スカイ・クロラ The Sky Crawlers(映画)のネタバレ解説まとめ

『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』とは、「攻殻機動隊ゴースト・インザシェル」で有名な押井守監督による作品である。声優陣に加瀬亮や菊地凛子、押井映画ではお馴染みの竹中直人を迎える。完全な平和が成立している時代。戦争はショーとして存在している。ショーは空でのみ繰り広げられ、殺し合いを成立させているのは年を取らない子供たち「キルドレ」である。彼らは毎日同じ日々を過ごす。戦争を仕事としてこなしながら、死なない限り、毎日同じ日々がやってくる。何かを変えたくても変えられない人々の日常。

『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』の概要

『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』とは、森博嗣原作・押井守監督によるアニメーション映画作品である。スカイ・クロラシリーズは森博嗣著書の短編集を含めた全6巻の小説である。その中の「スカイ・クロラ」を原作とした映画である。小説は短編集を除いた5巻で構成されているが、時系列の順序で出版されていない。小説を時系列順にタイトルを並べると『ナ・バ・テア』『ダウン・ツ・ヘヴン』『フラッタ・リンツ・ライフ』『クレィドゥ・ザ・スカイ』『スカイ・クロラ』となり、スカイ・クロラはシリーズの中のひとつの結末を示している。
スカイ・クロラは、主人公の函南優一(カンナミ ユウイチ)(CV:加瀬亮)が新しい職場に赴任するところから始まり、仕事をこなす毎日が描かれる。函南たちの勤務する企業は民間軍事会社である。物語の世界は、国と国との争いはなく、完全な平和が成立している世界である。戦争は民間軍事企業が請け負い、民間軍事会社同士が繰り広げるショーとして存在する。戦争のショーは空でのみ行われ、戦闘機に乗って戦う兵士たちは「キルドレ」と呼ばれている子供たちであった。彼らは年をとらず、空で死なない限り永遠に生き続ける。これは、キルドレである函南優一と草薙水素、彼らの周囲の人々の永遠に続くようにみえる日常を描いた物語である。

『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』のあらすじ・ストーリー

「前任者の機体」

並走して飛ぶ、函南と土岐野の散花

空では、絶えずショーとしての戦争が繰り返されていた。戦闘の規模は大小さまざまだが、人々は天気の話をするかのように、ショーとしての戦争を、テレビなどの画面を通して日常として受け取っていた。
そんなショーである戦争を構成する兵士のひとり、パイロットである函南優一は飛行機に乗っていた。新たな赴任地へ向かうために。場所の名前は関係ない。仕事はこれまでもそうしてきたように、飛行機が格納されている軍事基地に所属し、そこで生活し、依頼があれば飛行機で空を飛び、自分を殺そうとする敵が現れたら先に撃墜する。それの繰り返し。
函南は飛行機を基地の滑走路に着陸させ、そのまま格納庫へ進行させる。エンジンが止まり、函南が飛行機を降りて最初に会ったのは整備士の笹倉であった。笹倉は大人の女である。笹倉は乗ってきた機体ではなく”前任者”の機体を使うように函南に告げる。”前任者”とは函南が来る以前に基地にいたパイロットである。基地の司令官である草薙水素(クサナギ スイト)も、函南に前任者の機体を使うように言う。草薙は基地の司令官だが少女のようであった。函南は、出来たら乗ってきた機体を使いたかった。函南は草薙に、機体の引継ぎや前任者のことなどを訊こうとするが、草薙は答える気配がなかった。その後、函南は基地の食堂で、湯田川と篠田という男たちに会う。彼らも函南と同様に飛行機のパイロットだ。函南は湯田川に、基地にいるパイロットの人数を教えてもらったが、それを話す前の彼の特徴的な新聞の折り方を気にしていた。しばらくすると食堂の窓の外に函南の相棒となる土岐野(トキノ)があらわれた。函南と土岐野は互いに挨拶した。
次の日、函南は土岐野と二機編隊で出撃した。今までも経験のある、敵基地に対する偵察の任務。函南が土岐野と並行して飛んでいると、ダムの排水によってできた滝に、土岐野の機体が真っ直ぐに突っ込んでいく。函南はチキンレースの要領で、土岐野に操縦技術と判断力を試されたのだ。函南は、機体を滝の手前で垂直に急上昇させ、その試験を難なくパスした。それを見た土岐野は、函南が臆病者でないことを確認して安心した。しばらくすると二人の前に想定外の敵機が現れた。函南も土岐野も臆することなく敵機を撃墜する。函南と土岐野は互いに無事を確認して帰還する。基地に着陸、操縦席を降りると、笹倉や他の大人の整備員たちが自分のことのように函南たちの生還を喜んでくれる。一緒に生還を喜ぶところかもしれないが、函南が最も大きく感じていたことは別にあった。前任者の機体が、自分とあまりにも相性が良かったのだ。函南と土岐野は、基地指令室へいき、上官である草薙に戦況報告をする。報告後、函南は草薙に尋ねた「あなたはキルドレですか?」、草薙は明確な答えをしなかった。キルドレとは、年を取らない永遠に子供のままの人間、函南や土岐野などのことをいう。この時代のショーとして戦争を成り立たせているのは、飛行機のパイロットでもある彼らキルドレである。彼らは空で死なない限り永遠に生き続ける。
函南は、生還祝いと案内が仕事という土岐野に、バイクの後ろに乗せられて、基地から出かけた。まず、土岐野の行きつけの飲食店、ダイナーへ行く。土岐野はそこが案内すべき内容のポイント1だという。この周辺で生きていくための重要な場所を、ポイントと土岐野は呼んだ。二人がダイナーのテーブル席につくと、店内に笹倉が入ってきて、土岐野を睨んだ。笹倉の母性が、土岐野がこれからすることに対して、叱っているようにも見える。しばらくすると、店にポイント2の住人である娼婦のふたり、フーコとクスミがくる。函南は娼婦たちと土岐野と共にダイナーでの時間を過ごした。そこで、食べたことのあるかのようなミートパイを食べ、知っている味の淹れて時間のたったコーヒーを飲んだ。ダイナーを出て、函南と土岐野はフーコたちが乗ってきた屋根のない車の後ろに乗って、娼婦たちの館へ行く。館の一室で、函南はフーコに自分の前任者の話を聴く。はっきりしたことは何もわからなかったが、フーコに「空飛ぶの、好き?」と訊かれ、函南は「うん。好きだよ」と答えた。そして、心の底から笑顔になった。
函南が基地に戻り、格納庫の今日初めて乗った機体の前へ行くと笹倉がいた。函南は、笹倉に前任者の「ジンロウ」について聞くが、何も答えてはくれない。空の戦争で死ぬ以外にキルドレの死に方はない。だが、前任者の「ジンロウ」はいなくなり飛行機だけは残っている。「ジンロウ」は何故いないのだろうか。笹倉は函南にもう寝るようにつげて格納庫の電気を消す。その消えた格納庫の照明を、遠くの指令室から草薙はずっと見つめていた。

「草薙瑞季」

飛行機を追って無邪気に遊ぶ草薙瑞季、母親とされる草薙水素に比べるとずっと幼い

ある日、草薙 瑞季(くさなぎ みずき)が基地にやってくる。瑞季は函南たちよりも幼く小学生ほどの容姿をしている。瑞季は函南と出会い自己紹介した。瑞季は函南に基地で一緒に遊んでほしいと頼んだ。函南は、瑞季に基地を案内する。瑞季は函南たちに、なぜキルドレは大人になれないのかと尋ねる。函南は、大人になれないのではなく、ならないのだと告げる。瑞季が函南のそばを離れて、飛行機を観ていた。そこへ土岐野が来て函南に告げる。瑞季は、草薙水素の妹であるとされているが、実は娘だと言った。キルドレは子供である。子供である草薙水素が子供を産んでしまったことが問題なのかもしれなかった。函南のそばから土岐野が離れると、草薙水素がやってきて言った。「あの子はもうすぐ私に追い付く」と。瑞季がもうすぐ自身の肉体の年齢に追いつくことを危惧していた。瑞季はいずれ大人になる。しかし、草薙水素は永遠に子供である。
その日、基地に見学者たちが来た。見学者とはキルドレではない戦争に従事していない一般人である。そのため、大人も、キルドレではない子供もやってくる。草薙に案内人を頼まれた函南に、見学者のひとりが言った「うちの家族は、あなたたちの会社を応援しているんですよ」と。函南にとってはどうでもよかった。
見学者たちが来る前、基地の食堂でパイロットの篠田が毒づいていた。自分たちの代わりに殺し合いをさせている相手に対して、「見学する」とか「応援する」とかはどういう発想なのか、殺してやりたくなると。そのときに湯田川も、銃を携帯している草薙が案内したらすぐに撃ち殺すだろう、なぜなら、ジンロウを撃ち殺したのが彼女だからだと告げた。
見学者たちを案内していると、基地から遠く離れた空に、味方の飛行機が墜落するのが見えた。函南は目の前を通過しかけた救急車につかまり、墜落現場へ向かったが、着いた時にはもう遅く、飛行機もパイロットも無残な姿だった。墜落現場で、野次馬になっている一般人が「可哀想」と口々に言っている。その観ている側の人間たちに、草薙水素が「可哀想なんかじゃない!同情なんかでアイツを侮辱するな」と大声で言った。その様子を見ていた函南は、草薙が乗ってきた車(ポルシェ912)の助手席側のドアを開け、自分に運転させるように促す。草薙は助手席に乗り、函南は運転席に乗り二人でその場を後にする。

一般人に怒っている草薙水素を気遣い、先に草薙の愛車に向かう函南

「草薙水素と函南優一」

別の日。函南は、いつの間にか習慣になりつつあるダイナーへ行く。店に着くと、ずっと前からそこにあるようにミートパイとコーヒーが出てきた。食事を摂ろうとしたが、函南の興味はすぐに別の方へ向かう。外から飛行機の音が聞こえてきたからだ。その重低音で函南は店外へ飛び出した。空を見上げると、爆撃機三機を含めた敵部隊の姿があった。函南が基地の草薙に急いで連絡し戻ろうとすると、店の女将に「気をつけて」といわれる。函南は不思議そうな表情をして「何に?」と聞き返す。女将は複雑な顔になった。函南が戻ると、基地に残っている機体はなかった。破壊された機体もなく、全機が無事に離陸したあとだった。草薙も函南の機体で出撃していた。しばらくすると遠くの空から機影が見えた。函南は飛んでいる機体が味方機で、数が基地にあるべき数と同じであることを確認する。様子を見に来ていたのか、基地にはフーコとクスミがいた。フーコは草薙が乗る機体見ていた。飛んでいる草薙のことを考えているのか、ジンロウの機体だったことを思い出しているのか、その表情からはわからない。生還した草薙だが、かなり機嫌が悪い。機体を降りた足でどこかへ電話をする。「今からそちらへ参ります」と言って電話を切り、函南に一緒に来るように行ってどこかへ向かう。草薙の目的地は、大型の探知機を設置し、いち早く敵機襲来を伝達すべきレーダー基地だった。車で向かう道中、土岐野が駆る機体を空中に確認する。草薙は土岐野が寄り道をしていたのだろうと言う。先程まで機嫌の悪い草薙だったが、運転中はどこかそうでもないように見える。函南は、風を感じられる車だからだろうと考えた。飛行機に乗っているときに似ているのかもしれない。
レーダー基地に到着すると、本田という基地要員の出迎えがあった。草薙はレーダーに台風などの被害がないことを確かめ、敵機襲来の報告が無かったと本田に文句を言う。草薙は基地の奥にいる部長に会わせろと言い、中に入れないようにしていた本田を通り過ぎ中へ入っていく。草薙は、この先の基地内でも、大人げなく色々と吐き捨てているのだろうか。全く大人げないと本田はもらした。それに対して函南は「でも、明日死ぬかもしれない人間が、大人になる必要ってあるんでしょうか?」と応えた。
レーダー基地からの帰り道、怒りで体力を消耗したのか、函南に運転をさせている草薙が寄ってほしいところがあるという。二人は、山中にある会社が運営するゲストハウスに入った。函南と草薙は二人きりでゆっくりと食事をとる。函南は草薙に尋ねる「あなたがジンロウを殺したって…。」草薙は服を脱ぎながら「もしかして、君も殺してほしい…?」と答えた。

「ティーチャー」

絶対に倒せない相手のティーチャーの機体には黒豹のマークが描かれている

別の日、湯田川が撃墜された。編隊を組んで一緒に飛んでいた函南は必死で逃走しつつ、湯田川を探した。しかし、次に見たものは海に沈んでいく湯田川の機体だった。函南は黒豹のマークを目視していた。それはティーチャーと呼ばれる機体だ。ティーチャーのパイロットはキルドレではない、大人の男だと言われていた。
別の日、なぜかは分からないが、函南の機体で草薙が出撃した。土岐野も篠田も一緒だった。雲行きの怪しい日だ。しばらくすると雨が降ってきた。間隔をあけずに土岐野と篠田が帰ってきた。しかし、草薙は帰ってこない。土岐野は函南に、ティーチャーを目視し、それを見た草薙が単独行動に出たと伝えた。函南は篠田に、草薙がティーチャーにこだわる理由を訊こうとする。しかし、篠田は草薙が戻って来られたら本人に聴けと告げる。函南も含めたパイロットたちは、ティーチャーという敵機は、誰も倒せない相手として認識している。それゆえ、その機体を発見して逃れることを考えても、挑戦することには積極的にならない。函南は草薙がティーチャーに対してなぜ挑むのかが分からなかったので、彼女が以前にもティーチャーと戦ったことがり、その決着をつけようとしているのかもしれないと思った。
草薙は生きていた。墜落した飛行機に乗っていた草薙を、フーコが助けて車に乗せて基地に連れてきたのだ。草薙は笹倉に運ばれ食堂のソファーに寝かされた。草薙もフーコも函南がここへ来るずっと前からこの地域にいた。フーコに礼を言いに函南は建物の外に出た。フーコは建物内にいる草薙を見るように「あのヒトのああいう姿、前にも一度見たことある。まっすぐで、ここ(胸=心)がぶつかっちゃってる感じ…。あのヒト、昔一度、うちに来たことがあるの。私の客に会いに。私を追い出して何時間も出てこなかった―。」と言った。草薙は、フーコたち娼婦の館に行ったことがある。フーコの言う私の客とは誰のことなのか、草薙がティーチャーにこだわる理由は何なのか、函南は判然としない。
函南が再び中に入ると、ソファーで横になっている草薙は函南の服をつかんだ。

「存在を感じられない戦争と繰り返されるふたり」

普段は両軍とも少ない数での戦闘だが、この画像は大規模なプロジェクトのために進行しているロストック社の大編隊を示している

函南をはじめとした基地の住人は、大規模なプロジェクトがあることを上層部から聴かされた。そのプロジェクトのために、パイロット全員で別の都会の街へ飛んでいく。到着後、パーティーらしき会場に出席させられる。何も面白そうなものがない。それゆえ函南は会場を抜け出す。外には同じ気持ちなのか、土岐野もいた。土岐野は「どこへ行っても、同じような連中しかいねーよな、本当。こんなやつ初めてみたぜっていうやつには、最近めったにお目にかかれないもんな」と言った。そんなふうに外で暇そうにしている二人の前に、三ツ矢碧(ミツヤ ミドリ)がやってきた。三ツ矢は暇な二人に、函南優一は誰かと尋ねる。函南は最初答えなかったが、三ツ矢に訊かれて自分がそうだと告げる。
次の日、三ツ矢について、土岐野が函南に教えた。函南たちが今いる地区の女性エースパイロットが三ツ矢である。
その日の作戦会議中、三ツ矢は草薙の函南に対する視線を気にする。函南と草薙、二人とも無表情だが、草薙の方は函南から視線を外さない。
会議が終わり、場所は違うが、函南たちはいつものように飛行機で離陸した。滑走路から飛び立った編隊に緊張感はなかった。敵の本拠地へ攻め込むという大作戦にもかかわらず。
大編隊と大編隊が合流し、かつてないほどの機体数になる。敵の本拠地に近づくと、敵も相当数で迎え撃ってきた。そのまま大きな戦闘が開始される。
戦闘終了後、篠田はいなくなっていた。わかったことは、機首に黒豹のマークを付けた機体にやられたということ。

草薙のいう気の利いた店で、ティーチャーと世界の戦争について語り合う函南優一と草薙水素

大きな仕事は終わった。夜、函南は土岐野と知らない街に出かけるが、多くの店が閉まっている。たまたま通りかかる草薙と合流して唯一営業していることが確認できるボーリング場へ向かう。ボーリング場のレーンでは、とにかく楽しむ土岐野に対し、いつも通り冷めた目線の函南と草薙がいた。それを見てあきれた土岐野は、楽しそうに遊んでいる地元の女たちを見付けて、彼女たちとどこかへ消えてしまう。
草薙と函南はボーリング場をあとにして、草薙のいう気の利いた店でワインを飲んでいる。もう随分と飲んでいる草薙は、酔いながらも函南に説明した。ティーチャーは自分たちキルドレとは違う大人であり、かつては草薙と同じ会社にいたのだと。函南は訊いてみる。
函南「ティーチャーを撃墜すれば、何かが変わる?」
草薙「え?」
函南「運命とか、限界みたいなもの―」
草薙「そうね。でも彼は誰にも落とせない」
二人は会話を続ける。
草薙は言う「戦争はどんな時代でも、完全に消滅したことはない。それは人間にとってその現実味がいつでも重要だったから―。」
この世界は、戦争というゲームを維持することで平和を維持している。そのゲームを維持するためにはルールが必要である。そのルールの一つが、絶対に倒せない相手、ティーチャーである。そんなことを考えるでもなく確認するでもなく、二人は会話する。
草薙と函南は、草薙の車に戻る。
そこで、草薙は銃を持ったまま「殺してほしい?それとも殺してくれる…。さもないと、私たち永遠にこのままだよ」と告げる。
二人は車の中で抱き合いキスをした。その間も函南は草薙が構えようとする拳銃のトリガーとその手を必死で抑えていた。
草薙にとって、もしかしたら函南にとっても、この世界はただ繰り返されえるだけの世界なのかもしれない。変わっているようで変わらない毎日。

銃を撃とうとする草薙水素の手と、引き金と本体の間に指を入れる函南優一の手

「いつも戻ってくる日常」

函南をはじめとした都市への遠征部隊は、笹倉たちのいる、元居た基地に帰ってきた。新たに三ツ矢を編隊に加えて。基地に着陸したとき、三ツ矢は草薙水素の娘とされる草薙瑞季がいることに気が付く。三ツ矢はキルドレが子供を出産したという事実について考えていた。
函南が食堂室に行くと、新たに赴任してきたアイハラという男がいた。アイハラは白い頭髪で、特徴的な新聞のたたみ方をした。それは紛れもなく観たことある光景だった。それからも、変わらない毎日、変わらない人間関係が続いた。新たに出会う人間と思いきや、その人間もかつて出会った誰かにしか見えない。日常は果てしなく続いていく。気にしていないつもりでも、変化がないことで不安は積み重なっていく。函南や土岐野などのキルドレたちはそのことが不安でないように過ごしているが、三ツ矢はそれを隠せない。誰も隠しているつもりはないのかもしれない。
三ツ矢は、笹倉に草薙のことを聴きに行った。草薙や基地にいるキルドレたちをずっとみてきた笹倉だが、草薙のことは何も教えてくれなかった。三ツ矢は永遠に続くように感じる日常が不安だった。自分以外の人間たちが、その不安に対してどう向き合っているのかが知りたかった。
三ツ矢は函南に聴きに行く、というより安心したいからなのか函南に知っていること、感じていることを話す。「キルドレ」が新薬につけられる名前であったこと、それがいつのまにか死なない人間、子供であり続ける人間につけられた名前になったこと。自分はどういった経緯で飛行機に乗るようになったのかがわからないこと。子供の頃の記憶がないこと。草薙はジンロウの人生を終わらせてあげるためにジンロウを殺したこと。話すことで三ツ矢はバランスを取ろうとした。
その晩、銃声で函南は飛び起きた。草薙の部屋へ行くと三ツ矢が草薙に向けて発砲した後だった。弾は草薙に当たっていなかった。
三ツ矢は草薙に出て行くように言われ、そうした。
草薙と函南の二人になった。草薙はジンロウを愛していた。「今度はあなたが私を殺してよ」草薙は言う。再び銃声が鳴り響く。しかし、また弾は誰にも当たらない。
函南は言った「君は生きろ。何かを変えられるまで。」

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@keychan787

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