少女不十分(西尾維新)のネタバレ解説・考察まとめ

『少女不十分』とは2011年に執筆された西尾維新によるミステリー小説、およびそれを題材としたミステリー漫画。小説家を目指す僕は、謎の少女Uの異常なある行動を見てしまったことをきっかけに、彼女によって誘拐されてしまう。彼女との一週間の監禁生活を送る中、Uの行動に隠された謎を紐解いていく。その巧みな場面描写により、一種のモキュメンタリーとして成立させ、そのリアリティさにより人気を博した。キャッチコピーは「西尾維新、原点回帰にして新境地の最新作。」、「この本を書くのに10年かかった。」

『少女不十分』の概要

『少女不十分』とは西尾維新が執筆したミステリー小説、およびミステリー漫画。
2011年に挿絵を碧風羽が担当し、刊行。
その後、『週刊ヤングマガジン』にて、はっとりみつるによって2015年53号から2016年39号まで連載された。2016年から『講談社』より全3巻の単行本が刊行された。

小説家志望の大学生である僕は、ある交通事故を目撃する。その際被害者の友人、少女のある異常な行動を目撃してしまう。
それは、少女が直前にやっていたゲームをセーブした後、被害者に駆け寄り号泣するという、ありえない行動だった。
その後Uと名乗った少女に誘拐されてしまった僕は、一週間の監禁生活に巻き込まれることになってしまう。

実際にはないはずの事件を、場面描写や登場人物の心象を緻密に描き、まるでノンフィクションのようなリアリティが魅力の作品である。キャッチコピーである「西尾維新、原点回帰にして新境地の最新作。」の通り、先の展開や謎の予測がつかないミステリー小説である。

『少女不十分』のあらすじ・ストーリー

誘拐する少女

誘拐される僕。Uの稚拙な誘拐に付き合ったことが、全ての始まりとなる。

小説家になることを志している大学2年生の僕。
僕は小説を短時間で書き上げることができるという特技を持ちながらも、実力不足やコミュニケーション能力の欠如により、半ば夢を諦めつつあった。

惰性で作品を書き続ける生活を送っていたある日、僕はある少女が車に引かれたところに遭遇してしまう。その際、友人とおぼしき少女Uが駆け寄った瞬間、とある奇妙な行動を目撃する。
なんとUは、直前にやっていたゲームをセーブした後号泣しながら少女に駆け寄るという、常識とはかけなはれた行動をとっていた。

Uの異常とも言える行動に恐怖を感じ、その場を離れ帰宅した僕だったが、その数日後僕をストーキングしていたUが自宅に表れる。
彫刻刀で脅された僕は、端から見れば通報されるのは自分ではないのかと気が動転してしまい、思わずUの家までついて行ってしまう。

Uの自宅にたどり着いた僕は、家の物置部屋で一週間の監禁生活を送ることになった。
その一方、所持していた携帯電話を取り上げられなかったため、通報を行い逃げ出すことを企む。しかし、Uの将来がどうなってしまうのかという心配と、U自身への興味から監禁生活に付き合うことを選ぶ。

僕の監禁生活

監禁生活二日目、僕はUに対し食事を要求する。学校から帰宅したUが持ってきた食事はなんと持って帰った給食だった。
僕が食事をとろうとすると、Uは僕がいただきますの挨拶をしないことに異常に激怒するという、不可解な行動を見せる。

監禁生活三日目、扉を外すことで、監禁されていた部屋から抜け出すことに成功した僕。僕はUの部屋のリビングがあまりに散らかっていることや、台所が使われていないこと、そして冷蔵庫に何も入っていないことを見てUが家に一人で住んでいることに気づく。

さらにUが僕に渡していた食事が、Uにとっての唯一の食事である給食だったことに気づき、僕は強い後悔を抱く。

監禁生活四日目、Uの境遇に同情を抱いた僕は、所持していた金銭でUと僕の食料を買わせることでUからの信頼を得ることに成功する。
あまりにも異常な状況に置かれているUに対し、両親の所在を聞く僕であったが、Uは「パパとママはいなくなった なりました」という不可解な言葉を残すのだった。

Uの真実と再会

再会したUと僕。

監禁生活五日目、風呂に入れられた僕はUの身体に大量の痣や切り傷があることを確認し、Uが両親からの虐待にあっていたことを察する。

監禁生活六日目、Uが抱える問題が自分の身に余ると判断した僕は家から脱出しようとするが、Uに対し好奇心だけでなく何とかしてやりたいという気持ちがはっきりと芽生えてしまう。
Uの問題を解決するため、僕はひとまずUの家を掃除しながらUの置かれている状況について調べ始める。

そんな中、上がったことのない二階で腐臭が漂っていることに気づく。腐臭の元をたどると、そこにはUの両親の死体があった。その死体は互いの首を絞めあっているというおぞましいものであった。

さらに、Uが常に抱えていた日記帳を見たことで、Uの異常な行動の原因を突き止める。
Uが持っていたノートは、生前の両親から渡されたものであった。そのノートには様々なルールが記述されており、Uは書かれている順番を元に、ルールを守っていたことが判明する。
Uが当初見せた不可解な言動は、「友達を大切にすること」というルールが「ゲームをやりっぱなしにしないこと」よりも後に書かれていたためという些細なものであった。

帰宅したUは部屋を出ている僕を見て監禁に失敗したことを悟り、一人の人間を監禁するという緊張から解放され倒れてしまう。
限界を迎えたUは僕に対し、お話を聞かせてもらうように頼む。

僕は小説家志望である自分に唯一できる、即興でつくった物語をUに聞かせ、Uの苦しみとその未来を案じる。

監禁生活から一週間後、Uと僕を見かけた通報があったことで、警察が事件の存在を認識。
少女と大学生が一週間共同生活を行うという状況から怪しまれた僕だったが、Uの両親が何らかの立場がある人物とわかったことで疑いはなくなり、もとの生活に戻ることになった。

一方Uも異常な生活状況が知られたことで保護され、親戚に引き取られる形で、一連の事件は収束するのだった。
その後小説家になった僕は、自分の書いた小説を小説だと思えず、Uに語った物語延長であると感じていた。

ある日僕は、新たな担当者との顔合わせのため上京する。そこで僕はUと思われる新人担当者と会い、彼女とはじめましての挨拶を交わすのだった。

『少女不十分』の登場人物・キャラクター

僕/柿本

小説家を目指す大学生。目の前で起こった事故を目撃したことでUと出会う。
ミステリー小説を書き続けており、素早く作ることは得意なものの、実を結ぶことは無かった。Uからの監禁を受けた後、警察に逮捕されるが、目撃証言があったことで無事釈放される。
その後小説家となり、10年間活動し続けるが、自分の作品はUに語ったお話の延長線でしかないと感じていた。
ある時新しい編集者と引継ぎのため会うことになるが、その編集者がUであることを察するも、あくまで初対面のようにふるまった。

U・U /夕暮誘(ユー・ユー/ゆうぐれゆう)

事件当時小学4年生の女児。両親から厳しいしつけを受けており、生活をする家での様々な決まり事が書かれたノートに渡され、そのノートを忠実に守っていた。
事故が起こった際、自分の行動を目撃されたため僕を監禁していた。監禁生活後は、親戚に引き取られることになった。その後編集者となり、僕と再会する。
例え知人の死を目撃してもルールを守り続けたり、目的のためなら監禁という過激な手段にも訴える異常性を持ち、その性格を知られないように両親からしつけられていた。

Uの両親

物語開始時点で既に死亡している。互いに首を絞めあって死亡していたが、なぜか事件が発覚しても、社会に公表されなかった。そのため僕からは何らかの社会的地位を持っていたのではないかと考えられている。
Uに対し虐待ともいえるほどの厳しいしつけを行っていた。一方でUに読み聞かせをするなどよき両親としての一面もあり、なぜ家庭が崩壊してしまったのかは不明である。

『少女不十分』の用語

ノート

Uが両親から渡されたノート。生活の中で守るべきルールが書かれている。
Uは書かれている順番に優先順位が高いと認識していた。Uが事故の際に取った行動は「ゲームをやりっぱなしにしないこと」という文言が「友達を大切にすること」よりも先に書かれていたためである。
挨拶に異常にこだわる理由も「いただきますということ」という文言が、二番目に書かれていたためであった。

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