『ジョジョの奇妙な冒険』のキャラクター達が受け継ぐ「人間讃歌」というテーマ

連載を開始から30年という年月を経ても根強いファンをもち、ゲーム、アニメなど様々なメディア展開を行い続けている、名作漫画。絵柄、言い回し、擬音など、強烈な作風の中でも、時代を経て人々に愛される、シンプルな「人間讃歌」というテーマ、そこに描かれる唯一無二の世界観と、世代を超えて受け継がれていくキャラクター達の生きざまについて解説する。

ジョジョの奇妙な冒険とは

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1986年に週刊少年ジャンプにて連載を開始した、荒木飛呂彦による漫画作品。
独特の絵柄によって描かれる、ホラーテイストな世界観はジャンプ作品の中でも異色で、多くの読者に衝撃を与えた。
連載開始から30年が経過した現在でも、月刊誌ウルトラジャンプにて依然として連載を続けており、今もなお、ゲーム化、アニメ化などのメディア展開を続け、老若男女問わず根強いファンを獲得している。
物語の舞台(作中では「部」と表現)が変わるごとに主人公が変わっていくことも特徴で、子、孫へと世代が移り変わり、長きにわたる「血筋」の戦いが描かれる。
おどろおどろしい雰囲気の中にも「波紋」「スタンド」といった独自の能力描写を展開し、能力バトル漫画として確固たる地位を確立した。

「ジョジョ」とは

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タイトルにも登場する「ジョジョ」とは、各部ごとに登場する、主人公の愛称だ。
必ず主人公は名前の一部を組み合わせることで「ジョジョ」というあだ名になる、という法則は、30年連載が続く今でも、一貫している。
例えば、物語の始まりである第1部の主人公、ジョナサン・ジョースター(画像、左端)。彼は、苗字、名前から「ジョ」を一つずつ取り「ジョジョ」となる。
第1部の戦いが幕を閉じると、舞台は第2部、ジョナサンの孫であるジョセフ(画像、左から2番目)へと受け継がれ、彼もまた同法則により「ジョジョ」として敵に立ち向かう。
たった一人の主人公ではなく、親から子、子から孫へと「血筋」と共に「因縁」は巡っていき、時代や土地、人種を変えて語り継がれていく。

受け継がれていくテーマ「人間讃歌」

ジョジョとディオ 奇妙な因縁の始まり

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名門貴族ジョースター家の息子・ジョナサン(右)と、養子としてやってくる少年・ディオ(左)

奇妙な物語は、19世紀のイギリスから始まる。
第1部にて「ジョジョ」こと主人公・ジョナサンは、養子として家にやってきた少年、ディオ・ブランドーと出会う。
名門貴族の生まれで「紳士」を目指すジョナサン。だが一方で、そのジョースター家の財産の乗っ取りを狙う、狡猾なディオ。
友達と共に楽しい共同生活が始まる、と思いきや、その日からジョナサンの日々は一変する。
ジョナサンと違い、要領の良いディオは着実に周りを味方につけ、ジョナサンを孤立させていく。
この二人の少年の因縁が、後に続く長き戦いの幕開けとなってしまう。

少年達の青春は「怪物」との戦いへ

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吸血鬼と化したディオ。人を「猿」と見下す彼に、ジョナサンは立ち向かっていく

大人へと成長し、少年時代のわだかまりも解消したかのように見えた、ジョナサンとディオ。
しかし、ついにジョナサンは、ディオがジョースター家を乗っ取ろうとしている証拠を見つけ、彼を追い詰める。
ディオの暗躍もこれまでか、と思われたが、ジョナサンが兼ねてから研究を続けていた「石仮面」という古代民族の遺産を使い、彼は人ならざる怪物「吸血鬼」へと変貌を遂げてしまう。
虐殺の限りを尽くし、圧倒的な力で夜の帝王として君臨しようとするディオ。
彼を止めることこそ、自身の「青春への決着」をつけることだと覚悟を決め、ジョナサンはディオに立ち向かっていく。
やがて物語は少年同士のすれ違いから、「人間」と「吸血鬼」の戦いへと発展していく。

ジョナサンの師・ツェペリより受け継がれていく「人間」の素晴らしさ

「人間」の持つ勇気の尊さを説き、力のみで君臨する「怪物」との歴然たる差を伝える、波紋の師・ツェペリ

「怪物」に対抗するため、ジョナサンは劇中で出会ったツェペリ男爵から「波紋」というエネルギーを習得する。
太陽の力を肉体に収束し、ぶつけることで怪物を撃ち滅ぼす「波紋」。この力を学ぶ際、師であるツェペリから、ジョナサンはある疑問を投げかけられる。
人間や動物の体から血を吸い、糧としている「ノミ」という生物。この生物は自分より大きな相手に立ち向かっていくが、果たしてこれは「勇気」と言えるのか?
ツェペリは、強く、巨大な敵に立ち向かうその恐怖を克服する姿勢こそが「勇気」であり、「人間」の素晴らしさであると説く。そして、逆説的に本能のままに「血」を求める怪物達は、ノミと同類である、とも諭す。
彼がジョナサンに伝えた、勇気を持つ人間の素晴らしさ。これこそ「ジョジョの奇妙な冒険」にて、作者・荒木飛呂彦氏が描き続けている「人間讃歌」という概念の根底に他ならない。
コミックス第1巻の帯のコメントでも、氏はこの漫画のテーマは「人間の素晴らしさ」であると、明記している。

出典: renote.jp

傷を負いつつ、戦う相手の家族のことまで考え、決して殺しはしない「貴族」としての心。この精神こそ、初代「ジョジョ」であるジョナサンから子孫へと反映されていく「人間の素晴らしさ」である

この「人間讃歌」というテーマを語るうえでは、やはり第1部の主人公であり、全ての「ジョジョ」の始まりとなった青年、ジョナサン・ジョースターの存在は外すことはできない。
幼少期、ディオに全てを奪われかけ、それでも愛する女の子のために立ち向かい、打ち倒したジョナサン。
どんな時でも逆境にあえて立ち向かい、自分のことだけではなく、他者の心や痛みを第一に考えるその姿勢は、父であるジョースター卿から受け継いだ「紳士の心」であり、最後までジョナサンの中で輝き続けていた。
ディオは「吸血鬼」となり圧倒的な力、不老不死という一見すると強大なものを手に入れた。しかしながら、最後まで人としての「心」を持ち続け、仲間を思い、父や家族のことを思い、前に進んだジョナサン。
人間をやめたディオを、人間の心を捨てずに成長し続けたジョナサンが打ち倒し、決着をつける。
「勇気」や「優しさ」こそが人間の尊さであり、これこそ、後の「ジョジョ」へと受け継がれていく「人間の素晴らしさ」に他ならない。

戦いの形は変われど、決してぶれない「信念」を持つ登場人物・キャラクター像

正義も悪も、常に前向きに

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「ギャングスター」になるという夢に向かって進む、第5部の主人公、ジョルノ・ジョバァーナ。己の夢や人の尊厳を踏みにじる者には、容赦しない

「波紋」や「スタンド」。「吸血鬼」や「柱の男」といったように、世代ごとに戦い方、戦う相手は常に変わってくるが、それでも時代ごとに生きる登場人物達は、いつも自身の信念を糧に生きている。
誰かを倒す、という大きな目的こそあれど、そこに至る経緯や過去は様々で、多少の困難にも動じないタフなハートは、主人公に限らず、登場人物全員が兼ね備えている。
例として、第5部の主人公である少年、ジョルノは幼少期に親の愛を受けずに育つが、初めて自身を救ってくれたギャングの男に惚れこみ、それ以降「ギャングスター」になるという夢を持ち、その夢のために街を支配するギャングを乗っ取るという行動に出る。
だがその一方で、弱者の命を踏みにじる行為を決して許さず、生半可な「覚悟」をもって立つ相手は、容赦せず打ちのめすという、精神的な強さを持っている。
任務や利益、もっと言えば自身の保身を考えれば、どうしても人は目の前の困難から目を背けてしまいがちだが、「夢」のため、曲がった行動や考えを持つ敵に、ジョルノはあえて挑んでいく。
ギャングになるということは、一見すれば悪の道を目指しているようにも見えてしまう。しかし、その根底は自身を助けてくれたギャングへの憧れが生きており、彼を動かす原動力となっている。
だからこそギャングとは彼の中で、「弱者を守る希望」ではなくてはいけない、という信念を持つ。ジョルノ達に迫る刺客はいつも非情で、関係ない一般人をゴミのように殺したり、時には街に住む全ての人間ごとジョルノ達を抹殺しようとする。ジョルノは彼らを見捨てて逃げるという、いわゆる「安全策」も取れたはずだが、「弱者の命を踏みにじる者」はけっして許さない。敵の能力によって体をバラバラにされようと、両腕を切断されようと、肉体を腐らされようとも進み続け、自らの拳で叩き、黙らせる。
思い切った行動に出るダークな一面も持ちつつ、その中に見える決して揺らがない「正義の心」。逆境に立ち向かう中で、それでも人としての心を捨てない一貫した姿勢に、祖先であるジョナサンが抱いていた「人間の素晴らしさ」が、しっかりと受け継がれている。

出典: jojotheworld.com

全力で生きているからこそ、放たれる言葉も重い。「正義」だから戦うのではなく、「自分が信じた道」だからこそ、戦うキャラクター達

「生きる」ということに全力で、常に前向きな彼らだからこそ、その口から放たれるセリフは常に重く、心に突き刺さる。
時に迷い、戸惑い、立ち止まりそうになる場面での葛藤。そして、自分なりの答えを導き出し、再び歩みだすその姿は、見ている者に強い共感をもたらす。
何を信じるべきか、誰についていくべきか、どこに向かうべきか、何が正しいのか、彼らの悩みは常に人間臭く、状況こそ特殊であっても、その根底は我々の日常とあまり変わらない。
第5部でいえば、ギャングの幹部として「任務」を遂行すべきか「仲間の命」をとるべきか。組織での正解と、人としての正解のはざまで揺らぐ、ジョルノの先輩であり相棒・ブチャラティ。
幹部という地位から言えば、彼は「任務の成功」こそを優先すべきであり、「仲間の命」を犠牲にしてでも「結果」を追い求めるこそが、組織としての「正解」のように思える。
しかし、信頼しついてきてくれた仲間を見捨てるということを、彼は人として良しとはしない。結果、例え己が死ぬ可能性が出たとしても「任務は遂行する。部下も守る。両方やらなければいけないところが、幹部のつらいところ」と、堂々と相手に言ってのけた。
困惑する相手に対し、自分自身の「正解」を定めた彼は「覚悟は良いか。俺はできている」と逆に問いかけ、痛快に敵を打ちのめしていく。
彼らのように、組織の本質や舞台となる国は異なっていても、どこか我々が生きている日常生活の中でも、こういった悩みはあり得るのではないだろうか。
フィクションの世界で描かれる、未知の力を使ったバトルであっても、彼らの持つ悩みや痛みは、どこか我々の人生に被る部分もあり、知らず知らずのうちに「教訓」として読み手に訴えかけてくる。

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