凶悪(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『凶悪』とは、ノンフィクションベストセラー小説『凶悪 -ある死刑囚の告発-』を元に、2013年に映画化された社会派サスペンス映画である。雑誌記者の藤井(ふじい)は、上司から須藤(すどう)という死刑囚に会うように言われる。須藤は数々の犯罪に手を染めてきていた。そして、須藤と共謀して多くの犯罪を犯し、最後には須藤をだました木村(きむら)という男の話を聞く。藤井は話を聞くうち、家庭を顧みず取材にのめりこんでいく。この映画は、私たちの身の回りのどこにでも存在しうる犯罪をリアルに描く作品となっている。

『凶悪』の概要

『凶悪』とは、ノンフィクションベストセラー小説『凶悪 -ある死刑囚の告発-』を原作として2013年に公開された、日本の社会派サスペンス映画である。原作は1999年に茨城で実際に起きた「上申書殺人事件」をもとに、死刑囚が告発した事件の真相を『新潮45』が記事にし、首謀者逮捕に至るまでを描いた犯罪ドキュメンタリー。2009年に文庫化されてからは10万部をこえるベストセラーとなり、フジテレビ系の大人気バラエティ番組でも紹介された。映画は全国78スクリーンで公開され、公開からわずか11日間で興行収入が1億円を突破した。さらに翌年には興行収入が2億円を超え、ロングラン上映されることとなった。第37回アカデミー賞の優秀作品賞や優秀監督賞、第56回ブルーリボン賞の助演男優賞(ピエール瀧)など、数々の賞を受賞している。
『明潮24』の雑誌記者の藤井は、上司から死刑囚の須藤の話を聞いてくるように言われる。須藤は覚せい剤や殺人等、数々の犯罪に手を染めていた。その須藤から「シャバにどうしても許せない男がいる」と、木村という不動産ブローカーの話を聞く。木村と須藤は共謀して三つの犯罪を犯したが、最終的に須藤は木村に裏切られたという。取材を続けるにつれて、信憑性が高まる須藤の告発。藤井は次第に取材にのめりこみ、自らの家庭をないがしろにしてしまうようになる。この映画では「善とは何か、悪とは何か」「一般人と犯罪者の線引きはどこなのか」といった、簡単には割り切れない人間の性質が描かれている。この作品に描かれている犯罪や複雑な人間模様は、私たちのまわりのどこででも起こりうることなのだ。

『凶悪』のあらすじ・ストーリー

七年前

警察に捕まる須藤

「この物語は実在の事件をもとにしたフィクションである」というテロップから、物語は始まる。

7年前のある日の夜、一台の走る車の中では一人の男がおびえた様子で拘束されていた。その男の背中に刃物をあて、恫喝しているのはある暴力団の幹部である須藤純次(すどうじゅんじ)。車を運転しているのは、その舎弟の五十嵐邦之(いがらしくにゆき)だった。橋の上で男を降ろした須藤と五十嵐は、両手を拘束したままの男を橋の欄干に立たせる。男は「もう許してください」と懇願するが、須藤と五十嵐は気にせず男を責め立て、そのまま橋の欄干から男を落としてしまうのだった。

あるアパートの一室では、若い女が五十嵐にレイプされていた。女は「もうやめてください、助けて」と泣いている。すぐ近くには日野(ひの)と呼ばれる男が拘束されている。顔や身体は殴られた跡だらけである。部屋のテーブルでは、須藤が注射器に覚せい剤を用意しており、その覚せい剤を若い女(日野の交際相手の順子)の腕にうつ。須藤は「見ろ日野、お前が逃げ回ってるからこんなことになるんだぞ」と言う。日野は「お願いします、助けてください」と言うが、順子の意識はすでにもうろうとしており、何も反応しなくなっている。須藤は「五十嵐、灯油まけ、燃やすぞ」と五十嵐に部屋に灯油をまかせるのだった。

夜の車の中で、須藤は自らの腕に覚せい剤をうっていた。そこに外から五十嵐が戻ってくる。五十嵐は「昔の仲間と連絡取れましたよ。取りあえず身柄を隠せるホテルを手配してくれるそうです」と須藤に告げるが、須藤は「先生と何話した」と言葉をかぶせる。「はい?」と五十嵐は須藤が何を言っているのかわからない様子だ。さらに須藤は「てめえだけ逃げるつもりだったか。お前ぇだけは信じてたのによぉ」と、五十嵐に拳銃をつきつける。暗闇に数発の発砲の音が響くのだった。そして須藤はビルの合間を逃げていた。あとから数名の警察官が追ってくる。須藤はついにつかまり警察官に怒声を浴びせるが、手錠をかけられ数々の罪状が読み上げられていた。

藤井と須藤の出会い

藤井の母、和子をなだめる洋子

『明潮24』という雑誌の編集部では、編集者の藤井修一(ふじいしゅういち)と編集長の芝川理恵(しばかわりえ)が話していた。芝川が藤井に「ちょっと協力してくれる?昔のツテで直接手紙もらっちゃったのよ。話だけでも聞いてみて」と一通の手紙を渡す。藤井が受け取ったその手紙には、「未決死刑囚 須藤純次」の名前があった。
須藤の話を聞きに、藤井は刑務所の面会部屋に来ていた。面会部屋に入ってきた須藤は、藤井に深く礼をし、「須藤です。今回は、来てくださってありがとうございます。」と告げる。藤井は「須藤さんは死刑判決を受け、最高裁に上告中ですね。」と言い、須藤は「自分があれだけのことをやって、死刑になるのはしょうがない。ただ、どうしても許せねぇやつがシャバにいるんです。自分には、誰にも話していない余罪が3件あります」と言うのだった。「一人目の爺さんは焼却炉で燃やしました。土地を転売にして生き埋めにした爺さんが二人目、三人目の爺さんは、保険金かけて酒飲ませて殺しました。」と須藤は続ける。そしてその全ての事件の首謀者は、須藤が「先生」と呼んでいた男だと言うのだ。須藤は先生が外の世界でのうのうと生きているのがどうしても許せず、このことを記事にしてもらって先生を追いつめるため、手紙を書いたのだ。

藤井は自宅に帰ってきていた。藤井の母である藤井和子(ふじいかずこ)が、もう夜だというのに帽子をかぶって出かける準備をしている。「今日はもうどこにも行かないよ。遅いから寝よう」と藤井はなだめる。藤井の妻、洋子(ようこ)も「また明日ね」と和子に告げる。和子は認知症で「一日中あんな感じ、まいっちゃうな」と洋子はつぶやく。「ホームに入れることも考えようよ。このままじゃ私ももたないし」と言う洋子だったが、藤井は「悪いとは思ってるけどさ、もう少し考えさせてよ」としか言わない。「修ちゃんこの話になるといっつも逃げるんだもん。このままだと子供つくれないよ」と洋子は声を荒げ、部屋に戻っていった。

『明潮24』の編集部では、須藤から聞いた話をもとに、須藤がレポートを芝川に見せていた。「まるで犯罪小説じゃない」と言う芝川に、藤井も「俺もそう思いました」と返す。須藤が言う「先生」は木村孝雄(きむらたかお)。茨城で建築資材や物件・土地の売買をしていた不動産ブローカーである。報告書を読んだ芝川は「適当な理由つけて断ってきて。不動産ブローカーがヤクザと組んで人殺しても、当たり前すぎて記事になんないでしょ」と言うのだった。刑務所にやってきた藤井は、須藤に「記事にできません、上の判断です」と告げた。須藤は「俺が嘘をついていると?」と問う。「そうではありません。そもそも、なぜそこまで木村を憎むんですか。先生と慕っていたのでは?」そう言う藤井に、「木村にはめられて、かわいがっていた舎弟を殺しました。五十嵐は、俺を本当の兄貴だと慕ってくれていた。そいつをこの手で殺した。木村をこの手でぶち殺したい。これは五十嵐への弔いでもあるんです」と須藤は泣くのだった。さらに「どうせ死ぬなら明るみに出ていない事件も表に出さなければ、被害者の方々も浮かばれません。藤井さん、どうかお願いします」と深く頭を下げる須藤。刑務所の帰りの空を見上げ、藤井は何かを考えるのだった。

余罪2件目 島神剛志について

島神の土地の跡地と、鉄塔

『明潮24』の編集部では、藤井がたくさんの資料を見比べていた。同僚からは「例の案件、会社に黙って進めてんだろ。死刑囚の言うことなんか信じてんのか」と言われるが、藤井は意に介さない。そのまま地図や名簿を並べ、須藤が殺した被害者について調べ続けていくのだった。

2件目の余罪、島神剛志(しまがみつよし)に関して、須藤は「島〇〇」という曖昧な名前しか覚えていなかった。島神を生き埋めにした場所もはっきりしない。藤井は「島〇〇」という表札のある家を歩いてしらみつぶしに回り、調査していく。そのうち、ある開けた駐車場に行きついた。駐車場の奥には鉄塔が見える。藤井は近くを歩いていた男性に「この駐車場、島神さんて方の土地でしたよね」と聞く。すると「とっくの昔に売り払われたよ。ヤクザものが出入りしたあと、眼鏡をかけた初老の男性が来て、うちの土地の相場とか相談に乗ってくれたよ。親切だったね。先生って呼ばれてたけど」と言う。

刑務所の面会部屋では、藤井が須藤に「転売した土地の所有者、島神さんて方じゃなかったですか。近くに鉄塔があるのですが」と確認していた。須藤は島神の名前を聞いただけではピンと来ていなかったが、鉄塔のことを聞いて「はい、間違いありません」とようやく思い出したようだった。藤井は「なるべく詳細な地図を送るので、(島神を生き埋めにした場所を)なんとか思い出してみてください。私は土地の謄本を調べてみます」と須藤に告げた。そして土地に関する登記簿謄本を調べに来た藤井は、島神の名前の後に木村孝雄の名前があるのを確認する。これで須藤の話に信憑性が出てきたのだった。

藤井は自宅で母の和子と共に朝食をとっていた。そこへ妻の洋子が「なんか届いてるよ」と郵便物を藤井に手渡す。中身は須藤からの地図の返送で、そこには一か所しるしがつけられていた。藤井はさっそくその場所に行ってみるが、倒れた「管理地 木村商事」の看板があるだけの何もない空き地だった。その土地の目の前に住む男性に話を聞いてみると、「宅地造成されていろんな施設ができるって話だったんだけど、それが工事の気配もない」と言う。ただ、一時期だけ一台の小さいショベルカーが作業していることがあり、それも10日ほどでいなくなってそれきりだという。

刑務所の面会部屋で、「どうでした!?」と須藤は藤井に詰め寄っていた。藤井は、須藤が示した場所に木村が所有する土地が確かにあること、しかしそこに島神が埋められているかはわからないことを伝えた。「おそらく木村は島神さんの死体を掘り起こして、別の場所に移動しています。可能な限り証拠隠滅を図っていると思います」そう言う藤田に、須藤は「(余罪1件目の)死体燃やしたの、一緒にやったやつの名前を思い出しました。森田幸司(もりたこうじ)っていう土建屋の社長です。そいつの会社の焼却炉で燃やしました」と伝えるのだった。

藤田は、森田土建にきていた。会社はたたまれているのか、誰もいない。敷地の奥には焼却炉がある。焼却炉をみる藤井の背後から、初老の女性が近づく。この女性は森田の妻だった。「会ってもどうしようもないと思うんだけど」と言う森田の妻に案内され、藤井は森田の家に入る。藤井は些細なことでも話を聞けないかと期待していたが、森田は6年前に資材の下敷になり、寝たきりになっていた。藤井は森田の妻に「木村孝雄という名前を聞いたことは?」と聞くが、「見ての通り、死ぬのを待っているだけなんです。そっとしておいてください」と返される。資材の下敷になったことが事故かどうかを聞いても、返答はなかった。

余罪3件目 牛場悟について

面会部屋で須藤と面会する、藤井

『明潮24』の編集部では、藤井が芝川に詰め寄られていた。「(須藤の)その案件は断るっつう話だったよね!?」芝川の言葉に、藤井は「でも須藤の言っていることは本当だと思います」と返す。芝川は呆れた顔をしながら「確かにホンモノかもしれない。でも何の証拠もなしに記事にして、責任とれんの!?」と言うのだった。

刑務所の面会部屋では、再び藤井が須藤に記事にできないことを伝えに来ていた。「保険金かけて殺したジジイだけは、死体はあったんですよ。警察は自殺だって言ってましたけど、誰が見たって殺しだってわかる。いつになったら記事にしてもらえるんです?」と言う須藤に、藤井は会社から記事にする許可が下りなかったことを伝える。すると須藤は「ふざけんなよ!ぶち殺すぞてめぇ!」と突如豹変する。刑務官が須藤を止めに入るが、「人にさんざん話させといて、裏切んのか!」と、椅子を投げたりして激高するのだった。

藤井の自宅では、読書をする洋子の背後で和子が盗み食いをしていた。すでに夕食は終わっていたため、洋子は和子から食べ物を取り上げる。すると「どうしていじわるするの!!」と和子は何度も洋子に手を上げる。それを帰宅した藤井は目撃し、洋子に「私お母さんに手上げられてるんだよ!」と詰め寄られるが「母さんには俺から言っとくから」とだけ言って逃げる。そんな藤井と、それでも食べ続ける和子に、洋子は「もうやだ…」とつぶやくのだった。

「あんな昔の事件、記事にするんだ」藤井はある女性の部屋に来ていた。この女性は須藤の内縁の妻、遠野静江(とおのしずえ)である。「順ちゃん元気にしてる?いつ死刑になんの?」と言う静江の部屋に、須藤と静江の娘、星姫(きらり)が帰ってきた。藤井は会釈をするが、星姫は何も応じず、自室にこもる。藤井は気を取り直し、静江に余罪3件目の被害者、牛場悟(うしばさとる)について知っていることはないか聞く。静江は「電気屋のジジイでしょ。先生の所に居候してた。いつも酔っ払って、順ちゃんや舎弟が無理やり飲ませてた。」と言う。須藤・静江と木村の関係は、という問いに対しては「よく面倒見てもらってた。娘をかわいがってくれたり、お金を工面してくれたり」とのことだった。さらに静江は「ある日ジジイが急にいなくなって、順ちゃんが部屋で線香たいてたの。また順ちゃん殺したんだなって。ああ見えて情にあついっていうか。殺した舎弟の墓参りには必ず行ってくれってさ。憎めないんだよねぇ」と続けた。

藤井は刑務所の面会部屋で、須藤と面会していた。神妙な顔をした須藤は「また会いに来てくれるとは思いませんでした」とつぶやく。藤井は静江に会ってきたことを須藤に伝え、「彼女を先に紹介してくれればあなたの話の信憑性は高まったのに、なぜ話してくれなかったんですか」と聞いた。「真面目に生きてるでしょうから、関わってほしくないんですよ」と言う須藤に、記事にできるかはわからないが、取材を続けてみることを告げた。

藤井は「牛場電気設備」という、余罪3件目の被害者、牛場悟の会社兼店舗にきていた。その店舗前で荷降ろしをしている男性に近づき、藤井は名刺を手渡す。死んだ牛場について聞きたいと言う藤井に対し、固まる男性。この男性は、牛場の娘婿の牛場利明(うしばとしあき)だった。そのまま利明に続いて店舗に入った藤井。中には牛場の妻、百合枝(ゆりえ)が帳簿をつけているところだった。「悟さんは8,000万円の保険金に入っていたんですよね。それは全て借金の返済に充てられたんですか」と藤井は畳み掛ける。百合枝は、ごまかすように帳簿に目を向ける。「そうしてほしいって、本人がずっと言ってましたから」と利明が答えるが、「悟さんは本当に自殺だったんでしょうか」と藤井は言葉を続ける。今度は牛場の娘の恵美子(えみこ)が「警察がそう言ってますから」と店の奥から答えるのだった。これ以上牛場家の人間が何かを話すとは思えなかったのか、藤井は店を出てある雑木林にきていた。須藤からの手紙をもとに、牛場の遺体を捨てた場所を見に来ていたのである。その後、「木村商事」とドアに書かれた一軒の廃店舗にやってきた藤井は、窓から中をのぞいてみるのだった。

木村孝雄と須藤

焼却炉で遺体を燃やした、須藤(左)と木村(右)

須藤の言う、余罪1件目の事件についての回想が始まる。木村が自分の店の中で、ある男の首に縄をかけ、「借りた金も返せねぇで、死んじまぇ!」と首を絞めていた。首を絞められている男は余罪1件目の被害者の男であり、すぐに動かなくなってしまった。興奮した様子の木村は慌てて店の窓のカーテンを閉め、須藤に電話をかけていた。「どうしよう、やっちゃったんだよ、殺しちゃったんだよ」そう言う木村のもとに、須藤はやって来ていた。木村と須藤とで被害者の遺体を車に運び、「ごめんね順ちゃん、順ちゃんがいてくれて本当によかった」と木村は笑う。そのまま森田土建に遺体を運んだ木村と須藤は嫌がる森田を押しのけ、無理やり焼却炉まで遺体を運ぶ。焼却炉に被害者の身体を押し込む須藤だったが、「以外に(焼却炉の)奥行ないんだな」「(死後硬直で)硬くなっちゃった?」と言い、森田に鉈を持ってこさせる。須藤は躊躇なく鉈で被害者の遺体を解体し、焼却炉にどんどん放り込んでいく。灯油をまいてあとは火をつけるだけの段階で、木村は自ら「燃やしてみたいんだ」と火をつけるのだった。木村は「肉の焼ける良い匂いがする」と笑っていた。

その後のクリスマスの夜、木村、須藤、静江、五十嵐、星姫、木村の娘の幸恵(ゆきえ)、日野(ひの、木村が面倒を見ていた舎弟)でパーティをしていた。木村は星姫にランドセルのプレゼントを渡す。幸恵が星姫に、仲が良さそうにランドセルの背負い方を教えてあげている。また、木村は「この間(余罪1件目の死体処理)のお礼」と言って、100万円の束をいくつも須藤に手渡していた。そこで木村から、日野が須藤に紹介され、五十嵐とともに面倒を見てくれるように頼むのだった。

ある日、木村と須藤は島神の所有している雑木林に来ていた。島神は世間的には失踪していることになっているのだが、実は木村は島神の行方を知っており、島神を消してこの土地を転売しようと言うのだった。転売すれば、この土地は1億円近くになるという。「純次君、やってくれるかい」と言う木村に、「もちろんですよ」と須藤は軽く返事をする。そして木村商事に、木村と手を組んでいる福森(ふくもり)という男と、独りの老人がやってくる。木村は森田と電話中で、「この間話した土地持ちの島神って爺さん、また焼却炉借りて燃やしたいんだわ。嫌ってなんだよ。借金肩代わりしてやってるだろ」と話している。結局森田は焼却炉を貸すことを断ったため、島神は木村の所有する使っていない土地に埋めることになった。実は先ほど福森と共に来た老人が島神で、須藤はその老人を殴り、気絶させた。そのまま須藤、福森、木村は島神を運び、木村の土地に生き埋めにするのだった。生き埋めにする作業は須藤と福森が行い、木村は懐中電灯でその様子を照らす。木村は、猿ぐつわをされて命乞いをするようにこちらを見つめる島神を見て「そんな顔されたら興奮するな」とニヤニヤしていた。

須藤の内縁の妻、静江がママとして働くスナックには、須藤と五十嵐、日野、そして須藤が以前刑務所で知り合った佐々木賢一(ささきけんいち)が来ていた。佐々木は須藤に「けんちゃん」と呼ばれ、須藤にもらった覚せい剤を腕にうっていた。須藤と佐々木は所属する組は違えど、刑務所の中で意気投合し、佐々木が出所したことでそのお祝いをしていたのだった。佐々木の組は刑務所から出てきた佐々木を出迎えず、組の景気が悪いことを理由にして出所したばかりの佐々木に金を要求していたという。それを聞いた須藤は「ふざけてんな。今からぶっこみに行くぞ」と五十嵐達をけしかけるが、佐々木は「冗談でしょ」とうろたえ、日野も「まぁ今日のところは楽しみましょうよ」となだめるのだった。

家族に売られた牛場悟

余罪3件目の牛場悟の店、牛場電気設備では、木村と牛場家で寿司を食べていた。牛場はいびきをかいて寝てしまっている。木村は利明と「それで、(借金)どれくらいあんの」「じいちゃんに聞かされた時には5,000万」と話し、百合枝は「先月肝硬変と糖尿で余命一週間って言われたのに、入院したら元気になって帰ってきちゃって」と言う。牛場家では、もうすでに保険の掛け金も払えないほど困窮しているとのことだった。木村は「まぁ大事な事だから。みんなでしっかり話し合って。今決めなくていいから」と言い残して店をあとにした。

後日木村商事には、牛場とその家族が来ていた。「ここで働いてもらって、少しずつ借金返してもらいましょう」と言う木村に、牛場は心底感謝している様子である。そこで五十嵐が「仕事を教える」と言って牛場を退席させる。須藤と木村は牛場の家族に「今月の保険の掛け金」とお金を渡しながら、「お酒飲まして殺しちゃうけど、それはほら、そちらが頼み込んできたわけだから」と話す。そして利明も「それしか、家族が生きてく方法がね。お願いします」と返すのだった。その夜、牛場は須藤たちにどんどん酒を飲まされていた。牛場が「もう無理」と言ってもお構いなしである。須藤は佐々木に電話をかけていたが、つながらず、イラついている。そこに牛場が「私もう胃が痛くて」と須藤に詰め寄るが、足蹴にされてしまう。須藤は「おい、なんでここに連れてこられたかわかってんのか。お前酒で身体壊して死ぬんだよ、その保険金をこっちは待ってんだろが!!お前の家族にそう頼まれてんだよ!」と怒鳴る。やがて佐々木が、佐々木の頭の元にぶっこみに行くと息巻く須藤を止めにやってきて「うちの頭狙うってのはさすがにヤバいんじゃないかなぁ」と須藤をなだめるが、五十嵐が「おい、誰のために純次さんが一生懸命やってんのかわかってんのか」と反論する。そして須藤は日野に佐々木・牛場とこの場に残るように言い残し、須藤と五十嵐は佐々木の頭のもとに向かうのだった。須藤と五十嵐が乗り込んだ先は雀荘で、奥へとどんどん進んでいく。須藤は目的の男、佐々木の頭を見つけ出し、胸倉をつかむ。「この腐れヤクザが。お前、佐々木のけんちゃんに出所祝い渡すどころか、金まで要求したんだってな!」と須藤が恫喝すると、「何の話だよ!出所祝いならもうとっくに渡してる!」と頭は反論する。ここで、佐々木が須藤に「出所祝いをもらっていない」と嘘をついていることが発覚するのだった。須藤と五十嵐は、急ぎ佐々木のもとに戻る。しかし日野は居眠りをし、牛場は酔いつぶれており、佐々木の姿は見当たらない。須藤と五十嵐はすぐさま佐々木を追う。そしてビルの合間を逃げていた佐々木を、須藤と五十嵐とで挟み撃ちにして拉致した。その後、車に乗せてある橋へと連れて行く。この物語冒頭の、橋の欄干から落とされた男は佐々木だった。橋から落ちた佐々木を見ながら五十嵐は、「純次さん、あと電気屋もやんないと」と須藤に話す。

木村・須藤・日野・牛場は居酒屋に来ていた。木村は「今日が最後だから、好きなもの食べなさいよ」と牛場に告げる。牛場はあからさまに取り乱し、泣きそうになりながら「もう家に帰りたい」と言う。そんな牛場を見た木村は「しょうがないね、家族に電話して聞いてみようか。もしもし、爺さん家に帰りたいって騒いでるんだわ。死にたくないって言ってるんだけど、酒飲ましていいの」と利明と電話で話す。それを聞いていた百合枝は利明から電話をかわり「もっと飲ませてください」と、きっぱりと伝えるのだった。居酒屋から帰った後も、いつもの部屋では五十嵐がさらに牛場の口に酒を流し込む。あまりのやり方に日野は若干ひいた様子だが、木村は牛場の様子を見て声をあげて笑っていた。その横では、須藤が「おい爺さん、お前にはもったいなんだけどよぉ、とっておきの味付けしてやるよ」と酒に覚せい剤を混ぜていた。「死にたくない、婆ちゃんに会いたい」と泣く牛場だったが、須藤は覚せい剤入りの酒を無理やり飲ませる。須藤はさらにスタンガンを持ち出し、牛場の頭や身体のいたるところに押し付ける。スタンガンが押し付けられるたび、ビリッという音と共にのたうちまわる牛場。それを楽しそうに見ていた木村は「私にもやらせて」と言い、何秒もスタンガンを押し付けるのだった。また、木村は棚にあった度数96度の酒を持ち出し、「いつまで生きてんだよ」と、そのまま牛場の口に流し込んだ。牛場はついに倒れこみ、動かなくなった。木村たちは牛場の死を自殺にみせかけるため、牛場電気設備の車と共に遺体を空き地に運んでいた。「普通うつぶせじゃないか」「一銭ももってないのもおかしいから、ポケットに小銭入れときなさい」などと木村が指示をする。その横で日野が須藤に、「須藤さん、佐々木さんの頭の件てどうなったんすか」となぜか気にした様子で聞く。そんな日野に須藤は「おい日野、お前けんちゃんが金受け取ってたの知ってただろ。けんちゃん殺しちゃっただろ。お前も同罪だからな。俺は裏切られるのが一番許せねぇんだよ」と告げる。佐々木が死んだことを知って動揺した日野は、さらに須藤から「この件(牛場の件)終わったら、お前ぶっこむからな」と言われ、慌てて走って逃げて行くのだった。

全国指名手配

全国指名手配のニュースをみる須藤(右)と、寄り添う静江(左)

和室の布団で、須藤の内縁の妻の静江と娘の星姫が寝ている。その横の部屋では、須藤がテレビを見ながら線香をたいていた。それに気付いた静江は「どうしたの、順ちゃん」と須藤に寄り添う。テレビでは、マンションの一室が火事になり、日野が意識不明の重体、その交際相手の順子が死亡したというニュースが流れていた。物語冒頭にあった、須藤と五十嵐の犯行である。日野と順子の身体にはアザや暴行のあとがあり、殺人の容疑で須藤と五十嵐が全国指名手配されていることも報道されていた。その後互いの車で落ち合った須藤と木村。木村が逃走資金として金を包んで須藤に渡していた。須藤は「どうせ今度こそ死刑だ」と静かにつぶやくが、木村は「純次君、火事で死んだのは(順子)一人だよ。うまくやれば大丈夫。お金もたくさん送るし、いい弁護士もつける。静江と星姫の心配もいらないよ」と元気づける。その言葉に、須藤は明るい表情になる。しかし木村から聞いた「これは言おうかどうか迷ったんだけどね、五十嵐君に逃走資金を求められてね。もちろん断った。純次君を裏切って一人で逃げるなんて許せないからね」という言葉に、信じられないという表情になる須藤だった。そして物語冒頭、五十嵐は須藤との逃走のため昔の仲間と連絡を取っていたが、木村の言葉を信じた須藤に「先生と何話した、てめぇだけ逃げるつもりだったか。逃走資金を頼まれたって先生言ってたぞ。お前だけは信じてたんだぞ!なんでだよ、五十嵐ぃい」という言葉と共に銃殺されるのだった。

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