ダーマー(ドラマ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ダーマー モンスター:ジェフリー・ダーマーの物語』とは、実在するアメリカ合衆国の連続殺人犯で「ミルウォーキーの食人鬼」の異名を持つ一人の男性である。幼少期から青年期の大学生までの生い立ちも描かれ、成人してから殺害されるまでの殺人についても描かれている全10話の犯罪ドラマシリーズ。殺人の残虐性やグロテスクなものは多くは描かれず、またジェフリー・ダーマーを特別な存在としても描かれておらず、あくまでも一人の人間を描いた映画である。

『ダーマー』の概要

『ダーマー モンスター:ジェフリー・ダーマーの物語』は、ライアン・マーフィーが制作した全10話の犯罪ドラマシリーズである。2022年9月21日よりNetflixにて配信され、最初の1週間で視聴者数1位を記録した。その後21日間連続で最も視聴されたシリーズとして君臨し、歴代Netflix視聴者数の1位となった。このシリーズは当初単に『ダーマー』というタイトルだったが、同名の連続殺人犯を描いた映画『ダーマー』と混同しないよう『ダーマー モンスター:ジェフリー・ダーマーの物語』に変更された。
主人公として描かれているジェフリー・ライオネル・ダーマーは、アメリカ合衆国の連続殺人犯で、「ミルウォーキーの食人鬼」の異名を持つ。1978年から1991年にかけ、17人の青少年を殺害し、その後死体との屍姦、死体の切断、人肉食を行っていた実在の人物である。
主人公のジェフリー・ダーマーを演じたエヴァン・ピーターズは、ゴールデングローブ賞を受賞、他の共演者もノミネートされていた。さらに英国アカデミー賞では作品賞を受賞、エミー賞には13部門にノミネートされた。
しかし、エミー賞にノミネートが発表された後、被害者遺族代表のトーマス・ジェコブソンからはノミネートを非難する声明を発表されるなど、批評家からも賛否両論の作品となる。
ジェフリー・ダーマーの母は情緒不安定であり、出産後も些細なことで夫と衝突を繰り返す。また、父は化学企業の研究員であったが研究にかまけて家庭を顧みない生活を送っており、両親の愛情に恵まれない険悪な環境に育つ。
ジェフリー・ダーマーが18歳の時両親の離婚が成立すると自宅にはジェフリー・ダーマーが1人残ることとなり、このころから飲酒をしては妄想にふける毎日を送るようになる。
そしてある夏の日ヒッチハイカーを家に誘い招き入れるが、キスを拒まれ帰ると言い出す青年を殺害してしまう。
父親の提案で一時叔母の家に引き取られるが、祖母の家の地下室で殺人を繰り返すようになり、いよいよ警察に逮捕される事件を起こす。
その後ジェフリー・ダーマーはミルウォーキー有数のスラム街のアパートに居を構える。この住まいとなった部屋は、のちにジェフリー・ダーマーの神殿として犯罪史上に名を残すことになる。
1人暮らしを始めるとジェフリー・ダーマーの殺人は加速していく。そしてついに警察に部屋に踏み込まれ数々の殺人が明らかになるのだった。
1992年ジェフリー・ダーマー32歳の時、15件の殺人で有罪判決が出され936年の禁固刑に相当する終身刑を言い渡される。

『ダーマー』のあらすじ・ストーリー

逮捕されたミルウォーキーの食人鬼

出典: www.netflix.com

寝室に配置されていた5つの頭蓋骨

ダーマーと同じアパートに住むグレンダは、隣人のダーマーが出かけようとするところを呼び止め、「今までで一番ひどい悪臭がするわ。」とため息交じりに訴える。
ダーマーは、明らかに酔った感じにふら付きながら「熱帯魚が病気にかかって死んでしまったんだ、週末に片付けるよ。」と言うとアパートから出て行ってしまう。

ダーマー行きつけのゲイバークラブ219で3人組の黒人男性に声をかけると、何をしているのか尋ねられたダーマーは「アートフォトグラファーをしているんだ、写真を撮らせてくれたら50ドル払う」と伝え、3人のうちの1人トレイシーをアパートの自室に連れ帰る。
トレイシーは部屋に入るとすぐその異臭に気付く、不穏な空気を察したトレイシーが帰ろうとするとダーマーは肉切り包丁を取り出し突き付ける。
ダーマーは寝室に移動するよう仕向け、ベッドで2人で横になる。「心臓の音を聞かせてくれ」とトレイシーの胸に耳を当てるダーマー。「なぜ心臓の音を聞くんだ」と恐る恐るトレイシーが聞くと、「食べる前に聞きたいからだ」と不気味に答えた。
隙をついて何とか部屋から逃げ出すことに成功するトレイシー。「殺される、助けてくれ!」と叫びながら夜の街を走るとパトカーに出くわし、「白人の男に殺されそうになった、一緒に来てくれ」とうったえ警官とともにダーマーの部屋に向かう。
部屋に入った警官もすぐに悪臭に気付く。ふと大量の写真を見つけそれらを見ると、数々の死体が映っていた。「こいつ本物だ…」と呟く警官、逃げようとするところを警官に取り押さえられ連行されるダーマー。

シーンが変わって寝室で寝ているダーマーの父のもとに電話がかかってくる。電話に出ると刑事からの電話で、「殺人事件の捜査で至急来てほしい」と言われ警察署に出向く父。

警察署に到着するダーマーの父親、そして刑事から想像もしなかったことを告げられる。
「息子さんが複数の殺人を犯したと示す証拠品を見つけました。」
と言うと、冷蔵庫や冷凍庫、そして寝室で数々の遺体の一部が見つかったことを説明した。
そして最後にこう付け加えた。
「更にお伝えすべき事が有ります。彼は遺体を食べていたと我々は結論付けました。」

行かないで

出典: www.netflix.com

マネキンをベッドに横たえ抱き合う

1966年ダーマー6歳の時、オーバードーズで救急車に運ばれる母親、言い争う両親、「行かないで」と声をかけるも家を出ていく父親。
翌日瓶にオタマジャクシを捕まえ、他の同級生が花やリンゴを渡す中、担任の教師に誕生日プレゼントとして捕まえたオタマジャクシを渡すダーマー。
教師はオタマジャクシを欲しがる生徒のケビンに譲ってしまう。ダーマーはケビンの後を追いオタマジャクシの瓶を盗み出すと、その瓶に車のオイルを流し込み、苦しみながら死んでいくオタマジャクシを眺める。
その晩の夕食、母親が床下から死骸の匂いがすると言い出す。週末父親と床下を覗くとオポッサムの死骸を見つける。
なぜ死んだのかダーマーが質問すると、父親は「おそらくコヨーテに襲われ頭に穴が開いてつぶされて死んだんだ。」と話す。
研究員である父親は、「カエルの脳の大部分を除去しても脳幹を残せば、思考は出来なくても心臓は動き続けるんだ」と説明を受ける。
この説明が後に人間の生けるゾンビを作る事に繋がる。

1991年ミルウォーキー、ダーマー31歳の時、酒屋の前にたむろする少年達をみつけ、「酒が欲しいんだろ買ってきてやる」と伝えると、酒を買って店から出てくる。
酒を渡す際に、「100ドル払うから写真を撮らせて欲しい」と少年の1人に声をかける。
家に連れ帰り薬入りの酒を飲ませるダーマー。意識がもうろうとする少年。
「置き去りはもう懲り懲りだ、俺のゾンビにしてやる、良いか、痛くはない。」と電動ドリルを手にするダーマー。
暫くして意識を取り戻す少年。もうろうとしながらダーマーの部屋の外に出ると近所の人が警察を呼ぶが、警察にこの男性は19歳で自分の恋人だと伝え警官を帰らせ自宅に入っていく。

ダーマーする

出典: www.netflix.com

ダーマーは肉体美を誇る黒人男性に興味を惹かれていた

1977年、ダーマー17歳の時。
父親と二人で釣りをし、釣った魚をさばくダーマー。魚の内臓を取り出す際、何とも言えない感情が沸き上がるダーマーだった。
その晩ポルノ雑誌でオナニーをするがいく事が出来ない、しかし、ふと魚の内臓を手に取った瞬間を思い出すと同時にいき果てる。

学校でのシーン、学生たちの前で発達障碍者のまねをすると「これぞダーマーするだ」と笑いを取る。
授業で子豚の解剖を行うと、その豚を持ち帰ってよいかと担任に相談する。担任は快諾するが、22年間の教師生活でそんな頼みは初めて聞いたと言う。
家に帰ると父親から、「私がこの家にこのまま住んでいると、私はダメになる。変化が必要だ。」と言って家を出ていく父。
母親も次男を連れて家を出ようとする。ダーマーは卒業を控えてるから行けないと伝えると、「何を言ってるの、あなたは残るのよ!」と伝えると家を出ていく。

1人になったダーマーは肉体美を見せびらかすゲイの雑誌を見ながらダンベルやバーベルを使って体を鍛え始める。
そして酒に入り浸るようになるダーマー。独り言を言って笑っては、突然怒り出し部屋の中の物に当たり散らす。

運転中ランナーを見つけると家に誘う、一人暮らしなんだと説明しながらビールを手渡す。向かい合って乾杯する二人。
だが、部屋全体を移すシーンに変わると、実際には誰もおらず全てダーマーの妄想であることが分かる。

日中運転をしているとライブに行く途中なんだというヒッチハイカーを拾う。
まだ時間があるから、家でマリファナでも吸いながらビールでも飲まないかと誘うダーマー。ヒッチハイカーはスティーブンだと自己紹介する。

家につきダーマーがビールを渡す際にスティーブンにキスをすると怒り出し、ライブに連れて行く気が無いなら帰るとスティーブンは家を出ようとする。
とっさにバーベルでスティーブンの頭を殴りつけると、首を絞めて殺害する。死体にキスをするとスティーブンの体を切断し、血と肉はトイレに流し、骨は砕き庭にまいた。

いい子の箱

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父親が使っていたいい子の木箱にお気に入りの頭を丁寧にしまっていた

1978年、ダーマー18歳の時。
父親と後妻が自宅に帰ると、散らかった家に1人でいるダーマーを見つける。

レストランで食事をしながら父親は私立大への進学を勧める。するとダーマーはあれは落ちこぼれが行くところだと答える。「今のお前がそうじゃないか」と父親に言われると、
「ああ、そうだね確かに今の僕だ、なぜそうじゃないふりをしたか分かる?僕はいい子じゃない、普通でもない、周囲になじめず、変わってる。違ってるんだ他の誰とも、どこがが変なんだ。やってみたいことが有るし、もうやってしまった事もある。」
というと父親はダーマーの告白に恐怖を感じ、話を遮りオハイオ州立大への進学を決める。

大学の寮で酒浸りの日々、大学からはすぐ退学させられ、次に父親は陸軍への入隊を決める。
しかし、陸軍でも酒の問題で除隊され、今度は叔母の家に預けると決める父親。
またしても自分で受け止めることなく、他人にダーマーを任せる父親だった。
叔母の家で綺麗な木箱を見つける。中には父親の子供のころの思い出の写真などが入っていた。
「僕もこんな箱に入れられる思い出が欲しかった。僕はまるで腐った卵のような人間なんだ、ねじが緩んでるんだよ。」としみじみと叔母に語るダーマーだった。

地元のお祭りに出かけるダーマー。酒を大量に飲み酔ったダーマーは殺害したはずのスティーブンの幻を見る。
酒に酔ったため2人で裸で抱き合う妄想を見てしまい、躊躇することなく人前で下半身を露出しオナニーをしてしまう。

血液バンクで働きだしたダーマーは、ある青年の血液を盗み出し、自宅に持ち帰るとその血液を飲みながらオナニーをした。

1987年、ダーマー27歳の時。
ゲイバークラブ219で男性に声を掛けられついていくと、ゲイの集まるサウナハウスに連れていかれる。
周囲にはゲイの男たちが集まり目移りしてしまうダーマー。
それ以降サウナハウスの常連になり男を連れ込ようになるが、男の飲み物に薬を入れ過ぎてしまい男は気を失ってしまう。以降サウナハウスへの入店を禁止されてしまう。

サウナハウスに入れないダーマーは男をホテルに連れていく、薬を飲ませようと飲み物を渡すと誤って自分が薬入りの飲み物を飲んでしまう。
翌朝目を覚ますと手に痛みを感じる。その横には頭から血を流し、胸が陥没するほどに殴られた男の死体があった。
死体をスーツケースに押し込み叔母の地下室に運び入れると、遺体を切断し首を丁寧にビニール袋で包むとキスをして、父親のきれいな木箱に大切にしまう。

血に染まった手

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叔母の家に住んでいる間も殺人を繰り返していた

1991年、ダーマー逮捕後のシーン。
死体を墓から掘り起こそうとしたこと、叔母の家での殺人内容などについて刑事の取り調べの中での会話が進む。
ダーマーはジュースを飲み、煙草を吸いながら刑事からの質問に答える。

叔母の家でのシーン。
東洋系の青年がふらふらになりながら逃げていく。追いかけようとするダーマーを叔母が制止する。
東洋系の青年は家に帰ると倒れこみ、救急車で運ばれる。このことがきっかけで翌日逮捕されるダーマー。
「お前にはもうお手上げだ、出所したら1人で暮らすんだからな」と突き放す父親。

父親と後妻が帰ろうとする車内、泣き出す父親。
「自分の育て方が悪かったのかと自問しているんだ、何をしているのかもっと詳しく聞けばよかった。しかし本当のことを知るのが怖くて聞けなかったんだ、危険を感じていたんだ。」
過去のダーマーとのやり取りを振り返るシーンが続く。
軍隊を除隊になったと聞いた時も原因を聞かなかった。
叔母からマネキンを抱いて寝ていると聞いた時も、ジョークだと言うダーマーを信じた。
なぜ少年に性的暴行を行ったんだ?と聞いた時も、ただ写真を撮っていただけなんだというダーマーを信じた。
全て自分自身の保身のため都合のいい話を信じたのだった。
少年への性的暴行で裁判になった際、判事にアルコール依存症の治療プログラムを施してほしいと手紙を書く。
またしても自分ではなく他人を頼る父親。

刑務所からの出所の日、カウンセリングは受けたか?と聞くと「いいや特に何も。」と答えるダーマー。
影で泣き崩れる父親。

1人暮らしを始めた自分のアパートに男を連れて入っていくダーマー。

声なき者

ダーマーにとっての人肉食はいつも・いつまでも一緒にいるための行為だった

生まれ持って聴覚障碍者であるトニーの生い立ちが描かれる。

ある晩、クラブ219でトニーとダーマーが出会う。
筆談で互いの気持ちを伝えあい仲を深める2人。
2人がベッドで寝ていると仕事に行かなきゃと返ろうとするトニー。
1度は血の付いたハンマーを握り殺そうとするが、部屋を出ていくトニー。
するとしばらくしてカギを忘れたとトニーが帰ってくると、背後から襲い殺してしまう。

ダーマーが冷蔵庫から肉の切れ端を取り出す。
いとおしそうにその肉を手で撫でると、フライパンに油をひき、肉を焼き始める。
目を閉じて大事に噛み締め飲み込むダーマー。

カサンドラ

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このころのダーマーは主食として主に人肉を食していた

ダーマー逮捕後、捜査のためだと立ち退きを命じられるダーマーの隣人のグレンダ。
グレンダが仕方なくモーテルに住んでいると、そこに権力者であるジャクソン神父が訪れる。

グレンダは過去にダーマーと対峙したことを思い出す。
アパートの管理人から悪臭を理由に退去を命じられるダーマー。
「悪臭を訴えたのはグレンダだな!」と叫ぶダーマー。

「掃除をしたんだ、悪臭が消えているか確認したい。」とグレンダの部屋を訪れるダーマー。
プレゼントだと肉の挟んだサンドイッチを差し出す。
「悪臭を漂わせるような隣人の食べ物は食べられないわ。」と断る。
「このところ毎晩のように部屋から叫び声が聞こえる、あの少年はどこに行ったの?ディーンはどこに行ったの?」
「ディーンの居所を言えば立ち退きの訴えを取り下げるわ。」
と言われるとサンドイッチを見つめ、「気に入るか見たいからサンドイッチを食べてくれ」と答えるダーマーだった。

ダーマーとのやり取りを思い出し泣き出すグレンダ。

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