第9地区(映画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『第9地区』は、作品賞も含め4部門のアカデミー賞にノミネートされたSFアクション映画だ。
製作は『ロード・オブ・ザ・リング』3部作のピーター・ジャクソン。
ある日突然上空に現れた宇宙船。中には衰弱したエイリアンたちがいた。人類はそのエイリアンたちを「第9地区」と呼ばれるスラム地域に隔離する。
映画にはCGもふんだんに使われ、銃などによる戦闘シーンも迫力満載。SFアクション映画として十分楽しめるが、映画に出てくる「第9地区」はアパルトヘイトを彷彿とさるなど、数々の社会批判も映画の見どころだ。

『第9地区』の概要

『第9地区』はアメリカで2009年に公開され、日本では2010年に公開されたSFアクション映画。
第82回アカデミー賞において作品賞、脚色賞、編集賞、視覚効果賞の4部門にノミネートされるなど、多くの映画賞でノミネートされた作品だ。
アパルトヘイトが根底に描かれているこの『第9地区』は、製作費3千万ドルと大作ではないが、一週間の興行収入でこの製作費を上回った。
製作は『ロード・オブ・ザ・リング』3部作や『ホビット・シリーズ』などで知られるピーター・ジャクソン。監督・脚本は2001年の『スコーピオン』に次ぎ2作目となる、日本のアニメが好きだと公言している若き監督ニール・ブロムカンプ。彼はこのあと『エリジウム』『チャッピー』を手掛けている。
ある日、南アフリカ共和国のヨハネスブルグの上空に巨大な宇宙船が飛来してきた。人類がその宇宙船に乗り込むと、そこにはたくさんの弱り切ったエイリアンたちがいた。
宇宙船が故障し、エイリアンたちは難民となってしまったのだ。
彼らは地球上に隔離され、その場所は第9地区と呼ばれた。その第9地区は超国家機関MNUによって管理されることとなる。
クリストファーというエイリアンが、密かに作っていた宇宙船の燃料を体にかけてしまい、エイリアン化していく主人公のヴィカス。
ヴィカスは映画の冒頭からエイリアンたちを見下し、上から目線で対応していた。自分の妻の父親がMNUの幹部だったこともあり、かなり調子に乗っていたのだ。
誰が見てもイヤなヤツだったヴィカスだが、皮肉なことに体がエイリアン化していくことで、やさしい心を持つようになっていくところも映画の見どころのひとつだろう。
第9地区はアパルトヘイトを彷彿とさせる、差別されスラム化した場所だ。第9地区を管理するのが巨大軍事会社だったり、ナイジェリアギャング団が陰で現場を仕切るなど、いろいろな社会批判的な要素も入っている。
だが、戦闘シーンでは『超時空要塞マクロス』で使われた、通称「板野サーカス」と呼ばれる、たくさんのミサイルが絡み合う軌道が使われたり、いろいろなオタクたちも喜ばせている。
『第9地区』はあっさりと楽しめるが、深読みすればするほど奥深い映画だ。

『第9地区』のあらすじ・ストーリー

巨大な宇宙船が現れる

1982年3月。南アフリカのヨハネスブルグの上空に、突如巨大な飛行船が出現した。その宇宙船は動かず、政府の調査隊は宇宙船に乗り込んで調査をした。
宇宙船の中にいたのは、エビに似た姿をしたたくさんのエイリアンたち。宇宙船が故障したことで難民となり、エイリアンたちは栄養不足により弱り切っている。
世界中から注目され、絶えずテレビ放映されている宇宙船。政府は「第9地区」と呼ばれる地域に大量のエイリアンたちを隔離した。

第9地区

第9地区は政府が認可した民間企業MNU(マルチ・ナショナル・ユナイテッド)が区画整理や監視をおこなうことになった。
地球人たちはエイリアンたちがエビに姿が似ていて、姿がグロテスクなことから「エビ」と呼び蔑視する。
それから28年が過ぎ、エイリアンの数は膨大に増加し180万人に。第9地区にはギャング団が潜伏していて、エイリアンの好物の猫の餌を売ったり、エイリアンの売買などもしていた。またエイリアンは地球人の物を盗むなどして、双方は対立を深めていき、スラム街となっていた。

立ち退き交渉

MNUは新しく作った第10地区にエイリアンを移動させるため、現場責任者で主人公のヴィカス(シャールト・コプリー)らがエイリアンたちに立ち退き交渉にあたる。
その様子は全て撮影されていて、ヴィカスはリポーターのようにその様子を説明していた。
エイリアンであるクリストファーの家に交渉にやって来たヴィカス。外にクリストファーの子ども、リトルCJがいて、ヴィカスは親し気に話しかける。
クリストファーの家にはたくさんのコンピュータや武器が隠されていた。
クリストファーたちはゴミの山から必要なものを掘り出し、20年かけて武器などを作り上げていたのだ。
ヴィカスたちMNUはそれらを押収。その最中にヴィカスは誤ってその液体を自分の体にかけてしまう。

エイリアン化するヴィカス

黒い鼻血を出したり歯が抜けたり、爪もはがれてくるなど体に異常が出てきたヴィカス。妻のタニア(ヴァネッサ・ハイウッド)と病院に行くが、病院でヴィカスの手がエイリアンの手に変わり、MNUはヴィカスを無理やり実験室に連れて行く。エイリアンへと変わっていくヴィカスを被験体にしょうとしたのだ。
タニアの父はMNUの重役。落ち込むタニアに、ヴィカスはもう戻って来れないと告げる。
エイリアンから押収した武器はエイリアンのみ使うことができ、腕がエイリアン化したヴィカスは、武器を使うための格好の実験台となる。
それを知ったヴィカスは、研究員たちの隙をついて実験室を逃げ出し、第9地区へ逃げ込み偶然クリストファーと出会う。

薬品の正体は宇宙船の燃料

ヴィカスの体にかかった薬品は、クリストファーたちが作った宇宙船の燃料だった。宇宙船の司令部はクリストファーの家の地下にあり、ゴミから集めた部品で修繕していたのだ。
宇宙船の燃料をMNUから取り戻し、宇宙船を起動できればヴィカスの体を元に戻せる、とクリストファーがヴィカスに告げる。
MNUに侵入するには武器がいる。ヴィカスはギャング団から武器を買い付けに行くが、ボスのオビサンジョ(ユージーン・クンバニワ)もエイリアンの武器を使うため、ヴィカスの腕を奪おうとした。ヴィカスはオビサンジョたちが集めたエイリアンの武器を使えたため、なんとか武器を奪い逃走。クリストファーとともにMNUに乗り込んだ。
武器を使いMNUを襲撃したヴィカスとクリストファー。なんとか宇宙船の燃料を奪い返した。だがその燃料があった研究室では、クリストファーの仲間のエイリアンたちが実験台にされ、悲惨な姿となっていた。
それを見たクリストファーは怒り狂い、銃を撃ちまくる。
なんとかMNUを抜け出したヴィカスとクリストファーは、リトルCJとともに司令船を起動させ母船へと向かおうとした。

ヴィカスの心の変化

だがクリストファーはMNUに捕らえられ、ヴィカスとリトルCJだけで司令船に乗り空母に向かうが、それをMNU傭兵隊とギャング団が追う。
MNUとギャング団の戦闘となり、ヴィカスたちの司令船は撃ち落されてしまった。
ヴィカスも捕らえらそうになるが司令船に残ったリトルCJが遠隔操作で、中に入り操縦することができるロボット型のパワードスーツを動かし、それにヴィカスは乗り込み逃げようとする。
だが思いとどまり、クリストファーを助けに戻った。
クリストファーを援護しながら母船に誘導し、母船に近づいたとき、盾となっていたヴィカス操縦のパワードスーツは崩壊した。

ヴィカスのその後

パワードスーツから瀕死の状態で出てきたヴィカス。ヴィカスを執拗に追っていたのは、MNU傭兵のクーバス大佐(デヴィッド・ジェームズ)だ。
動けないヴィカスに銃を向けるクーバス大佐だったが、そこにエイリアンたちが次々とやってきて、クーバス大佐に襲いかかりヴィカスは助かった。
クリストファーは、3年待ってくれと言って地球を後にしていた。
ある日ヴィカスの妻、タニアの家の玄関先にスクラップで作られた一輪の花があった。タニアはヴィカスが置いていったと信じ、家の中にそっとその造花を飾る。
ヴィカスは完全にエイリアンの姿となり、スクラップで造花を作りながら、第10地区でクリストファーが来るのを待つのだった。

『第9地区』の登場人物・キャラクター

主要人物

ヴィカス・ファン・デ・メルヴェ(演:シャールト・コプリー)

日本語吹替:川島得愛

MNUの職員で、妻タニアの父はMNUの重役。そのため第9地区の立ち退き交渉現場責任者として抜擢され、エイリアンたちを見下し好き勝手な振る舞いをしていた。
だがその最中に謎の液体を浴び、身体がエイリアンへと変化していく。その液体を取り戻しエイリアンの宇宙船を起動できれば、ヴィカスの体を元に戻ると聞かされ、液体を奪ったMNUへ乗り込む。
最後の方ではエイリアンのクリストファー親子を心配し、身をもってクリストファーを宇宙船まで送り届ける。

クリストファー・ジョンソン(CG)

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