シェイプ・オブ・ウォーター(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

シェイプ・オブ・ウォーター(The Shape of Water)とは、2017年にアメリカで公開された、声の出ない中年女性と半魚人のラブ・ロマンスを描いた作品。前代未聞のラブストーリーということで、2018年に日本でも公開され話題になった。ギルレモ・デル・トロ監督作品の中でも傑作と呼ばれる本作で、サリー・ホーキンスの演技が高く評価された。

ストリックランドの妻。
子どもには献身的だが、夫が大怪我をしても深入りして理由を聞かないなど、ストリックランドにはどこか一歩ひいている性格である。
しかし、それは子どもの前だけであり、ストリックランドが誘えば日中でも性行為に付き合う。
自分を妻や母ではなく、女性として見てくれるストリックランドのことは好きらしい。

『シェイプ・オブ・ウォーター』の用語

国際航空宇宙センター

アメリカ政府の管理のもと、宇宙開発に関する研究を行っている機関。かなり大きな施設で、正確な数は作品の中で語られていないが、研究員も大勢いる。イライザはゼルダと共に清掃作業員としてここに勤務している。ストリックランドは米軍で元帥としての兵役を終えてここに配属された。ホフステトラー博士はロシア政府からの特命で研究員のふりをしているスパイとして、アメリカの宇宙開発がロシアより発展することの無いように、機密情報を漏洩していた。「不思議な生き物」もアマゾンから遠路はるばる輸送されてきた。
1950年代後半、実際にロシアは宇宙で人間が実験や研究ができるようにすべく、犬をロケットに乗せる試みを何度も繰り返した。それを見たアメリカが遅れを取るまいと、猿を乗せたロケットを何発も打ち上げた。
1962年という時代設定において、アメリカとロシアの冷戦時代であることだけでなく、この二国間の関係がかなり劣悪だったことを強調するかのように、戦争での対立関係の次に深刻であった宇宙開発での競争研究が取り上げられている。

「彼」

「不思議な生き物」のことを指す。主にゼルダが、イライザとの会話の時にそう呼んでいた。

シェイプ・オブ・ウォーター

この作品のタイトル。
デル・トロ監督が「水はどんな形にもなる」、「それは愛だと思う」「愛する対象によって形を変え、相手がだれであろうと適応する」、”Shape of water is shape of love”というメッセージを観る人に伝えるべく、タイトルにつけた。

『シェイプ・オブ・ウォーター』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

「私は言葉を話せない、彼も言葉を話せない。彼と私で何が違うの?」

「不思議な生き物」を宇宙研究センターから連れ出し、水の中に帰そうとイライザがジャイルズに協力を要請するシーンで、ジャイルズはイライザに「彼」は人間じゃないと断ろうとする。これに対し、イライザは怒りを露わにした表情でジャイルズに手話で「私は言葉を話せない、彼も言葉を話せない。彼と私で何が違うの?」と反撃する。このセリフは、物語においてイライザの「彼」への気持ちの強さを表している。それと共に、障碍者であるイライザ、黒人であるゼルダ、同性愛者であるジャイルズのようなマイノリティーと称される人々の特徴を認め合うべきだ、というこの作品の問題提起にもつながっている。

「あなたの姿は見えなくても、私の隣にはあなたがいる。あなたの存在は私の目を愛で満たし、心を和ませる。なぜならば、あなたはどこにでもいるから」

重傷を負ったイライザを連れて「不思議な生き物」は自分の本来の住処である水中へと潜る。「不思議な生き物」の治癒能力によってイライザは息を吹き返し、水の中でも生きられるようになる。愛する「彼」を見つめるイライザの胸の内が、ナレーションで流れる。
「あなたの姿は見えなくても、私の隣にはあなたがいる。あなたの存在は私の目を愛で満たし、心を和ませる。なぜならば、あなたはどこにでもいるから」
劇中、一貫してイライザは「不思議な生き物」の容姿に驚くことも、蔑むような目で見ることも無かった。そして最後に、同じように蔑む目で見られてきた自分のことを認めてくれた「彼」に愛されていることを自覚する。同時に、「どこにでもいる」と表現する。「不思議な生き物」のことを、どこにでもいる人と変わらない目で見ているからだ。
作品を通してマイノリティとされてきた人がお互いを認め合う過程が描かれるシーンがいくつも出てくる。その最後でこのセリフが出てくることで、恋愛に限らず、人と関わるということは認め合うことが重要である、どんな人でもお互いを認め合うことができるということを、観る人に伝えている。

イライザと「不思議な生き物」のダンスシーン

イライザと「不思議な生き物」のシーンはどれも鮮やかに描かれ、種別を超えた愛がそこに映し出されている。最後に「不思議な生き物」がイライザを自分の生息地である水中に連れ込み、抱き合うシーンも息を吞むほど美しいが、山場の前にある2人のミュージカルシーンもまた格別の魅力を放つ。
ホフステトラーが組織を裏切り、イライザ達に加担したことにより、研究所から「彼」は無事連れ出される。しかしストリックランドにばれてしまい、ゼルダやジャイルズの協力の元、「不思議な生き物」を逃がす準備が急ピッチで進む。だが一方、イライザは「彼」を帰らせてあげたいという気持ちとずっと一緒にいたいという想いを自分の中で交錯させていた。後者の気持ちが抑えきれなくなったイライザは、妄想の世界の中で彼と歌い、踊る。
このシーンでカラーからモノクロになり、観る人を一気に引き付けた世界で、大好きな映画の登場人物のようにイライザは音に乗せて彼への気持ちを訴える。その世界で不思議な生き物は、イライザの気持ちを受け止め、共感するかのように、イライザと一緒にステップを踏む。
切なく淡い気持ちを儚いながらにも爆発させたイライザはそこで無理やり自分の気持ちを吹っ切るかのように、彼の幸せを想って、ジャイルズと共に彼を逃がしに向かうのだった。

ストリックランドに手話で暴言を吐くイライザ

「不思議な生き物」に宇宙研究センターから脱走されたストリックランドは清掃作業員を含む従業員全員を尋問していく。堅牢な水槽に閉じ込めただけでなく、さらにそれを厳戒なセキュリティが施されていた部屋に配置していたにも関わらず、「不思議な生き物」に逃げられたストリックランドのプライドはズタズタになっていたため、その部屋の清掃担当だったイライザとゼルダの尋問はかなり厳しいものになっていた。自分の顔に泥を塗った「不思議な生き物」に対し、ストリックランドは気味が悪いなど暴言を並べる。それを聞いたイライザは手話でストリックランドに「Fuck You」と更なる暴言を吐く。通訳として同席していたゼルダがイライザの暴言に気付き、咄嗟にストリックランドに「ありがとうと言っています」と嘘をついて、イライザと共に部屋を出るが、手話の分からないストリックランドはイライザの怪訝な形相も相俟ってさらに激昂した。
大人しい女性だったはずのイライザが、物語を通して、「不思議な生き物」に愛され、認められることで、ストリックランドのような自分より力のある者にも声をあげられるようになった瞬間である。その声が届くかどうかではなく、自分の意志を伝えること自体が重要であることを感じさせるシーンである。

『シェイプ・オブ・ウォーター』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

デル・トロ監督なりのトランプ大統領批判とキャスティングへのこだわり

keeper
keeper
@keeper

Related Articles関連記事

パンズ・ラビリンス(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『パンズ・ラビリンス』とは、「パシフィック・リム」「シェイプ・オブ・ウォーター」のギレルモ・デル・トロ監督による、内戦後もゲリラ戦が続くスペインを舞台にしたダークファンタジー。母の再婚相手である軍人が暮らす山奥の砦にやって来た少女が、つらい現実から逃れるため童話の世界に浸っていく物語で、現実世界と少女が見る幻想世界が巧みに絡み合うストーリー展開。06年スペイン・メキシコ・アメリカ製作ながら第79回アカデミー賞で撮影賞・美術賞他を受賞。07年・日本公開。

Read Article

君の名前で僕を呼んで(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『君の名前で僕を呼んで(Call Me by Your Name)』とは、2017年に公開されたルカ・グァダニーノ監督による青春・ラブロマンス映画。17歳エリオは大学教授の父が招いた24歳の大学院生オリヴァーとひと夏を共に過ごす。そんなエリオの初めての、そして生涯忘れられない恋の痛みと喜びを描いている。本作はアンドレ・アシマンが2007年に出した小説『Call Me by Your Name』を原作としている。今作では原作の物語の途中までしか描かれておらず、続編の構想が明かされている。

Read Article

ヘルボーイ(Hellboy)のネタバレ解説・考察まとめ

「ヘルボーイ」とはアメリカの人気コミックを映像化した2004年制作のアメリカ映画。異界から産み落とされた悪魔の子ヘルボーイが、人間によって育てられ、正義のヒーローとして、半魚人や念動発火能力を持つ女性と共に、邪悪な者たちと戦うアクション・アドベンチャー。監督は、「ミミック」「パシフィック・リム」のギレルモ・デル・トロ。個性的な風貌のロン・パールマンがヘルボーイを快演し、彼の代表作のひとつとなった。

Read Article

パシフィック・リム(Pacific Rim)のネタバレ解説・考察まとめ

日本のマンガやアニメ、特撮作品への造詣も深いギレルモ・デル・トロ監督による2013年公開のアメリカ映画。巨大怪獣と人型巨大ロボットとの戦いを圧倒的スケールで描き出したSFアクション超大作。太平洋の海底から巨大怪獣が現れ、全世界の大都市を襲撃する。人類滅亡の危機を救うため、名パイロットのローリーと日本人研究者の森マコがペアとなって操縦する人型巨大ロボット"イェーガー"で、怪獣に立ち向かう姿を描く。

Read Article

メッセージ(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『メッセージ』(原題:Arrival)とは、本作後に「ブレードランナー2049」を撮るドゥニ・ヴィルヌーヴ監督によるSFムービー。 突如地球上に現れた巨大な宇宙船。飛来した目的を探ろうと、船内の異星人とコミュニケーションをとるため軍に依頼された女性言語学者が、彼らと接触するうちに未来を見ることが出来るようになり、自分の人生を見つめ直していくシリアスタッチの知的なドラマ。2016年製作のアメリカ作品。

Read Article

マン・オブ・スティール(DCEU)のネタバレ解説・考察まとめ

『マン・オブ・スティール』とは、2013年に公開されたアメリカ合衆国のスーパーヒーロー映画。「DCコミックス」の人気アメリカン・コミック『スーパーマン』の実写映画作品である。『スーパーマン』シリーズを含めると、本作は通算第6作目の作品だ。科学や文明が発達して人工生育が常識である、地球から遠く離れた惑星「クリプトン」で、数百年ぶりに自然出産で「カル=エル」という子供が生まれた。のちに「スーパーマン」と呼ばれる彼は、子供のいなかった夫妻に育てられたのち、自分の出自を知るための旅にでる。

Read Article

アウトロー(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『アウトロー』とは、2012年に公開されたアメリカのサスペンスアクション映画で、リー・チャイルドが発表した小説『アウトロー』を原作としている。5人の命が亡くなる射殺事件の容疑をかけられたジェームズの要請を受けたジャック・リーチャーは、弁護士の依頼を受けて不可解な射殺事件の捜査を開始することにする。監督はクリストファー・マッカリーが努め、主人公のジャック・リーチャーをトム・クルーズが演じ、ロザムンド・パイク、リチャード・ジェンキンス、デヴィッド・オイェロウォ、ロバート・デュヴァルらが共演した。

Read Article

目次 - Contents