十二国記(The Twelve Kingdoms)のネタバレ解説まとめ

『十二国記』とは、小野不由美による小説、及びそれを原作とするアニメなどのメディアミックス作品である。女子高生の中嶋陽子は、人の顔色を気にして生きてきた。そんな陽子の前に、麒麟の景麒を名乗る青年が現れ彼女を王と呼ぶ。陽子は本来の故郷である十二国世界へ渡り、様々な戦いを経て王になる覚悟を決めるのだった。ある者は権力とそれに伴う責任に向き合い、ある者はコンプレックスに向き合って成長を遂げる。古代中国風の異世界を舞台にした異世界ファンタジーでありながら、不思議なリアリティを持つ作品である。

出典: 12kingdoms.fandom.com

水禺刀。

陽子が十二国世界に戻る時、景麒によって手渡された剣。陽子は初めこの剣の正体も何も分からなかったが、真の慶国景王にのみ使うことができる慶国の国宝である。強力な妖魔を封じたもの。真に支配できれば刀身は美しく輝いて未来や過去を水鏡のごとく映し出せる。少しでも気を抜いた場合には幻覚を見せるので、鞘で封じている。鞘の方は禺(さる)を意味し、持ち主の心を乱すため剣で封じる。つまり、剣と鞘は互いに封印し合っている状態にあった。
剣を抜くと蒼猿(あおざる)と呼ばれる存在が現れて陽子の心を乱してきた。これは旅の最中に鞘を失ったことで互いの封印が解けた為である。旅の最中、陽子は蒼猿を倒すまで剣を布でくるんでいた。
陽子が蒼猿を倒したことで鞘が死んだ状態になり、誰でも抜刀はできるが、景王である陽子以外の人物にとってはなまくらで、藁を切ることすらできなかった。鞘の機能が失われたことで陽子は剣が見せる悪夢に悩まされることが増えた。水禺刀の鞘を作ったのは達王に使えていた遠甫である。達王時代の遺物の一つ。陽子は初めて王として民の前に出る際に仮の鞘に納めた水禺刀を腰にすることとなった。これは達王が封じた剣を携えることで、慶国の王としての意義が整う、「(達王のような)名君になる」との体裁を持つとの意味を持つ。陽子にとって水禺刀の帯刀は、いわば懐達(慶国の名君と謳われた達王を懐かしむ言葉)の象徴でもあった。
初めは長い柄を持ち、名前は水鑑刀(すいかんとう)であった。気を抜くとのべつ幕なしに幻覚を見せるので、鞘が作られた。鞘は、主が変わるたびに刀の形状を変えてきた。これは持ち主の心に応じての変化と思われる。斧であろうとこん棒であろうと、それに応じて鞘の形も変わる。
鞘には癒しの力を持つ碧双珠(へきそうじゅ)なる球がある。蒼猿が出現し出したのは、まだ何も知らなかった陽子が水禺刀を振るった際、鞘を取り出せず、碧双珠のみを持って行ったことに起因する。

懐達(かいたつ)

慶国で度々口にされる言葉。男の王を懐かしむという意味である。現状慶国最後の男の王である達王は、末期に暴政を敷いたものの名君としての功績や印象が大きい。その後、無能な女王が三代続いた為、女王よりも男の王(というより、達王のような名君)を望まれるようになる。
陽子もたびたびこの言葉をつぶやかれるが、結果としては王宮から出て街に下り、十二国世界のことを知ろうとするきっかけとなった。

里家(りけ)

身寄りのない子供や他国からの難民などが暮らす施設。『風の万里 黎明の空』では祥瓊(芳国の公主)が一時身分や名前を隠してここに匿われた。ここでは、どんな身分の者でも一般的な農民と同じく田畑を耕し、生活をする。陽子は自国の里家で良き王となる為、正しい政治を行う為に遠甫から道理などの教えを請いに行っている。
芳国の里家にいる孤児は、皆王による厳しい法で親を処刑された子ばかりである。

『十二国記』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

「世界も他人も関係ない。私は優しくしたいから優しくするんだ。信じたいから信じるんだ」(中嶋陽子)

出典: www.netflix.com

蒼猿との戦い。

『月の影 影の海』より。十二国世界で裏切られ続けた陽子は、巧国から逃げる際、すさんだ心を癒してくれた楽俊をも疑い見捨てる。その際、「斬り殺してしまおう」との選択肢が陽子の中にはあった。蒼猿は「楽俊だっていつか陽子を裏切る」と言ったが、陽子は「それでもいい」と言い切り、それまで人の意見に流されるばかりであった自分と決別するように、自分の意思で楽俊を信じると決め、蒼猿を斬るのだった。

「楽俊の心が遠のいたんだ。楽俊は私が胎果でも差別しなかったのに王だと差別するのか。私たちの間には、たった二歩しかないじゃないか」「違う。おいらには三歩だ」(中嶋陽子・楽俊)

出典: bibi-star.jp

陽子の言葉を受け入れて改めて友人となった楽俊。

陽子が景麒にひざまずかれた王だと知り、楽俊は逃げるように陽子の前から姿を消す。そんな楽俊を追った時の陽子と楽俊のやり取り。
十二国世界で生まれ育った楽俊にとって、王とは自分からかけ離れた存在でしかない。陽子が胎果であっても差別することなく接し友人にまでなったが、本当は馴れ馴れしくしてはいけない人物だと知って退いた。しかし、それは陽子からすれば一種の差別でもあった。景麒がひざまずいたとて、楽俊と出会って過ごした時間が変わることはない。
王という立場が一度二人を遠ざけたが、陽子の「私たちの間には、たった二歩しかないじゃないか」との言葉が二人の間に生じたわだかまりを取り払った。蓬莱育ちの王である陽子と、十二国世界で差別されて育った楽俊が、立場を受け入れその上で真の友人になった瞬間である。歩幅の差が、それぞれの立場を示している。子供の背丈しかない楽俊にとっては、三歩の距離。それで二人は歩み寄ることができるというシーン。楽俊の砕けた口調が、友人になったことを表している。

「自分を可哀想だっていうのはさ、ガキの涙だよ」(清秀)

出典: makoto175878.blog.fc2.com

自らの経験から、涙は二種類あると語る清秀。

『風の万里 黎明の空』で100年間、梨耀の下でこき使われ耐え忍んできたと自分の境遇を語る鈴に対し、清秀が「自分を可哀想だっていうのはさ、ガキの涙だよ」と言っている。
清秀は子供であり、よく泣くことがあったと語る。自分の村が焼かれた時清秀は、涙には二種類あることを知った。一つは周りに助けや同情を求める涙、一つはただ哀しくて出る涙である。清秀は、前者は何もできないガキの涙だと称した。鈴がよく泣くのを、気持ちよく苦労や悲しみに浸り、同情を乞うガキの涙だと称したのである。

「大事なのは相手の意図をくみ取ろうと努力をすること」(采王)

『風の万里 黎明の空』で采王が鈴に贈った言葉の一つ。
蓬莱から流されてきた海客である鈴は、言葉が通じず笑われることを苦痛と感じ、初めて話が通じた梨耀に泣きついて彼女の僕となった。仙籍に入り言葉の苦労はなくなったが同時に悪口も理解できるようになってしまった。下働きの立場や、ことあるごとに嫌味や叱責を受け、100年間鈴は苦しんできた。梨耀の下から逃げ出さなかったのは、逃げれば仙籍から外されると思ったためである。鈴は、言葉が分からなくなることを怖れていた。
采王に呼ばれた梨耀は鈴の一件を問い詰められるも、まったく意にも介さない。梨耀はむしろ、鈴が言葉が通じなくなることを怖れていると聞き、言葉よりも心が通じないことをの方が辛く、虚しいとほのめかすように口にした。言葉こそ通じていても、誰も梨耀の心情まで知ろうとはしていなかった。梨耀の思いを知った采王は、鈴が人の気持ちを汲み取ろうとしていないことを悟り自分で引き取らなかったのである。

「この世は嬉しいこと半分、辛いこと半分できている」「その人が幸せなのは、恵まれているからではなく幸せであろうと努力をしたから」(采王)

『風の万里 黎明の空』で采王が鈴に贈った言葉。
鈴は100年間梨耀の下で苦しんできたが、それは鈴が自分を憐れみ不幸に浸っていたためである。采王は鈴を仙籍から外さないことを約束し、旅費を与えて慶国に行かせた。「この世は嬉しいこと半分、辛いこと半分できている」「その人が幸せなのは、恵まれているからではなく幸せであろうと努力をしたから」との言葉は、鈴を旅に送り出す時に口にしたものである。
鈴は「苦しみ」を梨耀の下にいた時点で味わい尽くしたと思い、采王に救いを求めたこと自体を努力だと思い込んでいた。才国を出る時の鈴は、まだ采王の言いたいことを理解していなかったのだ。

「努力なしで物を与えられるってことは、それだけの働きを要求されるってことなんだ」「アンタは知ってなきゃいけなかったんだよ」(楽俊)

出典: www.nicovideo.jp

祥瓊を諭す楽俊。

『風の万里 黎明の空』にて、楽俊が祥瓊に言ったセリフ。
祥瓊は母から「何もしなくていい、何も知らなくていい」と言われ30年遊び暮らしていた。しかし本来、公主や公子には王を助け、国をよくする義務があると楽俊は語り、見出しの言葉を口にした。「聞きたくない」と耳を塞ぐ祥瓊だが、最終的にはこの言葉を受け入れて、公主だったが為に知る「国の中枢の実態」を元に慶国の内乱を治めるのに一役買うのだった。
『風の万里 黎明の空』では、他にも楽俊、供王などが王の責務の重さについて語っている。陽子は自分が休むためだけの建物が40近くもあることに半ば呆れて、使わない建物は取り壊すか、臨時の病院や宿にしてはどうかと家臣たちに提案するも「主上が天帝から授かったもの」として聞き入れられなかった。

『十二国記』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

えどのゆうき
えどのゆうき
@edono78

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