ファイト・クラブ(Fight Club)のネタバレ解説まとめ

『ファイト・クラブ』とは、1999年製作のアメリカ映画である。1996年に発表されたアメリカの小説家チャック・パラニュークによる同名小説が原作となっている。監督はデヴィッド・フィンチャー。アンダーグラウンドな雰囲気と過激な暴力描写、また自由で大胆不敵、それでいて頭も切れるブラッド・ピット演ずる、タイラー・ダーデンの存在感。その彼の魅力に惹かれてしまう、主人公(演:エドワード・ノートン)の繰り出す非合法な活動が、やがてテロ活動にまで発展してしまう様を描く、カルト映画である。

『ファイト・クラブ』の概要

『ファイト・クラブ』とは、1999年公開の映画。
当初、本作は三人の監督(ピーター・ジャクソン、ダニー・ボイル、ブライアン・シンガー)にオファーがあったが、三人とも断られて最後に白羽の矢が当たったのがデヴィッド・フィンチャーだった。彼はもともと原作のファンであった。しかし彼は処女作『エイリアン3』で、思っているような映画撮影ができず、作品自体も評価されなかったので、制作会社である20世紀フォックスに対して、強い不信感を抱いていた。

『エイリアン3』の失敗から、ハリウッドから干されていた彼は、その復讐といわんばかりに、6,300万ドル(約70億円)という大金の予算を引き出す事に成功した。その結果、映画自体の評価は賛否両論、暴力的で反社会的な内容と映画を嫌う者もいる一方で、大きな反響も呼んだが、評論家からの評価も高くなく、当初は巨額の製作費も回収できず、興行収入的にも失敗した。この失敗で制作会社の20世紀フォックスの重役が何人も解雇された。

しかし後に発表された英国最大発行部数を誇る映画雑誌エンパイアが、過去最高の映画に関する調査を行い、その結果を集計した所、『歴代最高の映画ランキング500(The 500 Greatest Movies of All Time)』では、堂々の10位にランキングされる。このランキングは、雑誌の読者1万人とハリウッド映画関係者150人、映画評論家50人を対象にした調査で、改めてこの映画の人気がうかがえる。
また同じく、エンパイア誌のキャラクター部門のランキング、『Empire's The 100 Greatest Movie Characters of All Time(2008)』では、タイラー・ダーデン(演:ブラッド・ピット)が第1位を記録している。IMDb(Internet Movie Database)でも、過去の映画トップ250には、10位以内にランキングされている。

以下は物語の概要である。

不眠症で悩む本作の主人公(演:エドワード・ノートン)が、自分と正反対の人格を持つタイラー・ダーデン(演:ブラッド・ピット)に出会う。主人公とタイラーが共に開催する殴り合いの“ファイト・クラブ”。それが次第に社会に対するテロ活動“プロジェクト・メイヘム”に発展し、遂にはタイラーとの対峙、決別を通して主人公の人間的成長を描く物語である。
本作の最大の魅力の一つは、やはりなんといってもブラッド・ピット演ずるタイラー・ダーデンの圧倒的存在感であろう。彼の男らしく鍛え抜かれた体、スタイリッシュなファッション。そして彼の語る現代社会の物質至上主義の否定。
「物に支配される生活を捨てろ!もっと進化しよう!なるようになるさ!」とバーで主人公に語るタイラー・ダーデンの姿は非常に魅力的である。

『ファイト・クラブ』のあらすじ・ストーリー

印象的な石鹸を使った本作のロゴ。石鹸はタイラーの手作りという設定である。

ビルの最上階

映画冒頭、不気味な暗闇の洞窟シーン。
一瞬ここはどこだと誰もが考えるシーンだ。途中、シナプスやニューロンの様な構造上の物体が、光を発しながら通り過ぎてゆく。

非常に印象的なオープニング。スリリングな展開が予測されるシーン。

どうやらここは人体の中に見える。そして迷路のような洞窟を抜けていくと見えてくるのは、主人公(ナレーター)の顔である。通り抜けてきたのは人体であった。
薄暗い不気味なビジュアルの脳内から続いて皮膚の下を通り、流れる汗の中を通り過ぎる。その後見えてくるのは、彼(ナレーター)が銃を口にくわえさせられて、椅子に座らされている姿だ。

「あと3分。それで全てが木端微塵。」タイラー・ダーデン
映画冒頭、彼(ナレーター)はタイラーに銃を口に加えさせられる。

※この作品の主人公には、固有名詞がない。便宜上、“ナレーター”と名乗る。
タイラーに銃を突き付けられ、ビルの最上階に拘束されるシーン。主人公の一人称で語られるこの物語は、ここから彼(ナレーター)の回想シーンで始まっていく。

タイラーとナレーター

主人公(ナレーター)

主人公(ナレーター)は、アメリカの自動車会社に勤務し、車のリコール調査で全米を飛行機で飛び回る会社員。
金銭的な面では不自由なく、管理人付きの高級マンションに住み、高級な家具や職人の手作りの食器、最新式のライフスタイルを送るための家具家財を揃える事の虜となっていた。

高級家具家財を買い揃えるナレーター

しかし物質的な充実さとはまったく対照的に、彼の精神(心)は満たされない日々を過ごしていた。
物質の豊かさは、人間の心の豊かさに直結しないのだ。

自助グループ

そんな彼は、重度の不眠症を患っていた。
苦しむ彼(ナレーター)は、精神科医に相談するが、医者は催眠剤を処方してくれない。代わりに医者は、睾丸ガン患者の集まる自助グループの集いに参加をすすめる。「世の中にはもっと大きな苦しみを持ったものがいる」と。

彼(ナレーター)は自助グループに参加するが、魂のこもった他人の悲痛な訴えは、彼の心を揺さぶった。彼はこの場所で、後に親友となるボブと出会う。ボブはプロのボディビルダーだったが、筋肉強化剤を乱用し、睾丸ガンとなってしまった。家族とは別居、治療のため投与した女性ホルモンの副作用で、女性のような胸になってしまった大男だった。

ボブの胸には安らぎがあった

彼の悲しい訴えを聞き、また彼の大きな胸に抱きしめられた主人公(ナレーター)は、堰を切ったように涙を流し、その晩はぐっすり眠れた。
ありのままの他人の正直な告白を聞き、感極まった主人公(ナレーター)は、物質だけの豊かさでは体験できない、「自分は生きているんだ!」という実感を得る事ができ、束の間の安息を手に入れる事ができたのだった。
これが癖となった彼は、結核患者や末期ガン、血液感染症等の自助グループに、患者でもないのに出入りするようになっていく。死にかけている人間の声を聞く事により、生の喜びを実感できたと感じた主人公は、不眠症も改善したが、ここにマーラ・シンガーが登場する。

マーラ・シンガー

マーラ・シンガーは最初、睾丸ガン患者の自助グループに現れた。
「女で睾丸ガン?ありえない。」もちろんそう感じた主人公(ナレーター)。しかし彼女はそれだけでなく他の自助グループにも参加しだし、どう見ても死にかけている様には見えない彼女の参加により、再び彼(ナレーター)は不眠症に悩まされていく。彼(ナレーター)は以前のように、患者の話を聞いても感動したり、泣けなくなってしまったのだ。

結核患者の会で、タバコを吸うマーラ・シンガー。

さまざなな自助グループで顔を合わす、主人公とマーラ。彼(ナレーター)は結核患者の会で、後ろの席に座るマーラを振り向く。彼女はタバコに火を付けている。「マーラ…観光気分の女。“あなたも同じインチキだ。”と言われているようで、僕は何も感じなくなった。」と、彼女を見つめる主人公の独白が入る。

彼女は人生に生きる目的もなく、「悲劇なのは自分が死んでいない事」と考える、破滅的な人間だった。自助グループを訪れるようになったのも、「映画より安くてコーヒーつき」という短絡的な理由からだった。

自分が死なない事が不幸と考えるマーラ。
主人公は彼女と連絡先を交換する。

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