パンズ・ラビリンス(Pan's Labyrinth)のネタバレ解説まとめ

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『パンズ・ラビリンス』とは、「パシフィック・リム」「シェイプ・オブ・ウォーター」のギレルモ・デル・トロ監督による、内戦後もゲリラ戦が続くスペインを舞台にしたダークファンタジー。母の再婚相手である軍人が暮らす山奥の砦にやって来た少女が、つらい現実から逃れるため童話の世界に浸っていく物語で、現実世界と少女が見る幻想世界が巧みに絡み合うストーリー展開。06年スペイン・メキシコ・アメリカ製作ながら第79回アカデミー賞で撮影賞・美術賞他を受賞。07年・日本公開。

『パンズ・ラビリンス』の概要

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『パンズ・ラビリンス』とは、「シェイプ・オブ・ウォーター」(17年)でアカデミー賞監督賞&作品賞を受賞した監督ギレルモ・デル・トロが、1940年代の内戦後もゲリラ戦が続くスペインを舞台に、つらい現実から逃避するために童話の世界に惹きこまれ、やがて切ない最期を迎える無垢な少女の姿を描いたダーク・ファンタジー。
第79回アカデミー賞で脚本賞・作曲賞・外国語映画賞他6部門にノミネートされ、撮影賞・美術賞・メイクアップ賞を受賞した。他に全米批評家協会賞・最優秀作品賞、スペインのアカデミー賞とも言われるゴヤ賞7部門(脚本賞・新人女優賞・撮影賞・特殊効果賞・編集賞・音響賞・ヘアメイク賞)受賞など、多数の賞を獲得している。
ギレルモ・デル・トロがスペイン内戦を舞台に描いた作品に、少年が主人公のホラー・ファンタジー「デビルズ・バックボーン」(01)があるが、その第二弾とも言えるのがこの「パンズ・ラビリンス」。デル・トロは脚本も兼ねている。「ゼロ・グラビティ」(13)でアカデミー賞・監督賞を受賞したアルフォンソ・キュアロンが製作に参加している。
本作を見たスティーヴン・キングは、「美しさとエモーショナルな残忍性に完全に魅了された。この風変わりな大人のおとぎ話は、『オズの魔法使い』以来のベストファンタジーだ」と称賛している。
主人公オフェリアを演じるイバナ・バケロは、オーディションを受けた1000人もの少女達の中から彼女こそ役柄にぴったりと選ばれ、デル・トロが彼女のために当初の年齢設定を変更したそうだ。
共演は、「ハリー、見知らぬ友人」(00)でフランスのセザール賞男優賞を受賞したスペイン出身のセルジ・ロペス、アルフォンソ・キュアロン監督「天国の口、終わりの楽園」(01)に出ているマリベル・ベルドゥ、ベルドゥと共演した「ベルエポック」(92)のアリアドナ・ヒル、スペイン映画の鬼才アレックス・デ・ラ・イグレシアの「ビースト 獣の日」(95)「どつかれてアンダルシア(仮)」(99)に顔を出しているアレックス・アングロ。
そして、迷宮の番人・パンに扮したのはダグ・ジョーンズ。彼は、デル・トロ監督の「ヘルボーイ」(04)では半漁人エイプ・サピエン、「シェイプ・オブ・ウォーター」では不思議な生き物など、特殊メイクによる異形のキャラクターを演じたことで広く知られる俳優だ。
音楽は、「デビルズ・バックボーン」でも音楽を担当したハビエル・ナバレテ。切なくもの悲しいメロディーが胸に響く。
「パンズ・ラビリンス」はアメリカではR指定だったが、日本ではPG12指定(12歳未満の鑑賞には成人保護者の助言や指導が必要)として公開された。

『パンズ・ラビリンス』のあらすじ・ストーリー

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母のそばで、おとぎ話の本を読むオフェリア。

1944年、スペインは内戦終結後も、新たな独裁主義政権に対し、武装したゲリラ達が山に隠れながら戦いを続けていた。

おとぎ話の本を読むのが好きな少女・オフェリアは、身重の母カルメンと共に、母の再婚相手である独裁政権陸軍のヴィダル大尉が住む森の中の砦に向かっていた。ヴィダル大尉の任務は、レジスタンスの一掃だった。

オフェリアが読んでいたおとぎ話は、大地の下にある、嘘や苦痛のない魔法の王国で暮らしていたお姫様の物語。
地上の人間の世界を夢見ていたお姫様は、ある日、従者の目を逃れて逃げ出したが、地上に出た瞬間に太陽の光で目がくらみ、全ての記憶を失ってしまった。自分が誰でどこから来たのかも忘れ、寒さや病や痛みに耐えながら、やがて死んでしまう。彼女死を悲しんだ魔法の王国の王様は、お姫様の魂がいつか別の肉体に宿り、別の時代に生まれ変わって自分の元に必ず戻ってくると信じ、待ち続けるのだった。

車中でカルメンの気分が悪くなり、車を止めて休んでいる間に散策していたオフェリアは奇妙な形の石を見つけ、そのそばで不思議な顔をした石像を目にする。石像の左側の目の部分が空っぽになっているのに気づき、奇妙な石をはめ込むとピッタリ合った。その時、石像の口から昆虫のナナフシが急に現れ、彼女は少し驚いた。でも、直ぐに笑顔になり自分は妖精を見たんだと思った。
オフェリアがカルメンに呼ばれて車に戻り砦に向かうと、ナナフシが後を追いかけるように飛んできた。

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散策中に森の中で不思議な形の石像を目にしたオフェリア。

砦に着いたオフェリアは、新しい父であるヴィダル大尉と初めて会ったが、彼の高圧的な態度に嫌な気持ちにさせられた。その時、石像で見かけたナナフシが近くに置かれていた布袋の上にとまっているのを目にしたオフェリアは、ナナフシに近寄った。するとナナフシは飛び上がった。彼女がその後を追いかけていくと、岩壁で囲まれた門が目の前に現れた。
入り口を通って少し中に入った時、後ろから声がした。砦のお手伝いをしている家政婦のメルセデスだった。彼女は「奥は迷宮よ。入らないで。迷ってしまうわ」とオフェリアに優しく言った。
メルセデスに好感を持ったオフェリアは、ヴィダル大尉に呼ばれて砦に戻ろうとする彼女に「あの大尉は父じゃない。私のパパは仕立て屋で戦争で死んだわ」と告げた。そして母カルメンのお腹に大尉の赤ちゃんがいることなどを話し、二人はすぐに打ち解けて親しくなった。

その夜、臨月なのに長旅をして体調のすぐれないカルメンを地元の医師Dr.フェレイロが診察し、彼女が安眠できるよう液状の睡眠薬を処方した。
診察後にフェレイロが廊下でメルセデスと何か話し、彼女が薬のようなものを彼から渡されるのを扉を開けようとしたオフェリアは偶然見た。それに気付いたメルセデスは驚いたような顔をした。オフェリアは何も言わず扉を閉めると母のベッドに入った。
ベッドの中でオフェリアは母に「どうして再婚したの?」と尋ねた。母の返事は「一人はつらいからよ」。「一人じゃない、私がついているのよ」とオフェリアは言ったが「大人になればママの気持ちがわかるわ」と母は答えた。その後、カルメンのお腹の胎児が動き出したのか、彼女は「ウウッ」と少し呻いた。「あなたの弟が動き出したわ。おとぎ話を聞かせてあげて。きっと落ち着くはずよ」とオフェリアに言うと、オフェリアは母のお腹に頭を乗せおとぎ話を話し始めた。そして、いつの間にか眠りに落ちていった。

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迷宮の守護神パンと初めて出会うオフェリア。

夜も更けた頃、何かの物音でオフェリアは目を覚ました。体を起こして辺りを見回した時、ナナフシがベッドのシーツの上を這って彼女に近づいてきた。
オフェリアは「私を追ってきたの?あなたは妖精?」とナナフシに話しかけ、おとぎ話の本を手に取ってページを開き「これが妖精よ」と挿絵を見せた。すると、ナナフシは挿絵の妖精と同じ姿に変身した。そして、手招きしてオフェリアを彼女が昼間に見た岩壁の門の奥の方へと導いた。
オフェリアが円形になった石段を下りていくと、そこは薄暗い空間で誰もいなかった。「誰かいないの?」と辺りに問いかけていると、突如岩のように見えたものが動いた。それは大きな羊の角のようなものを生やしていて「その声は、まさかアナタでしたか。よくぞお戻りに」とオフェリアに言った。「私はオフェリアよ。あなたは誰?」と問いかけると「私は迷宮の守護神パン。あなたの僕(しもべ)です、モアナ王女様。あなたは大地の下の魔法の王国を治める国王陛下の姫君なのです」と答えが返ってきた。
オフェリアは戸惑いながら「私は違う。パパは仕立て屋で…」と言いかけると「何をおっしゃる、あなたは人間ではない。あなたを生んだのは月の女神です。あなたの左の肩にその印があります」とパンは言った。
そしてパンは「ここに王国への入り口があり、王が待っています。でも時を経てあなたがただの人間になっていないか、前の姫君のままかを調べねばなりません。そのために、満月の夜が訪れる前に3つの試練に耐えなければなりません。」と言い、一冊の本を取り出してオフェリアに渡した。「これは“道を標(しる)す本”です。あなたの未来が分かります。そして何をすべきか教えてくれます」と彼女に告げると、パンは闇の中に消えていった。
オフェリアは早速、本を開いたが中は白紙で何も書かれていなかった。

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オフェリアを“モアナ女王様”と呼ぶ迷宮の守護神パン。

翌朝、オフェリアは母から彼女が作った新しい洋服と靴をプレゼントされた。その日は、ヴィダルが高官達を招いて晩餐会を催すことになっていて、そのための衣装だった。
服を着る前に一人で風呂に入ったオフェリアは、パンからもらった本を開いた。すると、ページに手を当てるやいなや文字と絵が浮かび上がってきた。そこには第1の試練のことが記されていた。そして、風呂場の鏡で左肩を見ると月の印が目に入り、オフェリアはニッコリと微笑んだ。
オフェリアが新しい服に着替えて台所にいるメルセデスに見せると彼女が褒めてくれた。メルセデスがヴィダルに呼ばれて彼女から離れると、オフェリアはパンからもらった本を開いて最初の試練である大きなイチジクの木に向かった。

本には、イチジクの大樹は大ガエルのせいで死にかかっており、樹の下に巣食う大ガエルの口に魔法の石を放り込んで退治し、腹の中から黄金の鍵を取りだせば大樹は再び元気になって花を咲かせるだろうと書かれていた。
オフェリアは、本を頼りに森の中を進みイチジクの大樹を見つけると、ドレスを汚さぬように脱いで大樹のそばの小枝に掛け、用意した石を手に握って樹の中に潜り込んだ。泥だらけになりながら進んでいくと、奥にはでっぷり太った大ガエルがいた。
オフェリアは「こんにちわ、私はモアナ王女よ。怖くなんかないわ」と大ガエルに語りかけ近寄っていった。大ガエルは突然、彼女の顔を這っていた小さな虫を長い舌を伸ばして捕まえ口に入れた。その拍子にオフェリアは石を落としてしまい、慌てて拾い上げた時、石を小さな虫と思わせて大ガエルに食べさせようと考えた。
案の定、大ガエルはオフェリアの手の上の石に舌を伸ばし飲み込んだ。その途端に大ガエルはゲップし、大きく口を開けて白くてドロリとした内臓の塊のようなものを吐き出し、体が萎れてペチャンコになった。内蔵の塊のようなものの表面に鍵があるを目にしたオフェリアは、手を伸ばして取り上げた。

同じ頃、砦にいたヴィダルは、山の中腹に煙が上がっているのを発見したと部下から報告を受け、ゲリラがいると確信し馬に乗って出かけた。
煙が上がった場所には誰もいなかった。だが、焚き火の燃え殻から、ほんの少し前までここにいたとヴィダルは確信する。辺りを調べると、抗生物質のアンプルが落ちているのを見つけた。

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イチジクの大樹の下で大ガエルを退治しようとするオフェリア。

オフェリアが鍵を手に地上に出ると、小枝に掛けていたドレスが風に飛ばされて水たまりに落ちて汚れていた。気落ちしながら汚れた服を着て砦に戻る途中でメルセデスに会った。メルセデスは誰かにランプで合図を送ろうとしていたようだ。彼女と一緒に戻ると、カルメンが娘が晩餐会をすっぽかしただけなくドレスを泥だらけにしたことに怒り、夕食抜きの罰を彼女に与えた。
オフェリアが風呂場で泥で汚れた体を洗っていると、ナナフシが飛んできて浴槽の淵にとまった。オフェリアはナナフシに「鍵はあるわ。迷宮に連れて行って」と言った。

迷宮に行ったオフェリアはパンに鍵を手に入れたことを伝えた。パンは「その鍵を大切に。すぐに必要となるだろう」と言い、「これも持っているといい」と彼女に白いチョークを差し出した。

次の朝、カルメンと一緒に寝ていたオフェリアは目を覚ますと風呂場に行き、パンにもらった本を開いた。「教えて、これからどうなるの?」と本に問いかけると、白いページが真っ赤に染まった。同時に隣の部屋からカルメンのもがき苦しむ声が聞こえてきた。慌ててカルメンの元に行くと、彼女のネグリジェの腰の辺りが真っ赤に染まっており、オフェリアに「助けて」と声を上げた。
オフェリアは急いでヴィダル大尉のところに駆けつけ、母の容体が急変したことを告げた。フェレイロの診断により、カルメンには絶対安静が必要で、オフェリアは別の部屋で寝起きさせられることになった。
オフェリアの寝床を用意していたメルセデスは、心細そうにしている彼女に「心配しないで。お母様はすぐよくなるわ。赤ちゃんを産むって大変なの」と語りかけた。「それなら私は一生、赤ちゃんなんか生まないわ」とオフェリアが答えると、メルセデスは彼女のそばに寄り添い、なだめるように優しく髪を撫でた。
突然、オフェリアはメルセデスに「森にいるゲリラ達を助けているのね」と問いかけた。以前、メルセデスがフェレイロからから受け取っていた薬は、ゲリラの治療薬だったのだ。勘の鋭いオフェリアは、メルセデスが医者のフェレイロから密かに薬を受け取ったり、大ガエルを退治した後で出会った彼女がランプで誰かに合図を送っていたりする行動から、おそらく彼女はゲリラの味方なんだろうと思っていたのだ。メルセデスはギョッとしたが、オフェリアが「そのことは誰にも話していない。あなたのことが心配だわ」と言い彼女の胸に頭を乗せた。メルセデスはオフェリアを抱きしめ「あなたのこともよ」と囁いた。
オフェリアがメルセデスに子守唄を歌ってくれと頼むと、彼女は歌詞は忘れたがメロディだけは覚えている子守唄を口ずさんだ。オフェリアは目を閉じ、そのメロディに聞き入った。
その夜、メルセデスはフェレイロと共に山奥の彼らの隠れ家に向かった。フェレイロはゲリラではなかったが彼らへの協力を惜しまず、メルセデスから重傷を負ったゲリラの治療を頼まれ同行したのだ。ゲリラのリーダー格であるメルセデスの弟ペドロが迎えに来てくれ、一緒に隠れ家に行くと彼女は預かってきた手紙や酒やタバコをゲリラの仲間達に渡し、フェレイロは足に大怪我を負った初老の男の治療をした。

眠りに落ちていたオフェリアは、枕元に現れたパンに起こされた。パンはオフェリアに第2の試練をまだ果たしていないことを責めた。
オフェリアが母の病状が悪くてとても心配だったからと言い訳すると、パンはマンドラゴラの根を取り出した。「それは人間になることを夢見ている植物で、母親のベッドの下に置いて毎朝血液を2滴与えてやるとよい」と言って彼女に渡し、「さあ急げ、試練を果たさねば」と催促した。
そして第2の試練の道案内をする妖精達が入った小さな筒型のケースを彼女に渡した。

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オフェリアが第2の試練で出くわす怪物ペイルマン。

第2の試練は、パンからもらった白いチョークで壁に扉を描き、それを開いて中に入り、奥の部屋にある小さな扉を大ガエルを退治して見つけた鍵で開けて中の物を持ち帰ることだった。
パンは、第2の試練の場所では人間ではない者がうたた寝しており、豪華絢爛な料理が並んでいるが、それを目にしても絶対に何も食べず何も飲んではいけないと注意した。そして、「なぜなら、あなたの命がかかっているのだから」と言った。
オフェリアは筒型のケースを肩にかけ、白いチョークで壁に扉を描いて開き、砂時計をセットして置くと中に入った。砂時計の砂が全部落ち切ると扉は消えてしまうので、それまでに試練を果たさなければいけなかった。
部屋の中央には豪華な料理が所狭しと並んでおり、テーブルの奥に小さな目の部分が空洞になったブヨブヨの白い肌をした異様な風体の怪物(ペイルマン)が座っていた。その怪物の前の皿には眼球のようなものが2つ並んでいた。
オフェリアは部屋の周囲を見渡し、筒型のケースを開けて中の妖精を部屋に放った。妖精は部屋の隅にある小さな扉が3つ並んだところまで飛んでいき、彼女にここだと手で指し示した。オフェリアは鍵を取り出し、妖精が最初に示した扉に鍵を入れたが開かなかった。少し迷って隣の扉に鍵を入れるとすんなりと開いた。中のものを取り出すと、それは黄金色の短剣だった。
オフェリアは短刀を手にして戻ろうとした時、気が緩んだのか、テーブルに盛られた美味しそうな料理につい目が行った。妖精が食べちゃダメと言わんばかりに両手を左右に振ったが、彼女はそれを払いのけブドウを2粒だけ摘まんで口に入れてしまった。
するとペイルマンが動きだし、皿の眼球を掴んで嵌め込むと、立ち上がってオフェリアに迫ってきた。妖精達は彼女を助けようとペイルマンの動きを邪魔したが、2体が捕まえられて無残にも食い殺されてしまった。
それを見たオフェリアは、慌ててチョークで描いた扉まで駆け戻ろうとした。だが、辿り着く直前で扉は閉ってしまった。砂時計の砂が全部落ち切っていたのだ。振り返るとペイルマンがすぐそこまで迫っていた。
オフェリアはもう一度チョークで扉を描こうとしたが、焦ってしまいチョークを半分に折ってしまった。残ったチョークで扉を描くにはどうしたらいいか必死に考え、天井に自分が抜け出せるくらいの大きさの扉を描き、それを開いてよじ登ろうとした。そして、ペイルマンが彼女の足を掴もうとする寸でのところで部屋に戻ることができた。

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マンドラゴラの根を母のベッドの下に置こうとするオフェリア。

翌朝、オフェリアはパンからもらったマンドラゴラの根をミルクの入った器に浸し、カルメンが眠るベッドの下に入れ、自分の指を噛んで血を2滴垂らした。すると、カルメンの容体が回復し始め、医者のフェレイロも驚いた。
その時、砦近くの森の向こう側で大きな音を響かせて爆発の炎が上がった。ヴィダルが部下を連れて駆けつけると、線路が破壊され汽車が脱線していた。ヴィダルがゲリラに襲撃されたという運転手を話を聞いている最中、今度は砦の方で爆発の炎が上がった。ヴィダル達を砦の外におびき出し、守りが弱くなったところを襲うゲリラ達の作戦だったのだ。
ヴィダルは急いで砦に戻ったが、貯蔵室から食料などがゲリラに奪われた後だった。まだそんなに遠くには逃げていないと思ったヴィダルは、早速、山狩りを始めた。そして、逃げるゲリラ達を見つけ、銃撃戦が始まった。
ほとんどゲリラ達は撃ち殺されたが、ひとり吃音の男が生き残っていたのを部下のガルセスが見つけ砦まで連行した。

その夜、母が容体が良くなったことでぐっすりと眠っていたオフェリアだったが、パンの声で目を覚ました。
オフェリアがマンドラゴラの根のおかげで母の容体が良くなったことに礼を言うと、パンは満足気に頷いた。そしてオフェリアは、申し訳なさそうな顔をして「第2の試練で思わぬ結果を招いたの。事故があったの」と言いながら筒型のケースをパンに渡した。パンがケースを開けると生き残った妖精が飛び出し、彼の耳元に近づいてオフェリアが禁を破ってブドウを食べてしまったことを身振りで告げた。
パンは怒りだし、「あなたは過ちを犯した。試練に負けたのだ。王国へは戻れんぞ!あなたの魂は永遠に人間の世界にとどまるのだ」と言い放ち、オフェリアの前から姿を消した。オフェリアは悲嘆にくれ涙を流した。

次の日の早朝、フェレイロがヴィダルに呼ばれて砦にやって来た。
ヴィダルが捕まえ拷問したゲリラの吃音の男を、まだ拷問に耐えられるよう診てもらおうとしたのだ。フェレイロは拷問で酷い傷を負った男に近づき様子を見た。
その時、ヴィダルはフェレイロのカバンにの中に、ゲリラが焚き火の後に残していった物とよく似たアンプルを目にし、確かめようと外に出た。ヴィダルがいなくなったとき、拷問された男はフェレイロに「今すぐ殺して」と頼んだ。フェレイロは、男の望み通り注射を打って彼を安楽死させた。
抗生物質のアンプルが同じものだと判り、ヴィダルはフェレイロがゲリラの味方だったと確信した。

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フェレイロのカバンにあった抗生物質のアンプルを確かめるヴィダル。

ヴィダルが捕まえたゲリラの男のところへ戻ろうとした時、カルメンの部屋で何か怪しい物音がしたのを耳にし、部下を先に戻らせて彼女の部屋に向かった。
音は、オフェリアが母の食事の盆を床に落としたものだった。オフェリアは皿やコップを拾い上げ、マンドラゴラの根の様子を見ようとベッドの下に潜り込んだ。だが、部屋に入ってきたヴィダルに引っ張りあげられ、マンドラゴラの根を見つけられてしまった。
ヴィダルは「これは何だ」とオフェリアをおどしつけ、母のカルメンも「どうしてこんなものがベッドの下にあるの?」と彼女に問いただした。オフェリアが「これは魔法の根よ、パンにもらったの」と答えると、カルメンは「もう大きいんだから人生がおとぎ話でないと分かるはず。世の中は残酷なのよ。たとえ傷ついても学ばないと。魔法なんて存在しないのよ」と言って、オフェリアが止めるのも聞かずマンドラゴラの根を暖炉の火の中に投げ捨てた。マンドラゴラの根は炎に焼かれ身悶えながら悲鳴をあげた。その拍子にカルメンは腹を押さえ、うめき声を漏らしてらくずおれた。出産が迫って来たのだ。

ゲリラの男のところに戻ったヴィダルは、フェレイロが男を安楽死させたのを知り、立ち去ろうとする彼に銃を向け引き金を引いた。息絶えたフェレイロをヴィダルが見下ろしていたとき、お手伝いの女がカルメンの容体が急変したと告げにやって来た。ヴィダルは軍医を呼び、カルメンの出産に当たらせた。
そして、赤ちゃんは無事生まれたがカルメンは亡くなってしまった。
葬儀が終わり、オフェリアは砦から出ていこうとこっそり荷造りを始めた。愛する母が亡くなり、義父のヴィダルと暮らすのが耐えられなくなったからだろう。その時、母のためにフェレイロが処方した睡眠薬の瓶に目を停め、それもカバンに入れた。
メルセデスは生まれた赤子を世話していたが、あるときヴィダルに呼び止められ、彼から「拷問した吃音の男が、ここにはスパイがいると喋った」と意味ありげに言われた。自分がスパイなのを気付かれたと思ったメルセデスは砦から逃げることにした。逃げる前にオフェリアが眠る部屋に入り、彼女にそのことを話した。オフェリアが「私も連れてって」と懇願するが、メルセデスは「それは無理。でも必ず迎えに来るから」となだめた。だが、オフェリアの強い願いに負け二人で逃げることにした。
夜遅く、オフェリアとメルセデスは砦から抜け出し降りしきる雨の中を進んだが、待ち構えていたヴィダルと彼の部下達に掴まってしまった。ヴィダルは、メルセデスがスパイであることをとっくに知り、逃げ出すことも予期していたのだ。

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メルセデスがゲリラ側のスパイであると分かり、拷問にかけようとするヴィダル。

オフェリアとメルセデスは砦に連れ戻された。
ヴィダルは、オフェリアがメルセデスがスパイなのを知りながら義理の父である自分に黙っていたことを責め立て、部屋に閉じ込めた。部下に見張りを命じ、ヴィダルは捕えたメルセデスを拷問するため監禁した納屋に向かった。
メルセデスは縄で両手を縛られ柱に立たされた。ヴィダルは、拷問する相手が女だと見くびり、部下を納屋から出し一人で行おうとした。ヴィダルが拷問道具を選ぼうと背を向けた時、メルセデスはエプロンに巻き込んでいたナイフを取り出し縄を切って、そっとヴィダルに近づいた。彼女は、家政婦の仕事をするとき、ナイフを何時でも使えるようエプロンに巻き込んでいたのだ。
メルセデスはヴィダルの背後に立つと、彼の背中にナイフを刺した。驚いて振り返ったヴィダルの胸や腕にもナイフを立てた。そして、よろけて膝立ちになった彼の口にナイフを突き入れ、「腐った豚め。あの子(オフェリア)に手出しはさせない。豚はこうやってさばいてやる」と言うや、ヴィダルの唇を引き裂いた。
激しい痛みにヴィダルはうずくまり、その隙にメルセデスは納屋の外に出た。気付かれないよう逃げ出そうとしたが、ヴィダルの部下のガルセスに見つかった。メルセデスは山に向かって一目散で走ったが、馬に乗って追いかけてきたガルセス達に追いつかれ取り囲まれてしまった。もはやこれまでと、メルセデスは自害しようと首にナイフを当てたが、そのとき銃弾が鳴り響きガルセスがばったりと倒れた。メルセデスのの弟であるペドロ達が近くまで来ていて、ガルセスに銃弾を浴びせたのだ。他の兵士達も次々と撃ち殺された。メルセデスはペドロを見るや彼に抱きつき、ぼろぼろと安堵の涙を流した。

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最後のチャンスをオフェリアに与えるパン。

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