わたしを離さないで(Never Let Me Go)のネタバレ解説まとめ

『わたしを離さないで』とは、日系イギリス人のカズオ・イシグロが2005年に発表した長編小説で、日本ではTBS系列で放送された脚本・森下佳子によるテレビドラマである。「臓器提供」を目的としてこの世に誕生した「クローン人間」の子供時代から始まり、成長とともに人生を受け入れ、全うしていく姿がドラマの中で主人公の恭子、友彦、美和の姿を映しながら描いていく。見どころは、作品の中では、現実の人物に近いキャラの恭子が自分の人生を振り返りながらすべてを受け入れ「生きる」ことに前向きになるという作品になっている。

『わたしを離さないで』の概要

『わたしを離さないで(Never Let Me Go)』とは、イギリス・ロンドン在住の日系イギリス人であるカズオ・イシグロによる長編小説で、英国では100万部を超える大ベストセラーになり話題になった作品である。英国では2010年に映画化され、若手実力派の俳優陣が出演して注目され、原作者のイシグロは映画では、製作総指揮としても名前を連ねている。

左からCarey Mulligan(キャリー・マリガン)、Keira Knightley(キーラ・ナイトレイ )、Andrew Garfield(アンドリュー・ガーフィールド)

日本では、2014年に蜷川幸雄演出、多部未華子主演で舞台化されている。そして、2016年1月15日~3月18日まで、TBS系列で放送された綾瀬はるか主演での日本のドラマは、世界でも初めてのドラマ化だと話題になった作品である。それと同時にカズオ・イシグロの名前が日本でも有名になったのは、日系イギリス人のイシグロが2017年にノーベル文学賞を受賞したのがきっかけだった。その影響で日本でも改めて『わたしを離さないで(Never Let Me Go)』の原作を手にする人も増えたといわれている。

英国ではキャリー・マリガンが日本版での「恭子」にあたる「キャシー」を、アンドリュー・ガーフィールドが「友彦」にあたる「トミー」を、キーラ・ナイトレイが「美和」にあたる「ルース」を演じている。

世間から隔離された世界が施設という形で存在した。その施設を「陽光学苑」という。

この「陽光学苑」では、子供たちが“良質な”教育を与えられている。そこで育てられた恭子(綾瀬はるか)、友彦(三浦春馬)、美和(水川あさみ)の3人。
外の世界も親が誰なのかも知らずに育ってきた子供たちは、自分自身を「普通の子供」だと思っていたが、実は提供された細胞から生まれてきた「クローン人間」だった。

ある日、生まれた時からある使命を与えられた「特別な子ども」であると「陽光学苑」の校長・恵美子に教えられる。自分たちの「本当の運命」を知り、成長とともにどのようにその運命を受け入れていくのか、心の葛藤も描いていく。

このドラマは自分が生まれた意味、生きていく意味、生かされている意味をテーマにした作品である。「クローン人間」として生まれ「提供」という使命を負った主人公たちは、視聴者たちに私たちは何のために生まれ、生かされているのかという問いを考えさせる。

「生きる」や「命の尊さ」をテーマにした映画やテレビドラマは多々あったが、『わたしを離さないで』に関しては、これまで日本のテレビドラマにない「臓器提供」「クローン」という衝撃的でセンセーショナルなキーワードを元に作られた作品として、非常に話題になったテレビドラマだ。また、日本では、テレビドラマに先駆け、舞台化されているが、テレビドラマ化されたことでより多くの人に知られる作品となった。

日本のドラマ『わたしを離さないで』の脚本は森下佳子。
脚本家・森下佳子は、他に大人気ドラマ『世界の中心で、愛をさけぶ(2004年7月 - 9月、TBS)、白夜行(2006年1月 - 3月、TBS)、JIN-仁-(2009年10月 - 12月、2011年4月 - 6月、TBS)などの脚本を手掛けたヒットメーカーだ。

2020年のコロナ禍で放送され、話題になったのが、日本のドラマ界で初となる「リモートドラマ」の『転・コウ・生(NHK)』である。このドラマは、3人の脚本家が30分ドラマを受け持ち3作連続で放送する新しい形を作ったことで話題になっていた。森下佳子は3番目のトリを担った。そんな森下佳子がイギリスを舞台にした原作『わたしを離さないで(Never Let Me Go)』を日本のドラマとしてどのように描いていくのかも注目されたのが、この『わたしを離さないで』なのだ。

『わたしを離さないで』のあらすじ・ストーリー

テレビドラマ『わたしを離さないで』は全10話になっていて、その構成は次の様になっている。

●第1章:陽光学苑編(第1話 ~第3話)
●第2章:コテージ編(第4話~第6話)
●最終章:希望編(第7話~最終話)

第1章では、衝撃的なシーンからのスタートになっている。そして「ドラマの謎」ともいえる「施設の謎」、「提供の謎」を第1章で理解することになる。

第2章では、「提供者」である主人公たちが、唯一提供を「免除」される期間での生活にスポットを当てる。「施設」で育った特別な子供たちが外の普通に近い生活ができるその間に生まれる心の葛藤に迫る。

第3章では、人間はどんな形であれいずれ「死」を迎える中で、「クローン人間」として生まれてきた恭子、友彦、美和が生きる意味やどんなふうに自分の運命を受け入れていくかが描かれている。

第1章:陽光学苑編(第1話 ~第3話)

『わたしを離さないで』のドラマの冒頭は、衝撃的なシーンからスタートする。何人もの医者に囲まれ、手術台にいる男性。医者が男性の体から次々に臓器を取り出していく。その様子を見ているひとりの女性。手術の途中で機器のアラームが鳴り「バイタル低下」の声。看護士が「どうしますか?」と医師に指示を仰ぐと医師の応えは「いいんじゃないか、もう4度目だろ」。医師たちは、縫合した男性をそのままにし、蘇生措置を行わずに立ち去る。看護師がその男性をストレッチャーに乗せたまま、女性に渡す。男性はまだ息があり、酸素マスクが息で曇るが意識はない。

看護師が女性に「これお願いします」と手渡したものはアルミのケース。女性は男性を乗せたストレッチャーを押し、別室に入っていくと、そこにあったのは焼却炉だった。焼却炉の前で女性は、アルミケースの中から注射器を取り出し男性に注射をすると、即座に男性の酸素マスクの曇りが止まる。そして女性は男性の遺体を焼却炉に入れ、スイッチを押した。

第1話で校長が「特別な使命」について語り、聞いている子供たち

20年前の「陽光学苑」。子供たちは普通の小学校と同じように授業を受けているが、違うのは、「心」という授業があること。そして、どの子供も洋服に穴が開いていたり、破れていたりしている。

新任教師の堀江龍子は、この「陽光学苑」の子供たちには、未来の夢がないことや夢について語ることがないことを疑問に思い、次第にこの「陽光学苑」の子供たちが普通の小学校の子供たちとは違う雰囲気であることに違和感を覚え、校長の神川恵美子に疑問を投げかける。
そんな龍子に校長の神川恵美子は、来たばかりなのに口出しするなと一喝する。そして、いつもより早い時期だが、子供たちにあの大事な話をすることに決める。そしてある日、校長の神川恵美子から子供たちに話されたのは「あなたたちは特別な子供」だということだった。

校長の神川恵美子が子供たちに話しをする場面

「あなたたちは、普通の人間ではありません。普通の外の人間たちとは違います。外の人間は、目的もなく、ただ生まれてくるだけですが、あなたたちには生まれながらにして果たさなければならないある「使命」を負っています。それは「提供」という使命です。あなたたちは病気になったり、けがをした人のために自らの体の一部を提供する。そういう使命のもとに作り出された特別な存在。言ってみれば「天使」なのです。困っている人に未来や希望、新しい人生を与える存在なのです。そういう崇高な使命のもとに作り出された天使なのです。」

自分たちは特別な人間であること、それゆえ、施設で大切に育てられている特権を持っているということを諭される。そのためにその「使命」にふさわしい人格を身につけなければいけない。子供たちは、緊張と驚きの表情で聞き入っている。

20年後の恭子は自らに与えられた人生を忠実に生きていると自覚している。そして、「使命」を全うさせるのは当たり前だと認識している恭子である。

第2話で新任教師の堀江龍子が男子児童に「未来は変えられる」と話している場面

新任教師の龍子は、「陽光学苑」での教えである、生まれながらに使命を持ち、自分の意志では未来の夢を持てないという教えに疑問を持ちながらも、子供たちには「未来は変えられるよ」と話をする。

しかしその後、陽光学苑の外の世界に興味をもった男子児童二人が「陽光学苑」の門を乗り越え、敷地の外に出て、校長に見つかり、連れ戻されることなくそのまま行方不明となってしまう。

龍子は校長に、二人の児童は、即刻、「提供」に出されたことを告げられ、それ以降、龍子は子供たちが「陽光学苑」のルールを破り、即「提供」の運命になる様なことが起きないように、未来の話や夢の話をしなくなった。

子供たちの間では、二人の少年は、「森の殺人鬼」に殺されたと恐怖を抱くようになる。

陽光学苑の出身者は、卒業して3年間は「提供」を免除されるが、免除になっている間でも、規則を破ると子供でもすぐに「提供」に出されてしまうことを恭子と友彦が知り、ショックを受ける。

そして、時は経ち、恭子、友彦、美和の3人は陽光学苑を卒業する年齢になった。3年間の提供免除の期間、コテージで別の世界での生活をすることになる。このころ、恭子は子供のころから気にかけていた友彦に対して、淡い恋心を抱いていた。

友彦は、恭子と同じコテージに行くと宣言する。そして、恭子、友彦、そして美和も同じコテージで暮らすことを決めるが、友彦と恭子の仲に気付いた美和が強引なわがままぶりで、友彦と付き合うといいだす。
言いなりになってしまう友彦に、落ち込む恭子だが、それでも3人は同じコテージに移り住むことになる。

第2章:コテージ編(第4話 ~第6話)

第4話で3人は新しい世界「コテージ」に行く場面

3人が向かったのは、「コテージ」と呼ばれる一軒家。ここで恭子、友彦、美和の生活がスタートする。「コテージ」ではほかの施設の提供者たちもいて共同生活がスタートする。

ここでは、それまで「提供者」としての自分たちしか知らなかった恭子たちだが、臓器提供していき弱っていく「提供者」のお世話をする、「介護人」の存在がいることを知る。恭子たちの将来は、「提供者」か「介護人」のどちらかになることしかないと現実を知ることになる。

ある時、「陽光学苑」の同級生の真実から手紙が届き、恭子は、真実のコテージに出向いた。真実のコテージでは、自分たちの人権を守るために戦っている者たちがいた。真実は恭子に「自分たちの人権を守り、自分の将来を自分で決められることが出来る権利を得るために戦おう」と誘うが、恭子は戸惑いながら参加することはなく真実と別れる。

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