入畑伸照（ハイキュー!!）とは【徹底解説・考察まとめ】

入畑伸照の概要

入畑伸照（いりはたのぶてる）とは、『週刊少年ジャンプ』（集英社）にて2012年から2020年まで連載されていた、古舘春一原作の高校バレーボールを題材にした日本の漫画・アニメ作品『ハイキュー!!』に登場する人物。
主人公・日向翔陽（ひなたしょうよう）とそのライバルであり相棒でもある天才セッター影山飛雄（かげやまとびお）の対戦校である、宮城県の4強に数えられる青葉城西高校で男子バレーボール部の監督をつとめる。
監督としては、基本的に選手達に試合運びを任せる方針で、積極的に指示を出す様子はないが、常に「完成系チームを作る指導者」と評価が高い。作中では烏野高校と一番最初に対戦し、就任の遅かった烏野高校コーチ烏養繋心（うかいけいしん）よりも早くから、日向・影山コンビの驚異を目の当たりにしており、作中序盤から烏野高校の成長ぶりを語る人物でもある。

『ハイキュー!!』とは、2012年の日本における宮城県の烏野高校男子バレーボール部を中心に展開するスポーツ少年漫画。主人公日向のプレーには多少の誇張はあるものの、基本的なルールやプレーは現実に忠実に描かれている。王道の学園スポーツ漫画であるが、順風満帆ではないリアルな青春の姿が描き出されており、さらにバレーに興味がない人にも読みやすいようにルールやプレーの説明が物語に組み込まれている。これにより、多くのバレーボール未経験者をもファンとして獲得した。

入畑伸照のプロフィール・人物像

所属・役職：青葉城西高校のバレー部監督
年齢：52歳
最近の悩み：お腹が出てきて気になるけどビールはやめられない
CV：星野充昭

壮年期の男性らしくふくよかな体型をしており、高校生である選手陣に穏やかに接する一見人柄の優しそうな監督である。しかし、強豪校のクセのある選手陣をしっかりとまとめ上げており、時には厳しく接することもある。自身が強豪校の監督を務めていることに慢心せず、弱小校となった烏野高校のバレー部に対してもきちんと礼儀を払い接する常識ある社会人である。対戦相手の選手の成長などに対しても、警戒しながらも素直に評価している。これらのことから、芯の通った人格者であることが伺える。

入畑伸照の能力：強豪校を牽引する指導力

選手の主体性を育てる指導方針をとっており、試合中であっても積極的な指示出しを行わない。ただし、眺めているだけのお飾りな立場ではなく、選手陣が相手チームの攻略案に難航している際には助け舟を出し、1人の選手にばかり意識が向きすぎる時にはそれを諌めることもある。それゆえ、「完成系チーム」を育てる監督として高く評価されている。
選手それぞれの能力をよく観察しており、それは自陣だけでなく相手選手にも適応される。身体能力以外は素人同然であった日向翔陽のポテンシャルを、影山の精緻なセットアップあってこそと理解しつつも、作品序盤から警戒していた1人でもある。さらに日向の攻撃の派手さだけでなく、WSでありながらレシーブ力の高い澤村大地（さわむらだいち）や次期エースとして期待の厚いWS田中龍之介（たなかりゅうのすけ）、頭の良さと観察眼に優れるMB月島蛍（つきしまけい）なども弱小校とは言えぬ高い評価をしている。また自身の感じた第一印象に慢心することなく、影山の控えセッターとなった菅原孝支（すがわらこうし）が試合の流れを変えた折には、影山ばかりに注視した点を反省し「篤実なセッター」として高く評価した。
強豪校の監督に就任していることから、バレーボール経験者であると推察されるが、現役時代の能力やポジションについては言及されておらず不明。

入畑伸照の来歴・活躍

物語開始以前

青葉城西高校バレーボール部の指導をしながら、コーチの溝口貞幸（みぞぐちさだゆき）とともに、新年度の部員を確保するため、周辺中学のバレー強豪校の情報収集・偵察を行う。
この頃に、北川第一中学でプレーしていた影山飛雄（かげやまとびお）の存在を認知していた。だが影山が自己中心的でプライドが高く、勝利に対して頑なであることを耳にする。
作中で青葉城西高校の主将として活躍する及川徹（おいかわとおる）も影山の当時について認知していたことから、及川からも情報収集を行った可能性がある。
この影山のプレーが独裁者の様であったとして周囲のプレーヤーからも忌避されるようになっていることを認知しながらも、技量やセンスに優れすでに才能を開花させていることを評価し、北川第一中学でレギュラーを務めた金田一勇太朗（きんだいちゆうたろう）や国見英（くにみあきら）とともに青葉城西高校へ勧誘した。
これに対し影山は、溝を深めていた北川第一中学のレギュラーの多くが進学する青葉城西への進学を拒否し、ほかの県内一の強豪校白鳥沢学園への進学を望んだため、獲得は成らなかった。ただし影山は一般入試で白鳥沢学園を受験し不合格となったため、烏野高校へ進学した。

烏野高校との練習試合

烏野高校男子バレーボール部顧問の武田一鉄（たけだいってつ）からの要請があり、自身が監督する青葉城西高校との練習試合をセッティングする。
以前勧誘していた影山飛雄が烏野高校に進学したと情報を得ていた入畑は、「影山をスターティングからフル出場」を練習試合の条件として提示した。監督陣の交代もあり数年の間に成績を下げ弱小校となった烏野は、練習試合をセッティングするコネクションを失っていたため、これを受け入れ、マッチアップが実現する。

試合は、公式試合経験のほとんどない烏野高校のミドルブロッカー（MB）で主人公・日向翔陽（ひなたしょうよう）の連発したミスにより、第1セットは25-13で青葉城西が先取する。第2セットで本領を発揮した日向の超高速移動に合わせて影山が精密トスを送る“変人速攻”（青葉城西は“神業速攻”と呼ぶ）が決まり始めると、第2セット14-16で初めてのタイムアウトをとる。出場していた控えセッター（S）矢巾秀（やはばすぐる）や1年生MB金田一が「影山のトスに合わせられるスパイカーがいる」と警戒を強めていると、入畑は“影山自身がスパイカーに合わせた精緻なトスを送っている”と忠告する。この時入畑は、日向の技術は素人同然であることも理解した上で、影山を“スパイカーに合わせる”立場に徹しさせる日向のポテンシャルを高く評価した。
徐々に烏野高校が追い上げ、青葉城西は22-24とセットポイントまで追い詰められる。この一筋縄ではいかない戦況に、WS田中龍之介（たなかりゅうのすけ）やMB月島蛍（つきしまけい）、キャプテンでWSの澤村大地（さわむらだいち）などの能力も決して低くないこと、素人まがいを軸にした烏野の戦略を「面白いチーム」と評価した。
第2セットを22-25で烏野が奪取すると、第三セットの開始時に通院中だった主将であり正セッター及川徹（おいかわとおる）が体育館に到着する。入畑は及川に入念なウォーミングアップを指示し、烏野高校相手に礼儀のつもりで及川を出場させると決める。
21-24で烏野のマッチポイントとなると、アップを終えた及川を1年生ウィングスパイカー（WS）の国見と交代させ、ピンチサーバーとして投入する。青葉城西は及川の超強力ジャンプサーブで烏野を翻弄するも、最後は影山と日向の超速攻の前に23-25で敗北した。

IH予選 VS烏野高校

インターハイ宮城県予選大会の第2回戦で大岬高校を破った青葉城西高校は、第3回戦で烏野高校と対戦する。

練習試合で烏野高校の日向＆影山の速攻を経験した青葉城西高校に、入畑は「日向に振り回されすぎないように」と忠告し、コースを絞っても止められないものは拾うように戦術を立てる。
第1セット4-3とリードしているタイミングで及川からタイムアウトの要求があると、意図を掴みきれないまでも、及川を信頼してタイムアウトをとる。この時及川は神業速攻の合図を読み切っており、それを自陣に伝えるとともに、烏野の主に影山に対して「サインを読まれた」という精神的圧力をかける目的があった。入畑は選手の自主性に任せるスタンスを崩さず、「神業速攻の時は日向を1人がマーク、それ以外はトスがどこに上がるか見てから跳ぶ」と及川の立てた対策に無言で同意する。
その後、及川の強力なジャンプサーブで点差を突き放すと、体制を立て直すも縮まらない点差に影山が焦り出し、とうとうコンビネーションミスをおこす。青葉城西は、調子の乱れる烏野に先んじて20-11と20点台に到達する。この時点で影山と烏野3年の控えセッター菅原孝支（すがわらこうし）が交代となる。菅原投入により攻撃のリズムが変わった烏野に翻弄されつつも、着実に点を重ね、青葉城西は25-15で第1セットを先取する。これにより入畑は、影山にばかり注視してきた点を反省し、菅原を「篤実なセッター」として評価を改めた。
第2セットも続投してきた菅原を徐々に攻略すると、17-16で烏野は影山を再投入する。平常のリズムを取り戻し、青葉城西のブロックばかり気にしていた影山が自陣の選手にも意識が向くようになったのを見抜くと、入畑は調子をあげた烏野の流れを切るため、19-21でタイムアウトを要求する。入畑は、直前にとられたブロックアウトを仕様がないと宥め、選手たちに落ち着いているかと精神的なフォローを行うと、通常通り選手たちに対策を立てさせた。影山が烏野MB月島とのコンビネーションを苦手としていることに及川や松川など選手陣が気づくと、烏野センター線への警戒を緩める。しかしこれが仇となり、月島へのコミュニケーションを取り始めた影山は、積極的に月島を活用していく。これにより月島がフェイントを繰り返すと、青葉城西のリベロ（Li）渡親治（わたりしんじ）も徐々に守備を前のめりにしていき、その穴を突くように強打を返されてしまう。これが関係し、最終的には調子をあげた烏野により23-25で第2セットを奪われる。
第3セットの開始前、日向影山の速攻のサインが変わったことに気づいた青葉城西選手陣は、日向がボールを目で追うときは普通の速攻、単純に突っ込んで来るときは神業速攻であると対策を考えた。これに対して、入畑は日向に意識をとらわれすぎることを警戒したが、その考えは主将の及川も同様であり、「あくまでも囮」と周囲を諌めた。日向影山コンビの移動攻撃が決まりはじめ調子をあげていくと、徐々に日向の囮に翻弄され、15-15で入畑はタイムアウトを要求する。対策の出てこない選手陣に対し、入畑は日向影山の速攻へのブロックを諦め、レシーブで拾っていくよう指導する。これにより、ブロックの壁がなくなったことで視野が確保され、リベロの渡も本領を発揮する。青葉城西は徐々に点を稼ぎ、19-17と2点リードで日向を後衛に下げることに成功する。ここで烏野も対策としてジャンプフローターサーブを覚えたばかりのMB山口忠（やまぐちただし）を投入する。これが決まることはなかったが、これにより防戦一方であった烏野の空気が変わったことに気付いた入畑は、警戒を強めた。士気をあげた烏野は執拗に食らいつき、土壇場で24-24に追いつく。試合はデュースに持ち込まれ、烏野が一時逆転するも、最終的には日向影山の神業速攻をブロックで制し、33-31で第3セットを奪う。これにより、青葉城西はセットカウント2-1で烏野高校に勝利した。

しかし、このあと待ち受けていた宮城の最強豪校白鳥沢学園を相手に決勝で敗北し、インターハイを宮城県予選大会準優勝で終えた。

春高予選 VS烏野高校

青葉城西は、第1セットから及川、岩泉のさらに強くなったサーブや熟練のチームワークを見せる。一方、烏野も新しい神業速攻、シンクロ攻撃、青葉城西のリベロ渡からヒントを得たリベロ西谷夕（にしのやゆう）のトスなど、新しい武器で挑む。これにより両者の勢力はほぼ拮抗していた。第1セット最終盤23ｰ24とセットポイントを握られた状況で、攻めきれないこの場にもう1つ欲しい攻撃力として、入畑は超強力スパイカーであるWS京谷賢太郎（きょうたにけんたろう）を投入する。しかし、京谷はWS金田一勇太郎（きんだいちゆうたろう）に上がったトスを、無理やり奪い取り強打を放つ。これは選手同士が接触するスレスレの危険プレーであったが、ボールがコート外に落ちセットポイントを落としてしまう。
入畑は、重要な場面にも関わらず失点した京谷を恐れず活用し、第2セットも続投させる。しかし、京谷は自身の満足感を優先しチームワークを乱し、花巻など内部の選手にも接触する場面もあった。青葉城西のウィークポイントが調和を乱している京谷であることに気付いた烏野は、リリーフサーバーに控えセッターの菅原を投入しサーブで京谷を狙う。京谷はこの作戦に見事にハマり、サーブレシーブで攻撃に出遅れ失点を重ねていく。青葉城西が連続3失点となったことで、入畑は第2セット1回目のタイムアウトを要求し、選手陣に対策を話し合う場を設ける。これに花巻が京谷をサーブレシーブからわざと外すよう提案する。この作戦が功を奏し、京谷は持ち前の強打の攻撃で点を奪い返す。烏野をセットポイントへ追い詰めた青葉城西だったが、烏野のピンチサーバーとして投入された1年生MB山口忠（やまぐちただし）のジャンプフローターサーブにまたも京谷が掴まり、3連続失点を重ねる。物理的に流れを切るため、入畑は2度目のタイムアウトを要求する。タイムアウト後も山口のサーブで失点は続き、試合は23-24のデュースに持ち込まれる。青葉城西はそれでも食らいついていき、最終的には28-26で第2セットを奪い返した。
第3セット開始前、入畑は選手陣にサーブは強気で、日向に多少決められるのは仕方ないため、コースを絞らせて拾えるものは拾っていくように、と再三になる注意を繰り返す。さらに、セットカウント1-1と後のない状況の選手たちに、「お前たちは強い」と発破をかけた。
第3セット、試合は一進一退と拮抗し、調子を上げてきた京谷のスパイクも決まってきていたが、烏野MB月島のブロッカーの位置をチェンジするという挑発にも似た奇策に煽られる。烏野の士気の変化や京谷の変調に気付いた入畑は8-9で1回目のタイムアウトを要求し、切り替えを促すが、京谷はさらに追い詰められ失点を繰り返す。リベロの渡の励ましすら冷たく突き放す京谷を、入畑は冷静さを取り戻すようにとコートから下げ、代わりに1年生WS国見英を投入した。この京谷の有様に腹を立てていた控えセッターの矢巾秀（やはばすぐる）は、戻ってきた京谷に自身の憤りをぶちまけ、チームワークの大切さを説く。入畑は、2人のやり取りを観察し京谷の変化を感じ取ると、京谷の答えが出るのも待たず10-12で京谷を再投入した。京谷もこれに答えるように及川とのコンビネーションを成功させる。
調子をあげ追いついた青葉城西だったが、それに食らいつくように烏野も調子をあげていき、両者はつかず離れずのゲームを繰り広げる。状況打開のため、18-18で入畑は金田一と交代で矢巾をピンチサーバーに投入する。矢巾の投入により青葉城西は連続得点となる19点目を奪うが、負けじとする日向のフェイントに翻弄され点差を開くことができない。24-23で先にマッチポイントとなった青葉城西に対し、烏野はピンチサーバーに菅原を投入し勝負をしかける。菅原の攻撃の主力陣を牽制するサーブ、日向影山の2枚ブロックや影山の強気のツーアタックで烏野が点差を塗り替えマッチポイントを奪い、24-25となる。これにより完全に士気をあげた烏野の流れを切るため、入畑も2回目のタイムアウトを要求する。青葉城西の選手陣は、エースの岩泉を牽制するなど菅原の狙いどころの良いサーブを警戒し、気合を入れ直す。
しかし最後は、影山のセットアップとブロックの隙間を狙ったかのような日向の強烈なスパイクを及川が大きく弾き、24-26で第3セットを落とし敗北した。

激戦の果てに敗北した後悔を噛み締める選手陣に、入畑はよく戦ったと栄誉を称えた。

入畑伸照の関連人物・キャラクター

及川徹（おいかわとおる）

CV：浪川大輔
青葉城西高校バレー部主将を務める3年生のS。背番号は1。誰彼構わずあだ名を付けるが、流石に入畑相手に気安くあだ名で呼んでいる描写はない。
攻撃型セッターとされ、華麗なトスと強烈なジャンプサーブを武器としている。総合力県内トップのプレーレベルの高さもさることながら、高いコミュニケーション能力も併せ持ち、味方選手それぞれの性格やクセを掴んで試合に活かす司令塔である。また、対戦相手チーム・選手への観察眼も鋭い。
劇中の青葉城西の戦略は、ほとんどが及川が立てており、入畑もそんな及川を高く買っている。高校生らしく視野が狭まり精神的に追い詰められることもあるが、監督の入畑や副将の岩泉の助言・鼓舞によって冷静さを取り戻すなど、周囲の人材にも恵まれている。
入畑は及川の将来を見込んで、後述のホセ・ブランコとの対面の場を設けるなど尽力した。

岩泉一（いわいずみはじめ）