シェイプ・オブ・ウォーター(The Shape of Water)のネタバレ解説まとめ

シェイプ・オブ・ウォーター(The Shape of Water)とは、2017年にアメリカで公開された、声の出ない中年女性と半魚人のラブ・ロマンスを描いた作品。前代未聞のラブストーリーということで、2018年に日本でも公開され話題になった。ギルレモ・デル・トロ監督作品の中でも傑作と呼ばれる本作で、サリー・ホーキンスの演技が高く評価された。

『シェイプ・オブ・ウォーター』の概要

『シェイプ・オブ・ウォーター』とは、2017年にアメリカで製作・公開された作品で、声を発することのできない中年女性と半魚人が愛を育むラブ・ロマンスを描いたものである。監督は『パシフィック・リム(2013)』のギルレモ・デル・トロ。出演はサリー・ホーキンス、マイケル・シャノン、リチャート・ジェンキンスなど。
デル・トロが本作の構想を最初に練ったのは2011年。幼少期の時に見た『大アマゾンの半魚人(1954)』の半魚人そのものが躍動するストーリーに感銘を受け、自分もいつか半魚人が出てくる作品を撮りたいと思ったことがきっかけ。同作品に出てくるジュリー・アダムス演じるヒロインと半魚人がもしも結ばれていたらどうなっただろうと考えたことから、恋愛要素を取り入れることを思いついたという。
こういったことから、最初はダグ・ジョーンズが演じる「不思議な生き物」が主人公のストーリーにしていたが、ユニバーサル・スタジオがこれを拒否したため、女性が主人公になる物語となった。2016年、正式に制作発表。
人間と半魚人の異種族の激しく、ほほえましく、どこか切ない恋愛模様といった衝撃的な内容の他にも、そんな2人を黒人、同性愛者といったいわゆる「マイノリティ」が見守り、権力を振りかざす悪役が邪魔をしようとすることから、ただの恋愛物語なだけでなく、デル・トロ監督の社会に訴えたいメッセージも伺える、社会観もメタファーとして取り込まれていると話題になった。
2017年8月31日にイタリアで行われた第74回ヴェネツィア国際映画祭のコンペティション部門で先行上映、金獅子賞を受賞。その他にも、第90回アカデミー賞では作品賞、監督賞、作曲賞、美術賞の4部門、第75回ゴールデン・グローブ賞では監督賞と作曲賞の2部門を受賞。また、第42回トロント国際映画祭でも本作が上映された。日本では20世紀フォックスの配給のもと、2018年3月1日公開。

『シェイプ・オブ・ウォーター』のあらすじ・ストーリー

職場に向かう途中、物思いにふけっているイライザ

冷戦時代の1962年、アメリカ。声の出ないイライザは近所に住む老人の画家・ジャイルズという同性愛者の支えもあって穏やかに暮していた。その半面、毎日幸せそうなカップルや家族に交じって映画館で一人映画を観るなど、自分の身体の特徴によって人付き合いが限られることにどこか寂しい思いを抱えていた。

航空宇宙研究センターのタイムカードを押すイライザ(左)とそれを見守るゼルダ(イライザのすぐ右)

そんなイライザと親しくしてくれる同僚の黒人女性・ゼルダと共に、イライザは米政府の秘密機関・航空宇宙研究センターで清掃作業員として勤務していた。元米軍の軍人で現在研究所で上役のストリックランドに2人揃って差別的な扱いを受けながら淡々と業務をこなす、といった具合である。ある日、航空宇宙研究センターにストリックランドと、この度新しく呼ばれた研究員・ホフステトラー博士の監視の中、極秘で「不思議な生き物」が輸送されてくる。その「不思議な生き物」は、自らを無理やり連れ込み、薄情な扱いをした報復か、ストリックランドの左手の薬指を引き裂く。事件を受けて職員はおののくが、たまたまその部屋の清掃担当だったイライザだけは違った。

距離を寄せるイライザに徐々に惹かれていく不思議な生き物

イライザは清掃のため「不思議な生き物」が保護されている部屋に入り、その正体が半魚人であるのを目撃してしまう。しかもそれだけでなく、自分がいつもお昼ごはんとして作り、持参してくるゆでたまごを「不思議な生き物」のいる水槽の淵にそっと置き、それにおびき寄せられた「不思議な生き物」と、手話による会話に成功する。イライザはそれから毎日、清掃の時間の度に、「不思議な生き物」と何気ないコミュニケーションをとり続けた。ところが、ストリックランドが「不思議な生き物」を生体解剖する計画を知ってしまう。「不思議な生き物」に対して普通の人間のような感情を見いだしたイライザはこれを可哀そうに思い、「不思議な生き物」を助け、大雨で川が増水する日に「彼」を水中へ逃がそうとジャイルズとゼルダに提案するも、ゼルダにはなだめられ、世間にこれ以上何を思われるのかを恐れたジャイルズに猛反対される。そしてイライザも、彼を解放しなければならないという理性とは裏腹に、「彼」とさらに距離を縮めていき、遂に離れたくないと思うほどの恋仲になる。

何が何でも不思議な生き物を捕まえたいストリックランド

そんな中、実はソ連のスパイであるホフステトラー博士にソ連が地球外生命体に関する研究に役立つかもしれない「不思議な生き物」の抹殺を命じ、これ以上アメリカが宇宙開発において優位にならないようにと圧をかける。ホフステトラー博士は一研究者として、人間の代わりにロケットに乗せて宇宙へ行ってもらうという計画をストリックランドに提案していたほど「不思議な生き物」には生きていてほしい、と密かに思っていた。ここに「不思議な生き物」がいたままではストリックランドか、自分が殺すかのどちらかでしかないと悟ったホフステトラー博士はイライザとゼルダに「不思議な生き物」を逃がしてほしいとこっそり懇願する。このことがイライザの「彼」を元の場所に戻したいという決意をするきっかけになり、イライザはもう一度ゼルダとジャイルズに「彼」を連れ出す計画を依頼する。こうしてイライザ、ゼルダ、ジャイルズ、そしてホフステトラー博士は宇宙研究センターから「不思議な生き物」をイライザとジャイルズのアパートに運ぶ作戦を実行、成功する。

航空宇宙研究センターから無事脱走できた不思議な生き物と自宅にて抱き合うイライザ

ピンチを乗り越えたイライザと「彼」はさらに絆を深め、「その日」が来るまで、普通の恋人たちと変わりないような日々を過ごす。ジャイルズも飼い猫を「不思議な生き物」に殺されてしまうなど最初は戸惑うものの、イライザの惚れっぷりや猫を殺してしまったお詫びに治癒能力で頭に増毛してくれる姿を見て、「不思議な生き物」の底知れぬ魅力に興味を持つ。

不思議な生き物の行方を問い詰めるストリックランドと必死に隠すイライザ、間に入って通訳するゼルダ

「不思議な生き物」に逃げられたストリックランドは宇宙研究センターの全職員を尋問する。ホフステトラー博士は単独で「不思議な生き物」を逃がしたとストリックランドに嘘をつき、イライザとゼルダを庇う。また、「不思議な生き物」は抹殺したとソ連のスパイ仲間を呼び出し、縁を切ろうと試みるが、命令に背いて抵抗したことが原因で狙撃されてしまう。ソ連のスパイはホフステトラー博士にとどめの一撃をお見舞いしようとしたが、ストリックランドに射殺されてしまう。ストリックランドの目的は、「不思議な生き物」の行方をホフステトラー博士から聞き出す、ただそれだけだった。ストリックランドの暴力的な拷問により、ホフステトラー博士はゼルダが計画に関わっていることを口走ってしまい、絶命する。

雨によって増水する日、不思議な生き物はイライザに別れを告げる。この後、ストリックランドが追いついてしまう

ストリックランドはホフステトラー博士からの情報をもとにゼルダの家に向かう。今にも殺されそうなのに沈黙を貫く妻の姿に耐えられず、ゼルダの夫がストリックランドにイライザのところに「不思議な生き物」がいることを告げてしまう。ゼルダから電話を受けたイライザは、共に遠くへ逃げるよう説得され、「彼」とジャイルズと運河に向かう。運河へ到着し、別れようとしたところでストリックランドに追いつかれ、イライザと「不思議な生き物」は銃で撃たれてしまう。全てを見ていたジャイルズを口封じのために殺そうとしたストリックランドは、銃撃を受けても生きていた「不思議な生き物」が最後の力を振り絞ったことによって倒される。

水中でイライザを見つけた不思議な生き物は彼女の致命傷を治し、抱き寄せる

心配でかけつけたゼルダとジャイルズを他所に、イライザを連れて「不思議な生き物」は水中へ飛び込んでしまう。「彼」の治癒能力によってストリックランドに傷つけられた箇所が治り、息を吹き返したイライザは、水の中での「彼」との再会を喜ぶのだった。

『シェイプ・オブ・ウォーター』の登場人物・キャラクター

イライザ・エスポジート(演:サリー・ホーキンス)

アパートに一人で暮らす中年の女性。
幼少期に親から受けた暴力をきっかけに声を失い、保護施設で育ってきた。
そのためコミュニケーションの手段として手話を使う。
米政府管轄下にある航空宇宙研究センターの清掃作業員として働いている。
一見大人しい性格なだけのようにも思えるが、恋愛映画を毎日見たり、浴槽で自慰行為をするといった描写があり、自分の身体の特徴からなかなか恋人や多くの友達ができないことでどこか孤独を抱えている様子が伺える。
また、職場に来た「不思議な生き物」に興味を持つ、その「不思議な生き物」と距離を縮めて恋仲になり、逃がそうとするなど好奇心旺盛で行動力のある一面も持つ。

keeper
keeper
@keeper

Related Articles関連記事

パンズ・ラビリンス(Pan's Labyrinth)のネタバレ解説まとめ

『パンズ・ラビリンス』とは、「パシフィック・リム」「シェイプ・オブ・ウォーター」のギレルモ・デル・トロ監督による、内戦後もゲリラ戦が続くスペインを舞台にしたダークファンタジー。母の再婚相手である軍人が暮らす山奥の砦にやって来た少女が、つらい現実から逃れるため童話の世界に浸っていく物語で、現実世界と少女が見る幻想世界が巧みに絡み合うストーリー展開。06年スペイン・メキシコ・アメリカ製作ながら第79回アカデミー賞で撮影賞・美術賞他を受賞。07年・日本公開。

Read Article

メッセージ(Arrival)のネタバレ解説まとめ

『メッセージ』とは、本作後に「ブレードランナー2049」を撮るドゥニ・ヴィルヌーヴ監督によるSFムービー。 突如地球上に現れた巨大な宇宙船。飛来した目的を探ろうと、船内の異星人とコミュニケーションをとるため軍に依頼された女性言語学者が、彼らと接触するうちに未来を見ることが出来るようになり、自分の人生を見つめ直していくシリアスタッチの知的なドラマ。2016年製作のアメリカ作品。

Read Article

ヘルボーイ(Hellboy)のネタバレ解説まとめ

「ヘルボーイ」とはアメリカの人気コミックを映像化した2004年制作のアメリカ映画。異界から産み落とされた悪魔の子ヘルボーイが、人間によって育てられ、正義のヒーローとして、半魚人や念動発火能力を持つ女性と共に、邪悪な者たちと戦うアクション・アドベンチャー。監督は、「ミミック」「パシフィック・リム」のギレルモ・デル・トロ。個性的な風貌のロン・パールマンがヘルボーイを快演し、彼の代表作のひとつとなった。

Read Article

パシフィック・リム(Pacific Rim)のネタバレ解説まとめ

日本のマンガやアニメ、特撮作品への造詣も深いギレルモ・デル・トロ監督による2013年公開のアメリカ映画。巨大怪獣と人型巨大ロボットとの戦いを圧倒的スケールで描き出したSFアクション超大作。太平洋の海底から巨大怪獣が現れ、全世界の大都市を襲撃する。人類滅亡の危機を救うため、名パイロットのローリーと日本人研究者の森マコがペアとなって操縦する人型巨大ロボット"イェーガー"で、怪獣に立ち向かう姿を描く。

Read Article

目次 - Contents