ジョー・ブラックをよろしく(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『ジョー・ブラックをよろしく』とは、1998年にアメリカで公開されたファンタスティック・ラブストーリーである。事故死した人間の姿を借りて地上に舞い降りた死神は、死期が迫っている大富豪のビル・パリッシュの元に現れた。ビルは自分の命の延長と引き換えに人間界の案内役を引き受ける。ビルの家族に友人だと紹介された死神は、ビルの娘であるスーザンに惹かれ、次第にスーザンも死神に恋をしてしまうのだった。死神と人間の切ない恋模様と家族愛が描かれている。監督は、マーティン・ブレストが担当している。

『ジョー・ブラックをよろしく』の概要

『ジョー・ブラックをよろしく』とは、1998年にアメリカで公開された、死神と人間の恋模様を描くファンタスティック・ラブストーリーである。
パリッシュ・コミュニケーションというメディア会社の社長、ビル・パリッシュはある日どこかから「YES」と声が聞こえるのを感じた。日に日に増して行くその幻聴に悩まされていたビルだったが、ある日その声の主はビルの自宅にいると告げる。ビルを待っていたその声の主は、人間の姿を借りた死神だった。
ビルが何度も耳にした「YES」という言葉は、最近自身の体調の変化を感じ取り、死期が近いのだろうかと毎朝心の中で問いかけていたビル自身に対する死神の「YES」だったのだ。
死神はビルの人間性、社会的立場、豊富な経験などを見て相応しいと感じ、死期を遅らせることと引き換えに人間界の案内を頼む。

ビルの末娘で医者であるスーザンは、ある朝立ち寄ったコーヒーショップで1人の青年と出会う。初対面でありながら意気投合し、お互いに興味を持つ2人だったが、スーザンにはドリューという恋人がいたため、店先でそのまま別れてしまう。スーザンが何度も名残惜しそうに後ろを振り返りつつ曲がり角を曲がった所で、道路にいた青年は車に跳ね飛ばされてしまった。

正体を知られてはならない死神のために家族に友人だと紹介するビルは、死神の名前をジョー・ブラックと名付けた。ジョーを見て驚くスーザン。ジョーが借りた人間の姿とは、スーザンがコーヒーショップで出会った青年だったのだ。
今朝会った時とは様子が違うジョーに戸惑いながらも、スーザンはジョーに興味を示すようになり、ジョーもまた、スーザンに恋心を抱くようになる。
死神と人間の切ない恋模様と、父親と娘の愛と絆を描いた作品。

ずっと孤独だったという死神の、感情を読み取れない表情が人間との関わりで解れていく様子や、初めて触れたものへの抑えた喜びが繊細に表現されており、人間の青年と死神を演じ分けたブラッド・ピットの演技も見所のひとつである。
アメリカの映画評論家であるピーター・トラヴァース、ミック・ラサールは、ビル・パリッシュを演じたアンソニー・ホプキンスの、少しの行間にも現れる感情豊かな演技を称賛する。
しかし、1934年のアメリカ映画『明日なき抱擁』をリメイクした本作は、アカデミー賞の前夜に「最低」の映画を選んで表彰する、第19回ゴールデンラズベリー賞の最低リメイク、続編賞にノミネートされた。

青年と死神を『セブン』のブラッド・ピット、ビルを『羊たちの沈黙』のアンソニー・ホプキンスが演じ、ビルの娘のスーザンを『メダリオン』のクレア・フォーラニが演じている。
監督は、マーティン・ブレストが担当している。

『ジョー・ブラックをよろしく』のあらすじ・ストーリー

声が聞こえる

恋愛について話すビル(画像右)とスーザン(画像左)

パリッシュ・コミュニケーションというメディア会社の社長のビル・パリッシュは、身体の不調を感じていた。そんなある日の夜中、ビルの耳に「YES」と囁く声が聞こえてくる。空耳だっただろうかと、ビルは辺りを見渡す。しかし今度ははっきりと「YES」と聞こえるのだった。

翌朝、ビルの娘で長女のアリソンは、ビルのために盛大な誕生日パーティーの準備に取り掛かっていた。アリソンは張り切るが、ビルはあまり興味がないようだった。
ビルは末娘で医者のスーザンに特に目をかけていた。スーザンには、ビルの右腕として活躍しているドリューという恋人がいる。
ビルは、「彼を愛してるか?」とスーザンに聞く。スーザンはその問いには答えず「パパがママを愛したように?」とはぐらかすように言った。「お前の話をしてる。結婚するのか?」とビルが尋ねると、「多分ね」とスーザンは一言口にした。ビルは「彼は切れ者で押しも強い。我社を背負って立つ男だと思ってるが、お前からドリューの話を聞いたことがない」と、恋愛に冷めているように見えるスーザンを案じていた。スーザンは「聞き逃してるんじゃない?」とまたもはぐらかす。「いいや。まるで心が踊ってない。興奮のかけらもない。情熱もない。一度くらい恋に溺れてみろ。いつも心を開いてろ」とビルは熱く語る。「分かった。努力するわ」と、スーザンはどこか他人事のように言うのだった。
そんなスーザンにビルは「言い古された言葉だが愛は情熱だ。妄想だ。なしでは生きられない。それが本当の愛だ。死ぬほど相手を好きになって相手も同じだけ愛してくれて。そういう人と会うには考えずに心の声を聞くんだ」と、自身の考えを展開させる。スーザンは黙って聞いていた。ビルは続けて、「愛する人がいなければ人生を生きる意味などない。冒険して恋に落ちることもなければ、それは生きていないのと同じだ。そういう恋を見つける努力を何もしなければ生きる意味がない」と話す。スーザンは真剣に聞いてはいたが、自分にそんな経験が出来るとは思えず「ブラボー!」とおどけて言った。「茶化すんじゃない」と言って話すのを諦めたビルの手を取り、スーザンは「ごめんなさい。ちゃんと聞く。もう一度言って。でも今度は手短に」と笑う。ビルはスーザンの目を見て、「心を開いていればいつか稲妻に打たれる」と微笑んだ。スーザンは、ドリューに対して情熱がないことを自覚しているようだった。

コーヒーショップでの出会い

コーヒーショップで出会うスーザン(画像左)と青年(画像右)

出勤前にコーヒーショップへ向かうスーザン。店内の電話ボックスで話をしている青年がいた。優しく前向きな言葉で相手を励ますような話し方に、スーザンは微笑ましい気持ちで聞いていた。電話を終えた青年はスーザンの近くの席に座り、「おはよう」と挨拶をした。「今うるさかったでしょ。ごめんね」と青年はスーザンに謝罪した。スーザンは「全然。なんだか素敵だった。あなたとハニー?」と笑いかける。「あれは妹。最近彼氏と別れて大学なんか辞めてやるって言い出してね」と青年は説明した。「残念ね」と気の毒そうに返すスーザンに「男と女ってそんなもんだ」と、青年は意に介さない様子で答える。「そんなって?」と聞くスーザンに「いつか別れる」と青年は答えた。スーザンは「ああ。同意だわ」と納得したように言う。すると青年は「なんで?」とスーザンに尋ねた。予想外の問いかけにスーザンは戸惑い、「相槌打ってみただけ」と答える。思わず青年は笑い、スーザンも笑った。「そうだよね。ごめん聞きたがりで。でも別れて良かったよ。妹の相手ってのがめちゃめちゃ遊び回ってる奴で妹が引っかかった。でも大勢の中の一人」と青年が話す。「あなたは彼女一人?」といたずらっぽく聞くスーザンに青年は「そうだよ。でも今は募集中」と言った。そして「引っ越して来たばかりなんだ。転職してアパートを決めてきた」と話す。スーザンは楽しそうに話を聞いていた。そして青年はスーザンに「お医者さんでしょ?この辺の人みんなそう。僕の前に住んでいたのもお医者さんなんだ。何科の先生?」と聞く。「内科の研修医よ」とスーザンが言うと「じゃあ主治医になってもらうかも」と青年が笑う。スーザンが「あるかもね。私すぐそこの病院だから」と言うと青年は、「よかった。運がいいな。恐ろしい大都会に出て来た初日に美人の主治医を見つけた」と笑顔で話す。青年は、スーザンへの好意を隠そうとしなかった。
スーザンは戸惑い、視線を下に落とす。その様子に「ごめん。怒った?」と青年が気を揉む。「いいえ全然。大丈夫」と焦って否定するスーザンに、「もう一杯コーヒーを飲まない?」と青年は誘うが、スーザンは「患者さんの予約の時間があるから…」と腕時計を見る。青年が「僕も部屋に戻ってから仕事。でも一杯だけ奢りたいな。時間ない?」と食い下がると、「じゃあ一杯だけ」と言ってスーザンは微笑む。同じタイミングで砂糖とミルクを入れた2人は楽しそうに笑い合っていた。

会社に着いたビルは、他会社との合併についてドリューと話していた。体調が悪そうなビルはその後社長室に一人で戻り、胸を押さえて苦しみ出す。するとまたどこかから「YES」と聞こえてきたのだ。「何がだ」とビルが口にすると、「君の質問に対する答えだ」と声がする。ビルは「何も質問などしてない」と苦しみながら声に出す。「いいや。したはずだ」と言う声が返って来た。「誰だ?どうなってるんだ」と、ビルはますます苦しみ胸を押さえる。「分かってるはずだ。努力をしなければ生きる意味はない」と声がする。「何の話だ」と答えるビルに「君がしていた話だ」とその声の主は言う。「正体を明かせ」とビルは息も絶え絶えだった。声の主は「君が命令するのか?無理だ。君は主導権を握ろうとしているが今回の状況だけはそれが不可能なことは分かってるはずだ」と返す。ビルは苦しみのあまり膝をついた。「許してやろう。今はな」と言う声がした途端ビルの苦しみがおさまったのだった。そして「話をしてくれ」と言うビルに「話す時間はこれからたっぷりある」と声の主は言った。

後ろを振り返るスーザン

一方、スーザンと青年は意気投合し、親しげに会話を交わしていた。仕事の話や結婚観の話をしていると、「たとえばの話、もし君と結婚したら僕は君の望みを叶える。お互い相手のために尽くす。僕は僕を尽くしてくれる人に尽くしてあげたいんだ」と青年は言った。スーザンは「そういう人を見つけるのは難しいわよ」と、青年の理想話を軽く笑い飛ばした。青年は意外そうに「そう思う?」と聞く。そして「でも探してれば、いつか稲妻が落ちる」と言った。スーザンは、ビルと同じことを言う青年に驚き、落ち着きをなくしていた。

コーヒーショップを出る2人。「じゃあもう行かなきゃ」とスーザンは言った。青年は「何か悪いこと言った?」と、様子のおかしいスーザンに聞く。スーザンは「いいえ。違うの。ただ、すごい偶然があって驚いたの」と答える。それが稲妻の話だとは言わなかった。青年はスーザンを見つめ、「やっぱり君を主治医にはしないよ。君には検査されたくないし」と言う。「なんで?」と問うスーザンに「君を好きになったから」と青年は答えた。スーザンは少し考えた後、「私も検査したくないわ」と口にする。「どうして?」と聞く青年にスーザンは「とても好きだから」と言った。2人は笑い合うが、それ以上のことは話さなかった。そして店先で別れ、スーザンと青年は別方向に歩いて行く。何度も交互に振り向くが、その視線が重なることはなかった。スーザンは名残惜しそうに青年を振り返る。スーザンが曲がり角を曲がった所で、青年は車に跳ね飛ばされてしまうのだった。

声の正体

声の主(画像右)と対面するビル(画像左)

その夜ビルは、アリソンとアリソンの夫クインス、そしてドリューと夕食を共にしていた。スーザンは仕事で来ていない。するとビルの耳にまた例の声が聞こえてきた。「会いたかったか?ビル。玄関の外で待っている。入れてくれないのか?」と声の主が言う。ビルはメイドのリリアンを呼んだ。「誰か来てるか見てくれるか」と頼み、玄関に向かわせた。
アリソンは、ビルの誕生日パーティーに出席する名だたる面々について嬉々として話している。気合の入っているアリソンをよそに、ビルは心ここにあらずの状態だった。

リリアンがビルのそばに近付き、「旦那様の仰る通りお客様がおいででした。今ロビーでお待ちです」と言いに来た。「書斎に通してくれ」とビルは言う。
そしてビルは書斎に行き、「私だ。誰かいるか?」と、姿の見えない相手に向かって聞く。「何のいたずらだ?」と微かに苛立ちを見せるビルに「静かにしろ」と声がした。思わず後ずさるビルに、「どこへ行く?さすがの君でも言葉に詰まるのかね?その唇で情熱や恋の妄想を語った男が?目が眩むほどの幸せがなければ生きる意味がないとまで言い切った男がどうしたことだ?あれほどエネルギッシュに滔々と言葉を溢れさせたのと同じ人物とは到底思えないね」と声の主は言う。姿の見えないその声にビルは呆然となり「なんだこれは?」と辺りを見渡す。すると、書斎の奥に人影が見えた。「誰だ?」とビルは警戒する。「千年に永久を掛けて無限の時を加えろ。それが私の年齢だ。最近人類にちょいと関心を抱き始めてね。退屈と好奇心からすべての存在を司るこの私が君を訪ねて来たのだ」とその人影は言った。ビルは「なぜ私を?」と疑問を口にする。人影は、「君と発つ前に見学したい。君の持つ力。君の知恵と経験。様々な証言から君に白羽の矢を立てた。私の案内役になってほしい。その返礼として時間をやる。数分か数日か数週間か。細かい話はいい。私の興味を満たしてくれ」とビルに話す。そして人影は少しずつ近付き、「”YES”君の問いへの答えだよ」と言った。何のことか判別できないビルは「問い?」と考える。「あの問いさ。最近よく自分に問いかけてるだろ?テニスで息切れした時、真夜中、今朝のオフィスでの出来事。息が詰まって耳鳴りを感じる中で自分に何度も問いかけたはずだ」と言う声がする。思い当たる節があったビルは「あの問いのことか?」と答える。「そうだよ。あの問いだ」と言って声の主は姿を現した。その姿は、今朝スーザンと会っていた車に跳ねられた青年だった。姿を現した声の主にビルは呆然としながら「”死期が近くに?”」と聞く。青年は「YES」と答えた。気が動転しているビルは「私を連れに来たのか?君は誰だ?」と尋ねる。青年はゆっくりとビルに歩み寄って行く。「君は…死神か?」と驚きを隠せないビルに「その通り」と死神は答えた。「スーツを着た若者が?」と、ビルは死神の風貌を見て言う。死神は「死んだ若者の体を奪った。これで人間社会に紛れ込めるか?」とビルに聞く。ビルは「私が案内役になるのか?」と尋ね返し、「適任だ」と死神が答える。「期間は?」と聞くビルに死神は「長い方がいいだろ?」と偉そうに振る舞う。

そこにメイドのリリアンがやって来た。「旦那様。お客様もお食事を?」と尋ねると、死神は「頂こう。ありがとう」と答える。「気は確かか?君も食事を?」と戸惑うビルだったが、「僕も君の家族と同じ席で食事する。私の命令だ。逆らうな。いいな?」と傲然たる態度で言った。ビルは疲弊した様子で「分かった」と答えた。

ジョー(画像右)を紹介するビル(画像左)

食事の席へ向かった2人。「中座してすまない。招いた友人が現れたもので。いろいろ話があったんだ。一緒に夕食を」とビルが説明する。そしてアリソンとクインス、ドリューを紹介した。「そちらの名前は?」と死神に尋ねるアリソン。死神はビルを見つめている。面食らったビルは「ジョー」と絞り出し、「ジョー・ブラックだ」と言った。
ジョーは席に着き、運ばれて来た料理を物珍しそうに眺める。するとスーザンが遅れてやって来た。「遅くなってごめんなさい。部長に食事に誘われて」と言いながらテーブルに向かい家族に挨拶を交わし、ドリューにキスをした。そして、ジョーがいることに気付き、顔を確認すると目を見張った。「なぜあなたがここに?」と驚くスーザンに、「知り合いか?」とビルも驚いて聞く。スーザンは「今朝コーヒーショップで会ったの。彼が主治医を探してて」と説明した。「彼女は医者だ。ジョーはツイてるな」とクインスが笑う。スーザンは「ジョーっていうのね」と微笑む。青年の姿を借りているだけのジョーにとってスーザンは初対面だったため、何も答えることが出来なかった。様子のおかしいジョーに「舌を切られたの?今朝はよくしゃべったのに」と笑うスーザン。「今朝はどうかしてた」と誤魔化すジョー。あまりにも人が違って見えるジョーにスーザンは複雑な気持ちになっていた。

ビルの家に滞在することになったジョーは夕食後、ビルに呼ばれ部屋をあてがわれる。ビルはスーザンとジョーが今朝会っていたという事実に驚いていた。
「僕が乗り移る前に若者がコーヒーショップで彼女と知り合っていたようだ」とジョーが言う。「その若者は?」と聞くビルに「肉体が必要だった」と答えるジョー。意図的に奪ったのか偶然なのか、ビルはそれ以上聞かないでいたが、それは人知の及ばないことだった。

スーザン(画像左)とジョー(画像右)

部屋を出て家の中を探索するジョーは、見るものすべてに興味を示している様子だった。
使用人たちのいる厨房に向かい挨拶をするジョー。一人の使用人が手に持っていたピーナッツバターを味見させてもらうとジョーは大いに気に入ったようでおかわりを要求する。たっぷりとピーナッツバターが乗ったスプーンを手に持ちながら、ジョーは探索に戻った。
プールに向かうと、泳いでいるスーザンがいた。スーザンはジョーに気付き「どうしたの?」と聞く。「迷った」と言うジョーに、「今日はよく会うわね」と言ってスーザンはプールから上がる。そして「父と何か大きな仕事の取引をしたのね。突然現れてうちに泊まり家族と食事。こんなこと初めてよ。どこにでもいる普通の青年かと思ってたけど、今朝出会った感じのいい彼とは違う。私が誰か知った途端冷たい他人になった」と話す。経緯を知らないスーザンは、彼の変貌が悲しかった。「そんなつもりは…」と言うジョーに、「何が目的なの?コーヒーショップのドラマはただのお遊び?私は引っ掛かった。楽しかったけど」とスーザンは作り笑いを浮かべて言う。ジョーはスプーンをくわえながら黙って話を聞いていた。スーザンはそんなジョーを見て「さっきから何を食べてるの?」と聞いた。「ピーナッツバター」と答えたジョーは、何の脈略もなく「ドリューが好き?」とスーザンに尋ねる。「なんですって?」と少し気を悪くするスーザンに、「親しそうに口と口を合わせていたから」と何の悪気もなくジョーは答える。スーザンは「関係ないでしょ?ほっといて」と突き放すように言い、自宅へ帰る準備を始める。ジョーは「もしよければ友達になりたい」と言った。ジョーがどういうつもりで言っているのか読めないスーザンは、じっとジョーを見つめ「友達ならいるわ」と返した。「僕はいない」と言うジョーに「そうでしょうね」とスーザンはつぶやく。ジョーは「君を怒らせるつもりはなかった。人との付き合いが下手で。やらなければいけないことにいつも時間を取られて反省するんだ。もっと他のことをって」と精一杯説明する。「それは私も同じよ」と答えるスーザン。2人はしばらく見つめ合う。視線を逸らしたスーザンは「それじゃあ。おやすみジョー」と言って帰って行った。

人間界を楽しむジョー

ジョー(画像左)のネクタイを締めてやるビル(画像右)

翌朝、ジョーのいる部屋に向かうビル。挨拶を交わし、「今日の予定は?」とジョーがビルに聞く。「私は会社に出る」と答えるビルに、ジョーは「街を歩いてみたい」と言った。ビルは呆れて「呑気なもんだ。家族に何と説明を?」と心休まらない様子だ。「心配するなビル。家族には何も言うな。出だしは最高だ。ちゃんと人間扱いされた。皆が笑いかけクインスはパンをくれた」とジョーは嬉しそうに話す。「家族にこの件は関係ないからな」とビルはジョーに言って聞かす。ジョーはビルが部屋に入って来た時からずっとネクタイを締めるのに苦戦していた。見かねたビルがネクタイを締めてやりながら、「いいか。これは私と君だけのことだ。正体は明かさん」と承知させる。「いいだろう」と答えるジョー。「お互いに約束は守ろう。男と男の取り決めだ」とビルは言った。

外を歩くビルとジョー。「君がいない間君の仕事はどうなるんだ?」とふとビルは疑問を口にする。ジョーは「朝ひげを剃りながら仕事のことを考えたりするだろ?それと同じさ。体の部分が別々に機能して別々の仕事の処理に当たる」と説明する。「なるほど」とすぐに納得したビルに「君は理解が早い。さすがだ。無限の世界での永遠の仕事。君の想像を超える仕事だ」とジョーは言った。

ビルが社長を務める会社、パリッシュ・コミュニケーション社に到着したビルとジョー。この日行われる取締役会議にジョーも参加することになった。会議室に入ったジョーは、席に座っているクインスに気付き挨拶をする。
「それでは取締役会を始めます」とドリューが進行させる。議題はボンテキューという人物から、会社の合併話が来たことについてだった。ビルは「昨日のボンテキューとの懇談は大変興味深かったし得る所が多かった。しかし、こう思った」と言って、ビルは立ち上がり話を続ける。「これは私が望んで始めた事業だ。私には立派な小説など書けないが、人生には1ドルの物を2ドルで売るよりも他に何かあると思った。世に誇れるクリエイティブな仕事をしたかった。そして考えた。”世界にニュースを”と。”情報の普及がこの地球を救う”と。もちろん事業には利益が必要だ。だがボンテキューは利益第一。彼がうちと合併し、ついでに他の数社を買収したら?我々は彼を通して仕事をすることになる。彼に給料を払い彼の言葉に従わねばならん。報道は大きな責任を伴う有意義な事業だ。金儲けとは違う。彼は我々が築いた実績を金で買う気だ。社長として同意が欲しい。うちは売り物ではない」と、自身の仕事に対する姿勢を熱弁する。ドリューは「我社の将来と発展のために、合併は死と税金のように逃れられないのでは?」と反論する。初めて聞く言い回しにジョーは反応し、「死と税金?なぜ?」とドリューに聞く。軽くかわすドリューだったがジョーにしつこく尋ねられ、「”避けられないもの”の比喩だよ」とうんざりしたように答える。ビルは「話はそれだけだ。これで閉会に」と言って会議を終わらせた。ドリューはビルの判断に納得がいかない様子だった。

惹かれ合っていくジョーとスーザン

スーザン(画像左)の働く病院に会いに来たジョー(画像右)

スーザンの働く病院に行くジョー。「君に会いに来た」とジョーは言った。スーザンは戸惑いながらも、喜びを感じているようだった。
スーザンの患者で、娘に車椅子を押してもらっていた老婦人がやって来ると、老婦人はジョーを見て「オベア!」と叫んだ。そして「私は死ぬ」と怯えたように言う。オベアとは、悪霊のことだった。スーザンと老婦人の娘が入院の手続きのためその場から離れる。ジョーは小声で「僕はオベアじゃない」と言った。「じゃあ誰?」と聞く老婦人に「あの世から来た」と答えるジョー。老婦人は体の痛みを訴え、「早くあの世へ連れて行って」とジョーにせがむ。「寿命は変えられない」とジョーは答えた。

スーザンと娘が戻って来て、娘は老婦人を病室へと連れて行った。ジョーは「すまない。どうやら病院は僕の来る所ではなさそうだ」と申し訳なさそうに言う。「いいのよ。来てくれてありがとう」とスーザンは微笑む。ジョーは顔をほころばせ「ありがとうスーザン。僕も嬉しい」と言った。そしてスーザンが言いにくそうに「ジョー。私、ドリューがいるの」と言うと、額面通りに受け取ったジョーは「いないよ?」と言った。スーザンは笑っていた。

会社に戻るジョーは、ビルの部屋で昼食を摂っていた。ジョーの食べているものに対しビルが「ラム・サンドイッチだ。妻がその味を教えてくれた」と言う。そしてビルは亡くなった妻の話をし始める。「彼女を思い出す。思い出さない日はない。”気分が悪い”と言って翌日逝ってしまった」と言った。
ジョーはビルの話を真剣に聞いている。そして「出会いは?」とビルに聞いた。ビルは「彼女はブルーのスーツを。襟は白で、ふちには赤いテープ」と、涙を堪えながら話し始めるとノックの音がし、ドリューがドアを開けた。「お邪魔かな?」と言うドリューに、ドリューの方を見もせず「ああ」と答えるジョー。ビルが「構わん」と言ってドリューを中へ入れる。話の続きを聞き損ねたジョーは不満げだった。
ボンテキューとの合併を望んでいたドリューは「ボンテキューとの合併は決定かと」と、ビルに話す。ビルは「合併は取り消しだ。ボンテキューは忘れろ」と言い放った。ドリューは不服そうに部屋から出て行く。自分が築き上げた事業を人手に渡す気はないとビルは激怒していた。

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