宮崎駿の引退会見一問一答まとめ【スタジオジブリ】
2013年9月4日に行われた宮崎駿の引退会見。ここでは会見での質問と回答をまとめました。子供達へ向けたメッセージや引退後の予定、ジブリの中で一番思い入れのある作品についてなど、宮崎駿の言葉をそのまま紹介していきます。
宮崎「総括はしていません。自分が手抜きした感覚があったらつらいでしょうけれど、たどり着けるまではたどり着いたと思っています。振り向かないようにしてきました。同じことはしないつもりでやってきた」
--ジブリを立ち上げてから、日本社会はどう変わってきたかと思うか
宮崎「ジブリをつくったころ(1985年)は、日本が浮かれ騒いでいる時代だったと思います。経済的にもジャパン・アズ・ナンバーワン。そういうことに、僕は頭にきていました。頭にきていないとナウシカなんかつくりません。1989年にソ連が崩壊して、バブルが崩壊した。その過程で、ユーゴスラビア内戦など歴史が動き始めた。今までの作品の延長上に作れないとなった。そこで、僕や高畑監督は豚や狸を主人公にして切り抜けた。そこから長い下降期に入った。バブル崩壊とジブリのイメージは重なっているんです。その後、『もののけ姫』などずるずる作ったりしてきました」
--(中国メディアの質問)中国での作品上映の見通しについて
星野「中国では今後、規制緩和で外国映画の上映も増えていく見通しもある。そういった点で前向きに考えていますが、現時点では、ジブリ作品は上映される状況にありません」
--「風立ちぬ」では、庵野秀明監督ら宮崎監督のゆかりの深い人が出演されている。意図は
宮崎「僕は東京と埼玉の間を往復して移動していますが、映画もテレビも見ていません。記憶によみがえってくるのは、モノクロ時代の日本映画です。昭和30年以前の作品です。生きるのに大変な男女の記憶です。失礼ですが、今のタレントさんのしゃべり方と比べると、ギャップにびっくりします。なんという存在感のなさか。庵野も、スティーブン・アルパートも、(声優に)選んだのは存在感だけです。乱暴だったかもしれないが、よかったと思う。昔の映画はそこでしゃべっている人にしかマイクが向けられていないので、周りの人間がどれだけしゃべっていても、音が出てこなかった。僕はその方が正しいと思う。音響監督も同じ問題意識を共有していた。ほかのスタッフも気持ちを共有して、いい円満な気持ちで終えられた。映画を作る上で運がよかった」
--(香港メディア)宮崎監督は「ポニョ」公開よりやせている気がするが、健康状態はどうか
宮崎「今、僕は(体重が)63・2キロです。50年前にアニメーターになったときは57キロでした。結婚して三度めしを食うようになり、一時は70キロを超えました。醜い豚のようでした。映画をつくる上で体調を整える必要があるので、外食はやめました。朝をしっかり食べ、昼は家内の作った弁当を食べ…節制したらこういう体型になりました。女房の協力のお陰なのか、陰謀なのか。僕は最後、スタートの57キロになって死ねればいいと思っています。健康はいろいろ問題がありますが、何とかなるんじゃないかと思っています。映画一本作るとよれよれになります。この夏は暑くて、歩き方が足りないんです。もう少し歩けば、もう少し元気になると思います」
--「町工場のおやじ」がジブリの冊子「熱風」で「憲法を変えるのはもってのほか」と発信した。その理由は
宮崎「『熱風』から取材を受けて、自分の思っていることを率直に話した。もう少し考えてしゃべればいいのですが、でも、訂正するつもりもありません。ただ、それを発信し続けるかというと、僕は文化人じゃない。その範囲でとどめたい。それから、中日新聞で憲法について語ったんです。そうしたら、鈴木さんにネットで脅迫が届くようになった。冗談まじりに『ブスッとやられるかもしれない』なんて話をして。それを聞いて、僕や高畑も発言すれば、的が定まらないだろうと思ったんです(笑)」
--「風立ちぬ」の中では「10年」がキーワード。これからの10年をどう迎えたいか
宮崎「僕の尊敬している作家の堀田善衛さんが最晩年、エッセーで旧約聖書について書いたものがある。その中の文章から影響を受けている。10年という時間については、僕は絵の先生から『絵を描く仕事は38歳くらいに限界が来るから気をつけろ』といわれた。僕は18の時から修行を始めたが、監督になる前『アニメーションというのは世界の秘密をのぞき見ることだ。風や人の動きや表情やまなざしや体の筋肉の中に世界の秘密がある。そう思える仕事だ』と分かった。そのとたん、自分の仕事がやるに値する仕事だと思った。それはだんだんややこしくなるんですが、その当時、自分は本当に一生懸命やっていた。これからの10年はあっという間に終わるでしょうね」
--ベネチアで引退を発表した理由は
鈴木「『風立ちぬ』の出品要請は直前だった。社内で発表するスケジュールは決まっていたが、外国の友人も多い。ベネチアで発表すれば、一度に発表できると考えた。それだけ」
--集大成の作品に込めたメッセージは
宮崎「自分のメッセージを込めて映画は作れない。自分の意識で(作品は)捕まえられない。最後に未完で終われたら、こんなに楽なことはないんです。僕は叫んでおりません」
--初期の作品は2年間隔だが、今回は「ポニョ」から5年かかった
宮崎「1年間隔で作ったこともある。『ルパン三世』は4カ月半で作った。最初の『ナウシカ』も『魔女の宅急便』もいろんな材料があったが、その後は『さあ何を作るか』と考えなくてはならなくなった。それで時間がかかった。実際、机に向かえるのは1日7時間が限度。打ち合わせだとか、そういうことは仕事ではないんです。机に向かってこそ仕事。最近はやりっぱなしで放り出して帰るようにしていたが、それでも限界ぎりぎり」
--最後に
宮崎「長い間ありがとうございました。(会見について)2度とこういうことはないと思います」
参考リンク
【宮崎監督引退会見ライブ(2)】「僕の長編アニメーションの時代ははっきり終わった」+(1/2ページ) - MSN産経ニュース
sankei.jp.msn.com
【引退会見ライブ(1)】「今回は本気です」〈鈴木プロデューサーのあいさつの後、質疑応答に移った〉--引退に当たって子供たちへのメッセージを宮崎「うーん、そんなに…
【宮崎監督引退会見ライブ(3)】「高畑監督も誘ったけど…彼はずっとやるんじゃないか」+(1/3ページ) - MSN産経ニュース
sankei.jp.msn.com
【引退会見ライブ(2)】「長編アニメーションの時代ははっきり終わった」〈冒頭、報道陣からの質問は引退理由に集中した。一方、海外メディアからの質問も相次いだ〉--…
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目次 - Contents
- 宮崎監督の引退会見
- --引退に当たって子供たちへのメッセージを
- --長編の監督を辞めるということか。今後やりたいと思っていることは
- --映画「風の谷のナウシカ」の続編についての考えは
- --(韓国メディアの質問)韓国のファンに一言。また、ゼロ戦をめぐり、韓国で話題になっていることについての考えは
- --今後、ジブリの若手監督作の監修や脚本などに関与するのか
- --今回の引退宣言は、これまでの発言と何が違うのか
- --引退を決めたタイミングは
- --(台湾メディアの質問)台湾の観光客が日本を訪れた際、ジブリ美術館は外せない場所。引退後は旅行をかねて海外のファンと交流する予定はあるか
- - 引退の発表についてはどのように決められたのですか?
- --鈴木プロデューサーに。「風立ちぬ」が宮崎監督の引退作になる予感はあったのか
- --(ロシアメディアの質問)外国のアニメーション作家からの影響について教えてください
- --作品歴の中で、最も思い入れのある映画は
- --(イタリアメディアからの質問)イタリアは好きか。それから、宮崎さんが美術館で館長として働くといいのではないか
- --美術館では短編アニメーションも放映されている。展示の一環として、作品を手がける可能性はあるか。また、鈴木さんは、ジブリの今後をどう考えているのか
- --長編作品で、ほかにやってみたかった企画は
- --具体的に、これからどんなことをやりたいのか
- - ジブリは今後どうなっていきますか?
- --当面は休息を優先するのか。また、東日本大震災や原発事故が「風立ちぬ」に与えた影響は
- --「風立ちぬ」で時代に追い抜かれたという感想と、引退は関係があるのか
- --「クールジャパン」といわれるような日本のアニメーションを、どうごらんになっているのか
- --引退宣言をする映画監督が少ない中、あえて引退を公表されたのは
- --宮崎作品の功績や影響についてどう振り返っているか
- --(フランスメディアからの質問)先ほどイタリアは好き、という話があった。フランスはいかがでしょう?
- --東映動画(現・東映アニメーション)に入社してから半世紀。つらかったことは
- --一方、よかったことは
- --つらかった中で監督を続けてきた理由は
- - 奥様には引退をどのように伝えましたか?
- --「かぐや姫の物語」(高畑監督の新作)について
- --「風立ちぬ」の最後のせりふを変えたと聞いたが
- --今、達成感はあるか
- --ジブリを立ち上げてから、日本社会はどう変わってきたかと思うか
- --(中国メディアの質問)中国での作品上映の見通しについて
- --「風立ちぬ」では、庵野秀明監督ら宮崎監督のゆかりの深い人が出演されている。意図は
- --(香港メディア)宮崎監督は「ポニョ」公開よりやせている気がするが、健康状態はどうか
- --「町工場のおやじ」がジブリの冊子「熱風」で「憲法を変えるのはもってのほか」と発信した。その理由は
- --「風立ちぬ」の中では「10年」がキーワード。これからの10年をどう迎えたいか
- --ベネチアで引退を発表した理由は
- --集大成の作品に込めたメッセージは
- --初期の作品は2年間隔だが、今回は「ポニョ」から5年かかった
- --最後に
- 参考リンク