十二国記(ラノベ・アニメ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『十二国記』とは、小野不由美による小説、及びそれを原作とするアニメなどのメディアミックス作品である。女子高生の中嶋陽子は、人の顔色を気にして生きてきた。そんな陽子の前に、麒麟の景麒を名乗る青年が現れ彼女を王と呼ぶ。陽子は本来の故郷である十二国世界へ渡り、様々な戦いを経て王になる覚悟を決めるのだった。ある者は権力とそれに伴う責任に向き合い、ある者はコンプレックスに向き合って成長を遂げる。古代中国風の異世界を舞台にした異世界ファンタジーでありながら、不思議なリアリティを持つ作品である。

『十二国記』の概要

『十二国記』とは小野不由美によるファンタジー小説シリーズ、及びそれを原作とするアニメなどのメディアミックス作品である。原作小説は1991年、講談社X文庫ホワイトハートより発行された。少女小説としての発表だったが、後に本来のターゲット以外の読者層も取り込んだため、2000年より講談社文庫からイラストのない一般小説として発行されている。なお、『十二国記』というタイトルは当初便宜上のものであったが、現在では正式なシリーズ名となった。主人公が異世界に飛ばされる点では、今でいう「異世界物」に相当する。他の「異世界物」作品との違いとしては、主人公が元々異世界の人間であることが挙げられる。

人の顔色をうかがい生きてきた女子高生の中嶋陽子は、景麒(けいき)と名乗る人物により王と呼ばれ「あなたを迎えに来た」と言われる。そのまま、陽子は景麒の力で、陽子が王として統治すべき国がある界世界(十二国世界)へと渡る(「クラスメイトの杉本優香、浅野郁也が一緒でなくては嫌だ」との陽子の要望により、優香と郁也も同行させられた)。王として人として成長していく陽子や周辺人物の姿を描くだけでなく、地位と責任や、各人の持つ使命などについても語る、壮大な物語と言える。
十二国世界の世界観は古代中国に似ており、字(あざな)という通称で呼ばれる人物も多い。一部の人物(楽俊、祥瓊、玉葉など)は戸籍に記された名前も登場するが、基本的に字で呼ばれる。
その他、各国には州侯(しゅうこう)なる役職(地方のトップ)があり、場合によっては役職や敬称で呼ばれることもある。たとえば「恵州候」の場合は、「恵州を治める州侯(役職)」という意味である。王は主上、麒麟は台補、王の娘は公主、息子は公子といった敬称が存在する。他にも性格や特徴から来る通り名があり、文才に優れる楽俊は、作中で「文章の張君(「張」は楽俊の姓)」を意味する文張の通り名を賜った。

テレビアニメ版は、NHK衛星アニメ劇場にて2002年4月から2003年8月まで放送されたものである。原作が未完であったこともあり、一部のエピソードのみがアニメ化された。放送は第1期(2003年4月~2003年3月)全39話、第2期(2003年7月~8月)全6話に分けられている。第1期は毎週火曜18:00、第2期は毎週土曜9:00に放送された。

主題歌はOP『十二幻夢曲』(作曲・編曲:梁邦彦)、ED『月迷風影』(作曲・編曲:吉良知彦・作詞:北川恵子・歌:有坂美香)

『十二国記』のあらすじ・ストーリー

月の影 影の海

人の顔色ばかり気にしていつもオドオドしている女子高生の中嶋陽子(なかじまようこ)は、毎夜恐ろしい悪夢にうなされていた。
日増しに近づいてくる影に怯える中、陽子の前に景麒(けいき)と名乗る男が現れ跪いて彼女を王だと言った。

陽子が混乱していると学校が怪物に襲撃された。その怪物は夢に出てきたものと同じだったため、陽子は景麒と怪物が最近見る夢と関係していると感じた。
景麒は剣を渡し戦うよう陽子に言ったが、彼女は恐怖から戦いを拒んだ。

陽子を襲う怪物と景麒の命令に従う妖魔(ようま)が戦う中、彼女を守るため景麒は使役する冗祐(じょうゆう)を彼女の体に潜ませた。
陽子はクラスメイトの浅野郁也(あさのいくや)と杉本優香(すぎもとゆか)と共に、景麒の能力で開いた穴から別世界の十二国世界へ飛ばされた。この日本と十二国世界がつながる現象を蝕(しょく)と呼んだ。

十二国世界に飛ばされた陽子たちはバラバラに移動することになり、血を嫌う景麒も別行動をとった。
護衛の妖魔と離れてしまった陽子は人里へ行くが、何故か敵意を向けられ海客(かいきゃく)と呼ばれ投獄されてしまった。獄中で優香と再会したが陽子の顔は別人のように変わり、優香には分からない現地の言葉が陽子には分かった。

この状況をすぐに受け入れた優香は、陽子が「景麒が自分を主と言ったのは間違いではないか」と言ったため、彼が迎えに来たのは自分ではないかと思い始めた。
陽子たちは村の長老からここは異世界で日本は蓬莱(ほうらい)、日本人は海から来た者という海客と呼ばれていることを聞いた。そして今いる所は十二ある国の1つ巧(こう)だと知った。

巧国の塙王(こうこう)は、慶国(けいこく)の王を選ぶ麒麟(きりん)の景麒が蓬莱に王を迎えに行ったという情報を得ていた。そのことから慶国の王は胎果(たいか)だとみていた。
胎果は十二国世界の住民の卵果(らんか)が、蝕で蓬莱に流され既婚女性の腹に入り生まれた存在だった。
胎果や海客を災いとみなす塙王は陽子を抹殺しようとした。

その後優香は塙王に仕える巧国の麒麟の塙麟(こうりん)に接触した。塙麟に「あなたをお待ちしていました」と言われ、自分がこの世界に選ばれたと解釈し塙王の手先になった。
陽子は優香に襲撃されたため誰も信じられなくなった。

飢えと疲れから倒れてしまった陽子は、鼠の半獣の楽俊(らくしゅん)に助けられた。
翌日楽俊の母に会った陽子は、この世界の住人が木の実から生まれることを聞いて愕然とした。楽俊の母は陽子を優しく介抱してくれ、役人にも突き出さなかった。

楽俊は海客の保護に力を入れている雁国(えんこく)まで、道案内をしてくれた。
楽俊が得た情報から、陽子は海客の研究者である壁落人(へきらくじん)に会った。

彼は陽子を一目見て海客でないと見抜き、彼女は胎果だとし卵果が実る里木を見せた。陽子は「景麒が自分のことを王だと言って跪いた」と話すと、楽俊も落人も跪き陽子のことを「慶の王だ」と言った。
各国に一体存在する麒麟は自国の王を選び、その王にしか頭を下げず膝をつくこともないのだった。

陽子は楽俊と共に、雁国の王である延王(えんおう)と麒麟の延麒(えんき)に出会った。
延王から聞いた話では、景麒が跪いた時点で陽子は仙人としての戸籍である仙籍(せんせき)に入り、人としての生は終わっているのだった。蓬莱に戻れば死んでしまうため、この世界で王になるしかないのだった。
陽子が景麒に貰った刀は、慶国の王である景王のみ使える国宝の水禺刀(すいぐうとう)だった。
また冗祐は使令(しれい)と呼ばれる麒麟の部下の妖魔だった。

一方落人と接触した優香は、景麒が陽子と自分を間違えていると主張し否定されていた。
冗祐から玉座を望めと言われた陽子は迷いを捨てて塙王の手先の優香と戦った。

戦闘中に手から落ちた水禺刀に、胎果の王を増やさず偽王(ぎおう)を立てて慶国を荒れさせる陰謀を語る塙王の姿が映し出された。その場に来ていた塙王が陽子を殺そうとしたが、自分の主に王殺しをさせないために塙麟が陽子を庇い死亡した。
優香は自分が利用され、この世界に自分の居場所がないことを悟り戦いを止めた。

優香は景麒の力で日本に帰り、陽子の母親に陽子がもう戻らないことを告げた。
陽子は楽俊の「陽子が作る国を見てみたい」という言葉に励まされ、日本に戻らず王になることを決めた。

月の海 迷宮の岸

麒麟を生み出す捨身木(しゃしんぼく)に麒麟の卵果が実り、先に生まれた女怪(にょかい)の白汕子(はくさんし)は、戴国(たいこく)の泰麒(たいき)が生まれるのを待ち望んでいた。
しかし蝕が起き、泰麒の卵果は蓬莱に流されてしまった。

10年後日本では高里要(たかさとかなめ)が白い手に呼び寄せられた。
引き寄せられ辿り着いたのは十二国世界の蓬山だった。要は蝕で流された泰麒だったため、白汕子や女仙たちは喜んだ。

高里家で自分が異質な存在だと感じていた泰麒は変化をすぐ受け入れた。しかし泰麒は麒麟の姿になれないことや、王を選ぶ自信がないことで沈む日が多かった。

そんな時出会った景麒は、自在に人から麒麟に変わる転変(てんへん)は自然にできると泰麒に教えた。自然なはずの動作ができないことに泰麒は落ち込むが、景麒は自分にできる限りのことを教えた。
景麒は妖魔を気力で圧倒して自分の使令にすることや、麒麟が死ぬとき使令に食べられること、王気は自然に分かることを説明した。
景麒の真意が伝わってか、別れる頃には泰麒から優しいと言われた。

やがて王になることを望む人々が蓬山を訪れる、昇山(しょうざん)の時期が来た。
泰麒は誰からも王気を感じずにいたが、将軍である李斎(りさい)と驍宗(ぎょうそう)に出会い李斎には親しみを、驍宗には恐れを感じた。李斎と驍宗は、李斎の人を乗せて運ぶ獣の騎獣(きじゅう)に興味を示した泰麒のために、騎獣狩りに出かけた。

そこに饕餮(とうてつ)という最高位の妖魔が現れた。泰麒は理由も分からず驍宗を守るため、饕餮に気力を振り絞り使令に下す術を使った。
泰麒は使令となった饕餮の名を傲濫(ごうらん)と言い当てた。

下山する驍宗に離れがたい執着心を持った泰麒は、彼を追う中で初めて転変をした。黒麒麟(くろきりん)に姿で驍宗の前に現れた泰麒は、人の姿に戻り驍宗の前で頭を垂れ盟約を口にした。
泰麒はこの時驍宗が王ではないとの意識はあったが、驍宗を留めておきたい一心で王に選んだのだった。

泰麒は天命に背いたと景麒に打ち明けた。そこに訪れた延王が泰麒に頭を下げろと強要した。どうしても頭を下げることができない泰麒に、自国の王以外には頭を下げることができない麒麟の特性を景麒は教えた。
驍宗と離れがたい気持ちは怖れに似ていて、それは王気を感じていたのだった。驍宗は泰王として正式に即位することになった。

しかし謀反を起こした戴国(たいこく)の将軍阿選(あせん)に、泰麒は角を切り落とされ再び蓬莱に流されてしまった。
ひどい仕打ちをしていた祖母の葬式の日に戻った要は、角を切り落とされて麒麟の記憶を失い、十二国世界のことを忘れて高里要として生きた。

風の万里 黎明(れいめい)の空

明治時代の蓬莱で大木鈴(おおきすず)は、人買いに買われ東京に向かう途中、蝕に巻き込まれ十二国世界に流された。
言葉が通じない世界で旅芸人一座と暮らしていた鈴は、翠微君梨耀(すいびぐんりよう)に翠微洞(すいびどう)に連れて行ってもらい仙人になった。ここでの暮らしは梨耀から仙籍を外すと脅されながら生きる過酷なものだった。
100年が過ぎたころ慶国の新たな王が蓬莱生まれの少女だと知った鈴は、いつか景王が梨耀を懲らしめて自分を救ってくれると夢見るようになった。

ある晩我慢の限界に達した鈴は、騎獣の赤虎(せっこ)に乗って才国(さいこく)の王が住む宮殿に向かい、梨耀に殺されると訴え保護された。
采王(さいおう)は梨耀と話を付け鈴を引き取ったが、彼女を成長させるため旅費を与えて外に送り出した。

鈴は旅の途中で、この世界を壊すことを目標にして自分を保ってる浅野郁也に出会った。
旅券がなく船に乗れない鈴たちを助けたのは、清秀(せいしゅう)という少年だった。清秀は妖魔に頭を傷つけられ弱っており、鈴は放っておけず行動を共にした。

慶国の都市で鈴が宿を探している間、言葉が分からず十二国世界へ恐怖を感じていた郁也が逃げ出した。それを清秀が追ったが、倒れこんでしまったところを慶国の役人昇紘(しょうこう)に馬車で轢き殺されてしまった。

鈴は清秀を殺した昇紘が中枢に賄賂を贈っていると聞き、中枢にいる景王を憎んだ。そして暗殺するため、王や神仙を殺せる冬器(とうき)の剣を手に入れた。

このころ慶国に内乱が起こりつつあった。
内乱は土地を治める和州(わしゅう)である、昇紘や呀峰(がほう)に対する反乱だった。
郁也は十二国世界への違和感を昇紘に話した。同じように麒麟が王を選び、王がいなければ国が荒れるという天の理や定めに疑問をもっていた昇紘は、郁也を飼いならし始めた。

一方芳国(ほうこく)では王が定めた法があまりに厳しいものだったため、毎日処刑が行なわれていた。しかし公主(こうしゅ)の祥瓊(しょうけい)は父王と共に仙籍に入って、永遠の命と若さを約束され華やかな生活を謳歌していた。
民の不満は爆発し謀反が起こり、首謀者の月渓(げっけい)は峯王(ほうおう)の首を切り落とした。月渓は峯王の首を娘の祥瓊に突きつけ、目の前で母と麒麟の峯麟(ほうりん)を殺した。

仙籍を外された祥瓊は、玉葉(ぎょくよう)と名を与えられ農民の暮らしをしていた。
王に恨みを持つ人々から処刑されそうになった時、月渓の使いに助けられ恭国(きょうこく)の供王(きょうおう)に預けられた。

下働きをする生活の中で祥瓊は、慶国の新王が10代の少女だと知った。
仮王(かおう)になった月渓が王位を奪ったと考えていた祥瓊は、供王の装身具と騎獣を盗み景王から王位を奪うため慶国に向かった。

その旅の途中祥瓊は楽俊と相部屋になり、王から奪った装身具を宿代にして捕まった。咄嗟に楽俊のせいにしたため2人とも捕まってしまった。
その後釈放され祥瓊の正体を知った楽俊に、公主から引きずり降ろされたのは自業自得だと言われた。
楽俊から景王が楽して今の地位を得たわけではないと聞いた祥瓊は、玉座を奪うことを止め景王が作る国が見たいと慶国へ向かった。

慶国では陽子が勅令(ちょくれい)を出さなければいけなかったが、良い国とはどのような物か分からず悩んでいた。
陽子は中陽子(ちゅうようし)の名を使ってお忍びで街に降りるようになった。

街ではかつて慶国の名王に仕えた遠甫(えんほ)に、王としていかに国を治めるか教えを乞うのだった。
ある日遠甫が何者かに襲撃され連れ去られてしまった。

鈴は昇紘を討ち取るために組織された殊恩党(しゅおんとう)の夕暉(せっき)の誘いで、内乱に参加した。祥瓊は和州の状況を知らせるため内乱に協力した。

陽子は遠甫を襲撃した者の足取りを追う中で、昇紘の打倒を誓う虎嘯(こしょう)に出会った。

宿で知り合った鈴と祥瓊は、お互いが昇紘を討とうとしていることを知り距離を縮めた。
鈴は祥瓊の話から昇紘が予王(よおう)に守られていたことを知り、罪を捏造する使吏もいることを聞き景王への認識を改めた。

陽子は虎嘯らと共に昇紘の別宅を襲撃した。そこにいた郁也は昇紘がこの世界を壊し陽子を救おうとしているというが、陽子は内乱軍の兵士に郁也を捕らえさせた。
捕らえられた郁也だったが、鈴に助けられ騎獣を借りて援軍を呼びに向かった。
森の中で小司馬(しょうしば)の軍に出くわした郁也は、自分に落胆した陽子を思い出し命乞いをせず銃を向けて刺されてしまった。

陽子たちは昇紘を拘束したが、呀峰らが昇紘を救おうとした。
その夜陽子と祥瓊、鈴の3人の少女は言葉を交わし陽子は自分が景王だと明かした。陽子の悩みを聞いた鈴は陽子のために一緒に戦うことを決意した。

民と州軍のにらみ合いの中、王直属の軍隊である禁軍(きんぐん)が遣わされた。祥瓊の「昇紘の味方が禁軍を動させる位置にいる」という言葉を聞いた陽子は、以前謀反の責任を取らせて降格した靖共(せいきょう)を思い出した。
そこで鈴と祥瓊に後を託し都へ向かった。

和州の民が王に目を付けられたと混乱する中、景麒に乗った陽子が現れ「誰の許可を得て禁軍を動かした」と将軍に尋ねた。黒幕が靖共と見抜かれていることを知った兵士は、戦意を失い全員が王に平伏した。
陽子は将軍に呀峰と靖共の逮捕と遠甫の救出を命じ、それを行えば今回の乱は不問にすると勅令を出した。

内乱は終わり、遠甫は王宮で師として陽子を導くことになった。郁也の遺体は十二国世界に埋葬することにした。
陽子と祥瓊と鈴は、自分を振り返って新たな道を進むこととなった。

乗月(じょうげつ)

峯王亡き後芳国を治めるのは月渓とされていた。陽子は和州の乱の後禁軍の左将軍になった垣魋(かいたい)に書状を届けさせた。
月渓は自分は謀反を起こして王を討ち取ったので仮王には就かないと、書状を冢宰(ちょうさい)に渡した。

垣魋は祥瓊が景王に仕えていると話した。
祥瓊が正式に召し上げられるためには、芳国にある戸籍を移し慶国の民にしなくてはいけなかった。そのためには芳国で空席になっている玉座を埋めて、王が許可を出す必要があった。

月渓は謀反を起こしたのは許されぬことだと、頑なに仮王になることを拒んだ。
垣魋は新王が登極するまでの間、月陰(げついん)になってはどうかと提案した。月陰とは月に乗じて日陽(にちよう)の王が現れるまで、国を預かるということだった。
月渓は祥瓊からの手紙に悔い改めた言葉が綴られているのを見て、新王に国を渡すため仮王になることを決めた。

東の神海 西の滄海(そうかい)

延麒六太(えんきろくた)は胎果として蓬莱で戦国時代に生まれた。六太は口減らしで捨てられたところを保護され蓬山で静養していた。
延麒は王を選ばないといけない使命と、王が雁を滅ぼしてしまうという気持ちで混乱し蝕を起こしてしまった。
延麒は蓬莱で延王となる小松三郎尚隆(こまつさぶろうなおたか)を見つけたが、尚隆を王にして雁を滅ぼすわけにはいかないと、自分の正体を明かさなかった。

尚隆は小松の土地を狙う村上水軍との戦いで民と共に戦い、延麒も自らの使令を出したが守れたのは尚隆だけだった。
延麒はまだ王を信じきれてはいなかったが、尚隆と誓約を結び十二国世界へと渡った。荒れ果てた雁を見て尚隆はやる気を出し、新たな雁国が建ったのだった。

尚隆が延王に即位して20年が経ち雁国は復興を遂げつつあったが、西の元州(げんしゅう)で謀反の動きがあると情報が入った。
延王は元州侯の息子で切れ者の斡由(あつゆ)と話をつけようとしていた。

その頃六太の旧友を名乗る駁更夜(ばくこうや)が王宮を訪れた。
更夜は斡由に拾われて仙籍に入っていた。更夜は慈悲深い麒麟の情に訴えて、妖魔の天犬(てんけん)の口に赤子を入れて六太に元州への同行を願った。
更夜は斡由のために麒麟を呼び出したのだった。

延麒は元州の漉水(ろくすい)の流れが絶たれたことで、民が水源に困っていることを知った。王が漉水の件を取り上げないと聞いた延麒は、王に完全な信頼を寄せていなかったため人質になることを受け入れ投獄された。
更夜は麒麟の力の元である角を呪具(じゅぐ)で封じた。同じく捕らえられていた州侯の監視役の驪媚(りび)にも同じ呪具がつけられた。
呪具を切ると相手が死ぬ仕組みになっていた。
延麒が「王が仕事をしないから、斡由がこのような手段に出たのだ」と言うと、驪媚は「主上にはお考えがある」と言うのだった。

王宮に呼ばれた元州の州宰(しゅうさい)を務める院白沢(いんはくたん)は、王の上に帝位を設けその地位に斡由をつけて欲しいと訴えた。
王はそれを拒否し延麒を返すよう要求したうえで、白沢をそのまま帰し斡由に王位を奪わないよう進言しろと告げた。
延王は禁軍を動かし、元州の城を包囲するよう将軍に命じた。

王が軍を動かしたと斡由から聞いた延麒は、明日の万の民を生かすために今日千を殺すという斡由と尚隆の考えに愕然とした。
中枢では尚隆が元州の兵士になったと報告が入った。尚隆はこの内乱で殺されてもよいと覚悟していた。

驪媚は王を軽んずる発言をする延麒に「延王は物事を考えて行動する」と言い、延麒を逃がすため呪具を切って死亡した。
王側が水攻めをするために堤作りを始めたと、七日間眠っていた延麒は聞いた。

延麒を看病していた女官は、国を傾けるつもりはないと延麒を逃した。
捕らえられてた女官は、斡由の行為は謀反でしかないと降伏を勧めるが、更夜と天犬によって惨殺された。

逃げた延麒は地下宮を探るうちに、息子に投獄された元州侯に会った。
元州侯が「斡由は自分に非はないと信じたがっている」と評するのを聞いた延麒は、それまでの斡由の行動を振りかえり彼の正義に実態がないと思った。
州軍に混じっていた尚隆は、腹痛を装い隊列から離れ延麒を探した。延麒は尚隆を見て、自ら問題のある土地に潜入した度量を感じ取った。
尚隆に発見された延麒は背に負ぶわれ、「心配をかけるな」とそっと声をかけられた。

女官の血の臭いをさせた更夜に会うと延麒は震え出した。
延麒も更夜も自分の主を守る気持ちは同じだったが、斡由に命じられれば人をも殺す更夜を延麒は良しとしなかった。
更夜の「全部滅びれば楽になる」という言葉に尚隆は怒り、「国を傾けるようなことに手を貸すな」と諭すが更夜はその場を後にした。

元州の兵士が完成した堤を破壊し始め民と乱戦になった。
延麒は斡由の前に現れ、自分を誘拐したことと父親を幽閉したことを尋ねた。斡由は延麒を誘拐したのは更夜だと言い、父親のことは知らないと答えた。

そこに白沢が現れ、堤を壊すとはどういうことかと斡由を問い詰めた。その場にいた家臣は堤を破壊することを聞いていなかった。
元州の兵士と民が戦っていることは斡由も初めて聞いた。

白沢は「元州はもう終わりだ、王の軍に罪を告白して温情を測れ」と家臣に言った。斡由はその場の家臣や白沢に責任を擦り付け、延麒と共に王宮に行って事の顛末を王に話すと言った。しかし延麒が断ると、白沢と手を組んで自分を貶めようとしているとまで言い出した。

ここで、斡由の家臣のふりをしていた尚隆が正体を露わにした。延王は斡由に決闘を申し込み、家臣たちに「主を守りたいなら体を張って自分を止めてよい」と告げた。
しかし誰も斡由を守らず、延王に後ろから斬りかかった斡由は延王に殺された。

主を失った更夜は延王から「お前や天犬が追われない土地をやるから時間をくれ」と言われ、涙を流し「待っている」と述べて放浪の旅に出た。
延麒は更夜を許し、王として度量を見せた尚隆に礼を言った。

『十二国記』の登場人物・キャラクター

慶東国(けいとうこく)

慶東国とは、十二国世界の一つである。ここにまとめるのは、アニメ版のシリーズを通した主人公と言える中嶋陽子が王となった慶国(または慶)の人物。中には他国の出身者や海客もいるが、最終的に慶国の住民となった者もここに記す。
慶東国は別名を慶国(けいこく)、または慶(けい)という。現在の王は胎果の中嶋陽子(または中陽子)、麒麟は景麒である。
数代前の達王以来王に恵まれておらず、無能な女王が三代続いた。陽子はそんな中で景麒に選ばれた女王である。陽子が正式に登極するまでは偽王の舒栄がおり、国は内乱による戦火を始めとする災禍に見舞われていた。陽子の即位後、今まで王の代わりに政治を動かしてきた官吏からすれば王、特に胎果の王は邪魔な存在でしかなく陽子が官職を言い間違えるなどすると揚げ足をとるような発言をした。
陽子は即位に際し、景麒と話し合った結果、年号を赤楽(せきらく)とした。この「楽」の字は、陽子の友人にして大恩人の楽俊から一字とったものである。
都は堯天(ぎょうてん)。王宮は金波宮(きんぱきゅう)。陽子は普段、金波宮で生活をしている。
予王の時代より、和州なる土地では昇紘やその部下らが天意に背いた行いを繰り返していた。これにより、『風の万里 黎明の空』では垣魋らによる和州の乱なる内乱が起きるも、事態を知った景王・陽子により鎮圧されている。この和州の乱は、人道を重視する高官を救い、人道を踏みにじり君臨する悪徳高官を罰することとなり、陽子や国にとっては良い結果をもたらした。

中嶋陽子/景王/中陽子(なかじま ようこ/けいおう/ちゅう ようし)

出典: gyao.yahoo.co.jp

王となった陽子。

声:久川綾

中嶋陽子は、蓬莱(日本)に生まれた女子高生である。『月の影 影の海』初登場。アニメ版では全編を通した主人公と言える。『風の海 迷宮の岸』のように、原作に陽子がいないエピソードでも、聞き役として(視聴者と同じ目線で)わずかながら登場している。

厳格な父とそれに従うだけの母の下、他者の顔色を気にする性格に育つ。実は十二国世界から蓬莱に流された胎果であり、慶国の王となるべき人物だった。突如現れた景麒にひざまずかれて、「(陽子を狙う)追手が来ている」と言われた。わけが分からぬまま、陽子は景麒の力で十二国世界に渡る。この時、幼馴染みの浅野郁也、クラスメイトの杉本優香が一緒でないと嫌だと口にした為、二人も同行することとなった。また、十二国世界に渡る直前に護衛の意味で、人に取り憑き戦力を上げる妖魔の冗祐を体内に入れられている。この為、自分の意志と関係なく冗祐に操られる形で景麒から手渡された刀(水寓刀)で戦うこととなる。
十二国世界に戻った途端に別人のように容姿が変わるが、これは胎果の特性である。陽子の場合は釣り目になり、目の色が緑に変貌した程度だが作中人物からすればまるで別人らしく、優香や郁也から「誰だ」と言われている(声や服装で陽子だと分かった)。景麒やその部下である女怪、使令からは何の説明も受けておらず、なぜ自分が追われるのかも分からなかった。

十二国世界の人間だけでなく海客、果ては優香にまで裏切られて騙された為、ネズミの半獣(見た目には二本足で歩いて口を利く大きなネズミ)、楽俊と会った時には人間不信状態だった。楽俊とその母のお人好しともいえる性格に心が溶きほぐれていくが、完全に信じ切ることはできなかった。警備兵に見つかった時には、海客だとばらされるのではないかと思い、一度は楽俊を見放した。
蒼猿から何度も「いい子ぶっているだけ」といった陽子自身の本心を口にされ心を乱されるが、陽子は楽俊を信じたいとの気持ちが募り、迷いを捨てて蒼猿を斬り、楽俊を追って雁国へと向かう。雁国の港で楽俊と再会した陽子は、海客の松山誠三の元へ案内される。そこで「景麒にひざまずかれた」旨を話すと、誠三と楽俊は陽子を慶国の王・景王となるべき人物として態度を改める。それまで陽子に対し気さくに接してきた楽俊だったが、王は自分とは遠い存在として一歩退いて接し、逃げるように陽子の下を去ろうとした。楽俊を信じると決め、友人と認識していた陽子は、逃げるように去った楽俊を追い、一歩退いた今の楽俊の態度を差別だとして説得。改めて友人となる。

延王からは麒麟が頭を垂れた時点で人として死んでいるので、蓬莱(日本)に戻ったところで長くは生きられないと聞かされる。慶国に残り王となれば生きられる上、荒れた状態にある慶国を建て直せるのが自分以外にいないとも言われた。慶国には王を名乗る舒栄がいたが、舒栄は仮王であり、仮王が玉座につくことは天命に背くとされ国は荒れたままとなる(実際には偽王)。舒栄は、景麒を呪具で縛りつけ従えていた。蓬莱に戻るか王になるかとの選択を突き付けられた陽子は十二国世界にとどまり王となる覚悟を決める。その為には、景王を名乗る舒栄から景麒を救出する必要があった。囚われていた景麒を救い、誓約を交わして舒栄から玉座を奪還、景王として即位した。
王になる決意こそ固めたものの、蓬莱とはまるで違う世界や、どこへ行っても平伏される生活などに戸惑う。そもそも無能な女王が三代続いた慶国においては、女王という時点で、官僚たちから歓迎されていなかった。何も知らない胎果という点も、高官たちに歓迎されない理由であった。十二国世界のことを把握しきっていない状態で家臣の役職名を間違えるなど失態も多く、自らの至らなさを思い知る。
『風の万里 黎明の空』ではこの世界の道について何もわかっていないと痛感し、達王に使えていた飛仙(現在の王に仕えない仙)である遠甫の教えを受けることで王として、人としての道を学ぶ。

お忍びで出かける際は男性的な服装をすることが多い。これは男装というわけではなく蓬莱で「女の子らしい」生活や姿を強要されていたことの反動と、王の衣装がゆったりとしている上重ね着で動きづらい為である。お忍びの際は「中陽子」の名を使う。

和州における乱で祥瓊、鈴、垣魋といった信頼できる者と出会い官僚とする。この一件の後、王が初めて出す命令である初勅として、自分への平伏の禁止を命じた。これは地位で人が人を踏みにじることで悲劇が起きる、和州の乱を見て決めたことである。すなわち、慶国の民が、唯一無二の自分の君主として、何があってもくじけない心を持ってほしいとの気持ちからきている。

景麒(けいき)

出典: fotki.yandex.ru

声:子安武人

慶国の麒麟。蓬莱まで陽子を迎えに来て誓約の為頭を垂れる。塙王の追っ手が来ていることもあり、何も知らない陽子に対し説明ができず、陽子たちをまず十二国世界に逃がすことになった。優香や郁也も十二国世界に行かせたのは陽子がそう望んだ為である。景麒自身は血を浴びたことで弱り、塙麟によって動きを封じられる。
予王(先代の景王)の妹の舒栄が偽王として覇権を握るために、麒麟を弱らせる鎖を使われていたところを陽子に救われて改めて誓約を交わす。その後は陽子に仕えるが、使用人に「お疲れ様」と声をかけたり、メモを取ったりする陽子の姿勢に王らしくないとの不満を抱く。原作では「不満だけはすぐ顔に出る」とされており、真面目で慈悲深いが不器用な印象を与える。

景麒は戴国の麒麟の泰麒と話をしたことがある。その頃胎果の泰麒は十二国世界に戻って来たばかりで、転変ができず落ち込んでいた為、女仙の長である碧霞玄君に頼まれて蓬山を訪れたのだった。この時、泰麒に王の選び方や転変の仕方を聞かれるが、景麒は王を選ぶことも転変もさして難しいことではないと告げた。この言動は悪気があってのものではなかったが、話し方が四角四面な上、泰麒が麒麟にとって自然で簡単に出来るはずの動作すらできないとの事実を知らしめることとなり、却って泰麒にプレッシャーを与える結果となった。この一件に関して碧霞玄君に「もっと言いようがあるだろう」ととがめられて「同じ蓬莱生まれの延台補にお頼みすればよかったのでは」と返している。
それでも泰麒の目の前で転変を行い、使令の捕らえ方や、王を選んだ時のことなどを教え、不器用ながら泰麒のためできうることをした。その真意は伝わったらしく、泰麒から「景台補はお優しいです」と言われている。転変以外でも泰麒が王を選び出す自信がないことを知っていたため、泰王即位の知らせを受けた時には無事に王を選ぶことができたのだと安堵した。

景麒自身は泰麒が戻る二年前に王気を感じ、王気をたどって予王を探し当てた。予王の時代、王から異性として想いを寄せられていた。予王が景麒に近づく女性への嫉妬から、ことごとく女官などが罷免した際に失道の病(王が道に外れた政治をした時に、麒麟がかかる病)にかかっている。予王が自主的に退位したことで病は治った模様。

白芥瑚(はく かいこ)

出典: s.dianping.com

えどまち
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