ブッダ(手塚治虫)のネタバレ解説・考察まとめ

『ブッダ』とは、漫画家・手塚治虫が手がけた、仏教を生み出した釈迦こと「ブッダ」の物語についての漫画作品である。少年漫画雑誌『希望の友』(潮出版社)にて、1972年〜1982年まで連載された。後のブッダである主人公「ゴータマ・シッダルタ」が苦悩しつつ仏教をどのように悟ったのかを描き出している。実在の人物と手塚治虫自身の創作の人物が入り混じっているも、2000万部を超える売り上げを記録し、非常に評価されている作品である。

ナラダッタ

ブッダはアナンダにヴィサーカー、新しく弟子に入ったラーフラやバッディヤ、アヌルッダ、コンビラたちとともにコーサラ国へ向かっていた。
その途中、バッディヤは「コーサラ国の国境の山にナラダッタという修行僧がいる」ことをブッダに告げた。
ブッダは心惹かれ、その山へ向かうことにした。
すると、手と足の跡が地面に残っており、それを追っていくと小さな洞窟に突き当たった。
アナンダは危険かもしれないと自分が先に行くことを提案したが、ブッダは自分1人で行くことを選んだ。
ブッダが洞窟の中に入っていくと、ナラダッタと思われる痩せこけて弱った老人が洞窟の奥にうずくまっていた。

洞窟の奥でうずくまるナラダッタ

ブッダは名前を尋ねるも、ナラダッタはうめき声を出すだけで答えなかった。
ブッダがナラダッタに手を触れると、ひどい高熱に侵されていることがわかった。
そこでブッダが熱覚ましの薬草を与えようと弟子たちの元へ戻ろうとすると、ナラダッタはうめき声をあげながらブッダの行く手を遮った。
それをみたブッダはナラダッタを「狂人だ」と感じた。
しかし、ナラダッタはボディランゲージでブッダにそこにいるように指示し、それを見たブッダはナラダッタが手当を求めずに死を迎え入れようとしていることを知った。
元の場所に戻ったナラダッタは、そばにあるクモの巣の干からびたクモの死骸を指差した。
それをみてブッダは「この方は薬や人手で生き延びるのではなく、自然に死にたい」とナラダッタが思っていることが分かった。
ブッダは自分の行為を詫び、ナラダッタの最期を見届けることにした。
ナラダッタの様子を見てブッダは、「この人は最後は大自然に溶け込んで清らかな毎日を過ごしていたのかもしれない」と感じた。
ブッダは一晩をナラダッタとともに洞窟で過ごすことを決めた。
夜深く、ブッダがまどろんでいた頃、ナラダッタは急に「アシタさま、私は許されるのでしょうか」と人間の言葉をしゃべった。
その時、洞窟いっぱいにかぐわしい匂いと光が満ちて、ナラダッタの体は七色の靄に包まれて輝いた。
ナラダッタは天からのアシタの声を聞いていた。
アシタは「ナラダッタは40年間畜生道に落ちてつぐないをした。今こそお前は許される」と天からナラダッタに声をかけた。
ナラダッタは「世界の王たるべき人を見つける」という使命を覚えており、それを果たしていないとアシタに主張した。
するとアシタは「その人は目の前にいる」と告げた。ナラダッタは両手を伸ばして感激の声をあげ、そのあと息を引き取った。

ブッダの存在を認識したナラダッタ

ブッダはナラダッタに手を合わせ、洞窟を後にした。
弟子たちはナラダッタの亡骸を運び出そうとしたが、ブッダはあのまま土に返すべきだと言った。
ブッダは弟子たちに「到底私には及ばない立派な人だった」と告げた。
ブッダはそれから、自分が死ぬ時にはナラダッタと同じように自然に委ねて死のうと考えるようになった。
そして、ブッダは自分の生涯の終わりを深く考えることにになった。

祇園精舎

コーサラ国の都・シュラーヴァスティーにて、ルリ王子の息子・ジェータ王子は馬に乗って自分の荘園を散歩をしていた。
そこには、町人で長者のスダッタがおり、スダッタはジェータ王子の荘園を譲ってほしいのだとジェータ王子にお願いした。
何のために使うのかとジェータ王子が尋ねると、スダッタは僧園にしたいのだと言った。
しかし、ジェータ王子はその願いを一蹴し、「金儲けのことばかりしているお前が嫌いだ」と吐き捨てた。
「どうしてもほしいのならこの荘園いっぱいに金貨を敷き詰めてみろ」とジェータ王子は無理難題をスダッタに押し付け、そのまま王宮へ帰って行ってしまった。
王宮に帰ると、ルリ王子がコーサラ国に戻ってきており、ジェータ王子はルリ王子の元へ向かった。
ルリ王子とジェータ王子、ルリ王子の妃が3人で食事をしている時、妃はルリ王子がカピラヴァストウから兵を引いたことに驚いていた。
それに対してルリ王子は「偉い方の話を聞いたから」と答えた。
ルリ王子がパセーナディ王にカピラヴァストウから兵を引いたことを告げると、パセーナディは怒り狂い、もう一度カピラヴァストウを攻めるようにルリ王子に言いつけた。
しかしルリ王子はそれを断り、「根絶やしにすることなど馬鹿らしい」と返した。
するとパセーナディ王は王の言うことを聞かない王子には王位を譲らないと言い出し、カピラヴァストウをもう一度侵略することをもう一度命令した。
パセーナディ王の元を離れたルリ王子は悩み、ジェータ王子に「私に早く王になってもらいたいか」と尋ね、パセーナディ王が他の側近に王位を譲るかもしれないとつぶやいた。
それを危惧したルリ王子はまた出陣することを決意した。
一方その頃、長者スダッタはジェータ王子の荘園を譲ってもらうべく、全財産を金貨に変えて荘園に敷き詰める作業を開始し始めていた。
スダッタは以前、マガダ国でブッダに出会っていたのだった。
スダッタはマガダ国の旅の途中で訪れた宿で、自分の話をしていた。
慈善活動などもしていたが、何か後世に残る文化事業をしようと思っていた。
そこで宿の主は寒林(墓地)で何か考えると良い案が浮かぶかもしれないとスダッタに提案し、スダッタはそれに従って寒林に向かった。
そこは閑散としたところで、何かいいアイデアが浮かぶとは思えなかったスダッタは、途中で帰ろうとした。
すると、スダッタは、風の音とともに「戻るな」「帰るな」と言う声が聞こえた気がした。
スダッタが不気味に思いながらもそこにとどまっていると、そこへブッダがやってきた。

スダッタとブッダの出会い

ブッダはここへ瞑想に来るらしかった。
スダッタは「なぜ死体がある薄気味悪いところでわざわざ散歩するのか」と尋ねると、ブッダはハエの死骸をつまみ上げ「これも死体だが気味が悪いか」とスダッタに尋ねた。
スダッタは「ハエは気味悪くない。なぜならハエと人間は違うから」と返したが、ブッダはそれを気のせいだと言った。
ブッダは「人間もハエも死ぬ、生きると言うことは同じである」とし、「必ず死ぬことについて恐れるのは無駄ではないか」と説いた。
続いてブッダはスダッタが財産が心配だという考えを見通し、そのことから死が怖いのだと突き止めた。
「財産の心配をしなくなれば、死ぬ日まで幸せに暮らせるだろう」とブッダは告げ、スダッタはその言葉に感動し、ブッダのために僧園を作ることを決意したのだった。
スダッタは早速金貨を荘園に敷き詰め始めた。
しかし、荘園の入口を少し覆っただけに終わってしまった。
スダッタは何十年もかけて集めた財産がそれだけしかないことにショックを受けた。
そこへジェータ王子が現れ、まだ少ししか荘園を金貨で覆えていないことに呆れた。
ジェータ王子はスダッタを挑発し、スダッタは逆に燃え上がった。
スダッタは邸も奴隷も売り飛ばし、しもべたちも全員解雇し、さらに金を得ることにした。
それを聞いたジェータ王子は驚いたが、「いずれ半べそで謝ってくるに違いない」と考えていた。
スダッタは全ての持ち物を失ったが、それでも荘園を全て覆うことができなかった。
打ちひしがれたスダッタだったが、文無しになったことで逆に財産の心配をせずに済むことに気がついた。
スダッタは薄汚い小屋に住んで乞食をやることで少しずつ金を貯めていくことにした。
ジェータ王子はスダッタを馬鹿にするためにスダッタの元を訪れた。
ジェータ王子は文無しになったスダッタはもう不幸だと考えたが、実際のスダッタは逆だった。
財産をすべて失ったスダッタは、逆になにも悩むことがなくなり、毎日が楽しくて仕方ないらしかった。
ジェータ王子はスダッタの元を去る際に、金貨を一枚落として、それを拾ったスダッタがどういう行動をとるかでスダッタが本当にその暮らしに満足しているか試そうとした。
早速金貨を拾ったスダッタを見て、ジェータ王子はスダッタがすぐに市場へ行って何か食べ物を買うだろうと考えた。
しかし、スダッタはすぐさま荘園の元へ行き、たった一枚の金貨を嬉しそうに荘園の地面に敷いた。
それを見たジェータ王子は感服し、荘園をスダッタにタダで譲ることを決めた。

スダッタの執念にタダで荘園を譲ることを決めたジェータ王子

陥穽(おとしあな)

ルリ王子はカピラヴァストウに進軍していた。
そこで、シャカ族のサモンがいることを知ったルリ王子はすぐさま皆殺しにしろと命令した。
しかし、そのサモンの正体はブッダだった。
ルリ王子は慌てて馬を降り、ブッダの元へ赴いた。
ブッダはコーサラ国へ向かう途中だったが、ルリ王子の戦に出るような鎧を見て、ルリ王子がまたカピラヴァストウに向かおうとしていることを察した。
同時にブッダは、ルリ王子の行動が本心ではないことも見抜いた。
ルリ王子は父親であるパセーナディ王がシャカ族を滅ぼせと命じたこと、子は親の命令に従うべきだということをブッダに伝えた。
ルリ王子は自分が父親を信じなければ、いずれは自分の息子のジェータ王子も自分を信じなくなるのではないかと危惧していたのだった。
しかし、ブッダは「信じていないのであれば誰だろうと従う必要はない。それがあなたの息子への手本になる」と断言した。
自分の本心に従うことにしたルリ王子は、兵を引き上げることを決意し、コーサラ国へ帰っていった。

自分の本心に従うことに決め、兵を引くルリ王子

ルリ王子が去った後、ブッダは弟子たちにクイズを出した。
ブッダがご飯を食べ残したとき、2人の弟子が托鉢がうまくできずに腹をすかせており、ブッダは自分の食べ残しで良ければとその2人に食べ物を提供しようとした。
1人は「ブッダが勧めてくれたのだから」と食べたが、もう1人は「ブッダからは教えはいただくが食べ物はいただかない」と空腹を耐えながら去っていった。
ブッダは弟子たちに、どちらの弟子が正しいのか問うた。
アナンダは「ブッダからいただいたものなら喜んで食べる」と答えたが、ブッダは「まだ私の心が分からないのか」と返した。
ブッダは「私は教えを伝えるために旅をしているのであって、私から教え以外を受け取って何になるのか」と説いた。
コーサラ国へ戻ってきたルリ王子はパセーナディ王にどやされていた。
パセーナディ王はルリ王子には王位は譲らないと言った。
その後、ルリ王子はパセーナディ王が自分のお気に入りのレスラーを自分の養子にし、王位を継がせようとしていることに気づいた。
そのレスラーは明らかに王位を継ぐに足る人物ではなく、ルリ王子はパセーナディ王が頭がおかしくなったのだと感じた。
ルリ王子は「王がご乱心だ」と近衛兵に告げ、パセーナディ王を無理やり医者に診させた。
結果として、パセーナディ王は老齢により呆けてしまっており、もうまともに政治が執れないだろうと言うことだった。
ルリ王子はパセーナディ王を牢屋に入れ、自分が王になることを国全体に宣言した。
そして、第一の命令としてブッダ一行を歓迎するように言った。
コーサラ国には有力なバラモン、「ポッカラサティ」がいた。
ポッカラサティはルリ王子が迎え入れるブッダのことが気に入らず、ブッダを陥れる計画を始めた。
ブッダがコーサラ国へやってくると、大勢の兵が迎えにきており、ルリ王子改めビドーダバもブッダの前に跪いた。
ブッダはその歓迎を喜んだが、コーサラ国の人々は歓迎しないのではないかと危惧した。
しかし、そこへジェータ王子が現れ、スダッタを紹介し、スダッタの強いブッダへの敬愛の気持ちを伝えた。
ジェータ王子はブッダのことを「ぼくはあなたがどんな偉い人か知らない」と言ったが、スダッタの心に感激したため、スダッタと協力して大僧院を作り上げることをブッダに約束した。
現代の日本では、その大僧院は「祇園精舎」と呼ばれている。
スダッタの執念とジェータ王子の一本気な性格により、あっという間に祇園精舎は出来上がり、ブッダはそれからそこで説教をすることにした。
ブッダがそこで説教している間、ポッカラサティは計画を着々と進めていた。
ブッダが説教を終え、休んでいるところ、誰かがブッダを呼んだ。
その声をたどってブッダが祇園精舎を出ると、1人の女がブッダのことを呼んでいることに気づいた。
その女性はブッダを誘惑しようとしたが、ブッダはそれをあっさり断った。
するとその女性は「私いま死ぬの」と告げ、その瞬間女性に剣が突き刺さり、女性はブッダに倒れかかってきた。
女性を殺したのは、影から出てきた男だった。
女性を刺し殺した男も、女性もポッカラサティの弟子で、全てブッダを罠に嵌めるための行為だった。
女性を刺した男は大声で騒ぎ立て、「ブッダが女をたぶらかし、その上女がそのことを世間にバラすと言ったら殺してしまった」と町中に言いふらした。
竹林精舎には石が投げ込まれるようになり、「出て行け」「殺せ」などの罵声が後を絶たなかった。
アナンダはブッダに「悔しくないのか」と尋ねたが、ブッダは「7日待てばおさまる」と言い、じっと耐えた。
それから5日経った頃、いまだにブッダやその弟子たちは町を出歩くだけで石を投げつけられていた。
そこへビドーダバが現れ、人々がブッダに石を投げるのをやめさせた。
ビドーダバはブッダが女をたぶらかして殺したなどと信じておらず、全てブッダを陥れるための罠だと言った。
ビドーダバはその犯人を必ず見つけ出すとブッダに告げ、その場を去ろうとしたところ、ブッダに「パセーナディ前王は今どうなさっているのか」と尋ねられた。
ビドーダバは無表情で「父は死んだ」と答えた。
ブッダはとある高官から引退されてどこかの山の中に強制収容されていると聞いていたが、ビドーダバはそれを否定し、パセーナディは病死したのだと言った。
それを信じなかったブッダは、コーサラ国の人間に道案内を頼み、実際にパセーナディが収容されている独房を訪れた。
その独房は狭く、暗くて非常に生活に悪い環境だった。
ブッダに気づいたパセーナディはすぐさま「ここから出してくれ」と頼んだ。
ブッダはそれには答えず、自分は以前にパセーナディと会ったことがあることを伝えた。
そこでパセーナディはブッダことシッダルタのことを思い出し、その後、ブッダが現在の名を名乗ると、ビドーダバを弟子にしたことに対して怒り狂って怒鳴り散らした。
ブッダはビドーダバが「パセーナディが死んだ」と自分に伝えてきたことをパセーナディに告げると、パセーナディは腰が抜け、いよいよ殺されると思い、必死にブッダに鍵を開けてくれるように願った。
しかしブッダは落ち着いてなぜここへ入れられたかをパセーナディに尋ねた。
そこへビドーダバが現れた。
ビドーダバはブッダは必ず「パセーナディを釈放しろ」と言うに違いないと思い、パセーナディに会わせたくなかったのだった。
ブッダはビドーダバの親不孝を責めたが、ビドーダバがパセーナディは王位を自分に譲らずにお気に入りのレスラーに継がせる気だったことを伝えると、ブッダは絶句した。
ビドーダバは「父はもはや国にとって有害だ」と主張し、そのためにパセーナディを幽閉することに決めたことを言うと、ブッダはその行為を「無慈悲だ」と返した。
しかしビドーダバは耳を貸さず、ブッダに対して「二度と父上に近づくな」と告げ、そのままブッダを連れて帰って行ってしまった。
去っていくビドーダバを罵倒するパセーナディだったが、そこで牢屋の中の地面に「左の壁の下を見よ。あなたの味方がいる」という言葉が書かれていることに気がついた。

ブッダからのメッセージを読んだパセーナディ

そこを見ると、一房の雑草が生えていた。
その牢屋では1日に1時間ほどその場所に日光が届くため、そのわずかな日光で雑草が育っていたのだった。
一方、カピラヴァストウの城で、タッタはブッダを見失っていた。
しかし、もはやタッタにとってブッダはどうでもよくなっていた。
タッタの目の前には、シャカ族を大勢殺した後の墓があったからである。
ブッダの教えを守ろうとは思っているものの、コーサラ国の悪行に怒りがたまり、不満でいっぱいになっていたタッタに話しかけてきた人物がいた。
その人物はシャカ族のベーランダといって、コーサラ国に強い恨みを持っており、コーサラ国に復讐しようとしている人間だった。
ベーランダはタッタを自分の根城に案内し、たくさんの仲間たちをタッタに紹介し、すぐにでも決起しようと考えていることをタッタに伝えた。
タッタはコーサラ国に復讐するチャンスだとそれに乗ることにした。
タッタが戦いのために訓練をしていると、そこへヤショダラが現れ、タッタたちがコーサラ国に戦いを挑もうとしていることを止めた。
ヤショダラはカピラヴァストウの現状を話し、今コーサラ国を怒らせたらシャカ族は滅びるのだとタッタを説得しようとしたが、タッタはコーサラ国への復讐の炎で満ちており、ヤショダラの声は届かなかった。

シャカ族の滅亡

ビドーダバはブッダを陥れようとしたバラモンの正体であるポッカラサティのことを突き止め、彼が国外へ逃亡しているためすぐに捕まえて真相を暴いて見せるとブッダに告げた。
コーサラ国の兵士2人は国境まで行き、そこに怪しい影を発見し、それがポッカラサティかその弟子だと思い込み、突撃しに行ったところ、その人物はタッタだった。
タッタは兵士が油断している間に兵士2人ともを殺してしまった。
母親や姉、チャプラトチャプラの母親を殺された恨みをはらすタッタの復讐の始まりであった。
しかし、タッタの心にはまだブッダの教えによる迷いがあった。
馬の顔がブッダに見えたりして、タッタは「もう2人殺したから何千人殺そうが同じだ」と言い訳を始めた。
そうこうしているうちに、タッタの元へ次々にコーサラ国の兵士たちが現れた。
タッタは持ち前の運動神経と戦闘力で全員を殺した。
それを聞いたビドーダバは驚愕し、慌てて大軍をタッタの元へ送り込んだ。
ベーランダたちもタッタの状況を聞きつけ、コーサラ国に戦いを挑みにタッタの元へ急いだ。
コーサラ国とシャカ族との間で乱戦になり、タッタは負傷しながらも何人ものコーサラ国の兵士を殺していった。
そのような争いが起こったことで、シャカ族の中で争いを嫌うものたちはコーサラ国に逃れていた。
ブッダは1人でそれを出迎えることにした。
ヤショダラはブッダを見て安心したように駆け寄ろうとしたが、「近づくな」とブッダに拒否されてしまった。
ブッダはなぜカピラヴァストウの人間がコーサラ国へやってきたのかと厳しく尋ねたところ、ヤショダラはもう国は捨てたのだと告げた。
ヤショダラはベーランダたち血の気が多い人間がコーサラ国と戦をしようとしていることを告げ、それから逃げ出してきたのだと言った。
ブッダはそれに対して「命をかけて止めるべきだ」と主張した。
スッドーダナもそれに賛同し、国に帰ろうと言い出したが、すでに遅かった。
戦闘はすでに始まっており、シャカ族の1人がタッタがコーサラ国の兵士を殺したのが戦の始まりだったのだとブッダに伝えたところ、ブッダは驚き、信じられないと言った表情を浮かべた。
ブッダは慌ててカピラヴァストウへ向かった。
その途中、戦死者たちが幾人も運ばれているのをブッダは見た。
そして、ビドーダバが鎧に身を包み、象に乗ってブッダの横を通り過ぎていった。
通り過ぎる時、ビドーダバは「また私を引き止めるのか」とブッダに尋ねた。
ブッダは悔しそうに「もう引きとめない」と返した。
ビドーダバは「ここでシャカ族を殺さなければ侵略されるのだ」と言い、ブッダは「それがシャカ族の運命なのだろう」と受け入れた。
ビドーダバは悲しげな瞳で「カピラヴァストウなど1日で踏み潰せるぞ、いいのか」とブッダに尋ねたが、ブッダは何も返さなかった。
ビドーダバたちコーサラ国軍が去って行った後、ブッダは木に寄りかかり、「運命か、情けない」と嘆いた。

シャカ族の運命に嘆くブッダ

コーサラ国軍はあっという間にシャカ族たちを踏み潰していった。
ビドーダバはタッタの姿を見つけ、タッタがブッダの弟子であることを思い出し、命は助けてやろうと提案した。
だが、タッタは「象に踏み潰されるのが俺らしい死に方だ」と答え、ビドーダバは一瞬逡巡したが、タッタを象の足で踏み潰した。
ビドーダバは兵士たちにシャカ族を1人残らず殺すことを命令し、カピラヴァストウの城に攻め込んで行った。
その夜、ビドーダバはコーサラ国へ帰る途中、ブッダに出会い、一言「済んだ」とだけ言った。
ブッダがシャカ族たちはどうなったか尋ねると、ビドーダバは全員殺したと答えた。
ビドーダバはそのままコーサラ国へと戻っていった。
ブッダはそこからカピラヴァストウへ歩き出した。
ブッダは戦地で大量に死んでいるシャカ族たちを目にし、タッタも死んでいるのを発見した。
ブッダはタッタの亡骸を抱え、「私の教えが通じなかったのか」と嘆き悲しんだ。
タッタの亡骸を横に、ブッダは自分の教えが何の役にも立たなかったと感じ、ひどく悲しみ、苦しんだ。

自分の教えが伝わらなかったことを悲しむブッダ

悲報

シャカ族の生き残りたちはシャカ族の全滅に嘆いたが、最も悲しみにくれたのはブッダであった。
ブッダは、シャカ族の人々に説いたことが、結局何の役にも立たず、戦を起こし、結果として全滅してしまった事実を考え、自分の教えの無力さを感じていた。
ブッダは何十年もかけて人々に説いてきたことは所詮無駄で、結局のところ人間は殺し合いをする生き物なのか、それを止めることが自分にはできなかったのか、と自分の人生が無駄だったと感じ、ブラフマンに助けを求めてもがき苦しんだ。
その姿を見ていたアナンダの背に、また悪魔が現れた。
悪魔はブッダの苦しむ姿を見て、「あんな頼りない男に従う必要はもうないのだ」とアナンダを誘惑したが、アナンダはそれを無視し、ブッダのところへ歩み寄った。

suma719
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【ブラック・ジャック】記念すべき第1話「 医者はどこだ!」のネタバレと感想

「鉄腕アトム」や「火の鳥」「ジャングル大帝」などの名作を世に生み出した手塚治虫先生。そんな彼の作品の中で「医療漫画の傑作」と言われ、現在でも高い支持を集めているのが「ブラック・ジャック」です。今回は2004年に発売された新装版の特徴を踏まえながら、第1巻収録話についてまとめていきます。(※参考画像なし)

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いつの時代も面白い!テレビアニメ『ブラック・ジャックシリーズ』

どうも。最近話題になっている「ヤング ブラック・ジャック」効果で再びB・Jブームが到来した筆者です。子供の頃に何気なく見ていたストーリーは、今改めて見ると中々に感慨深いものがあったりします。という事で今回は、テレビで連続放送されていたB・J各シリーズを1話無料動画と合わせてご紹介。

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ぐるなびにて連載のエッセイ漫画【田中圭一のペンと箸-漫画家の好物-】をご存知ですか?

田中圭一先生と言えば、漫画界の巨匠・手塚治虫先生の絵柄で下ネタギャグな作風を確立したパイオニア。その田中先生が現在webサイト「ぐるなび」にて、漫画家ご本人とそのご家族にまつわる“食”にスポットを当てたエッセイ漫画を連載しており、これが大変おもしろい!ですのでこちらでは、田中先生の作品を通して、ご自身も漫画家や他分野で活躍されているご家族も紹介させて頂きます。

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手塚治虫の名作『ブラックジャック』の集大成! 『ブラックジャック大全集』

手塚治虫の名作が最も美しく甦る。 『ブラックジャック』は過去、秋田書店等で何度か単行本化されているが未収録作品がいくつかある。 しかし本書は、過去の単行本化された中で未収録作品が3話と一番少ない。 なお、この3話(「指」・「植物人間」・「快楽の座」)は手塚プロダクションの意向により今後も掲載されることはないため、この『ブラックジャック大全集』が〈完全版〉と言えるだろう。

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自殺ではなく事故死!?hideが最晩年に遺した曲達を紐解く!

1998年、衝撃的な「自殺」を遂げファンのみならず世間を驚かせた、元X JAPANのhide氏。数多の伝説を持つ彼ですが、どうやら「事故死じゃないか」との見方もある模様。死後20年近く経っても未発表曲が発売されるほどの人気や話題は、単に「若くしてショッキングな死に方をした」ためではないのです。そんな彼が「最晩年」に遺した曲の一部をご紹介。

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