HUGっと！プリキュア（はぐプリ）とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『HUGっと！プリキュア』の概要

『HUGっと！プリキュア』（はぐっと プリキュア）とは、全ての未来を消し去ろうとする悪しき組織と戦う伝説の戦士プリキュアの活躍を描いたアニメ作品。
『プリキュア』シリーズの第15作目で、略称は「はぐプリ」。キャッチコピーは「なんでもできる！なんでもなれる！ 輝く未来を抱きしめて！」。

プリキュアシリーズ15周年記念としてメモリアル的な立ち位置にある作品であり、同時にイジメやジェンダーなどプリキュアシリーズが今まで扱ってこなかったテーマを大胆に盛り込んだ意欲作。現実的な社会問題を扱っているだけあって比較的ハードでシリアスな物語になっているが、それだけに終わらないようキャラクターの多くは明るく快活な性格に設定されている。
本作では「未来への希望」と「未来への絶望」の対立を大きなテーマとしており、前者の象徴として主人公たちに「子育て」を経験させる試みが取られている。楽しいこともそうでないことも子供向けアニメとして描ける程度に描きつつ、一方で「ワンオペにならないよう見せ方を工夫する」といった現代風の育児の基本も視聴者に伝えている。また、少女の初恋、同性同士の友愛、親から子への愛など、様々な形の愛を丁寧に描写することで、「多様性」の大切さを説いているのも特徴である。

中学生の野乃はな（のの はな）は、転校初日に不思議な赤ん坊とハリハム・ハリーを名乗るしゃべるハムスターに出会う。赤ん坊に「はぐたん」と名付けてかわいがるはなだったが、彼女とハリーはクライアス社という悪漢たちに狙われており、その魔手はすぐ側にまで迫っていた。
クライアス社の操るオシマイダーという怪物からはぐたんとハリーを守ろうとしたはなは、明日を創る希望の力「アスパワワ」に導かれてプリキュアに変身する力を獲得。オシマイダーを撃退し、はぐたんとハリーを守り切る。次々と新手を繰り出すクライアス社に対し、はなは同じ力を得た薬師寺さあや（やくしじ さあや）や輝木ほまれ（かがやき ほまれ）と共に立ち向かい、時をも超える壮大な戦いに巻き込まれていく。

『HUGっと！プリキュア』のあらすじ・ストーリー

はぐたんとの出会い

中学2年生の野乃はな（のの はな）は、転校初日に不思議な赤ん坊とハリハム・ハリーを名乗るしゃべるハムスターに出会う。赤ん坊に「はぐたん」と名付けてかわいがるはなだったが、彼女とハリーはクライアス社という悪漢たちに狙われており、その魔手はすぐ側にまで迫っていた。
クライアス社の操るオシマイダーという怪物からはぐたんとハリーを守ろうとしたはなは、明日を創る希望の力「アスパワワ」に導かれてプリキュアに変身する力を獲得。オシマイダーを撃退し、はぐたんとハリーを守り切る。

クライアス社の狙いははぐたんの方で、ハリーは戦う力もないのに彼女を懸命に守ろうとしていた。これを案じたはなは、今後もプリキュアになってはぐたんを守ることを決意。ハリーは人間の姿に変身することが可能で、これを利用してはぐくみ市ではぐたんを育て始める。その朗らかで人懐っこい性格から“訳アリのシングルファーザー”として街の人々に受け入れられたハリーは「1人で子育ては大変だろう」と様々に支援してもらうようになり、はなもこれを利用してたびたび彼の家を訪れ、はぐたんを狙うクライアス社との戦いを繰り広げる。
やがて同じ学校に通う優等生の薬師寺さあや（やくしじ さあや）、同じくフィギュアスケートの強化選手である輝木ほまれ（かがやき ほまれ）もプリキュアに変身する力を得て、はぐたんを守るために共に戦うようになる。「ハリーだけでは大変過ぎる」と3人がはぐたんの世話も積極的に見るようになる中、ほまれはハリーの優しさや誠実さに次第に惹かれていき、やがて己の内に芽生えた恋心をはっきり認識していく。

ルールーの苦悩

クライアス社の高性能アンドロイドルールーは、冷静にプリキュアの戦力と戦法を分析してからはぐたんの奪取を目論む難敵だった。それでもはなたちは奮戦し、策をことごとく打ち破られたルールーは「プリキュア打倒にはさらなるデータが必要」と判断。はなの家族の記憶を書き換えて、“彼女の親戚”という設定で野乃家に潜入する。
そこでルールーは、イジメを受けて不登校になるまで追い詰められながらも前に進むはなの強さや、女優である母と一緒に働きたいというさあやの夢、スケーター仲間の若宮アンリ（わかみや アンリ）と共に練習に励むほまれの姿を見て、「彼らはなぜ未来に希望を抱けるのか、“未来に希望など無い”とするクライアス社の思想は正しいのか」と疑問を持ち始める。プリキュアに憧れる少女愛崎えみる（あいさき えみる）との交流で“音楽”という概念を知ったルールーは、「音楽というものをもっと知りたい、自分も未来が欲しい」とまで考えるに至る。

プリキュアたちと共に未来を手に入れるか、あくまで創造主であるクライアス社に従うかで悩み続けたルールーは、再調整を受けたことで暴走。「あなたたちのせいでこんなに苦しむことになった、こんなに苦しいなら心なんていらなかった、希望なんて知りたくなかった」と泣きながらはなたちを攻撃する。はなはそれを受け止め、「大切な友達が苦しんでいるのだから、私だって苦しい」と本心を打ち明ける。騙していたはずのはなたちから友達と認められたことで、ルールーは彼女たちと戦う意欲を失い、クライアス社を離反する。
やがてルールーはえみるから本格的に音楽を狙い始め、彼女から「今のあなたには心がある、人間と何も変わらない。一緒にプリキュアになろう」と提案される。機械である自分がプリキュアになれるのだろうかと悩むルールーだったが、自分を支えてくれるはなたちと、どこまでも信じてくれるえみるの想いに応え、プリキュアに変身。一緒にプリキュアへと変身する力を得たえみると共に、クライアス社と戦うようになる。

未来世界の終焉

「できる限り巻き込みたくない」といって自分たちの素性を明かさなかったハリーだが、プリキュアとして本格的に戦うはなたちを見て、「こうなれば意地を張ってもいられない、どうか一緒に戦ってほしい」と頭を下げて自身とはぐたんの秘密を打ち明ける。彼らは未来からやってきた存在で、そこではクライアス社によって“時間が止まった”ため、事実上世界は終焉を迎えてしまったという。
ハリーはクライアス社に囚われて怪物に改造され、仲間たちとも離れ離れとなり自暴自棄になって暴れていた。そこを未来のプリキュアであるキュアトゥモローに救われて正気を取り戻し、同時に彼女に強い恩義と恋心を抱く。

しかし、最終的に未来世界のプリキュアたちは敗北。ハリーは囚われたキュアトゥモローを救出してクライアス社を脱走し、追手を振り切るために彼女の力で過去へと飛んだ。この無茶によって力を使い果たしたキュアトゥモローは赤ん坊になってしまい、はなに“はぐたん”と命名されてかわいがられるようになったのだった。
キュアトゥモローが開けた時空のトンネルを利用してクライアス社はこの時代にも進出し、自分たちの終わらせた世界を再び動き出させる可能性を持つはぐたんの奪取を狙っていた。これらの事情はこの時代に来てから起動したルールーも知らず、敵の正体を知ったはなたちは思いも新たにクライアス社との戦いに臨む。

それぞれの夢の結末

母に憧れ、役者を目指していたさあやだったが、プリキュアとして活動する中で医の道にも興味を持ち始める。母との共演という夢を追うか、傷ついた人を救うことに人生を捧げるか悩むさあやだったが、母から「私のことを追うだけでなく、あなた自身のやりたいことをやりなさい」と勧められ、医者になることを決意。役者としての最後の作品で母との共演を果たして踏ん切りをつけると、さあやは新たな夢に向かって歩み始める。
ほまれはフィギュアスケーターとしてさらなる飛躍を果たしていくが、一方でハリーへの恋心を抑えられなくなっていた。意を決して告白するも、ハリーは「気持ちを伝えたい人がいる、お前の気持ちには応えられない」と優しい口調でそれを拒絶。薄々そうなることを覚悟していたほまれは、それでもハリーを好きになれたことを「素敵な思い出になった」と言い切り、その痛みと切なさを抱いたまま前に進んでいく。

えみるとルールーは音楽ユニットを結成し、ひょんなことからプロデビューを果たす。共に励み、共に戦う中で2人は無二の友人となっていくが、ルールーは「戦いが終わり、はぐたんを守り切ることができたら、自分は元の時代に戻ってえみるから教わった音楽の力で世界を蘇らせたい」とも考えるようになる。えみるは「せっかく友達になれたのに」とショックを受けるも、ルールーの気持ちも理解し、そう遠くない内に訪れる別れを受け入れる。
ほまれが選手として女性として大きく成長する一方、アンリは「足の古傷の影響で、これ以上はフィギュアスケートを続けられない」という己の現実を嘆いていた。これが最後と覚悟して望んだ大会では、会場に着く前に事故で足を挫いてしまい、その絶望に付けこまれてオシマイダーの素体にされてしまう。しかし、プリキュアチームやえみるを通して知り合い友人となった彼女の兄の愛崎正人（あいさき まさと）から必死に激励され、「みんなを笑顔にしたい」という己の原点を取り戻してプリキュアに変身。これは一時的なものでしかなかったが、アンリはさっぱりした様子で「もう1度自分のやりたいことをゼロから探す」と言い切り、それが見つかるまで側で支えるという正人と共に第2の人生を歩み始める。

未来の再生

クライアス社と戦う中、はなは「ジョージ」と名乗る青年とたびたび出会い、交流を重ねていた。ジョージは不思議な包容力のある男で、1人の女性としてはなに敬意を払い、いつも「またね」と言って去っていくのが常だった。はなはジョージにほのかな憧れを抱くが、彼こそがクライアス社の社長であることを知って衝撃を受ける。ジョージは正体が知られてもなおはなに対してだけは優しく、「未来にもともと希望は無い。ある少女が理想の世界を切り開くも、人々は飽くなき欲望で自ら理想郷を滅ぼし、世界の時間を止めてしまった」と懸命に説得して味方に引き入れようとする。彼女がこれを拒絶すると、「ならば手段を選ぶ必要もない」とばかりに、ジョージは最後の攻撃を開始する。
かつて未来がそうやって終焉を迎えたように、現代の時間が止まっていく中、プリキュアたちはクライアス社の野望を阻止するべく奮闘。はなは単身ジョージと対峙して苦戦するも、「君の生み出す希望は世界を救わず、やがて君自身を滅ぼす」と訴える彼に「みんなの未来を応援することはやめない」と言い返す。勝利と未来を諦めないプリキュアチームの勇気は、かつてないほどのアスパワワを生み出し、やがてそれは地球全域に連鎖。老若男女を問わず、わずかでも明日に希望を持つ人々を次々にプリキュアに覚醒させ、ついにジョージを打ち破る。

倒れたジョージを救おうとするはなだったが、彼は「未来を信じられない」と言ってその手を拒む。しかしはなに「未来が信じられないなら、どうしていつもわたしに“またね”って言うの」と問われると、彼女と会う未来に希望を抱いていたことに気付いて敗北を受け入れる。「君は本当に素敵な女の子だね」と力なく笑い、「またね」といつもの言葉を残してジョージは消滅する。
クライアス社の野望を砕いた後、それぞれに生き残って改心したクライアス社の社員たちと共に、ハリーとはぐたんは自分たちのいた時代へと帰還。それを見送ったはな、さあや、ほまれの3人は、2度と会えないと分かってなお彼らとの友情を感じつつ、自分たちの夢に向かって歩き出す。

11年後。自ら創立した“アカルイアス社”の女社長となったはなは、夫との間にできた子を出産。これに立ち会ったのは産婦人科医になったさあやで、フィギュアスケートの大会に優勝したほまれも報せを聞いて慌てて駆け付ける。一方、えみるは“本来この時代に完成する予定だった”ルールーと再会し、生まれたばかりで記憶のない彼女と友情を築く。
はなの夫が慌てて駆け付ける中、はなは生まれた我が子を抱いて満足そうに微笑んでいた。“はぐみ”と名付けられたその赤ん坊は、かつて彼女たちが守り抜いたはぐたんに瓜二つの姿をしていた。自分のいるべき時代へと帰還して力を取り戻したキュアトゥモローは、懐かしい声に呼ばれたかのように「ママ」とつぶやくのだった。

『HUGっと！プリキュア』の登場人物・キャラクター

プリキュアチーム

野乃はな（のの はな）／キュアエール

CV：引坂理絵

中学2年生の少女。明るい性格で、「大人の女性」に憧れている。ショックなことがあると、「めっちゃショック」を縮めて「めちょっく」というのが癖。
中学1年生の頃に通っていた中学校でイジメが発生し、これを止めようとした結果自分がイジメの対象になってしまう。これによって一時期不登校になり、2年生に進級する前に別の学校に転向した。

『プリキュア』シリーズの主人公は、極端に勉強ができるかできない、あるいは運動神経抜群か運動音痴のいずれかのパターンが多いが、「不登校だった分の遅れはあるが勉強が特に苦手という程ではなく、特に優れているわけではないが運動が苦手というほどでもない」という珍しい中庸タイプ。
転校直前に気合を入れるために前髪を切ろうとして加減を間違え、特徴的なぱっつんカットになっている。しかしさあややほまれからこれを「似合っている」と褒められたことで、以降もこのスタイルを維持するようになった。

変身すると、ピンクを基調とする戦士キュアエールになる。
特に際立った能力は無いが、1度挫折を経験したからこそより強くしなやかになったはなの精神力によってチームの要として機能し、クライアス社と戦い抜いた。

薬師寺さあや（やくしじ さあや）／キュアアンジュ

CV：本泉莉奈

はなのクラスメイトで学級委員長。高名な女優を母に持ち、彼女の影響で子役として活動してきた。真面目で優しく、作中では「天使」に例えられることもあった。
母に憧れ、彼女と共演したい一心で自身も女優を目指していたが、物語途中で医の道にも興味を抱き始める。