十二国記(The Twelve Kingdoms)のネタバレ解説まとめ

『十二国記』とは、小野不由美による小説、及びそれを原作とするアニメなどのメディアミックス作品である。女子高生の中嶋陽子は、人の顔色を気にして生きてきた。そんな陽子の前に、麒麟の景麒を名乗る青年が現れ彼女を王と呼ぶ。陽子は本来の故郷である十二国世界へ渡り、様々な戦いを経て王になる覚悟を決めるのだった。ある者は権力とそれに伴う責任に向き合い、ある者はコンプレックスに向き合って成長を遂げる。古代中国風の異世界を舞台にした異世界ファンタジーでありながら、不思議なリアリティを持つ作品である。

出典: www.happyon.jp

鈴の夢に出た景王(左)。

各国に一人存在し、国を統治する。世襲ではなく麒麟に選ばれて玉座につき、政治を行う。条件はその国の生まれであること、前の王と同じ姓でないこと。後者の条件は、古代中国の儒教にある易姓革命(後述)の思想が元になっている。

十二国世界の「王」は、天帝により王と定められ王気を持つとされる。王となるのに元の身分、性別、年齢は関係なく、12歳で王になった者(供王)や、胎果の王(延王、景王)もいる。唯一王気を感じ取れる麒麟に選ばれ盟約を結ぶ。この段階では「天命が下った」とされるだけで、すぐ玉座につけるわけではないが、自動的に仙籍には入れられる。陽子が十二国世界に来ても言葉に困らなかったのは、景麒にひざまずかれたことで仙籍に入ったからである(仙籍に入っていれば、蓬莱の生まれでも十二国世界の言葉に困らない)。尚、仙籍にいれば飢えなどで死ぬことはない。
蓬山で天勅を賜り、各国の白雉(はくち)と呼ばれる鳥が「即位」と鳴くことで正式に即位となる。王が立つと、その印として国に龍旗が掲げられる。龍旗は王の印でもあり、王直属の軍隊である禁軍(もしくは王師)もこれを掲げる。麒麟は自力で蓬莱や崑崙に向かうことができるが、王を連れて行くことはできない。これは王が国を離れることで国が荒れる為。

王となった時点で自動的に仙籍に入れられて仙人となり不老不死の体を得る。このことは人として死に、王として生きると表現される。王を殺すには冬器の武器で首を刎ねるか胴を断つかしかない。道に外れた政治により麒麟が失道の病などで死んだ場合は共倒れで死亡する。予王のように、自ら王位を返上して死ぬ場合もある。

単なる統治者ではなく国の土台であり、王という存在そのものが国の方向を決める。災害が起きないよう儀式を行うなど、王にしかできない職務もある。
政治の舵取りは各人の手腕、つまり王の意思や才覚に任せられる。王が良い官吏を選び善政を敷く国は豊かになる。王が死ぬと国が傾き始める。妖魔がはびこり、豊作は望めず徐々に人心も荒れていく。その為、王が斃れた国の民の中には、次の王が選ばれるまで他国に逃れる者も少なくない。こうした民を難民や浮民と呼び、国によっては他国からの難民を保護することもある。難民の保護の程度は国によって差があるが、これもまた王の器に左右される。一定の基準をクリアした難民に戸籍を与える国もあれば、ただ受け入れるだけの国もまた存在する。

道に誤った政治を行ったせいで王が滅び、国が傾く事も多い。作中では二つの国(巧と芳)が王の悪政が元で滅んだ。もっとも芳国は仮王がいる為一応国として機能している。巧国は麒麟も王も、仮王さえもおらず機能停止状態にある。
王は先に挙げた条件で死なない限りは国を治め続けることとなり、国も栄える。雁国延王は治世が500年に及んでいる。実際には王だけではなく官僚たちも共に政治を行い地方を治める州候などとの関係も考慮に入れなくてはならない。王が立派に政治を行おうとしても、末端が罪人に賄賂を要求することもあれば、民を虐げることもある。

延王曰く、王には三度の転機があるという。一度目は王になって十数年した頃。即位から10数年のうちに優秀な官僚たちを揃えられるかが最初の難関となる。この編成に失敗し、政治への関心や気概を失う王も少なくないとされる。予王もまたプレッシャーから政治への関心を失くした。二度目は一般的な人間の寿命を超えた頃。生きることへの欲求を失うとされる。官吏の中にも、人間の寿命が尽きる頃に仙籍を離れるものが多いらしい。
三度目の転機は即位から300年ほどした頃。永久に国を治め続けることに対しプレッシャーを感じるとされる。過去の歴史を見ても、数百年ほどは名君だったが末期に暴政を敷いて滅んだ王が少なくない(梟王、達王など)。蓬山へ赴き自ら王位を返上することも可能(予王)。
王になった時に結婚していない場合は伴侶を得ることができない。即位の時点で家族がいれば共に仙籍に入り、子供は公子、公主とされる。王后や公子、公主は官僚と共に王を助けるのが望まれる。

王やその家族は基本的に贅沢な暮らしができるが、供王曰く重い責任を担っている為許されている特権である。楽俊は「王様は偉そうで当然。偉そうにした分その責務を果たさなければならない」と陽子に話している。

麒麟や家臣などからは「主上(しゅじょう)」と呼ばれるが、これは面と向かって呼ばれる敬称であり、基本的には各国の国名の後に「王」とついた名称が使われる。
各国の名前と同じ読みの国氏があてられる(慶国→景王、景麒など「ケイ」と読める時になっている)。この国氏は天により与えられたものだと楽俊が説明している。

王の性格、王としての器をある程度知る物差しとして初勅(しょちょく)がある。これは王が初めて公に出す命令であり、陽子は初勅をどうするかについて悩んでいた。延王や延麒は「そんなに難しく考えることはない」とし、「民は元気で暮らすこと」とした王もいれば、初勅を出さなかった王もいるとされる。陽子は考えた挙げ句、官僚たちに自分への平伏を禁じた。これは慶国の民に、各々自分の王になってほしいとの考えからである。

【易姓革命】
現実にある儒教の、政治に関する思想。意味としては王朝の移り変わりを示す。古代中国では、王もしくは皇帝の位は、天命により授けられた物と考えられていた。道に外れた政治をした王や皇帝は、地位を取り上げられて別の姓を持った者が支配する新たな王朝が立つとされた。
現実の易姓革命は、世襲(『十二国記』でいう所の同じ姓)による古い王朝が廃れて新たな王朝(今までの王とは違う姓の王)が立つ、時代の変遷を意味する。一つ史実から例を挙げれば、殷から周に王朝が移った経緯がある。殷の最後の王、紂王は妃の妲己に夢中になり圧政、暴政を敷いた。その為民の心が離れて、周の武王に取って代わられたとされる。
十二国世界の王の選定は、この思想が下敷きとなっており、姓が先王と同じである時は選ばれることはない。作中で言えば巧国の楽俊が先王と同じ姓を持つために王に選ばれないとされている。陽子が本来の親のことを口にした際、先王と違う姓のはずだと楽俊から指摘される描写もある。

仮王(かおう)/偽王(ぎおう)

仮王とは、天綱と慣習の定めにより、王や麒麟がいない国において一時的に王の役目を果たす者を指す。作中では芳国の月渓が仮王に当たる。月渓は自国の王を討ち取ったため、厳密には偽王とされるが周囲の信認がある為、仮王と呼ばれる。予王舒覚の妹、舒栄も本来なら仮王だが、麒麟を強制的に従えていた為、偽王とされる。

麒麟(きりん)

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泰麒(人型)と景麒(獣型)

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黒麒麟の姿をとる泰麒。

十二の国の王を選ぶ存在。各国に一頭(一人)ずついる。自国の王となる人物にだけ膝を折り頭を垂れる。役職名は宰補(さいほ)だが、王以外の者が神仙に近い存在たる麒麟を役職で呼ぶのは恐れ多いとして、台補(たいほ)と称される(景麒なら景台補など、国号の後に台補をつける。「台補」は王を「主上」と呼ぶのと同じく、ある種の敬称と思われる)。麒麟の性格に個体差こそあれど概ねその性質・性格は仁、慈悲や憐みの心で出来ており、「麒麟は民を慈しむよう進言する」と延王・尚隆は口にした。
血の穢れに弱く、血を見る、浴びるなどするだけで気分が悪くなったり、病熱のように苦しむ描写もある。麒麟が血を見るなどして弱ることを「血に酔う」と表現される。怨みのこもったものなど、ある程度血の性質が分かる(憎しみから傷つけあった血だと認識した泰麒が酔う場面がある)。麒麟同士にだけ分かる気配が存在する為、胎果の麒麟を見つけることもできる。『風の海 迷宮の岸』では延麒が胎果の泰麒を探し当てている。また、本当に自分が麒麟なのか自信の持てない泰麒に対し、景麒が確かに麒麟の気配をまとっているとも言った。

王の選別は、天のさだめに従って王気を感じ取り見つけ出す形で行う。王気は麒麟だけに判別できるとされるが、王気そのものはこれといって決まった形があるわけではなく、王を選んだ麒麟でも説明しがたいものがあるらしい。延麒のように直感で分かることもあれば、泰麒のように恐怖心に似た感覚を抱く場合もある。その人物に執着のような気持ちを抱けば、それが恐怖に似たものであっても王気であるとは景麒の言。
自国の王以外の者には決して頭を下げることがない。これは本能的なものであり、他国の王であろうと麒麟への土下座の強制は不可能である。逆に自国の王であれば、「この人物は王ではない」と頭で思っても、土下座をする、或いはひざまずくこととなる。王気に関するこの性質は、戴国の泰麒が体現することとなった。泰麒は、驍宗を王ではないと感じながらも頭を下げてしまい、天命に背いたと沈んでいた。このことを打ち明けられた景麒は、戴国の隣国である雁国の延王と、麒麟の延麒に頼んで、延王への土下座の強要という芝居を打った。泰麒は延王に頭を下げることがどうしてもできず、驍宗が王となるべき人物であったから膝を折ることができたと知る。頭では「王の器ではない」と感じられる人物であっても、王気を感じることがある。景麒は舒覚(後の予王)を選んだ際に、彼女が名君になるには、何かが足りないことも感じ取っていた。

世界の中心、黄海は蓬山(ほうざん)の中腹の蓬廬宮(ほうろぐう)にある捨身木(しゃしんぼく)に黄金の卵果として実り、馬と鹿の中間のような獣の姿で誕生する。力の源は角。この角は額に一本生えており、人型の際は少し盛り上がっている。
たてがみは人型の時に髪の毛になり、総じて麒麟は長髪である。白い体毛に金のたてがみが基本であり、人型の時は金髪となる。十二国世界の住民は様々な髪の色をしているが、金髪は麒麟のみであり、延麒はお忍びで街に出る際は目立つ金髪を隠すために頭に布を巻く。泰麒は全身の毛並みが鋼色をした黒麒麟であり、人型の時も黒髪のままであった。
前の麒麟が死ぬと、すぐ捨身木に次の麒麟の卵果が実る。麒麟の卵果は「泰果」、「塙果」などと呼ばれる。麒麟が行方不明になった際は新たな卵果が実るか否かで生死の判別が可能。
生まれた直後は女怪の乳で育ち、女怪により守られる。幼獣の段階では麒麟の姿をとりながら妖魔を折伏し、自身の僕となる使令に加える。生まれて5年ほどすると角が生え、人型になって人語を話すようになるとされる。それまでは言葉も分からない赤ん坊のようなものである。成獣となり王を選ぶまでは蓬山の主として蓬山公(ほうざんこう)と呼ばれる。妖魔の折伏の他、自力で虚海に赴き、蓬莱や崑崙に渡ることも可能。

黄旗が掲げられて麒麟が王の選定ができるようになったことが知れ渡ると、玉座を望む者が自ら蓬山まで赴く。これを昇山という。昇山してきた中に王となる人物がいることもあれば、蓬山の外に王気を感じた麒麟が自ら出ていくこともある。昇山せずに王となった者として、景王・陽子、延王・尚隆(共に胎果)、予王、供王などがいる(厳密には供王は昇山をしたが、その最中供麒が迎えに来た)。
人型の時に子供の姿であっても王を選んだ時点で「大人」と見なされ、女怪による添い寝はされなくなる。王の補佐役として付き従い、時に助言も行う。泰麒は驍宗を王に選んだ時点で大人と見なされたが、麒麟としては雛同然であったらしく、蓬莱から戻った後も肉体的には15歳程度であった。
牡(男性)なら麒、牝(女性)なら麟と呼ばれ各国の国名の後に麒もしくは麟がつく(景麒、延麒、泰麒、峯麟、塙麟など)。これは国号とよばれるもので、字(あざな)という呼び名を名乗ることもある。延麒の字は六太、もしくは馬鹿、泰麒の字は蒿里。

失道(しつどう)

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失道の病にかかった塙麟。

麒麟がかかる病。王が道に外れた政治を行った場合に失道の病にかかる。全身に湿疹のような黒い斑点が出て、徐々に弱っていく。王が政治を改めれば治るが、そのケースはほぼ皆無である。作中で失道の病にかかったのは、景麒、塙麟、奉麟。後者二名は死亡している。塙麟は失道の病による病死(アニメでは陽子を庇い、塙王に殺されている)、奉麟は謀反で討たれた。景麒は予王が自ら王位を返したことで治ったと思われる。

女怪(にょかい)

出典: blog.sina.com.cn

新たな巧国の麒麟の卵果を見守る女怪。

各国の麒麟が蓬山にいる間の親代わりを務める存在。人と幼獣の中間に位置する。人間の女性や様々な鳥獣が混じったキメラのような姿をしており、混じっている数が多いほど良い女怪とされる。捨身木には女怪と麒麟の卵果が同時に実り、女怪は麒麟よりも先に生まれる。女怪は生まれる前の麒麟の性別も知っており、戴国の女怪・白汕子が麒麟の卵果に「泰麒」と呼び掛ける描写がある。
女怪は麒麟を守ることしか考えられない。麒麟が生まれると乳を与えて育て、あらゆる災難から守る。いくらか教育めいた事をするなど、母親と護衛の役割をこなす。麒麟が誕生するまでの間、じっとその卵果の下で待ちわびる。実際他国の王が蓬山を訪れても、そちらを見向きもしない描写が存在する。麒麟が王を選ぶまでは乳母のような役目をし、王を選んだ後は使令として王や麒麟の護衛に徹する。
女怪は皆「白(はく)」という姓を持つ。麒麟を守り育てる重大な使命を持つ証として姓を持つのが、女怪の定めだと女仙が口にしている。作中では景麒、延麒、泰麒、塙麟、新たな巧国の女怪が登場している。蓬莱においては表立って行動することはまずないが、自分が守護すべき麒麟に影のように付き従う。蓬莱に戻った要(泰麒)や六太(延麒)の女怪が影から麒麟を守り、声をかける描写もある(高校生になった要の場合は麒麟としての力が弱っていることもあってか、女怪の声までは聞こえていない模様)。麒麟が弱ると女怪もまた弱る。

十二国世界の王以外の身分・生物

仙(せん)

十二国世界で、仙籍に入った人物を指す。仙となれば不老不死となる。飢えで死ぬことはないが、空腹や飢餓感を覚えることはある。また完全な不死というわけではなく、冬器なる特殊な武器により首を刎ねるか胴を断つと死に至る。仙籍は自分で返上することもできれば、他者から奪われることもある。仙籍から外されればその瞬間から普通の人間となり、年を取るようになる。作中では、芳国の公主・祥瓊が謀反の結果、仙籍から外された。

王に使える者も仙籍に属する。王となった場合は自動的に仙籍に入れられる。王に任命され、王に仕える仙を地仙(ちせん)と呼ぶ。各州候や中枢の官僚など、続けざまに王に仕える仙も地仙に属する。こうした場合、王がいない間自分たちで政治を行ってきたという自負を持つ者もおり、新たな王を軽んずるような言動をとることも少なくない。陽子は胎果であることも相まって官僚たちに揚げ足を取られることもあった。地方を治める州候(しゅうこう)もまた仙である。

王に仕えない仙を飛仙(ひせん)と呼ぶ。かつて王に仕えていた者も、現在仕える王がいない(もしくは現在の王に仕えていない)場合は飛仙となる。作中の主な飛仙は翠美君梨耀、遠甫、女仙など。飛仙の中には生きることに飽きる者もおり、自ら仙籍を返上することも多い。飛仙と王は互いに干渉をしないのが慣例だが、誰も行使しないだけで、王がその気になれば飛仙を罰する権限がある。

女仙(にょせん)

蓬山にて、麒麟の世話をするのが役目。ただの人間の中から女仙に召し上げられる。麒麟が王を選ぶまではその麒麟を主(蓬山公)として仕える。単なる世話役だけではなく、麒麟に話しかけてきた者を制するなどある程度の護衛も行う。麒麟が心身ともに健やかに育ち、良き王を選ぶことを望む。
本来なら麒麟と共に食事ができる身分ではないのだが、泰麒が蓬山公だった時には、食事の前に泰麒に会えた者が相伴の栄誉を受けることとなった。これは泰麒が胎果であり、一人ではないのに一人で食事をすることを寂しいと感じたための特例である。

胎果(たいか)

出典: ameblo.jp

胎果である陽子は、十二国世界に戻った途端本来の姿となり、クラスメイトの由香や郁也から別人と思われた。

蝕により、蓬莱や崑崙に流された十二国世界の住民の卵果から生まれた人物。卵果が適当な既婚女性の腹に入り、妊娠、出産の段階を踏んで誕生する。蓬莱や崑崙での親族と似た姿になるよう「殻」を被る。陽子は祖母に似ていると言われていたが、それは殻をかぶっていたためである。この殻は胎果が十二国世界に戻ると消え失せる為、十二国世界に戻ってからは雰囲気や外見が変化する。作中では陽子が共に渡って来た優香や郁也から「誰だ」と言われており、声や服装で陽子だと認識された。延麒(六太)は髪の色が変わり、泰麒(要)は髪の長さが変わっている。そのまま自分の本来の出自を知らずに蓬莱や崑崙で一生を過ごす人物もいるが、王や麒麟といった重要な胎果は連れ戻される。

海客(かいきゃく)/山客(さんきゃく)

出典: abema.tv

海客の郁也(左)と優香(右)。陽子(中央)は胎果である。

えどのゆうき
えどのゆうき
@edono78

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