。

作家陣も小林愛、ハシダカズマといった常連をはじめ、既にゆるめるモ!への楽曲提供があるハヤシヒロユキ、大森靖子、後藤まりこ、緑川伸一、オータケハヤト、M87、と豪華。今回初参加の全日本レコード所属の山氏の楽曲も含めて全てが粒ぞろい。いや、粒ぞろいという表現が控えめ過ぎるほどに素晴らしい楽曲が集まっている。

アイドルであることを決して忘れてはいない煌びやかな世界の中に、大いなる挑戦精神と子供のような冒険心、聴くものを驚かせてやろうという悪戯心と聴くものにそっと寄り添ってくれる温かさがある。「2017年ベスト・アルバム」の1枚に選出されて然るべき作品。

ゆるめるモ!「アルバム『YOUTOPIA』ティザー映像」。

yamada3desu
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@yamada3desu

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