星を追う子ども(Children Who Chase Lost Voices)のネタバレ解説まとめ

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『星を追う子ども』とは、2011年5月に公開された長編アニメーション映画である。監督は「ほしのこえ」「雲のむこう、約束の場所」「秒速5センチメートル」などで知られる新海誠で、制作会社はコミックス・ウエーブ・フィルム。この物語は、主人公の少女「アスナ」が、秘密基地で出会った少年「シュン」の死を乗り越え、強く生きていこうと決心するまでの冒険を描いたファンタジー作品である。

『星を追う子ども』の概要

『星を追う子ども』とは、「ほしのこえ」「雲のむこう、約束の場所」「秒速5センチメートル」などで知られる新海誠が、前作「秒速5センチメートル」から4年後より、制作に2年を費やし作成した長編アニメーション映画である。キャッチコピーは「それは、“さよなら”を言うための旅。」だ。この作品の着想は、児童文学作家である乙骨 淑子(おっこつ よしこ)の児童書「ピラミッド帽子よ、さようなら」から得ている。これは前作を作り終えた新海監督が制作プロデューサーの伊藤氏に「次はこういう作品を作りたい」と持ってきた本なのだそうだ。この本の物語は、作者の病死により未完のまま終わっているが、ピラミッドの不思議な力と、地下世界を冒険するSFものだ。
本作は、アニメーションを見ない世代の大人にも見てもらえるよう、絵柄を「世界名作劇場」や「ジブリ作品」に似せて作ったのだという。それは「アニメは映画ではないが、ジブリは映画である。」と考える伊藤プロデューサーの知人の発言を受けてのことだったそうだ。そんな『星を追う子ども』のプロット原文は、生と死をテーマにした少し暗い物語だった。伊藤プロデューサーとしては、生死をテーマとしたファンタジーなら全体としては明るいイメージのほうが観客も楽しめるだろうと思ったが、新海監督の作家性は「ジメっとした」情緒的なところにあり、そこが観客の琴線に触れるのだろうと感じていた。だから主人公のアスナは、暗いテーマをもつこのアニメーション映画の中でも、よく動き回る活発な少女となったのだという。

『星を追う子ども』のあらすじ・ストーリー

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山の上の秘密基地で、鉱石ラジオを聴くアスナ。

渡瀬 明日菜(わたせ あすな)は学校の制服を着たまま、鉄橋を越えた山の上にある彼女の秘密基地にいた。本の裏からクッキーの缶を取り出すと、見晴らしのいい高台に登る。お茶を飲んで一息ついたアスナがその缶を開くと、中身は「鉱石ラジオ(鉱石検波器により検波を行うラジオ受信機)」だった。ラジオに使われている石は、幼いころに亡くなった父親の形見である「青い石」が使われている。アスナが青い石の表面を慎重に検波針でなぞると、いままで聞いたこともない「不思議な歌」が聞こえてきて、彼女はその歌の調べにすっかり心を奪われてしまう。翌日以降もアスナは、またその歌を聞きたいと、山で仲良くなったミーと鳴く猫のような動物ミミと共に秘密基地でラジオを聴いていた。だがあれ以来、不思議な歌は聞こえてこなかった。

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「熊」のような怪物に遭遇してしまったアスナ。

そんなある日、アスナの担任である池田先生から、近隣で熊のような動物の目撃情報が多発していると連絡があった。そのため一人での下校はなるべく避け、家が近くの友達と一緒に帰るようにと注意された。だがアスナは、学級委員長で成績優秀であることもあって同級生の妬みを買い、友達が少なかった。ひとりで家に帰ったアスナは、不思議な歌を聴くために、また秘密基地に向かう。決して先生の話を聞き流していたわけではないが、彼女にとっては秘密基地へ行くことが唯一の楽しみであり、息抜きだったのだ。だがこの日、鉄橋を渡っていたアスナは、先生が話していた熊と遭遇してしまう。しかし、間近で見たそれは熊などではなかった。赤い眼、鋭い牙、熊よりはるかに大きなその体に、恐怖を覚えたアスナは、その熊のような怪物から逃げようとするが、足がもつれて転んでしまう。怪物がアスナを踏みつけようとした時、見知らぬ少年が彼女を抱き上げる。驚くアスナを横目に、少年は胸元から青いクリスタルの首飾りを取り出し、怪物を鎮めようとした。だが怪物はかまわず少年に襲いかかり、少年もしかたなく応戦するが、怪物に吹き飛ばされ、鉄橋の柵で腕に怪我をしてしまう。怪物が少年に噛みつこうとした瞬間、少年の首飾りから眩い光が放たれて怪物を攻撃、殺傷した。絶命した怪物を見る少年は、悲しそうな表情を浮かべて佇んでいた。
気を失ったアスナが目覚めると、すでに星空が広がる夜になっており、そこは彼女の秘密基地だった。少年は、気がついたアスナに「この山へはもう近づかないほうがいい」と忠告し、二人は別れるのだった。

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シュンの手当てをしたアスナ。腕には彼女の制服のスカーフが巻かれている。

翌日、アスナは学校をさぼった。昨日の少年のことがどうしても気がかりだったのだ。秘密基地へ行ってみると、少年はいまだに昨日の怪我を手当てもせずに放っておいていた。それを見たアスナは、秘密基地に置いてあった救急箱と、自分の制服のスカーフで手当てをしてやった。そんなアスナに心を開いた少年は、自分をシュンと名乗り、「アガルタ」という遠いところから来たと教えてくれた。二人で話をしていくうちにアスナは、以前ラジオで聞いた「不思議な歌」のことをシュンに教える。彼女はその歌を「まるで誰かの心がそのまま音になったようだ」といい、もう一度聴きたいと話す。するとその話を聞いていたシュンは、涙をこらえるようにうつむいた。なぜなら「不思議な歌」は、アガルタでシュンが歌った「最期の唄」だったからだ。最後の唄とは、病に侵されて余命が残り少ないことを悟ったシュンが、地上へ出る前に故郷の景色を見て歌ったものだった。アスナは、アガルタをどこか外国の場所だと思っているが、それは地下に存在する別の世界のことだった。シュンは地上で「どうしても見たいものがあって、どうしても会いたかった人がいるんだ」とアスナに明かす。それらが何なのかはアスナに語らないシュンだが、自分の願いについて「もう思い残すことはない」と微笑む。そんなシュンの話を聞いたアスナは「願いが叶ったんだね」と何も聞かずに声をかけたのだった。彼の「見たいもの」とはアガルタには存在しない「星空」であり、「会いたかった人」とは自分の最後の唄を聞いてくれていた「アスナ」のことだった。そして願いが叶ったシュンは、アスナに「祝福をあげる」と言い、彼女の額にキスをする。それは、アスナがこの世界に生まれて来てくれたことへの感謝の意味だった。そのキスに驚いたアスナは、真っ赤になり「また明日」と、逃げるように家に帰っていく。熊のような怪物の正体や、シュンがここへ来た目的についてなど、彼女の中に疑問はたくさんあったが「また明日」ゆっくり聞こうと思っていたのだ。

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シンと秘密基地で出会ったアスナ。シンはアスナを突き放すような態度をとる。

ところが翌日、アスナは看護師をしている母親から身元不明の少年が遺体で発見され、腕にはアスナの制服のスカーフが巻かれていたと聞かされる。その身元不明の遺体がシュンであるはずがないと否定する彼女は、その後も秘密基地に彼を探しに通う。だがあの夜以降、アスナはシュンに会うことが出来ず、いつしかシュンは死んでしまったのだと思うようになっていた。そんな日々を過ごす中、アスナの担任の池田先生が産休に入ることになった。池田先生の後任で学校にやってきたのは、森崎という男性国語教師だった。森崎は授業で古事記の一節、日本神話の神である伊弉諾(イザナギ)と伊弉冉(イザナミ)の話をとりあげ、日本でいう黄泉の国のような地下世界は、世界中に神話として残されており「アガルタ」もその一つだと語った。そんな地下世界には、人間の不死の秘密があり「死者を蘇らせる方法」もあるのだと古来より考えられていたのだという。その授業を聞いたアスナは、アガルタについて聞くために森崎の自宅を訪ねる。そこでアスナはアガルタを研究しているという森崎から、アガルタの入口を護る門番「ケツァルトル」の存在を教えられる。以前シュンと出会った際に遭遇した熊のような怪物は、このケツァルトルだったのだ。ケツァルトルは、太古に人類を導いていた神で、成長した人類から存在を不要とされた時、一部の氏族を連れて地下に潜ったのだという。話を聞き終えたアスナは、森崎の自宅から帰る途中で秘密基地の方角に青い光を見る。きっとシュンが帰ってきたのだと期待して、秘密基地にたどり着いたアスナだが、そこにいたのはシュンによく似た弟のシンだった。アスナはシュンが「やっぱり生きていた」と喜ぶが、シンは「シュンは死んだ」といってアスナの手を振り払う。だがアスナは、シュンと瓜二つのシンを「記憶を失ったシュン」だと思い込んでいるのだった。
シンはシュンがアガルタから持ち出した青いクリスタル「クラヴィス」を回収する役目を担って、地上へ来たのだという。シュンのクラヴィスを回収したシンが、アガルタへ帰ろうとした時、「アルカンジェリ」という地下世界の英知を手に入れようとしている覆面の武装集団に二人は襲われた。彼らは二人に銃を突きつけ、アガルタの入口へ案内するよう強要する。アガルタへの入口は、アスナの秘密基地がある山に建つ神社の奥にある洞窟の中にあり、扉はクラヴィスを鍵として開くことが出来るのだという。アガルタへの扉が開かれると、そこは「狭間の海」と呼ばれる地底湖だった。地底湖の水は「ヴィータクア」という、飲み込むと呼吸が出来る不思議なものであり、アガルタはその地底湖を通り抜けた先にあるらしい。
しかしここで、アルカンジェリたちの予想していなかった事件が起こった。仲間の一人が、彼らを裏切ったのだ。覆面を取った裏切り者の男は、亡くなった最愛の妻であるリサを蘇らせる為に「死者を蘇らせる方法」があると言われるアガルタへ行きたいという森崎だった。アルカンジェリという組織の目的は「地下世界の英知を手に入れ、人類を良い方向へ導くこと」であったが、森崎の目的はあくまで「ただひとりの蘇り」という個人的なものだった。彼はアガルタの入口を見つける為だけに組織に所属し、アルカンジェリを利用していたのだ。そして扉が開かれたことで、森崎にとってアルカンジェリの一員として行動することは意味のないものになった。そのため、彼は組織を裏切ったのだった。かつての仲間に銃を向け、シュンのクラヴィスを持つアスナを盾に、森崎はアガルタへの扉の中に入る。森崎とともにアガルタに踏み入り、地下世界の英知を手に入れようとしていた彼らは、彼の裏切りに動揺を隠せなかった。アルカンジェリたちに銃を向けられて動けないでいたシンは、その隙をついてアガルタの扉へ向かって走り、閉まろうとしている扉に滑り込んだ。そしてアスナと森崎、シンだけを中に残して、アガルタへの扉は固く閉ざされたのだった。
その後、クラヴィスの回収という目的を達成したシンは、二人を残してアガルタへ帰ってしまい、森崎もまた自分の目的を達成するため狭間の海へ潜ろうとする。シンは自分がシュンではないと明言していたが、アスナは「シンが記憶を失ったシュンなのではないか」という期待をいまだ抱いており、それを確かめるために森崎へ同行する決心をしたのだった。

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「狭間の海」を越えた先にあった「アガルタ」の大地。

狭間の海を越えてたどり着いたアガルタは、どこまでも広がる緑の大地だった。地底であるが暗くはなく、空には雲があり、青空が広がっていた。雲の間には神が乗るといわれる空を飛ぶ舟「シャクナ・ヴィマーナ」が悠々と空を滑っていくのだった。アガルタの景色に圧倒されていたアスナは、ポケットに持っていた父親の形見である青い石が光っていることに気がつく。森崎が言うには、それは「クラヴィスのかけら」だという。アスナの父は、アガルタ人だったのだ。森崎はシャクナ・ヴィマーナの行く先に、目的を達成するための何かがあると言い、アスナと、アスナについてきていたミミをつれて旅を開始する。
アガルタはどこまで行っても廃墟しかなかったが、それでもアスナは旅を楽しんでいる様子だった。そのことを森崎に指摘されるとアスナは、「自分はどこか遠い、違う場所に行かなければならないと、ずっと思っていた」と明かし、アガルタに来てからずっとドキドキしているのだと言う。地上でほとんどの時間をひとりきりで過ごしていたアスナにとっては、シュンとの出会いや、アガルタでの森崎との旅は、自分の居場所を見つけたようで嬉しかったのだ。そんな二人の頭上に広がるアガルタの夜空は、星がまったくない空だった。

そのころ、自分の村「カナン」にたどり着いたシンは、村の長老から「地上人をみすみすアガルタに招いた」とお叱りを受けていた。それというのも、アガルタ人にはクラヴィスの在処を感じ取れる不思議な力があり、クラヴィスのかけらを持っているアスナたちの動向はアガルタへの侵入と共に筒抜けとなっていたからだ。アガルタ人は地上人を憎悪の対象としている。それは、アガルタはアルカンジェリに攻め入られたことがあり、多くのアガルタ人が地上人に殺害された過去があるからだ。その襲撃以降、アガルタでは人口が減る一方で、自分たちを「滅びゆくさだめ」なのだと受け入れて生きている。だからアガルタ人は、これ以上自分たちの平穏な死を地上人に邪魔されたくないのだ。シンは長老から「アスナの持つクラヴィスのかけらを奪取するように」と新たな命令を受け、再び旅立つことになった。

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夷族に襲われるアスナ。だが彼女は夢から覚めなかった。

その夜アスナは、夢の中で金縛りにあい、姿の見えぬ何者かに襲われるという夢を見た。だがそれは夢などではなく、アスナは夷族(いぞく)という、人ならざる化物に襲われていた。ミミはアスナを守ろうと必死に夷族に立ち向かうが、彼女は夢から目覚めることなく、そのまま連れ去られてしまった。
アスナが目を覚ますと、そこは見慣れぬ塔の上だった。そこにはアスナと同様に夷族に連れ去られた幼い少女・マナがいた。マナは以前に母親を失ったショックから言葉を話すことが出来ず、アスナにすがって泣いてばかりだった。その泣き声を聞きつけた夷族が影から現れ、地上人との混血であるがため「穢れ」と呼ばれる二人(マナは父親が地上人)を食い殺そうと迫ってくる(夷族はアガルタを純粋なまま保とうとする、世界の働きの一つなのだ)。アスナたちは、逃げ場もなく絶体絶命かと思われたが、そこへシンが現れ、なんとか塔から脱出することが出来た。だが、夷族の追撃はしつこく、シンは倒されてマナと共に川へ流されてしまう。アスナは二人を追って、川へ飛び込むが、結局溺れて気を失ってしまった。

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ミミの亡骸をケツァルトルに渡すマナ。このあとミミはケツァルトルに吸収された。

川岸へ流れ着いたアスナたちを見つけたのは、森崎とミミだった。アスナとマナに怪我はなかったが、シンの容態はかなり悪かった。するとマナは、自分の村「アモロート」へ三人を連れて行ってくれた。しかし、村人たちは地上人であるアスナと森崎を歓迎しておらず、直ちに立ち去れと言うばかりだった。シンだけでも、村に入れてくれるよう頼むアスナだったが、村を守る僧兵隊の長はその願いを断固として拒否するのだった。あきらめかけた時、僧兵隊長に口をきいてくれたのがマナの祖父で、アスナたちは老人の家で一晩だけ休むことを許された。そこで老人はシンを手当し、死者を蘇らせるのは愚かな行為だと森崎を批判しつつも、その方法について語ってくれたのだ。
翌朝、怪我をしているシンを残して、アスナと森崎は再び旅に出る。目的地は老人が語ってくれた蘇りの方法が眠る「生死の門」があるというアガルタの聖地であり、世界の果て「フィニス・テラ」であった。だが、アスナたちが旅立とうとしても、ミミはどうしてもアスナについていこうとしない。実はミミは「ヤドリゴ」といって、神の子を宿した特別な動物だったのだ。ヤドリゴとしてのミミの役目は、アスナをアモロートの村まで連れてくることだった。そして、旅立ったアスナたちを見送ったあと、その役目を終えたミミは、静かにその命に幕を下ろした。役目を終えた命は、さらに大きなものの一部となり、次の者へと継がれていくのだと、シンとマナに老人は語る。そして、老人が言ったようにミミの亡骸は、その場に現れた一体のケツァルトルによって吸収されたのだった。

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世界の果て「フィニス・テラ」。この断崖絶壁の下に「生死の門」があるのだという。

その様子を見守っていたシン達の前に、アモロートの僧兵部隊が長筒(銃)を持って現れた。彼らはどうあっても、地上人であるアスナたちを殺そうというのだ。すぐにシンは、アスナを助けるために僧兵たちを追ったが、追いついたとき二人はすでに、僧兵部隊に襲撃されていた。シンは怪我をした自分の命を救ってくれた「借り」を返すと、僧兵との戦闘を開始し、アスナたちを先へ進ませる。シンに逃がしてもらった二人はついにフィニス・テラの崖にたどり着く。生死の門を目指して森崎は崖を壁伝いに下っていくが、崖下から噴き上げる風と、不安定な足場に、アスナは恐怖して降りることが出来なかった。森崎はアスナに、来た道を引き返すよう促し、自分は先を目指すという。そしてアスナに「生きていてほしい」というのだ。森崎は自分が持っていた銃を渡し、代わりにアスナからクラヴィスのかけらを受け取った。クラヴィスは、生死の門でシャクナ・ヴィマーナに願いを聞いてもらうのに必要な鍵でもあったからだ。

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夷族に捕まり、自分の死を初めて直感したアスナ。

森崎が去ったあと、崖の上に残されたアスナは途方に暮れていた。するといつのまにか夜になってしまい、アスナはまた夷族と遭遇してしまう。たった一人で恐怖と向き合うこととなったアスナは、夷族から必死に逃げるが、捕まって食い殺されそうになる。森崎から託された銃を使い、なんとか夷族の腕から逃れようと試みるが、夷族の力は強く、その腕を振りほどくことができなかった。避けられそうにない命の危険に遭い、初めてアスナは自分がアガルタに来たのは「シンが記憶をなくしたシュンであるかを確かめる」ためではなく、「ひとりになることがただ寂しかった」のだと気づいた。そんなアスナの脳裏には、母親や、生涯で出会った人々の顔、自分をいたわる言葉の数々が走馬灯のように浮かんでくる。そして消えそうな意識の中「私、生きなきゃ」とつぶやくのだった。そこへシンが飛び込んできて、夷族の腕を切り落とし、アスナは助かった。そして朝を迎え、夷族は陽の光に体を焼かれて無念のまま撤退した。シンの横顔を初めてしっかりと見たアスナは、シュンとシンの瞳の色が少し違うことに気がついた。そして本当にシュンは死んでしまったのだと確信し、涙をこぼすのだった。

その後、アスナたちはシャクナ・ヴィマーナを追って、再びフィニス・テラへ戻ってきた。シンがシャクナ・ヴィマーナを「神の乗る舟」ではなく「命を運び去る舟」だと言ったので、アスナは生死の門を目指した森崎の身を心配したのだ。するとそこへ、ミミを吸収したケツァルトルがやってきた。そのケツァルトルは、崖の淵までたどり着くとフィニス・テラにむかって最後の唄を歌った。最後の唄は世界に溶け込み、形を変えて永久に残るのだとシンは教えてくれる。歌を歌い終えたケツァルトルはアスナたちを振り返り、フィニス・テラの底へ連れて行ってくれた。そこはケツァルトルの墓場で、アスナたちを連れて来てくれたケツァルトルは、ここへ命の終わりを迎えにきたのだった。

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「生死の門」の中で森崎が対峙したシャクナ・ヴィマーナの姿。舟から、人型に変わっている。

そのころ森崎は、アスナから受け取ったクラヴィスのかけらを手に、生死の門の中でシャクナ・ヴィマーナと対峙していた。シャクナ・ヴィマーナが、森崎に願いを言うよう促すと、森崎は亡くした妻、リサを取り戻したいと伝える。すると空間が裂け、森崎の前にはリサの影が現れた。だがそれは、まだ魂だけの不完全なもので、シャクナ・ヴィマーナは代償に「魂を入れる肉の器を差し出せ」と森崎に要求するのだった。「自分」以外に差し出す肉体がない状況に立ちすくんでいた森崎のもとへ、彼を心配して駆けつけたアスナが現れる。「どんな手段を使ってでも、もう一度妻に会いたい」という長年の望みを諦められない森崎は、アスナに「ここへ来てほしくなかった」と悲痛な表情を浮かべ、アスナの肉体をシャクナ・ヴィマーナに差し出してしまう。するとリサはアスナの体を依代として蘇ったが、シャクナ・ヴィマーナは森崎からも視力を奪い、さらに代償を支払わせたのだった。だが、視力が無くなっていく恐怖のなかでも、愛する妻の姿を再び見ることが出来た森崎は幸せだった。しかし、生者を犠牲とした死者の復活に納得ができないシンは、アスナを助け出すため、リサの魂を呼ぶために使われていたクラヴィスを破壊した。クラヴィスが砕け散ると同時に倒れこんだリサは、「幸せを探して」と森崎が今後も生きていくことを願った。

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全てが終わって「狭間の海」を目指す三人。空にはシャクナ・ヴィマーナが飛んでいる。

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