君の名は。(新海誠)のネタバレ解説・考察まとめ

『君の名は。』とは、コミックス・ウェーブ・フィルム制作により2016年に公開された長編アニメーション映画である。監督は新海誠が務めた。
田舎に暮らす三葉(みつは)と、東京に暮らす瀧(たき)は、たびたび夢の中でお互いが入れ替わるという不思議な体験をしていた。そんなある日、千年ぶりに彗星が地球を来訪する。しかしその美しい彗星は、彼らにとって悲しい運命をもたらすものであった。

三葉が秋祭りの夜に見たティアマト彗星。

三葉が入れ替わり中に瀧の日記に残した言葉。三葉が言う彗星とはティアマト彗星のことで、瀧としてはこの彗星は3年前に過ぎ去ったものであった。そして、近々見ることのできる彗星は存在しなかったのである。瀧が三葉のこの言葉に違和感を覚えたことで、2人を繋いでいた縁である「結び」が揺らいだことや、2人の間には時間の差があることを現した名場面だ。

「これじゃ、名前…わかんないよ…」

手のひらに書かれた、瀧からの「すきだ」の文字を握りしめる三葉。

三葉が自分の手のひらに書かれた「すきだ」という瀧の告白の言葉を見つけてつぶやいた台詞。それは三葉にとって最上級に嬉しい言葉だったが、同時に瀧にすぐにでも会いたいという恋しさと、彼の名前を忘れてしまった彼女の悔しさを察することが出来る名台詞だと言える。

瀧「ずっと誰かを…」三葉「誰かを探していた!」

平行して走る電車の中に、お互いの姿を見つけた瀧と三葉。

彗星災害から5年の月日が経ち、「入れ替わり」をしていたことをすっかり忘れてしまった瀧と三葉が、お互いを偶然見つけた時に心の中で叫んだ台詞。2人はそれぞれ東京で暮らし、いつも何かを探しているのではないかという寂しさを抱えていた。宮水神社のご神体がある山での入れ替わりを最後に、瀧と三葉に入れ替わりが再び起きなくなったことで、彼らを繋いでいた「結び」は途切れていたのだ。この台詞は、そんな彼らの運命の糸が再び「結ばれた」瞬間を表現した名台詞である。

『君の名は。』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

『君の名は。』の物語の種

『君の名は。』の物語の種は、2014年に新海誠が手掛けたZ会のCM「クロスロード」だった。このCMに登場するのも、『君の名は。』の瀧と三葉と同じく、東京に暮らす男の子と、地方に暮らす女の子である。「クロスロード」は受験という人生の試練を乗り越えて出会う少年少女が描かれており、「人生には出会うべき相手がいる(つまり、運命の人はいる)」というテーマだったそうだ。この作品を制作した新海はその時「すごく手ごたえを感じた」ようで、同様の少年少女をもう少し長い物語で描きたいと思ったことが最初のきっかけだった。『君の名は。』で注目すべき「少年と少女が入れ替わる」という設定は、平安文学の「とりかへばや物語」から、「夢の中で入れ替わる」という設定は、小野小町が詠んだ「思ひつつ 寝ればや人の 見えつらむ 夢と知りせば 覚めざらましを(訳:あの人のことを思いながら眠りについたから夢に出てきたのであろうか。夢と知っていたなら目を覚まさなかったものを)」という和歌から着想を得ている。

Z会 「クロスロード」

そして「彗星により崩壊する町」という設定は、東日本大震災発生後の2011年7月に宮城県名取市閖上(ゆりあげ)に新海誠が訪れたことから生まれた。津波によって破壊された街を見た新海は「ここは自分の街だったかもしれない。自分が閖上のあなただったらと思い、もしも自分があなただったらという、入れ替わりの映画を作ろうと思った」と語っている。新海誠が震災後に描いた閖上・日和山のスケッチは宮城県仙台市で開催された「新海誠 展」でも展示された。

新海誠が震災後の閖上・日和山を描いたスケッチ。

『君の名は。』に登場する場所のモデルと、聖地とされている場所

岐阜県(飛騨地方)

【JR高山本線「飛騨古川駅」】
瀧が司や奥寺と、三葉を探して飛騨地方を訪れるシーンに登場する駅。建物・線路などほぼすべてが正確に描写されている。

【北若宮神社】
立地や石灯篭が類似するという理由で宮水神社のモデルと噂されているが、実際には瀧が糸守町について地元の住人に尋ねるシーンに登場する神社に似ているとされている。

【飛騨市図書館】
瀧が彗星で犠牲となった糸守町の住人名簿を見るシーンで登場する図書館。

長野県

【諏訪湖と立石公園】
新海誠の出身地である長野県小海町にある松原湖と大月湖が初期の「糸守湖」のイメージだった。だが最終的には諏訪湖がモデルになっているとされている。また、諏訪湖の東側高台にある立石公園から望める風景は、瀧と三葉が「かたわれ時」の力を借りてようやく出会うシーンを体感できると話題となった。

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