完全なるチェックメイト(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『完全なるチェックメイト』とは、2015年にアメリカで公開された天才チェスプレイヤー、ボビー・フィッシャーの半生を描く伝記ドラマ映画。冷戦下の1972年、15歳でチェスのグランドマスターとなったボビー・フィッシャーは、その奇抜な言動から周囲から変わり者と扱われてきた。そんなボビーは世界が見守るチェス最強国のソ連が誇るボリス・スパスキーとの対局で苦戦しながらも驚くべき戦略でスパスキーに立ち向かう。チェスの世界で精神の極限状態に追い込まれるボビーを緊張感のある表現で描かれている。

『完全なるチェックメイト』の概要

『完全なるチェックメイト』とは、2015年にアメリカで公開された天才チェスプレイヤー、ボビー・フィッシャーの半生を描く伝記ドラマ映画。冷戦下の1972年、15歳でチェスのグランドマスターとなったボビー・フィッシャーは、その奇抜な言動から周囲から変わり者と扱われてきた。そんなボビーは世界が見守るチェス最強国のソ連が誇るボリス・スパスキーとの対局で苦戦しながらも驚くべき戦略でスパスキーに立ち向かう。監督は『ラストサムライ』のエドワード・ズウィックが務め、ボビー役のトビー・マグワイアも制作に携わっている。

サム・ライミ版『スパイダーマン』シリーズで知られるトビー・マグワイアが主演を務め、製作にも携わっている。監督は『ラストサムライ』のエドワード・ズウィック、脚本はイギリスの小説家のスティーブン・ナイトが務めている。

本作は、批評家から高い評価を受けている。映画批評サイトのRotten Tomatoesでは批評家支持率が71%、平均点は10点満点中6.5点となっている。特に主演のトビー・マグワイヤの評価が高く、ある批評家は「ボビー・フィッシャーから着想を得た作品たちに、『感動的なドラマ映画』として新たに加わることとなった」と述べている。初めて本作が上映されたのは、第39回トロント国際映画祭でのこと。初上映の前日にはブリーカー・ストリート・メディアが北米は配給権を獲得していた。当初本作の公開日は2015年9月18日であったが、2日前倒しされ9月16日に公開されることとなった。

『完全なるチェックメイト』のあらすじ・ストーリー

ボビー・フィッシャーの生い立ち

出典: orita-ani.net

公園でチェスを打つ青年期のボビー(中央の青年)

1951年11月15日のNYブルックリン。まだ幼いボビー・フィッシャーは、窓の外を眺めていた。外には1952年製の赤のシボレーの中で、ボビーに向けてカメラを構える男がいた。母であるレジーナ・フィッシャーからその車を見つけたら報告するように言われていたボビーは、レジーナに伝えに行く。レジーナはボビーに「悪い連中は、私たちが現状への革命の象徴だから脅したいの。奴らは私たちを監視し、探っている。だから、外で誰かにママたちのことを聞かれたらなんて答える?」と話す。ボビーは「話すことはない」と答え、レジーナに褒められる。レジーナは共産主義であり共産党員とも仲良くしていた。そのためアメリカ政府から危険因子として監視されていたのだった。レジーナはボビーに監視の目から逃れるための教えを常に言い聞かせていたのである。ボビーは姉であるジョーン・フィッシャーにベッドへと連れられ、眠りに入ろうとする。ボビーは感覚が過敏なのか、風の音や人が歩く音などを気にしてしまい、寝ることができない。そんな中目に入ったのは、ベッド脇のデスクに置いてあったチェスであった。ボビーがチェス盤を眺めると駒の動きが浮かんでくる。ボビーは頭の中でチェスの何通りもの手を考え、一人でチェスを打つのであった。

ボビーは、レジーナとジョーンに連れられカーマン・ナイグロが経営するチェスクラブを訪れていた。カーマンがボビーのチェスの実力を見極めるために、勝負をすることになる。カーマンはレジーナに「若い人はあまり集中力が保てませんので、期待しすぎないように」と話すが、レジーナは「負けたことがないんです。負けたらチェスをあきらめてほしくて」と話す。カーマンはチェスをしながらボビーに雑談を投げかけるも、ボビーは集中しており、適当な相づちしか返さない。ボビーとカーマンの勝負はなかなか決着がつかない。カーマンがボビーに「ドローにしよう」と大きな一手を打ちながらもちかけるも、ボビーは対抗して駒を動かす。ボビーはドローが大嫌いなのだ。ついにカーマンの口から「チェック」の言葉がでる。ボビーが守りに入るも、カーマンは「メイト」の一言を告げる。ボビーはついに敗北を経験したのだ。ボビーは涙を流しながらも、さきほどまでの勝負を思い出し、別の手を考えていた。席に戻りボビーは「もう一度」と勝負をねだった。
それからボビーは様々なチェスプレイヤーと対戦をしていく。ボビーはカーマンとの勝負が繰り返される内にでは「はやくはやく」と次の一手を急かすほどの実力をつけ、青年になったころにはカーマンに勝利していた。ついにはチェス界注目の12歳の新星、ボビー・フィッシャーとして名をとどろかせるようになっていた。ボビーは勝利を重ね、最年少でアメリカの王者となった。

ある日ボビーが書店でチェスの雑誌を眺めていると、そこにはボリス・スパスキーという世界のチェスの王者の写真があった。ボビーはその雑誌を手に帰宅し、スパスキーの対局をイメージする。しかし、別の部屋からレジーナと男の笑い声が聞こえる。彼らの声に耐えきれなくなったボビーは「父親でもない男は早く出ていけ。おれの父親はどこだ?」と声をあらげながら問いかける。それに対してレジーナは「私たちのもとを去ったの。些細なことだわ」と答える。しかしボビーは「おれには大事なことだ。ここから出ていけ。共産党仲間とモスクワに帰れ。俺はチェスの世界王者になる。静寂が必要なんだ」と叱責した。そんな言葉を投げかけられたレジーナは涙を流すのだった。公園のチェススペースでチェスをするボビーのもとに姉のジョーンが訪れる。ずっと家に帰っていないボビーを心配して訪ねてきたのだ。レジーナがボビーが必要とする「静寂」のために、家を出てカリフォルニアで政治をすることにしたとジョーンから聞かされる。しかしボビーはそれをどこか信用できずにいた。ジョーンは「あなたが望んだことでしょ。素直に喜んで」とボビーを説得するが、彼はなにも答えなかった。その後のボビーの勢いはとどまることを知らず、ついに史上最年少のグランドマスターとなった。その場でのインタビューで記者に「次の目標は」と聞かれると、「ソ連のプレイヤーと戦いたい。世界最強の彼らを負かす」とボビーは堂々答えるのだった。

ソ連との闘い

出典: orita-ani.net

ソ連との対局で、周りに敏感になるボビー

1962年9月15日ブルガリアのヴァルナで開かれた、チェス・オリンピアードの場に来たボビーはそこでも順調に勝利をおさめていく。すると、その会場にスパスキーが拍手とともに登場してくる。すると突然、ボビーは周りの音や光に過敏に反応してしまうようになる。それは今まで感じなかった感覚だった。そして、何を思ったか「バカらしい!」と、対戦している相手に言い放つ。次の一手を考えている相手に残りの駒の動きを伝え、「それでおわりだ」と席を立ってしまう。外へ出たボビーは大会関係者に「ソ連勢はわざとドローにさせようとしている。ポイントを稼いで僕に勝たせないためだ」と話すが、「そのような苦情は受け入れていません」と言われる。ボビーは「彼らは共謀し、僕を潰そうとしている」と言い、会場に戻ることを頑なに拒否する。記者たちを集め、「ソ連は不正を行っている。不公平な戦いがされるなら僕は棄権する。チェスも辞めてやる」と吐き捨て、会場を後にしようとする。
大会についてきたカーマンは「会場に戻って謝罪するんだ」とボビーをなだめるが、「史上最年少の王者になるため10年間も努力してきた。今日がその日になるはずだったんだ」と激高する。カーマンはそれ以上何も言うことができず、立ち去るボビーを見つめるだけだった。
その夜ボビーは、いつもの書店に訪れ、チェスの雑誌を眺めていた。スパスキーの対局の手を見ていたようだ。ボビーが店を後にしようとすると、その店の店主が「ある人がこれを君に。弁護士だ」と名刺を渡してきた。ボビーはそれを黙って受け取り、店を出ていった。

1965年1月25日、NYのワシントン・スクエア公園にいたボビーのもとに一人の男が近寄ってくる。「連絡を取りたいのに、君は電話にでない」と言い名刺を差し出してきた。ボビーは「例の弁護士か。僕が何かした」と尋ねる。彼の名前はポール・マーシャル。ポールは「何もしないから来たんだ。ソ連はチェスで勝ち続け、我々アメリカを鼻で笑っている」とボビーに話す。ボビーは「政治に興味はない。チェスは2人がボードに向かい指し合うだけのゲームだ」と言葉を返す。ポールは「私はチェスも好きだ。そして、愛国者でもある」と笑みを浮かべる。「君の代理人になりたい。金はいらないし、これはただの奉仕活動だ。君が彼らに勝利するの最前列で見たい」とボビーにチェスの試合への復帰を提案する。ボビーが「僕が試合に戻るなら、すべて公平にしてもらう」と話すと、それを承諾したポールは「連絡をくれ」と言って去っていく。
ポールはその夜、神父の男と話していた。彼の名前はビル・ロンバーディ。ビルはチェス代表の選抜委員であり、ポールはボビーが試合に戻れないか説得をしに来ていたのだ。だが、ビルはボビーのチェス連盟への謝罪文に罵倒の言葉が入っていることや、ソ連に対して偏見があることをよく思っていない。ポールは「問題は起こさせない」と話すが、ビルは「ボビーの心が崩壊する」と話す。ポールは聞く耳を持たず、そのままビルと別室にいたボビーを対面させる。会ったと同時にボビーはビルの以前の対局に対してダメ出しをする。その場にあったチェス盤でボビーは「これなら勝てる」と対局を模してビルに見せる。ボビーの圧倒的な指し方にビルは驚きを隠せず、にやけてしまう。そうしてビルとボビー、ポールは、ボビーの復帰戦としてカリフォルニアのロサンゼルスに向かうのだった。同様にカリフォルニアにはスパスキーも訪れていた。

いざ、復帰戦へ

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対局へと向かうビル(左)、ボビー(中央)、ポール(右)

ボビーがロサンゼルスのホテルに着くやいなや、「ホテルが汚い。自分には準備が必要なんだ。ポールわかるだろ。違う場所へ行く」と言い、ホテルを出てしまう。ビルは「金がないんだ」とボビーをなだめるが、ボビーは「ソ連は最高の待遇で来ている。勝つためだ。おれはもっと静けさが欲しい」とホテル前で叫ぶ。すると、ホテルの部屋のバルコニーにいた女性が「わめかないで」と話す。その女性の名前はドナ。ボビーはドナの大胆な下着姿にたじたじとしてしまう。その場をごまかそうと「散歩に行くんだ」と言うボビーに、ドナは「一緒にいく?」と問いかけ、ボビーは承諾する。
その頃スパスキーは高級ホテルの一室にいた。音楽を聴きながら着替えをしていると、突然が音が止まる。スパスキーを訪ねた男が音楽を止めたようだ。彼の名は、エフィム・ゲラー。スパスキーのコーチをしている人間だ。スパスキーは「盗聴の邪魔か」と尋ねるが、ゲラーは「君は気にしすぎだ」と流す。ゲラーはスパスキーに「米国の選手の1人には死んでもらいたい。それはボビー・フィッシャーだ」と話す。スパスキーはそれに対してなにも答えなかった。一方、海岸に散歩に来ていたボビーとドナ。ボビーに「仕事は?」と聞かれたドナは、「客とヤルの」とだけ答えた。ボビーは「童貞を捨てたいんだ」と話し、お互い赤裸々な会話をする。次の日の朝、ボビーは、着替えをしながらビルと会話だけでのチェスをしていた。ボビーに負けたビルが悔しがっていると、ポールが部屋に入ってきて2人に「準備はいいか」と問いかける。3人はついにソ連とのチェス戦に向かうのだった。

会場に着き、イワノヴィッチとの試合時間が刻々と迫る中、ポールが焦った様子で「ボビーがいない。あと3分で不戦敗だ」とビルに話す。ビルはいつも通りだと言わんばかりで落ち着ている。ポールはボビーをトイレで見つけ、試合に行くよう急かす。ギリギリのところでついたボビーは残り時間あと1秒のところで一手を打つ。結果はボビーの圧勝だった。イワノヴィッチは帰りの車で、大変なショックを受けていた。ソ連のマネージャーに「君はインフルエンザだったんだ」と言われ、茫然としながらも「そうだ。私はインフルエンザだったんだ」と答える。イワノヴィッチはその後の試合があったにもかかわらず、そのまま棄権してしまったのだ。
ボビーは試合を終え、ホテルへ帰ると再びわがままを言いだした。
「その1 ソ連勢のように大きな車で会場へ行く、その2 チェスを鑑賞するチケットの料金の30%を寄越すこと、その3 観客との距離は1.5mあけること、残りはリストに」とボビーはポールに要求が書かれた紙を渡すが、どれも到底受け入れることができない内容のものばかりであった。ポールとビルは困り果ててしまう。その頃スパスキーはとあるバーのパチンコ台で一人遊んでいた。そこにゲラーがやってくる。「方々探した。明日は試合なのだから早く寝ろ。君が姿を消すとみんなが気にする。明日は必ずボビーを阻止しろ」と話す。スパスキーは大きなため息を吐き、ゲラーに「続きをやれ」とだけ言い、パチンコ台の前から去っていく。
その夜ボビーはドナで童貞を捨てたが、行為後ボビーはチェスのことばかり考えていた。あきれたドナは早々に部屋から出ていくが、ボビーはずっとスパスキーとの対戦をイメージしていたのだった。

ボリス・スパスキーとの初対戦

スパスキーに敗北し、海岸で黄昏るボビー

そしてスパスキーとの対戦当日。ボビーはスパスキーに敗北してしまった。会場から出るボビーは砂浜へと歩き、一人黄昏ていた。そんな中、ビルとポールはホテルの部屋で話をしていた。ポールはビルに「ボビーはスパスキーに勝てるのか」と問いかける。ビルはポールに「フロントからワシントンへの電話が多いと言われている。一体どこにかけているんだ」と問いかける。ポールは「お偉いさん方だよ。米国とソ連の対決に興味があってね」と答える。ビルが「CIAか?ホワイトハウスか?」と問うが、ポールは「ボビーの要求に応じ、勝てば金ももらえる」と明確な回答はしない。「誰が払う」と問うビルに、ポールは「君は愛国者か?これは戦争だ。イメージでの戦争なんだ。ブルックリンの貧しい青年が、ソビエト帝国を迎え撃つ。完璧なアメリカ物語だ。そんなことより私の質問に答えてないぞ」と話す。ビルは「ボビーは私が知る限り2番目に優秀なプレイヤーだ。心に重大な問題を抱えている」と答える。「理解し、管理しないと」とボビーの危険な精神状態を管理しようと考えているポール対してビルは、かつて若くして欧州のチェスのチャンピオンであった一人のチェスプレイヤーの話をしはじめる。そのチェスプレイヤーは徐々に精神が壊れ、毒殺されると思い込んでチェスの世界から去り、最後は自ら命を絶ったのだという。ビルは「チェスの対局では、4手進めば3000億もの可能性を考える。だから精神状態は極限を超えかねない。王者になるまで彼はきっともたないだろう」とポールに話す。ポールは「必ずもたせろ」とだけ言い部屋を去っていく。

海岸で黄昏た後、そのまま海で寝てしまっていたボビー。目覚めるとスパスキーが海で泳いでいるのを発見する。ボビーは自分を尾行していると思い、スパスキーに「俺を尾行しているのか?覚悟してろ。あんたを倒してやる」と怒鳴る。スパスキーはボビーを無視して、ホテルへと戻っていった。ボビーは火がついたのか、再度世界チャンピオンを目指し対局に取り組みだすのだった。

チェスに精神を蝕ばまれるボビー

出典: 4.bp.blogspot.com

部屋の隅で茫然とするボビー

ボビーはスパスキーを倒すために、ことごとくグランドマスターを倒していく。そんな中ポールはジョーンに呼び出され、ファミレスで会う。ジョーンは会って早々「弟に会わせて」とポールに迫る。ジョーンはボビーから毎週届く手紙を読み、彼の精神が異常をきたしていることを伝えに来たのだ。だがポールはジョーンの訴えに耳を貸そうとしない。ジョーンの思う通り、ボビーは空港の取材陣の前に紙袋をかぶって現れるなど、奇行がみられていた。
車の中でポールはボビーに色々なところから取材や番組出演の依頼が来ていることを嬉しそうに話す。ボビーは「でも取材で気を散らしたくない。重要な番組だけ出る」と答える。ポールは「番組で盗聴とかの話はしないように。みんなが心配する」とやんわり注意する。ボビーは「盗聴されている」という妄想をよく話しており、ポールはそれが世間に知られることを気にしていたのだ。だがボビーは「僕が話したいことを話す。真実を話して何が悪い。みんなが心配するって何のことだ」とポールに問いかける。ポールが「ジョーンだ」と答えると、ボビーは「なんで僕に内緒で会っているんだ。隠れてなにを家族と話す。僕が頼んだか。僕を監視しているのか」と激高し、車を停めさせ降りてしまう。ビルも急いでおり、会話でのチェスをしてボビーを落ち着かせる。
その夜ビルがいるレストランにポールが訪ねてきた。ボビーの様子を尋ねるポールだが、どうやらボビーはホテルの部屋に戻っているようだ。この事態にポールはビルに「精神科に連れていくべきでは」と話すが、ビルは「絶対に不可能だ」と答える。

ボビーは有名な番組に出演し、一躍有名人となる。彼がポールたちに要求するものはどんどん増えていく。移動するために空港へ着いたボビーとポール。突如ボビーが、金銭の取得割合の引き上げを要求してきた。ポールはすでに合意済みの金額を引き上げることはできないことを伝えるが、ボビーの気は収まらない。さらに取材はなしと要求していたにもかかわらず、空港に取材陣が来ていたことに呆れたボビーは、突如その場を離れ、空港から去ってしまう。そしてボビーは、チェス世界選手権の開会式に現れることはなかったのだ。
ソ連は開会式に現れなかったボビーらアメリカ側に対して、「チェスは2人で行うものだと思っていた。どうやらアメリカ側はボビーを紛失したようだ。核兵器を紛失するよりましだが」と皮肉たっぷりの発言をし、アメリカは大恥をかいてしまうことになった。その夜ボビーはジョーンに電話をかけていた。彼は自分の要求が通らなかったことを嘆いたり、盗聴されているなどの妄想をジョーンに話し続ける。ボビーの妄想は膨らみ続け、彼をむしばんでいる。そんな中、彼の部屋に男が訪ねてくる。ボビーはジョーンとの電話を切り、警戒しながらその男を迎え入れる。それはボビーを探していたポールだった。そしてポールはどこかに電話をかけ、ボビーに代わろうとする。その電話相手は米国国務長官であった。彼は「大統領と君が米国のために戦ってくれることを楽しみにしている」と話し、ボビーはふたつ返事で「プレイします」と答える。ボビーはスパスキーとの闘いのために、アイスランドへと向かったのだ。

スパスキーとの王者をかけた対局が始まる

出典: www.sbs.com.au

対局するスパスキー(左)とボビー(右)

スパスキーとの第1局がついに訪れた。対局中ボビーは客席の咳払いやカメラから出る機械音に気が散ってしまい、会場の人間に注意をする。ボビーの過敏な神経は、かすかな物音にも反応してしまう。そんな中打った一手は会場を騒然とさせた。ボビーはあろうことかその次の一手で詰んでしまう行為をしたのだ。ボビーは第1局を敗北で迎えてしまう。ボビーは早々と会場から立ち去り、会場内にあった卓球室へとたどり着く。「まだ1ポイントだ。12.5ポイントまで先は長い」とボビーをなだめるポール。「大丈夫か」と心配するビルだったが、ボビーは「ここは静かだ」とだけ一言。ボビーはついに観客とカメラなしでない限り対局は行わないと言い出した。それ以外にもチェス盤がうるさいなど無茶な要求をしだしてしまう。
第2局はボビーが対局に現れず、スパスキーの不戦勝となってしまう。ボビーが24時間以内に文書で試合の続行を申し出ないと、スパスキーの世界王者が決定してしまうことになる。その夜ボビーは滞在していたホテルの部屋を荒らしていた。彼は盗聴器がないかを探していたのだ。近くを通る救急車の音やホテル内を歩く音に過敏になるボビー。そこにポールが訪れてきた。「大統領から3回も電話があった。ベトナムでは君の年齢の若者が命がけで共産主義と戦っている。君はチェスをするだけ。一晩中君のために言い争った。だからお願いだ。戻ってチェスをしてくれ」とポールは声を荒げて話す。ボビーは「奴らの仲間だろ。KGB?CIA?」とにやつきながらポールに言葉を返すのだった。
テレビで「ボビーが卓球室で試合を要求」というニュースを見ていたスパスキー。スパスキーは、ボビーが試合から逃げるためにわざと奇行をさらしているのだと考えた。そしてスパスキーはボビーを完全に倒すために、「卓球室で戦う」というボビーの要求をのむことにしたのだ。ボビーはポールからスパスキーが要求をのんだことを伝えられ、「そうか」と一言話すだけだった。

ボビーの勝利

出典: www.wingclips.com

伝説となった第6局中のボビー

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