猫物語(物語シリーズ)のネタバレ解説・考察まとめ

『猫物語』とは、西尾維新によるファンタジー小説、及びそれを原作としたアニメ・ゲームなどのメディアミックス作品「<物語シリーズ>」の第4作目。主人公・阿良々木暦の同級生である羽川翼がメインヒロインとなる。「猫物語(白):つばさファミリー」「猫物語(黒):つばさタイガー」の二部構成。「猫物語(白)」は翼がストレスにより生み出した怪異と暦の対決について書かれ、「猫物語(黒)」は翼が嫉妬により生み出した怪異と向き合う出来事を描く。アニメーション制作はシャフト、監督は新房昭之。

『猫物語』の概要

『猫物語』とは、西尾維新によるファンタジー小説、及びそれを原作としたアニメ・ゲームなどのメディアミックス作品「<物語シリーズ>」の第4作目である。主人公・阿良々木暦の同級生である羽川翼がメインヒロインとなる。「猫物語(黒):つばさファミリー」「猫物語(白):つばさタイガー」の二部構成。「猫物語(黒):つばさファミリー」は「<物語>シリーズ」第1作目の「化物語:つばさキャット」で語られていたゴールデンウィークに起こった事件——羽川翼のストレスによって生み出した怪異との対峙——が書かれた。時系列的には「傷物語:こよみヴァンプ」と「化物語:ひたぎクラブ」の間に位置する。「猫物語(白):つばさタイガー」は「化物語:つばさキャット」「猫物語(黒):つばさファミリー」の解決編にあたり、羽川翼が自身の嫉妬により生み出してしまった怪異と向き合う姿を描く。時系列的には「<物語>シリーズ」5作目の「傾物語:まよいキョンシー」、8作目の「鬼物語:しのぶタイム」と同時系列の話となる。アニメーション制作はシャフト、監督は新房昭之。

『猫物語』のあらすじ・ストーリー

つばさファミリー

怪我をしている翼

高校3年生のゴールデンウィーク初日。阿良々木暦が春休みに巻き込まれた「吸血鬼退治」の事件——死にかけた吸血鬼のキスショット ・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードと関わったことで巻き込まれた——を経て、その一件で助力してくれた羽川翼に好意を抱いていた。妹の月火と火憐にそのことを相談する暦だったが、「顔を見てその人の子どもを産みたいと思ったら好きだということだ」「ずっと一緒にいたいと思ったら恋」という2人の極端な答えにいまいち納得できないでいた。月火や火憐との会話の後に暦が家を出たところで、暦は頬を怪我した翼に遭遇する。暦が怪我の理由を尋ねても当初は濁していた翼だったが、誰にも話さないという条件をつけて怪我の理由を話し出す。頬の傷は、実は父親によってつけられたものだという。

翼の家庭事情は複雑だった。未婚のままに翼を産んだ実の母親は、翼を産んでから出会った男性と結婚後に自殺。その後、義父となった男性は再婚するものの、過労死してしまう。翼は義父の再婚相手に引き取られ、その再婚相手も再び結婚。そうしてようやく「羽川」の家に落ち着いたが、現在の母親とも父親とも翼は血が繋がっていないため、家族仲は冷え切っているという。それでも子どもを殴るのはおかしいと暦は翼の父親を糾弾するが、翼は父親を庇い、暦を止める。娘を殴るような父親を庇う翼を、暦は「気持ち悪い」と思う。あまりにも翼の行為が「正しい」ゆえに、「完璧」であるがゆえに、暦にとっては異常であるように感じてしまったのだ。

春休みの吸血鬼の事件により再生能力を持った暦の血で翼の頬の傷を治した後、2人は車に轢かれて死んだ尾なしの猫を見つける。翼はその猫を抱き寄せ、埋葬した。

ブラック羽川と翼

その後、暦はかつて最強の吸血鬼であったキスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード——春休みに暦が出会った吸血鬼。今は暦に吸血されて吸血鬼としてのほとんどの力を失い、名も無い幼女の姿になっている——が生き延びられるように血を与えるため、彼女がいる学習塾跡を訪ねる。そこで暦は、翼と共に尾なしの猫を埋葬した話を旧キスショットと行動を共にしている怪異の専門家である忍野メメに話す。すると忍野は、尾なしという特徴を持つ猫が「障り猫」という怪異ではないかと考える。「障り猫」は車に惹かれた猫を装い、埋葬したものに取り憑いて性格を豹変させてしまう怪異なのだ。翼がその「障り猫」に取り憑かれたのではと推測する忍野。暦は「障り猫」に翼が取り憑かれたのか確認するため、翼の元へ向かうと、そこには姿と性格を豹変させた翼の姿があった。忍野の予想通り、翼は「障り猫」に取り憑かれていたのだ。品行方正な普段の翼とは異なり、「障り猫」に憑かれた翼は奔放で暴力的だった。その姿を「ブラック羽川」と名付ける暦。

ブラック羽川は、障り猫が翼のストレスと結びついて誕生した新種の怪異だった。翼は殴る父親を庇うなど一見「娘」として正しく振舞っていたものの、そのストレスは我慢の限界に達していたのだ。そのストレスを発散するため、ブラック羽川は翼に代わって両親を攻撃しようとしていた。ブラック羽川を止めようとする暦だったが、それがブラック羽川の逆鱗に触れてしまい、暦はブラック羽川に攻撃され、腕を失ってしまう。

学習塾跡に戻った暦は力尽きて寝込む。旧キスショットに手当てをされて回復した暦に、忍野は「相手が悪かった」と言う。ブラック羽川は「エナジードレイン」という相手のエネルギーを奪う強い能力を持っているため、吸血鬼もどきで殆ど力がない暦では勝てる相手ではないのだ。暦に代わって、怪異の専門家である忍野がブラック羽川に立ち向かうことになる。そして暦は、翼のストレスを理解しようと羽川家に忍び込むことを決意。羽川家に潜り込んだ暦は、そこで衝撃の事実を目撃する。

翼の家には、翼の部屋がなかった。翼は廊下で生活しており、家に居場所が全くなかった。翼をそんな環境に追い込んでいる両親の、そしてその状況を受け入れてしまっている翼の異常さを目の当たりにした暦は、すっかり参ってしまう。

ブラック羽川に暦が攻撃されて腕を失った事件以降、翼は学校に姿を見せない。ブラック羽川に立ち向かっていた忍野の様子を伺いに学習塾跡を訪ねる暦だったが、忍野は自分の力でもブラック羽川に勝つことはできず、20戦挑んで全敗だったと零す。翼が賢く膨大な知識を持っているゆえ、忍野の行動を全て先読みしてしまうのだ。ブラック羽川という怪異は、忍野や暦の想像以上に強い怪異となってしまっていた。このままでは「障り猫」の怪異に取り込まれ、「羽川翼」の存在が消えてしまう可能性があることを示唆する忍野。

教室にいた暦の元に現れるブラック羽川

暦は翼の抱える家庭事情やブラック羽川とどう決着をつけるべきか、教室で思い悩む。そこにブラック羽川が現れた。そこでブラック羽川は、翼のストレスがなくなるまで人のエネルギーを奪い続け、攻撃し続けることを明かす。翼が抱えるストレスは巨大で、500人ほどを犠牲にしないと治らないと言う。何故そこまでするのかと暦はブラック羽川の中にいる障り猫に問う。障り猫の答えは、「自分に全く同情しなかったからだ」と打ち明ける。「事故にあって死ぬなんてかわいそう」といった同情の感情を持たず、「猫を埋葬することは正しいことである」という考えだけで自分を埋葬した翼に「障り猫」は惹かれ、協力することにしたのだ。

結局ブラック羽川の暴動を止めることも、翼の家庭事情に立ち入ることもできなかった暦は、旧キスショットに協力を求める。暦は旧キスショットから、怪異のみを斬ることができる妖刀を受け取った。その後、忍野と暦は翼について話をするが、忍野は「正しすぎる」翼にも問題があり、翼といる方もストレスが溜まると言う。翼を悪く言われたことに苛立った暦は、翼を救済するためにブラック羽川と対峙する決意をする。

ブラック羽川の姿で暦のもとに駆けつける翼

暦はブラック羽川をおびき出すため、「吸血鬼に殺される」と嘘のメールを翼に送る。そこにブラック羽川が駆けつけるが、そこで発した言葉は「大丈夫!?阿良々木くん!」という、いつも通りの翼の言葉だった。それは、今まで翼がブラック羽川という存在を「演じている」という証拠だった。翼は今まで、「障り猫」という怪異を操り、自分の意思で暴れていたのだ。そのことに暦は気がついていたため、あえて翼が反応しそうなメールを送ったのだ。翼はブラック羽川の正体を知られて開き直り、なおストレス解消をするために暴れようとする。暦は自身が正しすぎる故に大きなストレスを抱えることになった翼に対し、「『正しすぎる』という性質を持つ翼も『羽川翼』という人間の一部分なのだから受け入れるべきだ」と説得する。自分のストレスをわかってもらえないことに失望した翼は暦を攻撃し胴と脚を分断したが、体内に怪異を斬ることができる妖刀を仕込んでいた暦により、翼もまた攻撃される。暦は自分の体が真っ二つに引き裂かれることを見越して、体内に妖刀を仕込み、暦が攻撃されるのと同時に「障り猫」が翼から離れるように仕向けていたのだった。ここで通常であれば「障り猫」は斬られるが、「障り猫」と同一化しすぎた翼は、なかなか「障り猫」と分離できずに苦しむ。「完全に分離できないのであれば妖刀で怪異だけを取り除こうとするべきではなかったのではないか」と自分のしたことを後悔する暦だったが、突如現れた旧キスショットに血をかけられて体を再生させられ、「儂を勝手に生かしておいて、勝手に死ねると思うな」と説教される。自らの死をもって解決しようとした暦のことを、旧キスショットは許せなかったのだ。旧キスショットのエネルギーを吸い取る力により、ひとまず翼を止めることができ、障り猫は姿を消して翼は元の姿に戻った。

結局、翼の家庭問題に関して決着はつかなかった。暦が結婚して新しい家族を翼に与えればいいと提案する忍野だったが、「僕は羽川に恋しちゃってない」と暦は否定する。翼が自分を本当に頼ってはくれなかったことが悲しかった暦は、恋心を封印することにしたのだ。こうして、「初恋」のようだったものを「失恋」という形で暦は翼への思いを昇華することになった。

つばさタイガー

虎と巡り合う翼

2学期の初日、翼は廊下でロボット掃除機に起こされて目を覚まし、朝食の席に着く。いつもはそれぞれバラバラに食事をとるが、両親は珍しく一緒に朝食をとっていた。しかし翼の朝食は用意されていないため、翼は自分で朝食を作って食べ、登校する。その途中、翼は「虎」と遭遇する。登校してからそのことをひたぎに話していると、教室の窓から翼の家が燃えているのが見えた。家が全焼してしまい学習塾跡に泊まる翼だったが、駆けつけたひたぎに止められ、戦場ヶ原家に泊まることになる。一緒にシャワーを浴びたり、暦の嫌なことを話したりと、他愛もない時間を過ごす翼とひたぎ。

その翌日、朝食の場で翼が調味料を使わずに料理をし、「料理は味があってもなくても一緒」と発言したことで、ひたぎは「その生き方はどうかと思う」と翼に疑問を呈する。ひたぎ曰く、翼は「嫌いなものも好きなものもなく、なんでもかんでも受け入れてしまう」のだという。翼には好みがなく、何もかも同じなのだ。そこでひたぎは、「あなた、本当に阿良々木くんのことが好きだったの?」と尋ねる。特別なものがわからないのであれば、暦のことを好きだとも言えないのではないか。そして、ひたぎは続けて、翼は善人でいるがあまりリスクに対する意識がない「闇に鈍い」人間だと突きつける。あまりにも人として正しすぎる翼の姿勢を、ひたぎは疑問に思っていたのだ。

翌日学校に行った翼は、後輩の神原駿河から、暦からメールが来たことを知らされる。そして駿河が待ち合わせ場所である学習塾跡に行くと、そこは火事になっていた。

ひたぎの父親が帰ってきたために戦場ヶ原家を出た翼は、阿良々木家に寝泊まりすることになった。ひたぎは安全が確保されている暦の家に翼が泊まれるように、正義感の強い火憐に働きかけていたのだった。暦の家では家庭に事情がある子どもを保護していたのだ。そこで翼は暦の母親から「親が子どもと仲が悪いのは虐待と同じ」という言葉を受ける。その翌日、翼はヴァンパイア・ハンターのエピソードと出会う。エピソードは春休みに暦とキスショットを殺そうとしたヴァンパイア・ハンターであり、その時翼は戦いに巻き込まれてエピソードに殺されかけている。そんな過去があるにも関わらず、淡々とエピソードと会話をした翼のもとに、臥煙伊豆湖と名乗る女性が現れた。そこで伊豆湖は、翼が巡り合った「虎」と今日明日中に向き合うことになること、そしていずれ翼がその虎に「苛虎」と名前をつけるだろうと予言する。

自分の本心に気がつき、泣く翼

阿良々木家に戻った翼は、火憐と月火からそれぞれの恋愛話を聞くことになる。火憐と月火にはそれぞれ彼氏がおり、その彼氏たちは暦に似ているという。家族の絆が自分には欠落していることに2人との会話で思い知り、「虎」の正体に思い当たった翼は、ブラック羽川に手紙を書く。その内容は「ブラック羽川がストレスの権化であれば、虎は嫉妬の権化であること」「自分は正しくあるために嫉妬という感情を自分から切り離していたこと」「嫉妬が虎の形となり、嫉妬を覚えた場所を燃やしていること」だった。

翼が嫉妬を覚えたのは、二学期初日の朝食の席だった。両親には同じ食事が用意されているのに、翼にはそれがない。翼はそれを当たり前だと受け入れていたが、本当は「両親が自分とは関係のない場所で仲良くなろうとしている」ことに嫉妬していたのだ。学習塾跡が燃えたのも、学習塾跡に泊まる際に後輩の神原駿河から「阿良々木先輩からメールが来た」と言われたことに由来していた。自分には助けを求める言葉がないのに、駿河にメールが届いたことに嫉妬した翼は、嫉妬の炎で暦との思い出がある学習塾跡を燃やしてしまったのだ。また、「苛虎」は翼が知らなかった「家族の幸せ」がある戦場ヶ原家まで燃やそうとしていた。

自分自身の嫉妬の感情と向き合った翼は、ブラック羽川に「苛虎を止めてほしい」と助けを求める。翼の思いを受けたブラック羽川は、苛虎と対峙する。あまりにも強い虎に、無駄だったと諦めかける翼だったが、そこに暦が駆けつけ、妖刀で苛虎を斬る。そして「お前が命がけで頑張ってくれなかったら間に合わなかった」「お前のピンチに駆けつけないはずがない」と言う。かつて自己犠牲でしか問題を解決することができなかった暦が、翼の意思を尊重した上で自分が最良だと思う行動をとったのだった。しかし翼は暦の言葉を否定する。そこでようやく翼は「今まで自分と向き合って、自分が求めるヒーローになってくれなかった暦のことが嫌いだった」こと、そして「嫉妬をするほどに暦のことが好きである」ことを言うことができた。暦はそれに対して誠実に、「好きな子がいる」と断った。その暦の言葉で翼は子供のように泣きじゃくった。暦の言葉により想いに決着をつけることができた翼は、ストレスも嫉妬も自分の感情の一部であると受け入れ、苛虎を体内に取り込むことにする。翼の髪は虎を取り込んだことにより白髪となる。それがなによりも翼が前に進めるようになった証拠となった。

『猫物語』の登場人物・キャラクター

メインキャラクター

阿良々木暦(あららぎ こよみ)

CV:神谷浩史

「つばさファミリー」の語り手であり、主人公。私立直江津高校在学中。高校3年生を目前とした春休みに「吸血鬼」と巡り合ったことをきっかけに、伝説や噂を糧に存在する「怪異」が起こす現象に巻き込まれることになる。警察官の両親と2人の妹がいる。対人関係を築くこと苦手であり友人は少なかったが、「怪異」の事件をきっかけに関わる人間が徐々に増えていく。元来「お人よし」な性格を持ち、時には自己を犠牲にしてまで相手を助けようとする。特に翼には、春休みに起こった吸血鬼退治及び、最強の吸血鬼であるキスショット ・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード(現在の忍野忍)と対峙した出来事により恩義を感じている。そのことから、彼女の力になることを決めていた。「つばさキャット」では翼が虐待にあっていた事実と、それによるストレスから生み出された怪異を自身の死と引き換えに倒そうとするものの、解決には至らなかった。「つばさタイガー」では苛虎と向き合おうとする翼の背中を押す。

羽川翼(はねかわ つばさ)

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