世界から猫が消えたなら(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『世界から猫が消えたなら』とは日本で作成されたドキュメンタリー要素のあるファンタジー作品である。2012年に発行された原作の『世界から猫が消えたなら』は、翌年の2013年に本屋大賞にノミネートされた。そして2016年3月に単行本と文庫本を含めた累計発行部数が101万5000部になり、同年の5月に映画が公開された。自分の身の周りから物が消え、それに関連した人間関係も同時に消えていく体験をするストーリーでは、主人公とともに人生において大切なものに気付くことができる映画となっている。

『世界から猫が消えたなら』の概要

『世界から猫が消えたなら』とは日本で作成されたドキュメンタリー要素のあるファンタジー作品である。2012年に発行された原作の『世界から猫が消えたなら』は、翌年の2013年に本屋大賞にノミネートされた。そして2016年3月に単行本と文庫本を含めた累計発行部数が101万5000部になり、同年の5月に映画が公開された。監督は永井聡で原作者の川村元気がオファーした。公開初日2日間で観客動員14万1691人を突破。興行収入は1億8470万9900円に及んだ。主人公の僕と悪魔は佐藤健によって1人2役で演じられた。自分の身の周りから物が消え、それに関連した人間関係も同時に消えていく体験をするストーリーでは、主人公とともに人生において大切なものに気付くことができる映画となっている。
主人公の名前は出てこないため、僕と表現されている。僕は30歳で郵便局に勤めていて、独身だが猫を飼っている。猫の名前はキャベツ。捨て猫として拾ってきた際に入っていたキャベツの段ボール箱から名付けられた。数年前に母が他界し、それから父とは疎遠になっている。交友関係は狭く、映画好きの親友が1人だけ。その親友から勧められた映画を見て感想を伝えるというやりとりを何年も続けている。あと数年前に恋人がいたが、こちらは分かれてから連絡を取っていなかった。そんな僕はある日、脳腫瘍が見つかり余命宣告をされる。突然のことに動揺しながらも帰宅するとそこには自分と同じ見た目の悪魔がいた。悪魔は僕に契約を持ちかける。「世界から何かひとつ、ものを消すことで、1日の命をあげよう。」この言葉に同意した僕は次々と悪魔の言うとおりに身の回りのものを存在ごと消していく。しかし僕は何かを存在ごと消すということがそれに関連した思い出や人間関係も消してしまうということだということを知らなかった。それでも僕は次々と周囲のものを消すことを選んだ。電話、映画、時計、最後に消す対象として選ばれたのは猫であった。これは余命宣告された青年が、身の回りにあるものとそれに関係した人間関係を無くすことで、大切なものの存在に気づく感動の物語である。

『世界から猫が消えたなら』のあらすじ・ストーリー

悪魔との出会い

主人公である僕は郵便局に努めている配達員である。ある日、いつも通り出勤し、いつも通り働き、いつも通り帰宅していた。しかし、いつもと違ったのは突然の激しい頭痛が僕を襲い、自転車ごと倒れこんでしまったことだった。病院で診察を受けた僕に言い渡されたのは脳腫瘍の診断だった。かなり進行しており手術も不可能な状態で余命もわずかばかり、急に死んでもおかしくないと医者から言われた。突然のことながらも動揺はせずむしろ落ち着いていた。食事をして帰宅すると、そこには自分と同じ見た目をした人物がいて驚いた。彼は自分自身を悪魔だと言う。続けて僕の寿命が明日までであると言った。何も言い返せない僕に悪魔は「世界から何かひとつ、ものを消すことで、1日の命をあげよう」と寿命を伸ばす契約を持ち掛けた。ただし、消すものを選ぶのは僕ではなく悪魔だ。そして、僕はそれを僕は受け入れてしまった。これが僕の体験した奇妙な物語の始まりだった。

電話を消す

悪魔が最初に消すことを選んだ対象は電話であった。僕は戸惑いを感じつつ「例えば電話が消えたらどうなるのか」と質問しようとした。しかし、悪魔は「例えばじゃなくて消すんだよ」と語気を強めたため、僕は委縮して言い返せなかった。僕と見た目は同じなのに、悪魔の性格は全く僕に似ていない。明日には消えてしまう電話で最後に話す相手に僕は悩んだ。母は数年前に他界。父にはそれから疎遠になってしまい連絡しづらかった。そのため僕が電話を使って最後に会話する相手として選んだのは数年前に分かれた元彼女だった。突然のことだったが、電話口の元彼女と直接会って話をする予定を立てた。久しぶりに会った彼女は、付き合っていた時に住み込みで働いていた映画館に未だに勤めていた。元彼女の勤める映画館の前で待ち合わせをした。会ってみて顔を合わせるとなかなか話が始められない僕に対して、元彼女は「なぜ電話してきたの」と問いかけた。僕は「例えば世界中から電話が消えるとして最後に誰にかけるか、ということでかけた」と正直に話した。しかし、元彼女は笑いながら「たとえ話をしないと話ができないところが変わってない」と答え本当に電話が消えるとは考えていない様子だった。喫茶店へ移動して話の続きをした。元彼女と知り合ったきっかけは、僕が家で映画鑑賞しているところにかかってきた間違い電話だった。僕は人と顔を合わせて話をすることが苦手だ。彼女との交際中もデートでは話がはずまなかった。なのでデートから帰ると電話をして沢山の話をした。その思い出が蘇る。元彼女は嬉しそうに思い出話をしていた。別れ際に元彼女が「さっきのたとえ話だけど、電話がなくなるのは嫌だな」と僕に伝えた。僕は彼女に病気のこと、余命のことを伝え家に帰った。元彼女は帰ると1通の手紙を取り出し、それをポストへ投函した。僕は家に帰るために路面電車に乗っていて、そこへ悪魔が現れた。悪魔は有無を言わさず、電話を消してしまう。僕の手元から携帯電話が溶け出すように消えていく。携帯電話会社の店舗も次々と姿を変え文房具屋に変わってしまう。しかし、その不可解な出来事を前に周囲の人々は何事もなかったかのような様子であった。電話がなくなったことに気が付いていないようである。僕は慌てて先ほど別れた元彼女の住む映画館へ向かった。映画館へ到着し元彼女の手を取ると、元彼女は僕に対して初めて会う人のような態度とった。ここで僕は知った。世界から電話を消すということは、電話に関係した思い出なども全て消えてしまうということ。僕と元彼女の出会いのきっかけは間違い電話であったため、今この時点で僕と元彼女は出会ってすらいない関係性になってしまった。

映画を消す

電話が消えたことによる影響に対し落ち込むことしかできない僕のそばにまた悪魔が現れた。時計が消えたことで得られる命は1日分。また次の日を生きるために僕は繰り返し世界から何かを消さなければならないのだ。悪魔が次に消すことを選んだのは映画であった。電話が消えた世界を経験した僕は気が付いた。映画は元彼女との関係だけでなく、唯一の親友「ツタヤ」との関係において重要な影響を与えたものである。ツタヤは大学の休み時間に1人で熱心に「キネマ旬報」を読んでいる変なやつだ。しかし、そんなツタヤが気になって僕の方から声をかけたところから僕達の交友関係が始まった。ツタヤは映画の話となると熱がこもって少しめんどくさい感じになる。ツタヤは僕が見るべき映画を選んで感想を求めた。その貸してくれる様子がレンタルビデオ店のツタヤを連想させて、本名はタツヤだがツタヤと呼ぶことにした。そして、毎日のように違うDVDを僕に貸して感想を求めた。ツタヤは「映画は無限にある。だからこの関係も永遠に続く」と僕に言った。そんなやりとりが社会人になって30歳になる今でも続いていた。ツタヤはレンタルビデオショップで働いている。僕はツタヤに会いに行った。そこで僕は「最後に何を観ればいい」とツタヤに問いかけた。ツタヤは「この関係はこれからも続いていくから最後なんてない」と言った。曖昧な言い回しでは伝わらない。僕は僕の命の最後のことをツタヤに伝えた。話を聞いたツタヤは僕が帰った後に店内のDVDラックを引っ搔き回し、僕が最後に見るべき1本の映画を探していた。帰り道に僕のもとに悪魔が現れた。僕は悪魔に映画以外のものではダメかと交渉した。しかし、映画が消えても誰も困らないという悪魔の主張に反論しきれないまま、消されてしまう。悪魔は約束通りに映画を消した。ツタヤの勤めるレンタルビデオショップは本屋に、元彼女が住み込みで働いている映画館は更地になってしまった。元彼女はどこにいるか分からない。僕はツタヤのもとへ急いだ。しかし元彼女の時と同様に、ツタヤは僕のことを知らない人になっていた。

時計を消す

物語は一変して僕の大学時代の話になる。その日、僕は元彼女とブエノスアイレスへ旅行に来ていた。旅行中に僕たちはトムさんという日本人バックパッカーと知り合いになった。一緒に観光し、食事をして話をすることで僕たちは親睦を深めていった。僕たちはトムさんの「時間から逃げている」という価値観に惹かれていた。またいつか出会えると信じ次の土地へ旅立つトムさんを見送った。しかし、そのすぐ後にトムさんは僕達からでもわかるくらいに近い距離で車にはねられて死んでしまう。僕たちは世界からトムさんが消えても何も変化がないことに衝撃を受けた。元彼女はその事実に嘆き、悩み、葛藤の中で滝に向かって「生きてやる」と叫んだ。僕はその後ろで何も言えず佇んでいた。旅行帰りの道中も僕たちは思い出話に花を咲かせることもできずに沈黙したままであった。世界から時計の存在自体も、時計にまつわるトムさんとの過去の思い出も一緒に消えてしまった。また、父の経営する実家の時計店も一緒に消えてしまった。

猫を消す

家に帰ると悪魔が飼い猫の「キャベツ」を撫でながら「次に消すのは猫だ」と決めた。この奇妙な日々が始まって以来、僕はよく昔のことを思い出した。元彼女と会った時に思い出したのは、小さいときに僕が捨て猫を発見し拾って家へ持ち帰った思い出だ。母親は猫アレルギーであったが飼うことを許してくれた。猫の名前はレタス。入っていた段ボール箱から名前が決まった。猫を消すことになり、さらに記憶が蘇る。寿命のためかレタスが弱ってきた時のことだ。同時に母も病気を患ったことを僕に伝えた。レタスはご飯もろくに食べられなくなり、亡くなってしまう。その後、母も病床に伏してしまう。そんな時にやってきたのがキャベツだった。家の庭から猫の鳴き声がして母が見に行くと、そこには段ボールに入った捨て猫がいた。母が嬉しそうに抱きかかえているところに僕が居合わす。父親が横を通り段ボールに書かれたキャベツの文字を一瞥して「今度はキャベツか」と言って名前が決まった。そのまま旅行の思い出が蘇る。父と母とキャベツと旅行に来た僕達だが予約していた宿が何かの手違いで満室になってしまっていた。医者に無理を言って母と旅行に来ていたため何とかして宿を探そうと父と走り回った。やっとの思いで見つけた宿で母が僕に何か手紙を渡そうとするが遺書のように思える手紙を受け取ることができなかった。
ふと目を覚ます。寝ていたようだ。周りを見渡すとキャベツがいない。僕は慌てた。大雨の中でもなりふりかまわずキャベツを探し回った。途方にくれて家に帰ると玄関にキャベツがいた。抱きかかえて家の中に入ろうとするとポストに1通の手紙があった。それは亡き母からの手紙であった。そこには遺言などではなく、僕の良いところを書き連ねた愛の言葉が書かれていた。僕の中で冬の海辺の思い出が蘇る。僕は母に伝えきれなかった感謝の気持ちなどの後悔を吐露した。そんな僕に対して母は「しっかりしなさい」と言って、キャベツを僕に託した。手紙を読んで思い出が蘇った僕は玄関で1人泣いていた。部屋に入ると、あの海辺での僕と母の写真を見返す。全く焦点の合っていないブレブレの写真だ。悪魔が現れる。僕は悪魔に猫は消さないことを伝えた。そして、僕は悪魔に感謝した。僕は人生においてかけがえのないもに気が付けた。自分の最後が幸福なものであることにも気が付くことができた。そして「あなたは僕なんですよね」と悪魔に言う。悪魔は「ありがとうで終わる最後も悪くない」と言った。あの焦点の合ってない写真。あれは母の死に耐え切れずに手が震えたまま父が撮影した写真であった。

エピローグ

朝起きると僕はキャベツに餌をあげた。キャベツにあげる最後の朝ごはんだ。元彼女に会いに行った。母からの手紙は元彼女が送ったものだった。母は僕が本当に困ったときに、手紙が僕のもとに渡るように元彼女に預かってもらっていたのだった。
ツタヤに会いに行った。親友を与えてくれた映画への感謝の気持ちをツタヤに向けて伝えた。ツタヤは柄にもなくボロボロ泣いていた。そして、最後に父の時計店へ向かった。

『世界から猫が消えたなら』の登場人物・キャラクター

主人公

僕(演:佐藤健)

本作の主人公。佐藤健によって1人2役で演じられた。郵便局員として働く30歳。一人暮らしをしていて猫を飼っている。母は数年前に他界。以来、実家に住む父とは連絡を取っていない。脳腫瘍が見つかり余命宣告をされ、さらに悪魔から翌日には死亡することを明かされる。しかし、悪魔からの「世界から何かひとつ、ものを消すことで、1日の命をあげよう」という契約を了承することで寿命を延ばす。世界からものが消えるのと同時にそれに関連した人間関係なども消えていくことで大切なものに気付かされていく。

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