ハピネスチャージプリキュア！（ハピプリ）とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ハピネスチャージプリキュア！』の概要

『ハピネスチャージプリキュア！』（HAPPINESSCHARGE PRECURE!）とは、地球の全てを不幸で染め上げんとする悪の組織「幻影帝国」と戦う伝説の戦士プリキュアの活躍を描いたアニメ作品。
「女の子だって暴れたい」をテーマに続いてきた『プリキュア』シリーズの第11作目の作品であり、幼女向けということで恋愛描写を控えてきた同シリーズの中にあって「主人公たちの恋」を真正面から描いた挑戦的な内容で知られる。恋愛や人助けを必ずしも良いものとは描いていないことも特徴で、「誰かを愛するからこそ生まれる嫉妬」や「報われない想いが生む絶望」、「自分が救われたいがために"人を助ける”ことは本当の善行なのか」といったハードかつシリアスなテーマが盛り込まれている。

基本的なストーリーラインが重苦しい分、それを子供に感じさせ過ぎないために演出は明るく派手なものとなっている。「オシャレ」をテーマにした多種多様な変身フォームと、そこから繰り出される奇想天外な技の数々が毎回のように話題となり、特にロボットアニメの必殺技じみた主人公のダイナミックな戦法は目の肥えた視聴者たちから喝采を浴びた。
シリーズ10周年記念作品という側面も持ち、これまでの作品に登場したプリキュアたちが毎回冒頭でそれを祝うコメントを述べる演出が入っている。略称は「ハピプリ」だが、「ハピチャ」や「ハチャプリ」という呼称も存在する。

女王クイーンミラージュに率いられ、「不幸こそこの世の真理」と謳い、世界規模の侵略を続ける幻影帝国。地球の神ブルーに見出され、幻影帝国の野望を阻止するために戦う世界各国のプリキュアたち。その戦いは一進一退を続けるも、プリキュアを狩る強力な戦士ファントムの暗躍により、幻影帝国はじわりじわりとその勢力を広げつつあった。
人助けを信条とする愛乃めぐみ（あいの めぐみ）は、ひょんなことからブルースカイ王国の姫である白雪ひめ（しらゆき ひめ）と出会い、ブルーの導きによってプリキュアに選ばれる。ひめを始めとするプリキュアとしての仲間たち、幼馴染の相楽誠司（さがら せいじ）らと共に幻影帝国との戦いに臨むめぐみだったが、その胸に芽生えたブルーへの想いが彼女を惑わせ、苦しめていく。

『ハピネスチャージプリキュア！』のあらすじ・ストーリー

幻影帝国とプリキュアたちの戦い

ブルースカイ王国を占拠した謎の組織幻影帝国の女王クイーンミラージュは、「不幸こそこの世の真理、夢や愛情などただの幻」と唱え、世界各国への侵略を開始。彼らの操る怪物サイアークは人の感情を糧として生み出される存在であり、普通の攻撃を受け付けず、周囲一帯の環境をより"不幸"なものへと変える力を持っていた。
戦術兵器であると同時に戦略兵器でもあり、人間がいる限りいくらでも生み出せるサイアークの前に各国はほとんど打つ手が無く、後退を余儀なくされる。しかしまったく戦う術が無かったかというとそうではなく、地球の神ブルーによってその素質を認められた少女たちが伝説の戦士プリキュアへと変身する力を与えられ、幻影帝国との戦闘を開始する。

プリキュアはサイアークと戦い、その素体となった人々を解放し、同時に変異した環境を元に戻すことが可能だった。幻影帝国との戦いの最前線に立って戦うプリキュアたちは、やがて世界中の人々の希望となり、その活躍が報道されるようになる。
業を煮やしたクイーンミラージュは、配下のファントムという強力な戦士にプリキュアの排除を命じる。これを受けたファントムは、世界各地でプリキュアを打倒しては封印することを繰り返し、人類からサイアークに対抗する力を少しずつ奪っていく。ブルーと人々の懸命の努力によって危ういバランスで均衡が保たれつつも、幻影帝国はじわりじわりと勢力を広げつつあった。

キュアラブリーの誕生

日本のぴかりが丘に住む愛乃めぐみ（あいの めぐみ）は、人助けを信条とする中学生。幼馴染の相楽誠司（さがら せいじ）からは「危なっかしくて見てられないから程々にしろ」と言われつつ、毎日のように困っている人を見付けては自分を顧みずに手を差し伸べることを繰り返していた。
そんなある日、めぐみは宝石のような不思議な石を拾う。これはブルーが「プリキュアになる素質がある」と認めた少女にだけ渡す愛の結晶というもので、すでにプリキュアとして活動している白雪ひめ（しらゆき ひめ）ことヒメルダ・ウインドウ・キュアクイーン・オブ・ザ・ブルースカイが「これを拾った子が私の新しい仲間」と適当に放り投げたものだった。サイアークにさっぱり勝てないひめは、ブルーから仲間を作ることを勧められ、特別に新しい愛の結晶を与えられたのだった。もともとプリキュアに強い憧れを抱いていためぐみは、「ひめは困っているし、私が幻影帝国を追い返せばもっと多くの人を助けられる」と喜び、ひめと共にプリキュアになって幻影帝国に立ち向かうようになる。

ひめは幻影帝国に占拠されたブルースカイ王国の姫君で、普段はぴかりが丘にあるブルースカイ王国の大使館で暮らしていた。ここは現在のブルーの拠点の1つにもなっており、プリキュアとして活動するのに都合がいいことからめぐみもたびたび訪れるようになる。一方、「まためぐみが何かしている」と察した誠司も顔を出すようになり、めぐみがプリキュアになったことに驚きつつ、彼女たちをサポートしていく。
ひめがこれまで仲間を作れなかったのは、彼女が「ブルースカイ王国に封じられていたクイーンミラージュを解放してしまった張本人」という事情があるからだった。怖がりでお調子者と性格的には戦いに向いていないひめがプリキュアになっているのも、ブルーが大使館を拠点にしてサポートしているのも、「世界をめちゃくちゃにした責任が取りたい、取らせてほしい」と彼女が必死に懇願したのが理由だったのである。事情を知っためぐみは、ひめと共に幻影帝国の野望を打ち砕き、ブルースカイ王国を解放することを改めて決意する。

新たな仲間と揺れる想い

めぐみや誠司の幼馴染である大森ゆうこ（おおもり ゆうこ）は、めぐみよりかなり前からプリキュアとして活動していた。めぐみたちがプリキュアとして戦い始めたことを知ったゆうこは、自分から彼女たちに近づいてその正体を明かす。以前からの知り合いということもあってめぐみとゆうこはすぐに打ち解け、ひめも彼女の朗らかで優しい性格にあっさりと警戒心を解いて親しくなる。
氷川いおな（ひかわ いおな）もまた、彼女たちの周囲で活動するプリキュアの1人だった。彼女の姉もまたプリキュアだったが、ファントムに敗れて行方知れずとなってしまい、「クイーンミラージュが解放されたのが全ての原因だ」といおなはひめに強い憎しみを抱くようになる。しかしひめが本当にこれを反省していること、それを償うためにこそ向いてもいないのにプリキュアとして死に物狂いで戦っていること、そのために必死になって自分を助けてくれたことで和解し、めぐみたちとの共闘を承諾。4人のチームは「ハピネスチャージプリキュア」を名乗り、幻影帝国の魔の手を次々と打ち破っていった。

そんな中、めぐみはクイーンミラージュがかつてブルーの恋人だったことを知る。ブルーはかつてミラージュという少女にプリキュアとしての力を与えて闇の魔物と戦っていたが、「自分は神であり、特定の誰かを愛するわけにはいかない」との想いから彼女の恋心を拒絶したことがあった。恋敗れたミラージュは、その絶望につけこまれる形で何者かに闇の力を注がれてクイーンミラージュへと変貌。ブルーもまた本心ではミラージュを特別な存在だと認識していたが、「こうなってしまっては、神として手段を選んではいられない」と改めて彼女を討ち果たす覚悟を固めていた。
愛する者と戦う苦悩の中、自分たちにはそれを一切感じさせずに振る舞うブルーのことをめぐみは案じるようになり、その想いはやがて「自分がブルーの支えになりたい」との恋心へと成長していく。一方で「ひめが封印を解いてしまったのは、"誰かが助けを求める声が聞こえたから”だと言っていた。もしかしてクイーンミラージュの中にはまだミラージュの意識が残っていて、ブルーに助けを求めているのではないか。でもミラージュを助けることができたとして、その時自分の想いはどうなるのか」との悩みも抱えていく。

誰よりもめぐみを大切に想う誠司は彼女の恋に気付き、「めぐみが幸せになれるなら自分が報われなくてもいい」とこれを見守ろうとする。しかし誰に対しても優しく接し、同時に誰に対しても一定以上は歩み寄らず、心の奥底では今もミラージュを想うブルーに「この男に恋をしてもめぐみが報われることはないのではないか、このままではめぐみは失恋して傷つくだけなのではないか」と嫉妬と焦燥を持て余していく。

幻影帝国との決戦

ファントムを打ち破り、彼に封じられたいおなの姉も取り返しためぐみたちは、ついに幻影帝国の本拠地の攻略に乗り出す。かつてブルーやミラージュと一緒に闇の魔物と戦った妖精であるファントムは、これを阻止せんと彼女たちの前に立ち塞がるが、「あなたも本当はミラージュに元の優しい自分を取り戻してほしいと考えている」と指摘されて戦意を喪失。「クイーンミラージュを絶望から解き放ってほしい」とめぐみたちに頼み込む。
次々と現れる強敵を仲間たちに任せて先に進んでいっためぐみは、クイーンミラージュと対峙。クイーンミラージュはめぐみ個人への憎悪を剥き出しにして彼女に襲い掛かり、そのすさまじい力で圧倒する。しかし「あなたは今でもブルーのことを愛している、だからブルーの近くにいる私に嫉妬している」との本心を見抜かれて動揺し、常に側に置いていた鏡に操られるまま暴走を開始。激闘を制して追いついた仲間たちと協力してめぐみはこれを打ち破り、幻影帝国との長い戦いに終止符を打つ。

これまでの戦いの中で、「ミラージュの想いに真剣に向き合うべきだった」と自分の過ちを理解したブルーは、かつての姿と心を取り戻した状態で呆然とたたずむミラージュを抱きしめて「君を愛している」と告白。恋に敗れ、その絶望に付け込まれて暴走し、償い切れない罪を犯してしまったミラージュは、しかし"自分の想いは報われたのだ"と知って感極まり、愛する者の胸の中で涙を流す。
どこまでも身勝手で、どうしようもなく心震わされる光景を前に、「たった今、自分の恋は終わってしまったんだ」と知っためぐみだけは深い絶望に囚われていた。ミラージュに闇の力を注いだ鏡がいつの間にかどこかへと姿を消したことには、この時は誰も気付かなかった。

恋と愛の導く結末

ミラージュを操った鏡の正体は、地球とは別の星の神であるレッドだった。彼の星はあらゆる命が死に絶えた状態にあり、その絶望の中で未だに命溢れる地球を憎み、地球に住む人々とその神であるブルーを苦しめるためだけに全てを画策していたのだった。
ブルーとミラージュが結ばれたことで、めぐみが絶望の淵に追いやられたことを見て取ったレッドは、彼女を新たな傀儡にしようと考える。しかし必死になって自分を守ろうとしてくれる誠司を見て、めぐみは「初恋は報われなかったけど、自分には誠司やひめたちがいる。自分を大切にしてくれる人たちがいる」と危ういところで正気を保つ。これを見たレッドは標的を変更し、"大切なめぐみを守れなかった、傷つけてしまった"と自分自身に果てしない絶望を感じていた誠司に闇の力を注いで操り人形にしてしまう。

いつも見守ってくれた、どんな時でも味方でいてくれた誠司が敵になって自分を攻撃してくることにめぐみは混乱し絶望する。しかしひめ、ゆうこ、いおな、今まで共に戦ってきた世界中のプリキュアたちたちから「今まで誠司に助けてもらった分、今度は誠司を助けよう」と必死に励まされ、「誠司を失うなんて、そんなの絶対に受け入れられない」と奮起。当たり前だと思っていた誠司の優しさに改めて感謝している旨を告げ、どうか戻ってきてほしいと訴える。プリキュアたちの猛攻と、めぐみの懸命な呼びかけによって誠司は正気を取り戻す。
どれほど絶望を突きつけられても屈しないプリキュアたちにレッドは激昂し、彼女たちを直接排除しようとブルーの制止も聞かずに暴れ回る。しかしこれまでの戦いでいくつもの絶望を見て、自分でもそれを味わっためぐみは、「レッドを突き動かしているのも"自分の星を滅ぼしてしまった絶望”である」と気付き、これを癒すためにこそ彼の前に立ち塞がる。めぐみの真摯な想いはレッドの絶望をも砕き、彼は敗北を認めて拳を収める。

レッドと話し合ったブルーとミラージュは、彼の星を再生させるために尽力することを誓い、めぐみたちに後を任せて旅立っていく。ひめは「もう少しみんなといたい、卒業まで日本にいる」と大使館での生活を続行し、ゆうこは行き場の無いファントムを引き取って実家の弁当屋で働かせ始め、いおなは姉と穏やかな日々を過ごす。めぐみと誠司は相変わらずだったが、愛こそが何より深い絶望を生み出し、それを癒すのもまた愛であると学んだ2人は、以前より少しだけ互いへの距離を縮めたのだった。

『ハピネスチャージプリキュア！』の登場人物・キャラクター

プリキュアチーム

愛乃めぐみ（あいの めぐみ）／キュアラブリー

CV：中島愛

ぴかりが丘で暮らす中学2年生の少女。成績は中庸で運動も可もなく不可もなくといった程度だが、人助けを信条とする優しい性格で、困っている人を見掛けては自分のことを二の次にして手を差し伸べる。行動力と発想力は並みならぬものがあり、プリキュアチームの実質的なリーダーとして仲間を牽引する。
人助けに邁進しているのは本人の優しさだけが理由ではなく、「これといって長所の無い自分は、困っている誰かを助けるくらいしかできない」という自身の無さの裏返しでもある。物語序盤でブルーへの恋心を抱くが、幼馴染の誠司が自分をどれほど大切にしてくれているか、自分がどれほど彼の存在に救われているかは物語終盤までなかなか気付かなかった。

変身すると、赤を基調とする戦士キュアラブリーとなる。
プリキュアとしての経験は他のメンバーより浅いが、もともとプリキュアに憧れていたため密かに様々な技を考案しており、これを次々と発動。多彩な戦術と思い切りのいい行動で、一行の中核として戦い抜いた。

白雪ひめ（しらゆき ひめ）／キュアプリンセス

CV：潘めぐみ

ブルースカイ王国の姫君。本名はヒメルダ・ウインドウ・キュアクイーン・オブ・ザ・ブルースカイだが、あまりに長くて呼びづらいので、日本では自分の好きな童話から取った「白雪ひめ」で通している。ブルースカイ王国は幻影帝国に占領されてしまったため、普段はぴかりが丘にあるブルースカイ王国の大使館で過ごしている。
紛れもない貴人ではあるが、その性格はお調子者で内向的。我がままで騙されやすく、毒舌な上にダメだと思うとすぐに逃げ出す弱虫気質。しかし"王族の人間"としての覚悟と自覚はしっかり持っており、とても向いているとは思えないプリキュアになったのも「自分がクイーンミラージュの封印を解いてしまったのだから、自分が解決しなければ」との義務感が理由である。