ギルバート・グレイプ(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『ギルバート・ギレイプ』とは、原題は『What’s Eating Gilbert Grape』で、同名小説の映画化。ジョニー・デップと、レオナルド・ディカプリオが共演している、1993年のアメリカ映画である。
知的障害を抱えた弟アーニー(レオナルド・ディカプリオ)と、夫を亡くした事で過食症となり、病的な肥満になってしまった母親。
退屈な田舎町で家族を支えるギルバート(ジョニー・デップ)が、ある日ベッキーという女性と出会うことで自分自身を見つめ直し、心の揺れ動きと成長を描いた物語。

『ギルバート・グレイプ』の概要

『ギルバート・グレイプ』とは、知的障害者の弟を持つ青年の葛藤と成長を描いた1993年公開のアメリカ映画。
主演は『パイレーツ・オブ・カリビアン』のジョニー・デップと、『タイタニック』のレオナルド・ディカプリオ。

アイオワ州のエンドーラという、「音楽のないダンスのような町」で生まれ育ったギルバート・グレイプが本作の主人公。
10歳までもたないと言われていた知的障害をもつ弟の面倒を見ている。
弟はその年を超えて18歳の誕生日を迎えるが、医者は「その先はない」と言う。

父親が17年前に自宅の地下で首を吊り亡くなった事がきっかけで母親は過食症となり、歩くのも困難なほどの肥満体形となってしまった。
母親は7年もの間、一歩も外へ出ていない。

そしてギルバードも、どこへも行けない、と思っている。
何もない田舎町で小さな食料品店で働き、日々退屈に淡々と、時には葛藤をしながら過ごしていた。
家族を残してどこかへ行く訳にもいかず、弟のアーニーの面倒を見るのは自分しかいないからだ。

姉のエイミーは小学校の食堂で働いていたが火事に遭い、失業中。料理が得意で、グレイプ家の母親代わりの存在。
妹のエレンは高校1年生の反抗期。

ギルバードは自分の人生そのものを諦めたように過ごしながら、人妻であるベティと関係を持つなどして、なんとか心のバランスを保っていた。
そんな中、ベッキーという女性と出会う。
彼女は祖母とトレーラーで世界中を旅していた。その道中に車が故障し、ギルバートの町に一時滞在する事になったのだ。
その彼女との出会いが大きな転機となり、ギルバードははじめて、「自分がどうしたいのか」を考えるようになる。

『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』でその名を世界に知らしめた、スウェーデン出身のラッセ・ハルストレム監督の作品。特殊な撮影方法を使わず、派手な展開や起伏はないが、小さな田舎町の日常、そこで暮らす人々の心の機微を繊細に描いている。原作はアメリカ純文学だが、ヨーロッパ映画のような余韻の深い作品。

どこへでも行けるトレーラーハウスと、呪縛の象徴の家が対となっているような演出がなされる。
ギルバート演じるジョニー・デップの、表情だけですべてを語るような演技も見どころの一つだ。
知的障害という難しい役どころを演じたレオナルド・ディカプリオの演技も賞賛の声が高く、本作でナショナル・ボード・オブ・レビュー賞を受賞し、アカデミー賞にノミネートされている。

『ギルバート・グレイプ』のあらすじ・ストーリー

毎年通過するトレーラーハウスを楽しみにしているアーニー

道路を走るトレーラー

ギルバートが住んでいる町には毎年トレーラーハウスが道路を走る。弟のアーニーはそれを楽しみにしていている。
「ギルバート!来たよ!見て!」 アーニーは嬉しそうだ。
ギルバートは、彼らは「ただ通り過ぎて行く」だけだ、と思う。

夫の自殺が原因で過食症となり7年間自宅に籠り続けている母(ボニー)と、母親代わりとなっている姉(エイミー)、何かとギルバートに反発する妹(エレン)の4人家族。
10年ももたないと言われていたアーニーは18歳の誕生日を迎えようとしており、ギルバート家は誕生日パーティーの準備をしていた。

アーニーは木に登り、ギルバートがアーニーを探すという遊びが大好きだった。
「アーニーはどこだ?って言って!」と、よくギルバートに言う。そして目の前に飛び降り、ギルバートを驚かすのだった。

重い知的障害を抱えた弟を、ギルバートは食料品店で働きながら毎日世話をしている。鬱屈した日々を過ごしながら、客でもある人妻(ベティ・カーヴァー)と関係を持ったり、ボニーの姿を隠れ見ては冷やかす近所の子供達に、わざとよく見えるように自ら窓を開けたりなどして、開き直りながら自分を保とうとしている。
そんな様子のギルバートに友人のタッカーは、「そういうのはよくないよ」と窘める。
彼は電化製品や家の修理などの仕事をしていて、ギルバートの家の補強や修繕をしてくれている。

ギルバートの日々の生活

ギルバートが働く食料品店

ギルバートはアーニーを連れ、職場である食料品店に通っている。店主も、アーニーに良くしてくれている。
近所に食料を配達しながら、人妻であるベティ・カーヴァーと関係を持つ。ベティの夫は保険会社を経営していて、ギルバートとも顔見知りだ。

ベティの家に入る際、アーニーを車で待たせていたのだが、ギルバートが戻るとアーニーの姿はすでになかった。
アーニーは、目を離すとすぐ立ち入り禁止の給水塔に登ってしまうのだが、今度もそうだった。
警察からの説得には応じないアーニーだが、ギルバートがアーニーの興奮状態に寄り添いながら楽しく歌い、話しかけたら、アーニーは素直に梯子を下りて行った。
ギルバートはアーニーを優しく抱きとめ、これで最後にしますと何度も警察に謝る。

そんな様子を興味深そうに見つめる一人の女性がいた。

ベッキーとの出会い

旅行中にトレーラーの故障で、ギルバートの住む町で足止めされていた

祖母と旅をしている途中にトレーラーが故障してしまい、修理に必要な部品が届くまでギルバートの住む町に滞在する事となったベッキー。
ギルバートが働く店へ立ち寄り、買い物をトレーラーまで配達してほしいと頼む。
ベッキーは、アーニーを特別扱いする事も偏見を持つ事もなく、常に対等に接していた。

トレーラーに到着し、買い物袋を落としてしまうアーニー。ギルバートはしきりに謝罪するが、「謝らないで」とベッキー。
ベッキーはアーニーに「悪いと思う?」と尋ねる。
首を振るアーニーにベッキーは、「そうよね。誰も悪くないわ。だから謝らないで」と言うのだった。

ギルバートに起こる問題の数々

転んだアーニーを心配するギルバート

ギルバート家は、間もなく迎えるアーニーの18歳の誕生日パーティーの準備について話し合っていた。
来客について、出す食事について話している途中、エレンが口に食べ物を頬張りながら話しているのをギルバートが咎めた事がきっかけとなり、口論が起こる。
それを止めようと母ボニーが立ち上がり制した事で、ギルバートは床が抜けそうになっている事に気付く。
太りすぎた母の体重を支えていた床に限界が来ていたのだ。

友人のタッカーを呼んで地下室の柱の補強を頼むギルバート。
作業中、タッカーはギルバートを地下に呼ぶがギルバートは地下室に入るのを拒む。なぜならそこは父親が自殺を図った場所だからだ。
その事に後から気づいたタッカーは、ギルバートに謝る。

ある日、またしてもアーニーが給水塔の梯子を登ろうとし、エレンがそれを必死で止めていた。
何度止めても梯子に向かって走るアーニーが転んでしまい、手荒に連れて帰ろうとするエレンをギルバートが発見し、エレンにきつく叱る。
ケガをしたアーニーにギルバートは、「誰かがお前を傷付けようとしたらすぐに俺に言うんだ。やっつけてやるから。何でか分かるか?」と問いかけ、「ギルバートはお兄ちゃんだから」と、アーニーは答える。
「その通りだ。誰にもお前はいじめさせない」とギルバートは優しくアーニーに言い聞かせた。

徐々にベッキーに惹かれていくギルバート

ベッキーに会いに行くギルバート

アーニーにいつも優しいギルバートであったが、心のどこかに鬱屈とした気持ちを抱えていた。
そんなギルバートにとって、人妻のベティとの関係は唯一の刺激であったが、だんだんベティへの興味が薄れ始め、ベッキーのいるトレーラーに顔を出すようになる。
ベッキーの祖母は彼を優しく受け入れてくれ、お茶を振る舞ってくれた。

祖母がベッキーの容姿を褒めた後、二人だけになった時ベッキーはギルバートに語る。

「私は外見の美しさなんかどうでもいいの。長続きしないもの。いずれ顔に皺ができて白髪もできる」
「『何をするか』が大事なのよ。あなたは何をしたい?」

ギルバートは、ここでは何もする事がない。と答える。「何かひとつくらいあるはずよ」とベッキー。
ギルバートは結局、ただ微笑むばかりで何も答えられなかった。

二人は町でアイスを食べたり束の間のデートを楽しむが、その様子をべティが偶然見てしまい、焦りと嫉妬に駆られるのであった。

二人で一緒に夕日を見ている中、「夕焼けって素敵ね。見ているうちにゆっくり変わっていく。空って大好き。広くて、果てしない」とベッキーは言った。
「そうだな。とても大きい」と、ギルバート。
するとベッキーは、「『大きい』なんて言葉、空には小さ過ぎるわ」と笑った。

ギルバートは、家の用事を済ませてくるから少しここで待っていてほしいとベッキーに言い、家に戻る。
家の用事とは、アーニーをお風呂に入れる事だった。ギルバートの役目なのだ。
もう少しベッキーと一緒に居たいギルバートは、「お前はもう大人なんだから、風呂に入るくらい自分で出来るよな?」と言い、自分で体を洗い、タオルで拭くよう伝える。
そしてアーニーを浴槽に入れたまま再びベッキーのいる場所に戻り、心休まる時間を過ごす。

一晩中浴槽に浸かっていたアーニーを抱きしめ謝るギルバート

ベッキーを送って家に帰り、朝目覚めて洗面所に行くと、冷え切った浴槽の中で震えているアーニーを見て驚く。
アーニーは一晩中そこにいてギルバートを待っていたのだ。
すぐに駆け寄りタオルで体を包み何度も謝るギルバート。「ごめんよ。ごめんよアーニー許してくれ」。

その事を知った母ボニーは、一体どういう事なのか説明してくれとギルバートに詰め寄る。
「この子が18歳になるのを見たいってのは無理な頼みなのかい?」 「そんな事ないよ」とギルバート。
「最近のお前はどうかしている。いったい何を考えているの?」とボニーは責め立てるが、ギルバートは「悪かったよ」としか言えないのであった。
「謝って済む事じゃない。もっとしっかりしてくれなきゃ」と、アーニーを溺愛するボニーは、ギルバートに注意をする。

アーニーはこの日を境にお風呂は溺れてしまうもの、危険なものと認識してしまい、以後極端に恐れるようになった。

ベティとの決別

ある日の仕事中、ギルバートは店主から「配達の注文が来ている」と言われ、依頼先へ向かう。
そこはベティの家だった。
ベティは、自分は調理中で手を離せないからこの番号に電話をかけてほしいと頼む。そして、「昨日見かけたわよ」と不敵な笑みを浮かべた。
電話口に出たのは、ベティの夫のケン・カーヴァーだった。
驚くギルバートだったが、なんとかして会話を続けていたら、話があるからすぐに来てほしいとカーヴァーに言われる。家を出ようとするギルバートに、「あの娘の所へ行くの?」とベティが言った。
「君の旦那に呼ばれたんだよ」と言うギルバートだったが、ベティは「出て行ったら許さない」と、平常心を失っていた。

カーヴァーの勤務先の保険会社に向かうギルバート。
ベティとの関係を知ってか知らずか、カーヴァーはその事には触れず、ギルバートが医療保険や生命保険に入っていない等、身辺について案じていた。
そんな中カーヴァーにベティから電話が来る。ベティのただ事ではない様子にカーヴァーは焦り、ギルバートに家まで送ってくれと頼む。

ベティの家からは煙が出ていて慌てるカーヴァーだったが、煙はキッチンからで、クッキーの焼き過ぎが原因だった。
家の前に憔悴しきった様子で座り込むベティをよそに、車を出発させようとするギルバート。
それに気付いたベティがギルバートに駆け寄り言い放つ。「私はどんな男も選べたのよ。だけどあなたを選んだ」。
ギルバートは、「どうして俺を?」と問いかける。
「あなたはずっとここにいるから。あなたならこの町から出て行かないから」と答えるベティ。

ギルバートはやりきれず、ベティの家を後にした。

ケン・カーヴァーの突然の死

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