火の鳥の名言・名セリフ/名シーン・名場面まとめ

『火の鳥』はあの『鉄腕アトム』を生み出した漫画界の巨匠、手塚治虫による『火の鳥(不死鳥)』を題材とした長編漫画である。日本の漫画文化を代表する作品の一つ。仏教の「六道輪廻」の考え方を軸に「死と再生」を主なテーマとした壮大なストーリーとなっている。
全12編ともなる独立したストーリーの舞台が過去と未来を行き来する独特な構成や、宗教思想と漫画の融合が当時画期的であり、現在でも数々の作品に影響を与え続けている。
この記事では、生命の本質や人間の業を説くような火の鳥の名セリフの数々を紹介する。

生命編の最後は主人公がクローン生産工場を自爆テロで吹き飛ばして幕を閉じるのだが、最後まで主人公が本物の青居だったのか、クローンだったのか読者にも分からない構成になっている。
台詞は彼を慕っていた少女が「かれは本物かい?クローンかね」と聞かれたときの少女の返答。最後まで本物とクローンを区別したがる者、クローンの「生命」をないがしろにする者に一喝する形でこの物語は終わる。

異形編

「あなたは残された二十年のあいだ 無限におとずれるすべてのものの命を救ってやることです それが出来ればあなたの罪も消えるでしょう」

火の鳥と左近介

異形編では、本来女性ながら男性(武士)として育てられた左近介が主人公である。
ある日左近介の父親は病に倒れる。戦を繰り返す残虐非道な父親を深く憎んでいた左近介は、父親を治療する予定の八百比丘尼がいる寺まで行って彼女を殺してしまった。左近介は帰ろうとするが、不思議な力に阻まれて寺から出られなくなってしまう。そうしている間にも八百比丘尼の治療を求めて来た人々が大勢寺を訪れ、左近介は八百比丘尼のフリをして治療を続けていく。この名言は、火の鳥が左近介を訪れて「あなたが寺から出られず長い間人々を救っているのは八百比丘尼を殺した罪滅ぼしなのだ」と聞かされるシーンのものだ。
異形編は特に読者が左近介に共感できるよう描かれている。火の鳥に八百比丘尼を殺したことを責められた左近介が「八百比丘尼を殺さなければ戦に復帰した父がもっと多くの人間を殺していた」と反論するのだが、それも正論とも言えるだろう。しかし、火の鳥にとっては生命は皆等しく平等であり、どんな事情があれども奪ってはならないということなのだ。

太陽編

「宗教とか人の信仰って みんな人間がつくったもの そしてどれも正しいの ですから正しいものどうしのあらそいは とめようがないでしょ」

太陽編は7世紀と21世紀の2つの時代を交互に描いている。主人公は輪廻転生しているため、どちらも魂で見れば同じ人物である。
7世紀、大陸から渡ってきた仏教が政治に利用されたことで広く浸透し、日本の土地神たちが忘れられつつあった。主人公・犬上は百済の王子であり、戦で負けたときに高句麗の兵士に狼の頭を被せられた。運良く生き残ったあとは狼の頭のためか、霊界と通ずるようになって神や妖怪の存在を見聞きできるようになる。土地神たちと関わるようになった犬上は、仏教の浸透を侵略と捉え、あらゆる方法で仏教を排除しようと奮闘する。
一方で21世紀の日本は火の鳥をご神体とする宗教団体「光」に支配されていた。主人公は反「光」の勢力「影」に所属しており、地下街に押し込められている「影」勢力を解放しようとスパイ・テロ活動に励んでいた。
7世紀、犬上は火の鳥と偶然出会う。犬上は土地神を救うように頼むのだが、火の鳥はこの名言を残し、さらに宗教それ自体は全て正しいが、悪いのは宗教が権力と結ばれたときで、その権力をなくすのは人間自身の力だと述べる。ここまで正しい心を持っている主人公には手を差し伸べてきた火の鳥が、唯一不干渉を明言した回である。
宗教戦争に対しどう対処していくかという問題には答えは出されなかったが、宗教それ自体は全て正しく、何を信じるかは個々の自由だとしている。

「わしはな 光にかわってあたらしい宗教をつくり上げる その宗教はわしがつくったのだ 全人類をわれわれに従わせるためにな!」

この台詞は、21世紀、遂に「影」の解放が果たされたときに「影」の司令官が言ったもの。
結局のところ宗教戦争はどちらかが勝利したとしても本当の意味での自由は手に入らず、人間はまた同じことを永遠と繰り返していくことを物語っている。

「私に背くことは天に背くことだっ ここに厳命するっ 私の神をあがめぬものは反逆罪とみなし断罪するぞ!」

こちらは7世紀の世界に出てきた大海人皇子の台詞である。大海人皇子も大友皇子との戦いによって勝利し、仏教を信じるよう強要されてきた人々を一度は解放したものの、21世紀の「影」の司令官と全く同じように自ら作った宗教を広めようとする。
火の鳥も作品の中で「宗教戦争はきりがない」と言っているように、人間はいつの時代も同じようなことをずっと繰り返していくのだ。この作品が描かれた当時の問題提起が今の時代にも当てはまるように。

「さあ行こう あの鳥の導く方に!私たちの世界へ!」

日本古来の神々から信頼を置かれ、土地神・狗族の長の娘マリモと結婚を誓い合った犬上だったが、7世紀では狼の頭が取れて人間の姿に戻ったことによって霊界の気配を感じることができなくなり、二人は離れ離れになってしまう。
21世紀で「影」のスパイとして活動していた主人公は「光」の女兵士ヨドミ(マリモの転生後)と恋に落ちるが、その後起こった「影」と「光」の戦争の時に「光」の基地に特攻して死ぬことになる。一方でヨドミは「光」の教祖によって不死の疑いをかけられ、真偽を確かめようとする教祖の部下の攻撃によって肉体を失った。
二人は魂の状態に戻り、火の鳥によって霊界に導かれるという希望に満ちた『火の鳥』ラストシーンでの名言だ。どんな悲惨なことになろうとも、人間がきっと最終的には良い方向に進んでいけるようにというこの作品に込められた願いが伝わってくる。

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