十二国記(ラノベ・アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ

『十二国記』とは、小野不由美による小説、及びそれを原作とするアニメなどのメディアミックス作品である。女子高生の中嶋陽子は、人の顔色を気にして生きてきた。そんな陽子の前に、麒麟の景麒を名乗る青年が現れ彼女を王と呼ぶ。陽子は本来の故郷である十二国世界へ渡り、様々な戦いを経て王になる覚悟を決めるのだった。ある者は権力とそれに伴う責任に向き合い、ある者はコンプレックスに向き合って成長を遂げる。古代中国風の異世界を舞台にした異世界ファンタジーでありながら、不思議なリアリティを持つ作品である。

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泰麒(人型)と景麒(獣型)

黒麒麟の姿をとる泰麒。

十二の国の王を選ぶ存在。各国に一頭(一人)ずついる。自国の王となる人物にだけ膝を折り頭を垂れる。役職名は宰補(さいほ)だが、王以外の者が神仙に近い存在たる麒麟を役職で呼ぶのは恐れ多いとして、台補(たいほ)と称される(景麒なら景台補など、国号の後に台補をつける。「台補」は王を「主上」と呼ぶのと同じく、ある種の敬称と思われる)。麒麟の性格に個体差こそあれど概ねその性質・性格は仁、慈悲や憐みの心で出来ており、「麒麟は民を慈しむよう進言する」と延王・尚隆は口にした。
血の穢れに弱く、血を見る、浴びるなどするだけで気分が悪くなったり、病熱のように苦しむ描写もある。麒麟が血を見るなどして弱ることを「血に酔う」と表現される。怨みのこもったものなど、ある程度血の性質が分かる(憎しみから傷つけあった血だと認識した泰麒が酔う場面がある)。麒麟同士にだけ分かる気配が存在する為、胎果の麒麟を見つけることもできる。『風の海 迷宮の岸』では延麒が胎果の泰麒を探し当てている。また、本当に自分が麒麟なのか自信の持てない泰麒に対し、景麒が確かに麒麟の気配をまとっているとも言った。

王の選別は、天のさだめに従って王気を感じ取り見つけ出す形で行う。王気は麒麟だけに判別できるとされるが、王気そのものはこれといって決まった形があるわけではなく、王を選んだ麒麟でも説明しがたいものがあるらしい。延麒のように直感で分かることもあれば、泰麒のように恐怖心に似た感覚を抱く場合もある。その人物に執着のような気持ちを抱けば、それが恐怖に似たものであっても王気であるとは景麒の言。
自国の王以外の者には決して頭を下げることがない。これは本能的なものであり、他国の王であろうと麒麟への土下座の強制は不可能である。逆に自国の王であれば、「この人物は王ではない」と頭で思っても、土下座をする、或いはひざまずくこととなる。王気に関するこの性質は、戴国の泰麒が体現することとなった。泰麒は、驍宗を王ではないと感じながらも頭を下げてしまい、天命に背いたと沈んでいた。このことを打ち明けられた景麒は、戴国の隣国である雁国の延王と、麒麟の延麒に頼んで、延王への土下座の強要という芝居を打った。泰麒は延王に頭を下げることがどうしてもできず、驍宗が王となるべき人物であったから膝を折ることができたと知る。頭では「王の器ではない」と感じられる人物であっても、王気を感じることがある。景麒は舒覚(後の予王)を選んだ際に、彼女が名君になるには、何かが足りないことも感じ取っていた。

世界の中心、黄海は蓬山(ほうざん)の中腹の蓬廬宮(ほうろぐう)にある捨身木(しゃしんぼく)に黄金の卵果として実り、馬と鹿の中間のような獣の姿で誕生する。力の源は角。この角は額に一本生えており、人型の際は少し盛り上がっている。
たてがみは人型の時に髪の毛になり、総じて麒麟は長髪である。白い体毛に金のたてがみが基本であり、人型の時は金髪となる。十二国世界の住民は様々な髪の色をしているが、金髪は麒麟のみであり、延麒はお忍びで街に出る際は目立つ金髪を隠すために頭に布を巻く。泰麒は全身の毛並みが鋼色をした黒麒麟であり、人型の時も黒髪のままであった。
前の麒麟が死ぬと、すぐ捨身木に次の麒麟の卵果が実る。麒麟の卵果は「泰果」、「塙果」などと呼ばれる。麒麟が行方不明になった際は新たな卵果が実るか否かで生死の判別が可能。
生まれた直後は女怪の乳で育ち、女怪により守られる。幼獣の段階では麒麟の姿をとりながら妖魔を折伏し、自身の僕となる使令に加える。生まれて5年ほどすると角が生え、人型になって人語を話すようになるとされる。それまでは言葉も分からない赤ん坊のようなものである。成獣となり王を選ぶまでは蓬山の主として蓬山公(ほうざんこう)と呼ばれる。妖魔の折伏の他、自力で虚海に赴き、蓬莱や崑崙に渡ることも可能。

黄旗が掲げられて麒麟が王の選定ができるようになったことが知れ渡ると、玉座を望む者が自ら蓬山まで赴く。これを昇山という。昇山してきた中に王となる人物がいることもあれば、蓬山の外に王気を感じた麒麟が自ら出ていくこともある。昇山せずに王となった者として、景王・陽子、延王・尚隆(共に胎果)、予王、供王などがいる(厳密には供王は昇山をしたが、その最中供麒が迎えに来た)。
人型の時に子供の姿であっても王を選んだ時点で「大人」と見なされ、女怪による添い寝はされなくなる。王の補佐役として付き従い、時に助言も行う。泰麒は驍宗を王に選んだ時点で大人と見なされたが、麒麟としては雛同然であったらしく、蓬莱から戻った後も肉体的には15歳程度であった。
牡(男性)なら麒、牝(女性)なら麟と呼ばれ各国の国名の後に麒もしくは麟がつく(景麒、延麒、泰麒、峯麟、塙麟など)。これは国号とよばれるもので、字(あざな)という呼び名を名乗ることもある。延麒の字は六太、もしくは馬鹿、泰麒の字は蒿里。

失道(しつどう)

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失道の病にかかった塙麟。

麒麟がかかる病。王が道に外れた政治を行った場合に失道の病にかかる。全身に湿疹のような黒い斑点が出て、徐々に弱っていく。王が政治を改めれば治るが、そのケースはほぼ皆無である。作中で失道の病にかかったのは、景麒、塙麟、奉麟。後者二名は死亡している。塙麟は失道の病による病死(アニメでは陽子を庇い、塙王に殺されている)、奉麟は謀反で討たれた。景麒は予王が自ら王位を返したことで治ったと思われる。

女怪(にょかい)

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新たな巧国の麒麟の卵果を見守る女怪。

各国の麒麟が蓬山にいる間の親代わりを務める存在。人と幼獣の中間に位置する。人間の女性や様々な鳥獣が混じったキメラのような姿をしており、混じっている数が多いほど良い女怪とされる。捨身木には女怪と麒麟の卵果が同時に実り、女怪は麒麟よりも先に生まれる。女怪は生まれる前の麒麟の性別も知っており、戴国の女怪・白汕子が麒麟の卵果に「泰麒」と呼び掛ける描写がある。
女怪は麒麟を守ることしか考えられない。麒麟が生まれると乳を与えて育て、あらゆる災難から守る。いくらか教育めいた事をするなど、母親と護衛の役割をこなす。麒麟が誕生するまでの間、じっとその卵果の下で待ちわびる。実際他国の王が蓬山を訪れても、そちらを見向きもしない描写が存在する。麒麟が王を選ぶまでは乳母のような役目をし、王を選んだ後は使令として王や麒麟の護衛に徹する。
女怪は皆「白(はく)」という姓を持つ。麒麟を守り育てる重大な使命を持つ証として姓を持つのが、女怪の定めだと女仙が口にしている。作中では景麒、延麒、泰麒、塙麟、新たな巧国の女怪が登場している。蓬莱においては表立って行動することはまずないが、自分が守護すべき麒麟に影のように付き従う。蓬莱に戻った要(泰麒)や六太(延麒)の女怪が影から麒麟を守り、声をかける描写もある(高校生になった要の場合は麒麟としての力が弱っていることもあってか、女怪の声までは聞こえていない模様)。麒麟が弱ると女怪もまた弱る。

十二国世界の王以外の身分・生物

仙(せん)

十二国世界で、仙籍に入った人物を指す。仙となれば不老不死となる。飢えで死ぬことはないが、空腹や飢餓感を覚えることはある。また完全な不死というわけではなく、冬器なる特殊な武器により首を刎ねるか胴を断つと死に至る。仙籍は自分で返上することもできれば、他者から奪われることもある。仙籍から外されればその瞬間から普通の人間となり、年を取るようになる。作中では、芳国の公主・祥瓊が謀反の結果、仙籍から外された。

王に使える者も仙籍に属する。王となった場合は自動的に仙籍に入れられる。王に任命され、王に仕える仙を地仙(ちせん)と呼ぶ。各州候や中枢の官僚など、続けざまに王に仕える仙も地仙に属する。こうした場合、王がいない間自分たちで政治を行ってきたという自負を持つ者もおり、新たな王を軽んずるような言動をとることも少なくない。陽子は胎果であることも相まって官僚たちに揚げ足を取られることもあった。地方を治める州候(しゅうこう)もまた仙である。

王に仕えない仙を飛仙(ひせん)と呼ぶ。かつて王に仕えていた者も、現在仕える王がいない(もしくは現在の王に仕えていない)場合は飛仙となる。作中の主な飛仙は翠美君梨耀、遠甫、女仙など。飛仙の中には生きることに飽きる者もおり、自ら仙籍を返上することも多い。飛仙と王は互いに干渉をしないのが慣例だが、誰も行使しないだけで、王がその気になれば飛仙を罰する権限がある。

女仙(にょせん)

蓬山にて、麒麟の世話をするのが役目。ただの人間の中から女仙に召し上げられる。麒麟が王を選ぶまではその麒麟を主(蓬山公)として仕える。単なる世話役だけではなく、麒麟に話しかけてきた者を制するなどある程度の護衛も行う。麒麟が心身ともに健やかに育ち、良き王を選ぶことを望む。
本来なら麒麟と共に食事ができる身分ではないのだが、泰麒が蓬山公だった時には、食事の前に泰麒に会えた者が相伴の栄誉を受けることとなった。これは泰麒が胎果であり、一人ではないのに一人で食事をすることを寂しいと感じたための特例である。

胎果(たいか)

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胎果である陽子は、十二国世界に戻った途端本来の姿となり、クラスメイトの由香や郁也から別人と思われた。

蝕により、蓬莱や崑崙に流された十二国世界の住民の卵果から生まれた人物。卵果が適当な既婚女性の腹に入り、妊娠、出産の段階を踏んで誕生する。蓬莱や崑崙での親族と似た姿になるよう「殻」を被る。陽子は祖母に似ていると言われていたが、それは殻をかぶっていたためである。この殻は胎果が十二国世界に戻ると消え失せる為、十二国世界に戻ってからは雰囲気や外見が変化する。作中では陽子が共に渡って来た優香や郁也から「誰だ」と言われており、声や服装で陽子だと認識された。延麒(六太)は髪の色が変わり、泰麒(要)は髪の長さが変わっている。そのまま自分の本来の出自を知らずに蓬莱や崑崙で一生を過ごす人物もいるが、王や麒麟といった重要な胎果は連れ戻される。

海客(かいきゃく)/山客(さんきゃく)

出典: abema.tv

海客の郁也(左)と優香(右)。陽子(中央)は胎果である。

海客とは蓬莱(日本)から蝕で流されてきた人物である。『十二国記』アニメ本編では浅野郁也、杉本優香、大木鈴、松山誠三、壁落人が海客に当たる。基本的に蝕自体がいつどこで起きるか分からないこともあって元の世界に戻ることは不可能だが、優香は景麒の力で日本に帰還した。
山客は崑崙(中国)から蝕で流されてきた人物を指す。海客が虚海の果てに流れ着くのに対し、山客は金剛山の麓にたどり着くとされる。作中では、山客は登場しない。
胎果との違いは十二国世界の人間ではなく、蝕に巻き込まれた漂流者であること。卵果から生まれる十二国世界の住民とは違い、母親の腹から生まれるなど、本質的に違う存在。半獣と同じく差別される存在で、「できそこない」呼ばわりする者もいる。
十二国世界の言語は古代中国語のような漢文形式らしく、海客には聞いたことのない言葉に聞こえ、意思の疎通に苦労する。仙籍にある者とは言葉が通じ、仙籍に入れば言葉の苦労はなくなる。松山誠三が近隣住民から「訳の分からない言葉で怒鳴るな」と文句を言われる描写がある。
海客は、東寄りの国である慶国、雁国、巧国に流れ着くことが多い。その為、十二国世界の住民からは虚海の東から流れつく者と認識される。芳国は山客によって仏教がもたらされており、建造物に寺院の名残りがある。

海客、並びに山客は生きた状態で流れ着くこともあるが、「溺れて」死んだ状態で流れ着く場合もいるらしい(溺れるとは言っても、水に流されるわけではない)。海客の呼び名は、虚海に流れ着くことからついた模様。胎果と同じく、その出生方法や別の世界から来たとの出自から気味悪がられる。

作中では山客が登場せず、海客の扱いのみが描写された。雁国では難民や半獣だけでなく海客の保護も行っており、日本語を話せる受付を置いて電話番号や郵便番号、氏名などを聞く。優香は郵便番号が7桁であることから「海客のふりをして保護を受けようとしているのだろう」との嫌疑をかけられた。たまたま居合わせた延麒が「今の蓬莱の郵便番号は7桁」だととりなしている。
巧国では、海客が流れつけば生死にかかわらず役所に届け出られることになっており、生きていれば良い海客か悪い海客かを見極められる。良い海客と判断されればしかるべき人物が後見人となり適当な場所で暮らしていけるが、悪い海客と判断されればよくて幽閉、悪くて処刑とされる。陽子は県庁に運ばれる際、このことを聞いた。

妖魔(ようま)

出典: www.netflix.com

天の理にそぐわぬ存在。様々な種族が存在する、怪物のようなもの。黄海や王のいない国に現れては人間を始め生き物を襲い、時には麒麟にも攻撃を仕掛ける。人間の赤ん坊の泣き声に似た声で人をおびき寄せるものも多い。蓬山付近にも現れて昇山する者を襲うこともあり、昇山が危険と言われる理由の一つである。
麒麟は妖魔を折伏してからめとり、妖魔の主として使役する。妖魔は麒麟が自分の主にふさわしいと認めた場合、使令(麒麟の部下)となる契約を結ぶ。契約とは麒麟の死肉を食らわせることである。
妖魔の強さには幅があり、高位の妖魔は人語を操る。姿を変えるものもあるが、これは麒麟並みに強い力を持つことを意味する。作中では、饕餮が最高位の妖魔として現れて、何度もその姿を変えて泰麒を威嚇、攻撃した。
景麒は、泰麒に強い意志の力が妖魔を縛るとは景麒が泰麒に語った。泰麒は強い意志を持って最強の妖魔・饕餮を使令に下した。麒麟でも妖魔から主として認められずに命を落とすケースもある(景麒談。実際、泰麒が饕餮を使令にしたと聞いた女仙たちが「饕餮を絡めとった麒麟は初めて」と口にしたことから、饕餮を使令に下せず死亡した麒麟もいたと思われる)。

使令(しれい)

えどのゆうき
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