透明なゆりかご 産婦人科医院 看護師見習い日記(漫画・ドラマ)のネタバレ解説・考察まとめ

『透明なゆりかご 産婦人科医院 看護師見習い日記』は、作者:沖田×華のアルバイト先での実体験に基づく、1997年頃の産婦人科医院を舞台とした医療漫画作品。漫画家として活躍している作者が、看護師を目指していた時から考えている“命とは何か”という永遠の課題に真剣に向き合い、様々な命の物語を描く。“輝く命”だけではなく“透明な命”もある。時には、“輝く命”として産まれても“透明な命”になることもある。どんな命でも同じ重さがあり、意味があるという“命の尊さ”を考えさせられる作品である。

『透明なゆりかご 産婦人科医院 看護師見習い日記』の概要

ドラマ『透明なゆりかご』

『透明なゆりかご 産婦人科医院 看護師見習い日記』は、作者が見習い看護師としてアルバイトをしていた頃の体験をもとに、小さな命の“真実”が描かれる産婦人科医院の物語。作者の沖田×華は数多くの発達障害と共生し、映像記憶などの持ち主だと公表している。「Kiss PLUS」(講談社)2014年1月号より連載を開始し、同誌の休刊に伴い「ハツキス」(講談社)に連載が移された。第42回講談社漫画賞(少女部門)を受賞している。

2018年7月には、『透明なゆりかご』のタイトルで、NHK総合「ドラマ10」にてテレビドラマ化される。脚本は安達奈緒子。主演は清原果耶が務め、原作者をモデルにした「青田アオイ」を演じる。
ギャラクシー賞では2018年9月度月間賞、第56回(2018年度)テレビ部門 奨励賞をそれぞれ受賞。
コンフィデンスアワード・ドラマ賞では2018年7月期の脚本賞に安達奈緒子、新人賞に清原果耶が選ばれる。また、年間大賞2018でも新人賞に清原果耶が選ばれる。
平成30年度(第73回)文化庁芸術祭 テレビ・ドラマ部門大賞(第1回「命のかけら」、第2回「母性ってなに」)を受賞。
第45回放送文化基金賞 番組部門 テレビドラマ番組 奨励賞(第1回「命のかけら」、第2回「母性ってなに」)を受賞。
第35回ATP賞テレビグランプリ(第1回「命のかけら」、第2回「母性ってなに」、第6回「いつか望んだとき」、第9回「透明な子」)では、ドラマ部門 最優秀賞、グランプリを受賞。
東京ドラマアウォード2019では、連続ドラマ部門 最秀賞、主演女優賞に清原果耶、脚本賞に安達奈緒子がそれぞれ選ばれる。

作者である沖田×華が高校生の時に、“見習い看護師”としてアルバイトをしていた産婦人科医院が舞台。先生から90年代の日本の3大死亡原因を聞かれ、教科書通りの答えを出す×華。しかし、教科書通りではない本当の第1位は、“アウス(人工妊娠中絶)”だった。産婦人科医院では静かに消えていく命のお世話をすることも大切な仕事である。時には中絶手術をしていた分娩台で、新しい命が喜びに包まれながら産まれる。待ち望まれた命、望まれず消えていく命、産まれたくても産まれることのできなかった命、どんな小さな命も重さは同じで大切なもの。そんな様々な「命のあり方」を考えさせられ、心に響く物語である。

『透明なゆりかご 産婦人科医院 看護師見習い日記』のあらすじ・ストーリー

透明なゆりかご 1巻

『命のかけら』

母親の強引な勧めにより、主人公のアルバイトが決まる。

准看護学科のある高校に通っていた作者:沖田×華(以後:×華)が、母の少し強引な勧めで“見習い看護師”として、産婦人科医院でアルバイトをすることになった。戴帽式も済んでいない見習いの×華は、三角巾をつけて簡単な雑用と介助をすることになる。
アルバイトを始めたばかりの頃、貧血で倒れた看護師の代わりに、急遽アウス(人工妊娠中絶)の処置の手伝いに入ることになった。淡々と準備をする先生から、90年代の死亡原因の1位はアウス(人工妊娠中絶)であることを知らされる。異様な静けさの中、小さな命は消えていった。
まだ人の形になっていない、命のカケラを集めることも産婦人科医での大切な仕事だ。ついさっきまで生きていたカケラたちは小さなフィルムケースのような容器に入れられ、まとめて業者によって火葬されるのだ。そのうち慣れるかもしれない作業だが、おめでとうと言われない命に密かに別れを告げる×華であった。

陣痛の痛みに苦しむ妊婦の声が響き渡る病院内。立ち会いをする予定の旦那さんが病院に到着するまで、×華が妊婦に付き添うことになる。壮絶な痛みによって、不安でマイナス思考になる妊婦を励ましながら命の誕生を待ち構える。命が静かに消えていった分娩台で、今度は新しい命が産まれた。ハッピーバースデーの音楽が流れ、温かな空気に包まれると×華の目には涙が。
消える命も、産まれる命も同じ重さがあると感じる×華は、消える命にも外の世界を一度見せてあげてから業者へと託すのであった。

『野良妊婦』

目を離した隙に逃げ出した田中さんを捜索する。

×華がアルバイトを始めてから1週間。かけこみで病院にきた“ワケアリ”妊婦「田中さん」が長引く分娩に耐えていた。田中さんには糖尿病の持病があり、そのことが原因でもあり分娩が長引いていた。産まれてきた男の子の産声は弱く、田中さんは不安を感じる。先生は大丈夫と言うが、表情は固い。田中さんの不安は的中していたのである。男の子の赤ちゃんはDM児(新生児糖尿病)だった。
2時間は絶対安静の指示が出ている産後直後、田中さんが病室からフラフラと出てくる。その姿を×華が発見し安静を促すも、田中さんは電話をかけたいと言う。ほんの少し目を離すと、田中さんは忽然と姿を消したのであった。カルテに書かれた連絡先は全てデタラメでどこにも繋がらなかったため、警察に届けを出すことに。
×華が赤ちゃんの様子を見にいくと、赤ちゃんは元気がなく、ぐったりとしている。すぐさま糖液を与えようとするも吸てつ反応が弱く、命の危険を感じた。新生児は可愛いだけではなく、小さな命はあっという間に消えてしまうかもしれない恐怖を覚えた×華であった。
翌日、血糖値が安定してきた赤ちゃんを見て安堵していると、昨日逃げ出した田中さんと、赤ちゃんの父親と思われる男性が勢いよく乱入してきた。不倫関係であった2人は、人目をはばからずに激しく口論をする。「警察呼びますよ!!」と看護師に言われるとようやく落ち着く2人。怒鳴り合っているだけの2人は、この世に産まれてきてくれた赤ちゃんに祝福の言葉すらかけていなかった。
田中さんは、うつろな目で肩を落とす。×華が、赤ちゃんに会ってみないかと提案すると、田中さんは「別に どうでも…」と乗り気ではない。会ってみると、田中さんが想像していた赤ちゃんではなく、幸せを夢見た出産が悪い方向に向かうことを悲しんだ。しかしその時、赤ちゃんが田中さんの指をぎゅっと掴む。そっと抱きしめて赤ちゃんの重さ、匂いを感じながら何度も赤ちゃんに謝る田中さんであった。
田中さんは、不倫男との関係を振り返る。ただただ待たされて、それでも信じ続けてきたが、これからは赤ちゃんのために切り替えて頑張っていくことを決意した。
1ヶ月検診の約束をして、笑顔で退院していった田中さんは、その後姿を見せることはなかった。
その後しばらくして、×華は赤ちゃんの訃報を聞く。新聞に“添い寝中に窒息死した”と書かれていたそうだ。周囲は今までの田中さんの行動から虐待を疑うも、×華には虐待をしたとは思えなかった。夜中に泣いた赤ちゃんに、優しく母乳を与える田中さんの愛情に包まれて亡くなっていったと思いたかったのである。

『保育器の子』

保育器に入っている静ちゃん。

ある日、病院の裏口の前に紙袋が置かれていて、中には毛布に包まれた小さな赤ちゃんが入っていた。幸い暖かい日だったため命は助かる。赤ちゃんは身元がわかるまで、×華のアルバイト先で治療を受けることになった。
小さな赤ちゃんは黄疸が出ていて、アイマスクをしながら光線を浴びていた。赤ちゃんのアイマスクを外し、×華がミルクをあげようとすると、ぱちっとした目でまっすぐ見つめてくる赤ちゃんの姿に胸を打たれるのであった。赤ちゃんはとても大人しく“静ちゃん”と仮の名前を付けられ、病院の人気者になった。×華は、カワイイ静ちゃんを捨てた母親の気持ちが理解できず、静ちゃんを幸せにしたい気持ちがどんどん大きくなっていった。
1ヶ月、懸命の治療によって黄疸も良くなり、体重も徐々に増えて安堵する。すると両親に連れられた高校生が来院した。その高校生は静ちゃんの母親だったのである。妊娠したことを親に相談をすることができずに、1人で出産したそうだ。しかし、産後の体は正直で、高校生は出血が多く貧血を起こしていた。そして、別の産婦人科を受診すると経産婦だということが母親にバレてしまったのである。ゴミに出してしまおうと思ったが、バレたくないから自転車を漕いで、隣町の産婦人科に捨てたと言うのだ。「こんな子いらない!知らない!!」と取り乱す高校生。しかしその後、静ちゃんの体重が正常値になり次第、両親に引き渡されることが決まった。
引き取られた後、どうしても高校生が許せなくて、×華が代わりに育てることを伝えに隣町まで自転車を漕いだ。ふと×華は思った。捨てるところならいくらでもあるのに、なぜ産後にこんな遠いところまで一生懸命自転車を漕いで“産婦人科”に捨てたのだろうか。無意識の愛情が“生きてほしい”と願っていたのかもしれないと、×華は涙を流すのであった。

『胎児の光』

胸の内を話しながら、涙を流す大宮さん。

×華はいつも通り子守唄を歌いながら、決められた手順で消えてしまった命を送り出す。
朝イチで中絶手術を終えた患者の様子を病室に見にいくと、ベッドの中にはもう一1人。術後にも関わらず彼氏とイチャイチャしていたのだ。いくらでも避妊はできたのに、妊娠・中絶をすることは自業自得だとかつての×華は思っていた。しかし、それだけが全てではないことに気がつかされる出来事が起こるのであった。
ある日、中学生時代の後輩の島っちと駅前で偶然遭遇する。お互いの近況を話しながら、島っちの行き先を尋ねると、×華のあるバイト先の産婦人科に行くと言うのだ。幼そうな見た目の彼女は中絶を希望していた。話を聞くと、島っちの彼氏は妊娠の報告を受けると疎遠になっていったようだ。それでも“いい人”だと信じている。男は逃げ、女が全てを背負っていかなくてはならないこともある。
またある日、声を荒げて体調不良を訴える女性が来院する。2ヶ月前に経済的な理由で第2子を中絶した大宮さんだ。検査には異常がないものの痛みが続くため、医療ミスを疑っている。精神的な不調から痛みが起こることもあるため、看護師が専門の病院を薦めるも「私がおかしいって言うの!?」と大宮さんの逆鱗に触れる。部屋から飛び出した大宮さんは、たまたま近くにいた男の子を蹴り飛ばして怪我をさせた。その後、逃げた先では大きな石を保育園児に振りかざすのであった。間一髪、×華が駆けつけ保育園児は助かった。精神的に追い詰められていた大宮さんは全てを憎く感じるようになってしまっていた。本当は産んであげたかったのだ。経済的に不可能で、中絶を決断したのは自分だけど、旦那さんに“産んでほしい”と言ってもらいたかったのである。
大宮さんは事件のこともあり、引っ越していった。島っちも中絶手術が終わったことを報告しに来てくれてた。いつも通りに見えた島っちだが、心の傷は簡単には癒えない。より良い人生が送れるように願う×華だった。

『透明な子』

母親と共に産婦人科医院に来院したカナちゃん。

×華が産婦人科医院でアルバイトを始めて3ヶ月が経った。その頃、友達のカナちゃんがお母さんと思われる人と共に来院する。カナちゃんに話しかけたいけれど、プライバシー保護の観点から、事務的なことや分娩以外では話しかけられない決まりがあった。カナちゃんは小学校5年生の女の子で、×華とは本屋でよく会うことで仲良くなった。カナちゃんの家庭環境は複雑で、両親は離婚・再婚している。しかし、今の父親とはうまくいっているようだった。母親がよく笑うようになったことをカナちゃんは嬉しく思っていたのだ。
×華が袋に入った衣類を触ろうとすると、看護師に止められる。性被害にあった傷が発見されたハルちゃんが当時身につけていた衣類は、重要な証拠になると言うのだ。犯人は誰かわかっていないということだが、家族の希望で警察には連絡しないことになっていた。
5日後、カナちゃんが病院に行ったことを知った父親が怒鳴り込んでくる。何かあったら父親に知らせてくれと言いながら病院を後にした。その間もカナちゃんは犯人の名前を黙っていた。もしかしたらいつかカナちゃんが話せるようになって、訴えを起こすときの証拠になるように、師長は細かくメモをとって記録していたのだった。
カナちゃんの検査結果が出て、慢性的に性被害を受けていることがわかった。×華はカナちゃんが出していた小さなSOSを思い出したのである。本屋であった時に、カナちゃんは真剣に男女の体について書かれている本を読んでいたのだ。カナちゃんは1人で思い悩んでいたのかもしれない。看護師たちに、もしかしたら身近な人が犯人かもしれないと×華は話をしてみた。
×華は幼少期の自分の経験に重ねた。信頼していた知り合いのお兄ちゃんから遊びの延長で体を触られたりしていた。大人になってそれが悪いことだと気がついたのである。新生児室を眺めていたカナちゃんに、×華は過去の経験を話し、悪いことをする大人もいることを教える。すると、カナちゃんは「今のパパなの」と犯人を明かした。自分が我慢すれば家族が幸せでいれると思い、必死で耐えてきたのであった。再婚相手が連れ子に手を出すケースは決して珍しくないことなのである。意外にも身近な人が“犯人”になり得るのだ。

『母性について』

母性に溢れ、愛おしそうに赤ちゃんを抱く母親。

ある日、帝王切開を終えた産婦の永田さんが早々に転院した。産まれたばかりの我が子を「これは私の子じゃない!」と認めずに、他の新生児とすり替えようとしたのであった。永田さんは不妊治療を経て、赤ちゃんが産まれることを待ち望んでいたのに。母性とは一体何なのか考える×華。
そんな時、半年前に死産を経験した後藤さんが、診察室で妊娠報告を受けて喜んでいた。生まれる直前だった赤ちゃんの死因は不明で、取り出した時には普通の新生児と変わらなかった。今にも息をしそうなほど。悲しみで憔悴しきっていた永田さんは、病院を去るときに「…こんなにつらい思いするなら もう子供はいりません……」と話していた。どのような心境の変化があったのだろうか考える×華。
後日病院の外で後藤さんに会った。赤ちゃんが亡くなってから周囲から「残念ね…」「かわいそう」と言われるたびに、赤ちゃんの存在を否定されているように感じたと言う。しかし確かに存在していた我が子に対する愛情もしっかりと残っている。命の重さや大切さを赤ちゃんから教えてもらったからこそもう1度子供を作ろうと思えたと言うのだ。今度こそ元気に産んであげたいと願って。経過は順調で、元気な赤ちゃんを出産した永田さんは顔を真っ赤にして涙を流すのであった。

『小さな手帳』

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