夏目友人帳(アニメ・漫画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『夏目友人帳』とは、「緑川ゆき」による漫画作品。2008年にアニメ第一期を放送し、2017年までに第六期まで放送。2018年に映画化された。妖の見える少年「夏目貴志」は、妖の「ニャンコ先生」と出会い、祖母の遺品で妖の名前が書かれた紙「友人帳」を手にすることとなった。貴志は多くの妖や人間と関わり、様々な葛藤をし自分の過去と向き合っていく。そして、多くの妖と出会いや別れを繰り返しながら、貴志は少しずつ人間として成長していく。

『夏目友人帳』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

人間と妖怪が心を通わせる

普通の人間に妖は見えない。しかし妖はそれを知った上で一生懸命話しかけたり、見守ったりしていることも。

本作は友人帳に名前が記された妖が、名前を返してもらうために夏目の元にやってくるというのが恒例パターン。
多くは貴志とレイコと間違え、問答無用で襲ってくることもある。
しかしその多くはレイコとの思い出を有しており、夏目は名前を返す際にそれを見る事になる。
人間に嫌われいつも一人っきりのレイコと、そんなレイコに惹かれ、ちょっとした勝負をして名前を友人帳に記すことになる妖たち。
レイコに友情を感じ、レイコがいつか名前を読んでくれるだろうと待ちわびた妖もいるが、レイコは友人帳に記した妖を呼び出したりする事はなかった。
妖とレイコの繋がりは、妖を恐れていた貴志に影響を与えていく。
また、友人帳とは関係無しにレイコの孫である貴志に頼みごと見事をしにくる妖怪がいたり、貴志とは関係ない所で妖と人間の絆が結ばれる事もある。
友情であったり恋であったり、一度きりしか会って居ないが気になる存在だったり、妖が一方的に知っているだけの存在であったり、妖と人間の関係は様々。
中には人間に害を成す妖や、妖を傷つける人間もいる。
また、普通の人間には妖は見えないため、妖が一方的に特定の人間を想っている場合などは、その想いは貴志だけが知ることになる。
逆に一度ふいに見えてしまった妖を想い続ける人間や、寿命の違いから死別してしまう妖と人間もいる。
しかしだからこそ妖と人間の関係は微笑ましく、ずっと一緒に居る事は叶わない儚いもので、見ていて心が温まりじんわり涙してしまうストーリーとなっている。

ある妖怪が多軌に一目惚れしてしまい、黒板に自分の気持ちを書いたのを見てしまう貴志。妖怪からは伝えないで欲しいと言われ、多軌はその気持ちを知らないまま。

夏目の心の成長

貴志は親が亡くなり、親戚を盥回しにされて育った。
しかも貴志は物心付いた頃から妖が見え、悪い妖達にちょっかいを掛けられ、いつも妖に怯えていた。
幼い貴志には人と妖の区別が付かなかったり、突然現れた妖に驚いたり怯えたりし、妖が見えない周囲の人間達は貴志を不審に思ってしまう。
そんなことから貴志は何処の家に引き取られても上手く行かず、いつも暗い顔をし、妖に襲われて怪我をしたり、人間には苛められていた。
葬式で貴志を見た滋は、貴志の事を気にかけるようになり、塔子に相談して貴志を引き取る事になった。
滋と塔子の間には子供はおらず、住んでいるのは田舎の一軒家であった。
貴志は藤原夫妻に対し最初は気を使い、差しさわりの無い態度でなかなか心を開かなかったが、次第に少しずつ打ち解けて良く。
貴志からの我侭を聞いてあげたいと思っていた塔子に、貴志は初めて自分がして欲しい事を話す。
それはニャンコ先生を飼っても良いかということであった。
塔子は貴志の申し出を喜び一緒に滋に頼み、ニャンコ先生は藤原家に住む事になった。
はじめは居候という身分でいた貴志であったが、藤原夫妻は貴志を本当の子供のように可愛がり時に叱り、貴志は次第に藤原夫妻に本心からの笑顔を見せ家族になっていく。

友人帳を持ちニャンコ先生と関わることで、貴志と妖との関係にも変化が出てくる。
これまでは妖を自分を脅かす悪い存在だと考えていた貴志であるが、友人帳の影響でニャンコ先生などのレイコを知る妖を知る事で、段々と自ら妖に関わろうとしていくようになる。
ニャンコ先生からはお人好し過ぎると怒られたり、自ら関わった結果悪い妖に騙されてしまうことなどもある。
しかし貴志は困っているの存在がいたら、妖だろうと人間だろうと関係なく関わっていってしまう性質なのであった。
貴志の事が好きな妖たちも、貴志のそういった部分を気に入っており、何かと頼りにする。
貴志は人間の中でも体の弱い方であり、度々風邪を引いたり妖力を使うと疲れて倒れてしまったりする。
その度に妖たちは貴志が人間であることを感じ、人間と妖の寿命の長さの違いを痛感する。

人間関係では、物語序盤からずっと同級生の西村と北本と一緒に居ることが多かった。
貴志は妖が見えることを二人に言っておらず、二人も貴志に対して不思議に思うことはあれど追求する事はなく、それが三人を良い関係に保っている。
西村も北本も、これまで貴志が出会ってきた人のように貴志の奇妙な行動を見ても気持ち悪がったりすることはないのであった。
さらに妖の気配が分かる田沼、妖は見えないが妖の事を知っている多軌という、貴志と秘密を共有する友人も出来る。
二人は貴志に何かあった時に助けてくれる人間の仲間でもあり、妖が見えることがコンプレックスであった貴志にとって二人はとても大きな存在となる。
また祓い屋の名取とは師弟に近い関係になり、あまり妖怪に詳しくない貴志に妖怪や祓い屋の事を教えたり、祓い方をレクチャーしたりなど、こちらも心強い存在となる。
こうしてずっと一人きりで生きていた貴志は、ニャンコ先生、藤原夫妻、人間の友人達、妖の友人たちなど多くの友人を得て行く。
本人もこの変化を自覚しており、自分の大事な人たちを守るために時に戦い、時に幸せを噛み締めるのだった。
貴志が妖や人間に優しくできるのは、これまで沢山辛い思いをし悲しみを知っているからなのである。

可愛いニャンコ先生

見た目はメタボな猫、中身はおじさん。そんなところが可愛いキャラクター。

本作のマスコットキャラクターであるニャンコ先生は、本作の中でも非常に人気が高く人気投票で1位を取っている。
ニャンコ先生の一番くじやニャンコ先生のガチャガチャなどが多数販売し、ニャンコ先生のグッズ化が大人気である。
本作を知らなくても、ニャンコ先生はどこかで見た事があるという人も多いのではないだろうか。
そんなニャンコ先生の本名は「斑」といい、妖怪の中でも名の知れた強い妖である。
招き猫を拠り所にしていたため現在も猫の姿をしているが、本来の姿は大きく美しい姿をしている。
猫の姿のニャンコ先生は、豚や饅頭などブサイクな猫という評価を受ける。
本人はそうは思っておらず、ブサイクと言われるととても怒る。
ちょっとセンスの変わった可愛い物好きの多軌には出会うたびに死ぬほど撫で回されるため、ニャンコ先生は多軌を苦手としている。
また、見た目は猫であるが中身はおっさんそのものであり、酒に目がなく肴にスルメを食べる。
猫にイカを与えてはいけないが、ニャンコ先生は妖のため大丈夫のようである。

アイキャッチは毎回ニャンコ先生で、毎回絵が違う。

夏目レイコという人物

本作での重要人物、貴志の祖母のレイコについての話は物語の中でポツポツと少しずつ語られていく。
はじめ貴志が知っていたレイコの情報は、自分と同じく妖が見え、人間嫌いで周りからもやっかまれていたという事であった。
妖から聞く話や名を返す時に流れ込んでくる記憶などで、貴志はレイコの過去を少しずつ知っていく事になる。
レイコは好戦的でガキ大将のような性格で、霊力が強いため妖との勝負(喧嘩)では百戦錬磨で、レイコを知っている妖からは恐れられる存在だった。
レイコは見つけた妖と色々な勝負をし、それに勝つと友人帳に名前を書くように迫った。
友人帳にはレイコに負けた妖の名前が沢山記されており、名前を記した妖はレイコの子分となり、レイコが呼んだら駆けつけなければならない。
レイコは妖が見える事やぶっきらぼうな性格から、人間達から嫌われ、本人もそれを自覚して人間と距離を取っていた。
妖たちの記憶からレイコは人間全てが嫌いなわけではなく、自分から人間との関わりを持つのを恐れているようでもあった。
また、たまに人間とも関わりを持ち、レイコなりの方法で守ろうとしたり関わろうとするが結局それが裏目に出てしまうことなどもあった。
人間と一緒に居られない分妖たちと遊ぶようになり、それがレイコにとっては友人帳に名前を記す勝負であった。
しかし妖とも距離を取りがちで、一度勝負した相手の前に現れず、友人帳で呼び出すことも一度もしなかった。
アニメ版でのレイコは妖とした約束をよく忘れてしまっている。
妖怪たちの中にはレイコともっと親しくなりたいものや、レイコに呼び出されたかった者もいたが、レイコはその気持ちが分からなかったようである。
貴志は妖たちの記憶からレイコを見る事により、レイコがどんな人間だったか知り、本当の意味ではレイコは孤独じゃなかったのではないかと気づく。
貴志の見る記憶のレイコは友人帳を製作していた頃の事であるためセーラー服を着ており、その後大人になったレイコや死因については触れられていない。
また、レイコと貴志は良く似ているため妖たちはよく二人を間違える。
レイコは既に死に貴志は孫であると知るとショックを受ける妖もいて、妖にとってはついこの間の事でも人間の一生は短く、妖の寿命と人間の寿命の違いなどが分かる。
レイコと貴志は顔以外にも、霊力が高たいめ本気でぶん殴ると大抵の妖怪は倒せる所などもよく似ている。
本作の一番の謎である、未婚のレイコが誰と子をなしたのか、どうして死んだのか、アニメ六期まででは不明のまま。

レイコは、小石を投げつけられたらお返しに大きな石を投げつける、そんなタイプだった。

友人帳の存在

本作のタイトルにもなっているキーアイテム「友人帳」。
これは夏目レイコが妖怪と勝負し、負けた妖怪の名を書いたものである。
名を記された妖怪は友人帳の持ち主の子分となり言う事を聞かなければならない。
また、友人帳が燃えたりすると記された妖も同じ目に合う。
貴志はひょんなことからこの友人帳を預かり名を返すことになるが、実はこの友人帳とは祓い屋たちにとっては怖ろしい禁術なのである。
ニャンコ先生を含め妖怪たちはこの友人帳を欲しがり、貴志を襲うこともしばしば。
貴志は悪意のある祓い屋に友人帳が渡ったら大変な事になるとし、名取にも友人帳の存在を隠していた。
妖怪を問答無用で使役し傷つける的場が存在を知り手に入れてしまったら大変なことである。
しかし貴志は自分を心から心配してくれる名取を信頼し、アニメ第六期の最終話ではレイコの話と友人帳の話を名取に打ち明けた。
ニャンコ先生は黙って名取の反応を伺っていたが、名取は「大変なものを一人で抱え込んでしまってたんだね」と貴志を労った。
そして貴志に聞こえない大きさで「そんな危ない物…燃やしてしまえばいいのに…」と呟く。
名取は妖怪よりも人間を優先する人物であり、友人帳の価値よりそんな危険な物を扱う貴志を思っての呟きであったのだろうか。

「よくやってくれたぞ小僧。ああ、外へ出られる」

第一話で、ニャンコ先生が初登場した際のセリフ。
貴志は妖に追いかけられ逃げている最中に祠にあった綱を誤って切ってしまう。
それは妖怪「斑」を封印したものであり、貴志はその封印を解いてしまったのであった。
斑は招き猫を寄り代に封印されていたためそれに似た太った猫の姿で現れ、これが貴志とニャンコ先生の出会いとなった。

「レイコもういいのかい?もう一人でも平気かい?」

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