ザ・マジックアワー(三谷幸喜)のネタバレ解説・考察まとめ

『ザ・マジックアワー』とは三谷幸喜が脚本・監督したエンターテインメント映画である。佐藤浩市の主演映画で妻夫木聡や深津絵里など豪華キャストが多数出演している。三谷幸喜が監督する4作品目の映画で、第32回日本アカデミー賞で4部門にノミネートされた。マフィアの天塩商会が牛耳る港町の守加護。彼らの怒りを買ってしまった備後は、助かるために三流俳優の村田を騙し、映画撮影と称して殺し屋のデラ富樫を演じさせる。天塩の者たちに村田が偽のデラ富樫だとバレないよう備後が四苦八苦する、大ヒットコメディ映画。

『ザ・マジックアワー』の概要

『ザ・マジックアワー』とは、『ラヂオの時間』や『THE有頂天ホテル』などの大ヒット映画を製作した三谷幸喜監督のエンターテインメント映画である。映画スタッフは製作は亀山千広と島谷能成、音楽は荻野清子、美術は種田陽平が担当している。この映画は2009年度の第32回日本アカデミー賞で、三谷幸喜が監督賞と脚本賞、佐藤浩市が主演男優賞、荻野清子が音楽賞にノミネートされた。2008年6月に公開された東宝映画で上映時間は2時間16分。東宝スタジオの中にある日本最大級のスタジオを3つ使って映画撮影が行われ、映画のエンディングでは港町の守加護の巨大セットをスタジオ内に建築している様子を早回しにした映像を見られる。

『ザ・マジックアワー』のストーリーは、港町の守加護にある港ホテルの一室にマフィアの天塩商会が乗り込む所から始まる。その部屋にはボスの天塩の愛人であるマリと、ナイトクラブ赤い靴の二代目支配人で天塩の手下の備後がいた。マリとの浮気を知った天塩に殺されそうになった備後は、とっさに天塩商会が血眼になって探しているデラ富樫を連れてくると約束する。解放された備後は三流役者の村田を映画撮影だと騙してデラ富樫を演じさせ、天塩を騙すことに成功するが、嘘の映画撮影が進むにつれていろいろなハプニングが起きるコメディ映画である。

『ザ・マジックアワー』は豪華キャストがそろう大ヒットコメディ映画で、主人公である売れない三流俳優の村田役を演じた佐藤浩市の他に、ナイトクラブ赤い靴の二代目支配人である備後役に妻夫木聡、天塩の愛人役に深津絵里、赤い靴の従業員である鹿間夏子役に綾瀬はるか、マフィアのボスである天塩役に西田敏行が登場する。その他には唐沢寿明、香川照之、天海祐希、中井貴一、鈴木京香など主役級のキャストが多数そろっている。『ザ・マジックアワー』は互いに事情の知らない同士が違う話をしながら、何故かうまく会話が成立してしまうという面白いストーリーで、思わず笑ってしまうシーンが多数ある映画である。

『ザ・マジックアワー』のあらすじ・ストーリー

村田、嘘の初主演映画のオファーを受ける

マリとの関係がバレた備後が命が助かるために天塩にデラ富樫を知っていると嘘をついたシーン。

舞台は港町の守加護。町を牛耳る天塩商会のボスである天塩幸之助が手下のマフィアたちを引き連れて、女主人のマダム蘭子が経営する港ホテルの一室に乗り込んだ。その部屋には天塩の手下の備後登と、天塩の愛人の高千穂マリが一緒にいた。備後は守加護にあるナイトクラブ赤い靴の二代目支配人でマリとは深い関係だった。マリは天塩の愛人になる前は赤い靴で踊り子として働いていて、備後とは同じ職場で働く昔からの仲間。天塩から逃れたかったマリは備後と関係を持った。そのことがバレて、二人が密会しているホテルの一室に手下を連れた天塩が現れたのだった。天塩の手下にボコボコにされた備後はボスにひたすら謝り続けたが、マリは反発して火に油を注ぐような発言をする。怒った天塩は二人を殺すために監禁しようとするが、命は助かりたい備後はとっさの思いつきで、天塩の手下たちが血眼になって探している「伝説の殺し屋のデラ富樫を知っている」と嘘をつく。天塩は「5日以内にデラ富樫を連れてくれば命を助けてやる」と条件を出し、引き受けた備後は解放される。

すぐに備後はデラ富樫探しを始めるが手掛かりはピンボケの一枚の写真だけ。それだけでなく、デラ富樫は誰も姿を見たことのない幻のような殺し屋だった。約束した期日までに見つけられそうにないと判断した備後は、顔が売れていない無名の俳優にデラ富樫を演じさせて天塩を騙すというアイデアを思いつく。備後は以前に映画の撮影所で働いていた経験があったことから、映画監督になりすますことにする。備後がデラ富樫の偽物として選んだのは三流俳優の村田大樹。村田は中年のベテラン俳優で撮影現場スタッフに顔が広かった。しかし、スタントやエキストラの仕事を主に活動している売れない俳優だった。
さっそく、映画『黒い101人の女』の撮影所を訪れた備後は、「映画の主役を村田にお願いしたい」と本人にオファーを出す。村田は映画監督の指名を受けて、映画『黒い101人の女』で主人公のスタンドダブルを終えたばかりだった。映画『黒い101人の女』は俳優の磐田とおる主演映画で、村田は屋上に追い詰められた主人公が喪服の女に銃で撃たれて屋上から落ちるシーンのスタントダブルを演じていた。主役と聞いて最初は興味を示した村田だったが、備後に映画監督の経験はなく映画の脚本もないことを知ると、「話にならない」とマネージャーの長谷川謙十郎と一緒に立ち去る。

映画撮影が終わった村田はモノクロ映画『暗黒街の用心棒』を見るために映画館に行く。村田はその映画の大ファンで主人公の殺し屋のニコに憧れていた。映画を見終わった村田に長谷川から電話が来て、「任侠映画『実録・無法地帯』の撮影所に来るように」と言われる。脇役のチンピラ役に空きができて村田に出演依頼がきたのだった。任侠映画『実録・無法地帯』は大物俳優のゆべし主演の映画で村田は張り切って映画撮影に臨んだ。村田の暑苦しい演技が気に入らなかったゆべしは何度も映画撮影を止めて演技のやり直しをさせる。挙句の果てにゆべしは俳優経験のないそこら辺にいる映画スタッフと村田を交代させ、その映画スタッフが代わりにチンピラ役をやることになる。落ち込んだ村田が映画の撮影所を出ると備後がいた。

備後の映画初監督作品の主演オファーを受けることにした村田は、マネージャーの長谷川と一緒に備後の車で守加護に向かう。車中で村田が「映画の台本を見たい」と言うと、備後は「ない」と答えた。村田の主演映画のタイトルは『さすらいのデラ富樫』で、決まっているのは主人公が伝説の殺し屋のデラ富樫という設定とその他の登場人物の設定のみ。台本のない映画と聞いて長谷川は備後の話を怪しんだが、村田は「オールアドリブかよ」とやる気十分な態度を見せる。村田が車から降りると、港町の守加護は街並み全体が映画のセットのような場所だった。村田と長谷川はマリも滞在している港ホテルに映画撮影が終わるまで滞在することになる。備後は偽物のデラ富樫を連れてきたことを知ったマリに「天塩に殺されるよ」と詰め寄られる。しかし、後には引けない備後は天塩を騙す作戦を続行する。マリは仕方なく備後の作戦に協力することになる。

守加護で村田がデラ富樫の偽物だと知る人たちは、赤い靴の二代目支配人で偽の映画監督を演じる備後、天塩の愛人のマリ。その他には赤い靴の従業員で備後を慕う鹿間夏子、同じ店で働くコックとバーテンダーをしている鹿間隆、港ホテルの女主人のマダム蘭子の5人。娘の夏子と父親の隆は親子で同じ職場で働いていた。未だに映画撮影の話を完全に信じていない長谷川は、「撮影用のカメラを見せてほしい」と備後に要求する。台本やプロットなしでも映画撮影はできるが撮影用のカメラがないとできないからだった。備後はその場の流れで長谷川の要求を了承したが、すぐに夏子と隆に相談。守加護でCM撮影をしている団体がいたことを思い出した隆の提案で、こっそりカメラを借りることを計画。ガス会社の職員になりすました隆がディレクターの今野貴之介に嘘のガス漏れを知らせ、「危険なのでCM撮影に使う機材を全て置いたまま、急いでみんなで避難するように」と指示を出す。CM撮影の団体が全員避難した隙にカメラを隆が勝手に持ち出し、備後は約束通り長谷川に撮影用のカメラを見せた。長谷川の方は撮影用のカメラを見せられたことによって備後の話を信じるようになる。急遽、映画撮影をすることになり、仕方なくマリがデラ富樫の相手役の女優として出演することになった。カメラマンは隆、アシスタントは夏子が担当し、備後の監督で映画撮影を開始したが、カメラに慣れていないマリは右手と右足を同時に出して歩くなどぎこちない演技を見せる。何とかデラ富樫とマリが初めて出会うシーンを適当に撮影し、備後たちは村田たちを本物の映画撮影だと思わせることに成功する。

村田、アドリブ映画『さすらいのデラ富樫』で主人公を熱演

デラ富樫を演じる村田が備後に天塩商会の事務所に連れていかれ、天塩と会話をしている様子。

翌日、とうとう偽のデラ富樫の村田を天塩に会わせる日がやってくる。備後は他の俳優たちは全てスタンバイ済みと嘘をついて村田を天塩商会に連れていく。天塩商会の事務所はビルの二階にあることから、撮影用のカメラはビルの向かいの三階にセットし、そこから映画撮影をしていると嘘の情報を村田に伝える。天塩の事務所で備後と一緒に天塩に対面した村田は堂々とした態度で殺し屋のデラ富樫をアドリブで演じる。村田はペーパーナイフを舌で舐める演技も付け加え、奇妙な偶然が重なり何とか天塩との会話が成立する。最後に村田は偽物の拳銃を取り出して天塩を脅し、トランポリンが地面に用意されている二階の窓から外に飛び降りる。備後は村田が偽物のデラ富樫だと天塩にバレないかと内心ドキドキしていた。しかし、行動の一部始終を見ていた天塩は村田の度胸に関心する。村田のクサい演技がこいつはタダ者ではないとその場にいた天塩の手下全員に思わせた。備後は天塩に村田を伝説の殺し屋のデラ富樫だと思わせることに成功する。
後日、デラ富樫を気に入った天塩は「天塩商会で働かないか?」と村田に話を持ち掛ける。実は天塩の手下たちが血眼になってデラ富樫を探していたのは、天塩が殺し屋に命を狙われているからだった。

デラ富樫に天塩を殺させようとしているのは天塩商会と対立している江洞商会。筆頭の江洞潤は以前に天塩商会にいた天塩の元手下だった。江洞は三年前に天塩商会からのれん分けをしていた。江洞は天塩商会の縄張りを奪うために天塩の命を狙っていた。村田はアドリブの演技で天塩の誘いを断る。すると、村田は天塩の手下に本物の拳銃を頭に突きつけられる。偽物の拳銃だと思っている村田はまったく怯まない。慌てた備後は「カット!」と大声で言って村田を部屋の隅に引っ張っていく。そのシーンの映画撮影の一時中断を意味するカットだと思った村田はデラ富樫の演技を一旦止める。備後は監督として村田に小さい声で「天塩に雇われる方向性で演技をするように」と指示を出す。映画撮影の仕切り直しのために村田が事務所の廊下に出ると、備後は天塩の腹心でナンバー2の黒川裕美に「カットとはどういう意味だ?」と聞かれる。備後はとっさに、「デラ富樫はナイフで喉を切り裂く殺害方法が得意技で親しいものは彼をカットと呼ぶ」と嘘をついてごまかす。備後から映画撮影再開の合図をもらった村田は事務所の中に勢いよく入り、監督の指示通りにアドリブで天塩に天塩商会に雇われることを承諾する。デラ富樫が通称カットと呼ばれていると思っている黒川や他の天塩の手下たちは、仲間になった彼を口々に「カット」と呼ぶ。それを聞いた村田は「カットと言っていいのはこの人だけだ」と備後を指さして天塩の手下たちに怒る。すごんだように見えた天塩の手下たちは村田に一目置くようになる。

村田、殺人を依頼される

マリがナイトクラブ赤い靴のステージで歌うシーン。

殺し屋のデラ富樫を味方に引き入れたと思っている天塩はすぐに江洞商会の江洞に電話をした。天塩は江洞にデラ富樫が天塩商会に寝返ったことを伝える。天塩からの電話が終わった江洞は一緒に食事をしていた本物のデラ富樫に彼の偽物がいることを教える。それを知った本物のデラ富樫は激怒する。天塩と偽のデラ富樫との対面が終わった備後はマリの所に行き、「本物かと思った」と村田のアドリブ演技を大絶賛した。その様子を見たマリは呆れた顔をする。その頃、村田と長谷川は黒川と一緒に車で香港マフィアとの武器の取引現場に向かっていた。黒川は簡単に人を信用しない性格で村田が本物のデラ富樫なのか疑っていた。殺し屋としての腕前を見極めるため、黒川は村田を自分の取引現場に同行させたのだった。黒川に村田と長谷川が香港マフィアとの武器の取引現場に連れていかれたことを知った備後は、慌てて三人の後を追って取引が行われる港の倉庫街に向かう。

香港マフィアとの武器の取引現場に着くと、黒川は村田たちに「車内で待つように」と言って車を降りる。香港マフィアとの武器の取引内容は銃の売買だった。映画撮影だと思っている村田はアドリブで車内にあった重いカバンを勝手に開ける。中に入っていた銃を取り出し、それを持って村田は車から降りた。その銃は香港マフィアと売買するための商品だった。そのことを知らずに中身が空のカバンを香港マフィアに渡す。カバンの中を見た香港マフィアは激怒。天塩商会と香港マフィアとの銃撃戦が始まる。香港マフィアが持ってきたカバンを開けて中を見ると中身は札束ではなく紙切れだった。香港マフィアが武器の取引代金を払うつもりがなかったことがわかる。黒川は香港マフィアの策略に気づいた村田がわざと商品の銃をカバンから持ち出したと解釈。黒川は「借りが出来たな」と村田に言った。備後が港の倉庫街に着いた時にはすでに銃撃戦の真っ最中だった。銃撃戦に巻き込まれた長谷川は香港マフィアに頭を殴られて軽い脳しんとうを起こす。銃撃戦が映画撮影だと思っている村田はまったく怯むこともなく飛び交う銃弾の中を派手に暴れまくる。村田の命知らずの度胸のある行動を見た黒川はすっかり感心し信用するようになる。香港マフィアとの銃撃戦を終えて天塩商会に戻った黒川は、ボスの天塩に「ヤツは本物です」とデラ富樫の活躍を報告した。その話を聞いた天塩は村田を食事会に招待する。

食事会は備後が支配人をするナイトクラブ赤い靴で行われることになり、天塩の希望で元踊り子のマリが店のステージで歌うことになる。ボスの天塩や招待された村田たちが貸し切りの赤い靴に集まり食事会が始まる。備後から映画のリハーサルと聞いていた村田は食事を食べるフリをする。天塩がデラ富樫の行動を変に思っているのを見て、備後は村田に本当に食べるように指示を出す。村田は実際に食事をするリハーサルは、有名な映画監督の黒澤明が採用している方式だと知っていたことから、クロサワ方式だと納得して食べ始める。マリは小さなステージの上で吊るされた大きな三日月に座り歌い出した。天塩はマリの歌う姿を感慨深く見つめる。歌のステージが終わり天塩は楽屋にいるマリを訪ね、「自分の所に帰ってきてほしい」と頼む。天塩は人形のように自分を側に飾って置きたいだけだと思っていたマリは要求をはねのける。そんなマリの態度に天塩は激怒する。その頃、村田は天塩と一緒に来ていたふたりの手下と会話をしていた。黒川の弟分の太田垣直角と大柄な体格の知念万丈を俳優だと思っている村田はふたりの演技にダメ出しをし、マフィアらしい歩き方や決めポーズなどを指導する。

その日の深夜遅くに村田は天塩商会の事務所に来るように呼び出される。天塩と一緒にいた黒川の情報によると、国税局の捜査が天塩商会に入るという情報を入手。天塩商会で働いていた会計士の菅原虎真が情報を国税局に密告したのが原因らしかった。天塩は村田に本物のライフル銃を渡し、今夜中に「菅原を始末してほしい」と依頼する。その場にいた備後は村田が殺人犯になってしまうかもしれないと内心慌てる。映画撮影だと思っている村田は、天塩からもらったライフル銃を守加護にあるバーで備後に見せびらかす。その姿を見た備後は、村田に嘘の映画撮影のことを打ち明けようとしたがなかなか言い出せない。そこに黒川が江洞を連れてバーに入ってくる。黒川は江洞がデラ富樫に気づいていないような様子を不審に思う。それに気づいた備後はとっさに黒川に「デラ富樫は変装している」と嘘をつく。備後はこっそりと村田に江洞は所かまわず映画のリハーサルをする俳優だと教える。備後に「リハーサルに付き合ってやってくれ」と言われた村田は、デラ富樫になりきってアドリブで江洞にすごむ。村田がデラ富樫の偽物だとわかる江洞はその場は話を合わせる。江洞は村田の態度に驚きながらも「君の勇気は筋金入りだ」と誉める。

備後、村田に嘘の映画撮影だとバレる

天塩に捕まって地下室に監禁された備後と村田の様子。

そんな時、備後はマリから「ふたりで一緒に守加護から逃げよう」と言われる。一度はマリの誘いに乗りふたりで守加護を出発した備後だが、村田のことが気になり一人で町に戻る。その頃、村田はカメラマンの隆とアシスタントの夏子を連れて、天塩商会の会計士の菅原が隠れている病院に来ていた。隆は再び嘘のガス漏れをCM撮影のディレクターである今野に知らせ、全員を避難させた後に撮影用のカメラを勝手に持ち出していた。映画撮影だと思っている村田は病室に入り、ベッドにいる菅原に偽物だと思っている本物のライフル銃を向ける。村田がライフル銃の引き金を引こうとした瞬間に「カーット!」と病室中に備後の声が響き渡った。それを聞いた村田はライフル銃を降ろし、菅原は命が助かる。守加護に戻った備後は村田を探し回り、菅原がいる病院にいることを突き止めた。映画撮影だと思っている村田が本物のライフル銃で菅原を撃とうとしているのを見た備後は、慌てて嘘の映画撮影を止めたのだった。村田が殺人犯になるのをギリギリで止められた備後は胸を撫でおろす。すぐに備後は菅原を守加護の警察署に連れて行き保護してもらう。

備後は電話で天塩にデラ富樫が菅原の殺害をしくじったと嘘の報告をする。しかし、馬場警察署長は天塩の中学の同級生で天塩商会と警察は裏でつながっていた。そのことから菅原の身柄は警察から天塩商会に引き渡されていた。ふたりの関係を知らなかった備後は、天塩に嘘の報告をしたことが馬場警察署長からバレる。裏切り者として備後は天塩に捕まり、建物の地下室に監禁される。備後と菅原は椅子にロープで縛られ、足はコンクリートが入っている大きな桶につっこまされる。天塩に捕まった備後を助けるために夏子は村田に「ボスの殺害シーンの映画撮影をする」と言い出す。さすがの村田も映画のストーリーの内容としては唐突すぎると反論したが、夏子に加勢した隆に言いくるめられてその気になり、天塩を殺害するために備後たちが監禁されている地下室に向かう。地下室に乗り込んだ村田はアドリブで「天塩を父親みたいに思っていた」と言い出しいきなり怒り出す。天塩はデラ富樫がなぜ怒っているのか意味がわからなかったが、村田はあっさりと天塩の手下の太田垣に殴られて捕まり、備後たちと同じように地下室に監禁され、椅子に縛られてコンクリートに足をつっこまされる。その状態になって初めて村田は今の状態が映画の撮影ではないことに気づく。村田は映画撮影が嘘だったことを確認し、備後はそれを認める。備後と村田が天塩に捕まったと知った夏子はマリに「ふたりを助けてほしい」と頼む。マリは一人で守加護から逃げようとするが、夏子に自分勝手だと責められ、マダム蘭子に天塩を説得するように言われる。二人に説得されたマリは備後たちが監禁されている地下室に行き、天塩の手下たちをぶん殴って三人を助ける。縄を解かれた村田は自分を映画の撮影だと騙した備後を思い切りぶん殴る。四人で地下室から逃げようとしていると黒川に見つかる。香港マフィアとの銃撃戦でデラ富樫を演じる村田に借りがあった黒川は四人を見逃す。

備後は天塩の元に連れ戻されたマリを助けようと映画のシナリオを考える。嘘の映画撮影だと知った村田は、自分の渾身の演技がカメラのフィルムに残っていないことにがっかりする。怒った村田はマネージャーの長谷川と一緒にすぐに東京に戻ることに決め、帰り支度を始める。備後は最後に「もう一度だけ力を貸してほしい」と村田に頼み込む。だが、村田は備後を振り切って滞在していた港ホテルから出ていく。長谷川と一緒にタクシーに乗った村田は、宝物にしていた古い毛布の切れ端を守加護の映画館に落としてきたことに気づく。村田はタクシーで守加護に引き返し映画館に向かう。映画館の中で古い毛布の切れ端を見つけた村田が帰ろうとすると、いきなりスクリーンに映像が映し出された。村田がスクリーンを見ると自分が映っていた。映画館では守加護でCM撮影をしていたスタッフたちが撮影した映像の確認をしていた。CM撮影とは違う映像が出てきたことにスタッフたちは「こいつは誰だ?」と騒ぎだす。スクリーンに映し出された映像は村田が守加護で演じていたデラ富樫だった。村田はスクリーンの中で今までの俳優人生の中で最高の演技をしている自分を見て感動して涙を流す。村田はホテルに戻り、自分から最高の演技を引き出した備後に協力することを伝える。村田はこの映画撮影を最後に俳優を引退することを決めていた。村田は自分の最後の映画撮影のために本物の映画スタッフ仲間に協力を頼む。特機係の西さん、スモーク担当の野島、着弾の名人のなべさんなど、村田のために続々と映画スタッフ仲間が守加護に集まる。

備後は記憶力抜群の菅原を使って天塩商会の帳簿の内容を話した動画を作成し天塩に送りつける。江洞は天塩の所に中学の同級生で天塩商会と裏でつながっている、守加護市長と馬場警察署長を連れてやってくる。今後ふたりは天塩商会ではなく江洞商会に協力することを江洞は天塩に伝える。村田は守加護で偶然にCM撮影をしている団体の中に老人になった俳優の高瀬允を見つける。高瀬はモノクロ映画『暗黒街の用心棒』で主役の殺し屋のニコを演じた村田の憧れの俳優だった。何度も映画館でその映画を見るほどの大ファンである村田は高瀬に声をかける。高瀬はモノクロ映画『暗黒街の用心棒』に出演していた頃は大スターだったが、現在はCMのエキストラをするほど落ちぶれていた。しかし、高瀬はまだ俳優人生を諦めておらず、人生の輝く瞬間を意味するマジックアワーを今も待っていることを村田に教える。村田はその話に感動し、「俳優人生を諦めるはまだ早い」と言う高瀬の言葉に心が揺らぐ。

備後が天塩を騙して全員が助かるために考えた映画のシナリオはこうだった。マリと菅原を交換するために天塩を波止場に呼び出す。ふたりを交換した後に菅原は車の陰に逃げ込む。血のりを服の中に仕込んだ隆が菅原のふりをして車の陰から飛び出す。黒川が空砲にすり替えられた拳銃で隆を撃つ。空砲で破れた血のりで服が真っ赤になった隆は撃たれたフリをして海に落ちる。本物の菅原は夏子が運転するマイクロバスで脱出し、国道で待機している国税局に引き渡す。長谷川が悪役のギャングに扮して登場し「マリを渡せ」と言い出す。そこにデラ富樫を演じる村田が登場しギャングと闘う。だが、村田もマリもギャングに撃たれてしまう。死んだふたりを備後が車に乗せて走り出し、三人を乗せた車が爆発して炎上するというストーリーだった。備後の計画は全員を死んだことにして天塩から逃げるというもの。港ホテルでは滞在客の清水医師が慌ただしく動き回っている備後たちの様子を見て、マダム蘭子に「何かあるのか?」と質問する。清水医師は香港マフィアとの銃撃戦で頭を殴られた長谷川や、監禁されて天塩の手下たちに暴行を受けた備後たちの治療をしてくれた医師だった。マダム蘭子は「あの人たちの人生を賭けた命懸けの大芝居がこれから始まる」と答えた。「誰が観客なのか?」と清水医師が聞くと、マダム蘭子は守加護を牛耳るボスの天塩だとほのめかす。村田や映画スタッフたちは念入りに映画の段取りを確認し、血のりや火薬などの仕込みを準備した。

人生をかけた最後の大芝居は指銃戦

デラ富樫になりきった村田が手で作った銃で撃つシーン。

村田の最後の映画撮影の当日、波止場に天塩を呼び出し、全員死んだふり作戦が始まる。途中までは備後が考えた映画のストーリー通りに進んだ。村田がデラ富樫になりきって長谷川が扮する悪役ギャングと闘う。そして、もう少しでデラ富樫が死ぬシーンになる所で予想外の展開が起きた。物陰から一部始終を見ていた天塩がマリを助けるために悪役ギャングの前に躍り出た。裏でつながっていた守加護市長と馬場警察署長に裏切られ、備後が送り付けた菅原の動画を見た天塩は、天塩商会はもうお終いだと自暴自棄になり、自分にはもうマリしかいないと思っていた。芝居だと知らない天塩は「殺すなら私を殺せ」と言って、マリを守ろうとギャングの前に立ちはだかる。命を投げ捨ててまで自分を守ろうとした天塩にマリは心を打たれる。マリと天塩は手を取り合って一緒に車で立ち去った。幸せそうに立ち去った二人を見た備後や村田、天塩の手下たちはあっけに取られる。もう少しで芝居が完成する所で天塩の意外な行動により、映画が台無しになったことにみんながっかりする。

映画撮影が終わりみんなが撤収しようとした時、「俺が本物のデラ富樫だ」と言って大きな銃を持った男が闇夜にまぎれて現れる。その男は港ホテルに宿泊している清水医師だった。本物のデラ富樫である清水医師は医者に扮して守加護にある港ホテルに潜伏していたのだ。村田の方は逆に「俺がデラ富樫だ」と叫び、「必要ない」と言って地面に銃を置く。村田が手で作った銃で撃つマネをすると、地面やその場にいた映画の登場人物たちが次々と撃ち抜かれていく。実は映画スタッフたちが特殊技術で作った演出だった。仕込んであった爆薬が映画スタッフの見事な操作でタイミングよく爆発を起こしていた。村田が最後に本物のデラ富樫に手で作った銃を向ける。すると、慌ててデラ富樫は逃走する。一部始終を見ていた黒川は村田に「弟子にしてください」と言い出す。「厳しい世界だぞ」と村田は返し、みんなで作った映画は大成功し撤収を開始する。村田はまだ俳優はやめられないと考え直し、これからも続けていくことを決める。

『ザ・マジックアワー』の登場人物・キャラクター

港町の守加護にやってきた人たち

村田大樹(むらた たいき/演:佐藤浩市)

この映画の主人公で、スタントやエキストラが主な仕事の売れない三流俳優。アクションスタントが得意で自分の演技に自信はあるが、暑苦しい演技をするためになかなか大きな役の出演依頼がこない。映画俳優の仕事にこだわり、マネージャーの長谷川が持って来る舞台の仕事を断り続けている。映画館で何度も見るほどのモノクロ映画『暗黒街の用心棒』の大ファンで、演技の基本はこの映画の主役である殺し屋のニコを真似たもの。映画の撮影現場のスタッフと仲が良く、特にマネージャーの長谷川とは何でも言える仲。よく飲むお酒はギムレット。

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