The Beatles(ザ・ビートルズ)とは【徹底解説まとめ】

The Beatles(ザ・ビートルズ)とは、1962年に英国でデビューした20世紀を代表する4人組ロック・バンド。その影響力は音楽のみならず、ファッション、言動、思想にまで及び、社会現象を巻き起こした。彼等の音楽を語るうえで特筆すべき点の一つは、彼等自身の音楽的成長がそのまま音楽界全体の、そして聴き手である我々ファンの音楽的成長を促したことだろう。1970年の解散後も彼等の影響力は引き継がれ、21世紀の現在でもそれは変わらない。

曲の元になったポスターを指さすジョン。

これがそのポスター。

ジョン「あの曲はあまり誇れたものじゃない。作品らしい作品じゃないからね。『Sgt. Pepper's』に入れる新曲が必要だったから、体裁だけなんとか整えた曲なんだ」「みんな『Mr. Kite』には何か隠された意味があるんじゃないかと、そればかり知りたがった。意味なんてまるでないのに。僕がやったのは、ほかから言葉をちょいと拝借して並べて、それに音をくっつけただけ。本当にそれだけなんだ。作っている時から、全然いいとは思えなかったし、まともに取り合う気になれなかった。でも誰も信じちゃくれない。みんな、重要な曲にしたがってるんだ」「馬のヘンリーがヘロインのことだなんで、ほんと、ばかばかしい」「ポスターからそっくりそのまま取ってきただけ。裏の意味なんてなんにもない。水彩画みたいに純粋なもんだよ」

マーティン「ポールは、私がポールの曲をどうするつもりているのか、腰をすえてじっくり訊いてきた。音符ひとつひとつにいたるまで、アレンジの多くはポール自身のアイディアだったし、私はそれをそのまま形にするだけでよかった。だけどジョンはその点、あまりはっきりしていなかった。ジョンは自分のアイディアを比喩で話すんだ。だから私は彼の頭の中に入り込んで、何を欲しているのか探り出す必要があった。だからどちらかといえば心理的なアプローチだったね。例えば『Mr, Kite』の時は、『これはお祭りの広場を歌った曲なんだ。ちょっと現実離れしてるけど。だからオガクズとか、サーカスのリングみたいなフィーリングが欲しいんだけど、そんな風にしてもらえないかな?』と言ってきたんだ。だから私はまず、そのイメージがどうしたら音になるかというところから考えなければならなかった」

ジョンは本物のスティーム・オルガンの音を欲しがったが、マーティンは彼に、手で演奏するスティーム・オルガンは現存しないと告げた(パンチ・カードで演奏するものしかない)。そこでマーティンはヴィクトリア朝時代の古いスティーム・オルガンのテープを探し出し、エンジニアにそのテープを約1フィートごとに切り刻み、空中に放り投げてから、順不同でまた繋ぐように指示した。その結果出来上がったのが、音楽的には意味をなさないが、聴覚的にはマーティンが求めていた通りの、うねりのあるサウンドであった。
*書籍によっては上記のように「ヴィクトリア朝時代の古いスティーム・オルガンのテープ」と記述されているが、マーク・ルイソン著による「ザ・ビートルズ レコーディング・セッションズ完全版」では「スーザのマーチのテープ」になっている。

*レコーディング詳細
1967年
・2月17日
第1~第7テイクをレコーディング。第7テイクをテープ・リダクションして第8~第9テイクを作成。第9テイクにジョンのヴォーカルをオーヴァー・ダブ。
第9テイクを元にモノ・ミキシング。
*このミキシングはラフ・リミックスであり、マスターとしては使用していない。
・2月20日
テイク番号なしのレコーディング。
*マーチが演奏されているテープをバラバラに切り分け、ランダムに繋ぎ直してサウンド・エフェクト用のテープを作成している。
・3月28日
第9テイクにジョージ、リンゴ、マル・エヴァンス、ニール・アスピノールのハーモニカ、ジョンのオルガン、ポールのギター・ソロをオーヴァー・ダブ。
・3月29日
第9テイクに、2月20日に作成されたサウンド・エフェクトをオーヴァー・ダブ。
・3月31日
第9テイクにオルガンとグロッケンスピールをオーヴァー・ダ部。
第9テイクを元にモノ・ミキシングが行われる。
・4月7日
第9テイクを元にステレオ・ミキシングが行われる。

● Within You Without You
ジョージの作品でリード・ヴォーカルもジョージ。
ジョージ「この曲を書いたのは、瞑想に興味を持つようになった後だった。僕らはすでにLSDを卒業し、『All You Need Is Love』の時代に入っていた。曲はロンドンのハムステッドにある、クラウス・フォアマンの家で書いた。ある晩、夕食のあとで、そこにあったペダル・ハーモニウムを弾いていたら、この曲が浮かんできたんだ。まずメロディができて、それから冒頭の言葉『We Were Talking』が出てきた。歌詞はあとで完成させた。ちょうど『Sgt. Pepper's 』を作っているころだった。ラヴィ・シャンカールのもとでしばらくの間、レッスンを受けていたので、僕はシタールがいくらかまともに弾けるようになっていた。インド音楽の勉強はずっと続けていて、このころは『サルガム』という、さまざまなラーガの基礎になる旋律を練習していた。だからこの時期は、西洋音楽とは異なる音階を使った曲を書いてみたくてたまらなかったんだ。一番うまくいったと思えるのは、間奏のインストゥルメンタルの部分だ。あそこは4分の5拍子で、1-2、1-2-3、1-2-1-2-3というリズムになっている。インド音楽の変則的なリズムを取り入れたのは初めてだった。

ジョン「あれはジョージの最高傑作のひとつ。もちろん、僕の好きな曲でもある。自分の思想、音楽をはっきり打ち出しているからね。彼には生まれながらの才能がある。でなきゃ、あんなサウンドは出てこない」

「Sgt. Pepper's 」のジャケットをデザインしたピーター・ブレイク「今でもよく覚えているんだが、この『Within You Without You』をレコーディングした晩は、床にカーペットが敷かれ、インド人ミュージシャンが座っていてね。雰囲気が他の時とは全く違っていたよ」

エンディングの笑い声は、ジョージが「どうせこの曲を聞いた人は退屈するだろうから」という皮肉を込めて付け加えている。

*レコーディング詳細
1967年
・3月15日
第1テイクをレコーディング。
第1テイクを元にモノ・ミキシングが行われる。
*このミキシングはラフ・リミックスであり、マスターとしては使用していない。
・3月22日
第1テイクにディルルーバ(インドの楽器)をオーヴァー・ダブ。第1テイクをテープ・リダクションして第2テイクを作成。
第2テイクを元にモノ・ミキシングが行われる。
*このモノ・ミキシングはアセテート盤作成のための作業。アセテート盤とはメンバーやスタッフのために作成されるテスト盤のこと。
・4月3日
第2テイクにヴァイオリンとチェロをオーヴァー・ダブ。
第2テイクを元にモノ・ミキシングが行われる。
*このモノ・ミキシングは未使用に終わっている。
・4月4日
第2テイクを元にモノ、及びステレオ・ミキシングが行われる。
*エンディングの笑い声がこの日に追加されている。

● When I'm Sixty-Four
ポールが15か16歳の時の作品で、リード・ヴォーカルもポール。ジョンが歌詞を手伝っている。
ポール「これは僕がまだリヴァプールにいた15か16のころ、家にあったピアノで作った曲なんだ。一種のキャバレー・ソングだね」「僕の曲の中には『When I'm Sixty-Four』みたいに冗談半分のがたくさんある。だけどそれをみんな本気にとっちゃうんだ。『ポールはこういっている「Will you love me when I'm sixty-four (僕が64歳になってもまだ愛してくれますか?)』、でも僕は「Will you still feed me when I'm sixty-four (僕が64歳になってもまだご飯を食べさせてくれますか?)」とも言っているんだ。真面目だったらこんな風にはいわないよ。『Lovely Rita』もそうさ。駐車違反取り締まりの婦人警官がセクシーだなんて、冗談に決まっているじゃないか」

ジョン「確か作詞は僕も少し手伝ったと思う」「僕ならあんな曲を書こうなんて夢にも思わないね」

この曲は初期のライヴで、アンプが故障したり、電源が落ちたりしたときなどに、時間つぶしで演奏されていた。
ジョン「キャヴァーンに出ていた時、アンプが壊れるとピアノをバックに歌ったな」

*レコーディング詳細
1966年
・12月6日
第1~第2テイクをレコーディング。
・12月8日
第2テイクにポールのヴォーカルをオーヴァー・ダブ。
・12月20日
第2テイクにジョン、ポール、ジョージのバック・ヴォーカルをオーヴァー・ダブ。
第2テイクをテープ・リデクションして第3~第4テイクを作成。
・12月21日
第4テイクにクラリネットをオーヴァー・ダブ。
第4テイクを元にモノ・ミキシングが行われる。
*このモノ・ミキシングは未使用に終わっている。
・12月29日
第4テイクを元にモノ・ミキシングが行われる。
*このモノ・ミキシングは未使用に終わっている。
・12月30日
第4テイクを元にモノ・ミキシングが行われる。
1967年
・4月17日
第4テイクを元にステレオ・ミキシングが行われる。

● Lovely Rita
ポールの作品でリード・ヴォーカルもポール。
ポール「リヴァプールでピアノをバンバン弾いてた時、アメリカじゃ女性の駐車違反取り締まり官のことをメーター・メイドっていうんだって聞いて、こいつはいけると思ってね。やがてメーター・メイドは『Rita Meter Maid』になり、それから『Lovely Rita Meter Maid』となった。最初はなんとなく恨みつらみの曲にしようと思ってた。それで『You took my car away and I'm so blue today』とつづけたんだ。こんな女、好きになるやつなんていないだろうと思いながら。だけどそこでふと、彼女のことを愛することにしたほうがいいんじゃないかとひらめいて、軍人みたいにむちゃくちゃ任務に忠実で、肩から大きいバッグをさげていて、歩くときも足を大きく踏み鳴らすけど、ステキなんだってことにしたらいいんじゃないかって。車のナンバーを書き留めてる女性に主人公は一目惚れする。駐車を取り締まる婦人警官に参るくらいだから、きっと主人公は内気な事務員かなにかだろう。だったらデートに誘うのにも、『May I inquire discreetly when you are free to take some tea with me (ちょっとおうかがいしてもいいですか。いつかお暇なんでしょう。お茶をご一緒したいのですが)』とかいうはずだ。この曲はそんな風に想像してできたのさ。あくまでお茶であってマリファナじゃないよ。『草を刈りにおいで』というのとおんなじで、お茶といえばマリファナにとられかねない。あるいは古いティーポット(マリファナ)に関係あるものととられるかもしれない、とは思っていた。だけど僕はマリファナのことなんて気にしてなかったから、別に歌詞を変えたりはしなかった。巧妙にマリファナのことを織り込んで、如才ないところを見せようとしてたわけじゃないんだ」

マーティンの同僚でのちにアメリカ・アップル・レーベルの社長になるトニー・キング「ある晩みんなで『Lovely Rita』をやっていたときのことだ。あの曲には面白い音が入っているだろう? あれは櫛と紙でやったものなんだ。突然、ジョージ(マーティン)がわたしに『ちょっとレコーディング・セッションをしているほかのスタジオに行って、だれか金属製の櫛を持っていないか、探してきてくれないか』といってきてね。それからみんなでトイレに行って、トイレット・ペーパーをビリビリ破ったんだよ。櫛を通したときには、貴重なレコーディング時間を1時間さいて、ぴったりの櫛とぴったりの強さのトイレット・ペーパーを探す贅沢が許されていたということさ」

ジョン「いかにもポールらしいポップ・ソング。彼は小説を書くみたいな感じで曲を作るんだ」「ポールのポップ・ソングだ。僕は秘書や交通婦警のことなんか何も知りはしないよ」

*レコーディング詳細
1967年
・2月23日
第1~第8テイクをレコーディング。第8テイクをテープ・リダクションして第9テイクを作成。第9テイクにピアノ、ドラムス、ギター、ベースをオーヴァー・ダブ。
・2月24日
第9テイクにポールのヴォーカルをオーヴァー・ダブ。第テイクをテープ・リダクションして第10~第11テイクを作成。
・3月7日
第11テイクにバック・ヴォーカルをオーヴァー・ダブ。
・3月21日
第11テイクにマーティンのピアノ・ソロをオーヴァー・ダブ。
第11テイクを元に、モノ・ミキシングが行われる。
・4月17日
第11テイクを元に、ステレオ・ミキシングが行われる。

● Good Morning Good Morning
ジョンの作品でリード・ヴォーカルもジョン。
ジョン「僕はピアノに向かって作曲をするとき、よくテレビを小さい音でつけっぱなしにしておくんだけど、あんまり乗ってなくてはかどらない時は、テレビの言葉がはっきりと聞こえてくるんだ。あの時もちょうどそんな風に『Good Morning Good Morning』と聞こえてきた。コーン・フレークのコマーシャルだったんだ」「ちょっと回りくどいけど、なかなかいい歌詞だと思うよ」
ポール「当時の彼の退屈な生活を歌っている。ジョンはメロドラマの『Meet The Wife』を観ていたんだよ

マーティン「私たちは既成の効果音を入れることにも抵抗はなかった。ありとあらゆる効果音のレコードが揃っていたからね。たとえば『Good Morning Good Morning』には、農場の動物の鳴き声がずらっと入っているが、あれは全部効果音のレコードからダビングしたものなんだ」「『Good Morning Good Morning』の最後で聞こえるニワトリのなき声が、『Sgt. Pepper's Reprise』の最初のギター音と驚く程に似ているのに気が付いたときは、どんなに嬉しく思ったことが。おかげで二つのトラックを、まるで前者が後者に変身したかのようにミックスすることができた。あれは、稀にみる幸運に恵まれた編集だった」

エンジニアのジェフ・エメリック「ちょっと一服していたときのことです。ジョンが僕のところにやってきて、動物が逃げていく音が欲しいんだけど、最初の動物は2番目の動物が出てくると逃げる、2番目の動物は3番目の動物が出てくると逃げるという具合に、前の動物は後の動物の餌食になるか、後の動物をひどく怖がっている動物にして欲しいといったんです。ですからあの動物の音は、適当に入れたら偶然ああなった訳じゃなく、随分と色々考えた末の結果なんですよ」

ポール「たしかあの時初めて、僕らは効果音を大々的に使ったんじゃなかったかな。馬やらニワトリやら犬やら、随分たくさんの動物が駆け回っているだろう?」

後年、ジョンはこの曲を酷評している。
ジョン「あれはまったくのゴミ!」

間奏のリード・ギターはポールが弾いている。

*レコーディング詳細
1967年
・2月8日
第1~第8テイクをレコーディング。
・2月16日
第8テイクにジョンのヴォーカルとポールのベースをオーヴァー・ダブ。第8テイクをテープ・リダクションして第9~第10テイクを作成。
第8テイクを元にモノ・ミキシングを行う。
*このミキシングはラフ・リミックスであり、マスターとしては使用していない。
・2月20日
第10テイクを元にモノ・ミキシングを行う。
*このモノ・ミキシングは未使用に終わっている。
・3月13日
第10テイクにブラス・セクションをオーヴァー・ダブ。
・3月28日
第10テイクにジョンのヴォーカルをオーヴァー・ダブ。第10テイクをテープ・リダクションして第11テイクを作成。第11テイクにポールのギター・ソロ、ジョンとポールのバック・ヴォーカルをオーヴァー・ダブ。
・3月29日
第11テイクに動物の鳴き声のサウンド・エフェクトをオーヴァー・ダブ。
・4月6日
第11テイクを元にモノ、及びステレオ・ミキシングが行われる。
*ステレオ・ミキシングは使用されるが、モノ・ミキシングは未使用に終わっている。
・4月19日
第11テイクを元にモノ・ミキシングが行われる。

● Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band (Reprise)
ポールの作品でリード・ヴォーカルもポール。

曲の途中で突然観客の笑い声が入ってくるが、ポールはこう語っている。
ポール「子供の頃、ラジオでトミー・クーパーが何も言っていないのに、会場が笑い出す瞬間があった。だから何故観客が笑ったのか判らないという場面を作ってみたくてね」

モノラル・ヴァージョンとステレオ・ヴァージョンに違いがある。
イントロでドラムスが入ってくるタイミングがモノラルの方がワン・テンポ遅い。またサウンド・エフェクトの入り方も若干異なっている。

*レコーディング詳細
1967年
・4月1日
第1~第9テイクをレコーディング。
第9テイクを元にモノ・ミキシングが行われる。
・4月20日
第9テイクを元にステレオ・ミキシングが行われる。

● A Day In The Life
ジョンとポールのそれぞれの楽曲を1つにまとめた作品。中間部をポールが、それを挟む形で前後をジョンが作っており、ジョンとポールがそれぞれ自分が作ったパートのリード・ヴォーカルを担当している。
ジョン「ある日、新聞を読んでいたら、ふと二つの記事に目が止まった。ひとつはギネス家の跡取りが交通事故で亡くなったという記事だった。ロンドンで衝突事故を起こして死んだんだ。それが1面トップだった。そして次のページを開くと、ランカシャー州ブラックバーンの道路には穴が4000個も開いているという記事があって、早急に埋めなくちゃならないと書いてあった。ポールが作ったのは『I'd love to turn you on』という、短いけれど綺麗な挿入部だよ。前々から頭の中にあったフレーズで、だけどなかなか使う機会がなかったらしい。僕もあの部分は、本当にすごいと思った」
*ギネス家の跡取りとはタラ・ブラウンのこと。1966年12月18日、愛車のロータス・エランで赤信号を突っ切り、サウス・ケンジントンの交差点に停車していたヴァンに、時速100マイル(約時速160Km)もの猛スピードで追突した。享年21歳。タラ・ブラウンはザ・ビートルズをはじめとするロック・アーティストとも親しい付き合いがあった。

タラ・ブラウンの死を伝えるデイリー・ミラー紙の記事。

ジョン「ランカシャー州のブラックバーンで4000もの穴が見つかったというくだりがあるだろう? あそこのヴァースの1語が、レコーディングに入ってもどうしても決まらなかった。『Now they know how many holes it takes to ( )to Albert Hall』までできているのに。ただのナンセンスな歌詞なんだけど、最後の動詞がどうしても思いつかないんだ。穴とアルバート・ホールに、いったいなんの関係がある? この件にケリをつけてくれたのは、実のところテリー・ドラン(ブライアン・エプスタインの友人)だった。彼が『Fill the Albert Hall (アルバート・ホールをいっぱいにする)てのはどうだい、ジョン?』といってくれたんだ」

エンジニアのジェフ・エメリック「『A Day In The Life』のジョンの歌声は、テープ・エコーで作ったものです。以前はヴォーカル・マイクの信号を、モノのテープ・レコーダーに送り込んでいました。そのテープ・レコーダーには録音用と再生用のヘッドがあったので、ヴォーカルをテープに録るときは、録音しながらその音を再生してフィード・バックすることができたんです。テープ・レコーダーの前面には、大きなポテンショメーターがあって、僕らはかすかにフィード・バックがかかるようになるまで、録音レヴェルを上げ続けました。あの小刻みに震えるヴォーカル・サウンドは、そうやって作ったんです。もちろん、ジョンは歌いながら、ヘッドフォンで自分のエコーを聞き、歌う時のリズミックな雰囲気づくりに利用していました。ヴォーカルのテープ・エコーはジョンの声ぴったりでしたね。エコーの効果がはっきり出る、鋭い声の持ち主でしたから」

曲にミドル・セクションが足りないことが判明すると、ポールは他の曲に使おうとしていて歌詞を提供した。話し合いの末、リズミックな間奏でつなぐという条件で、この歌詞を使うことが決定した。その間奏の長さを決めておくように提案したのは、ジョージ・マーティンだった。
マーティン「テンポが狂わないように、私たちはマル・エヴァンスに小節の数を数えさせた。レコードでも、ピアノのわきに立って『ワン、ツー、スリー、フォー』とカウントする彼の声が聞こえる。マルは冗談のつもりで、24小節の終わりに目覚まし時計をセットしていたが、その音も入っている。このふたつを残したのは、いくら頑張っても消せなかったからだ」

ジョンはマーティンに「(オーケストラの音を)この世の終わりのような音」まで上げて欲しいと依頼している。
マーティン「ジョンは私にどうして欲しいのか、スコアに書ける程度には説明してくれた。それと『I'd love to turn you on』のくだりでは、チェロとヴァイオリンを使ってジョンの声に呼応するふたつの音を演奏させることにした。ただし歯切れのいい音が出る運指方はやめて、その代わりに指をフレットとフレットのあいだで上下にスライドさせるように指示し、オーケストラのクライマックスの冒頭まで、徐々に激しさを増していった。クライマックスもまた難物だった。まず私は、最初の小節にそれぞれの楽器が出せる最低音を、そして最後の24小節目には、Eメジャーのコードに一番近いところで、それぞれの楽器が出せる最高音を書いた。それから24小節にわたってくねくねした線を書き、小節ごとにだいたいどの付近まで音が上がって入ればいいかを示した。隣の音に移動するときには、できるだけ優雅にスライドさせるようにという指示も出した。しかし弦楽器なら弦に指をスライドさせれたいいからそれで問題ないが、クラリネットやオーボエのようなキーのある楽器では、どうしてもキーからキーへと指を動かさなければならない。そこで彼らには、唇をうまく使って、できるだけ多く変化つけてくれと頼んだ」

ポールはマーティンとオーケストラが、変装してセッションに臨むという案を出している。
ジョンの友人のピート・ショットン「殆どが中年のいい大人だった。オーケストラのメンバーは、ひとりひとり、紙の仮面とかのパーティ・グッズを手渡された。例えばオーケストラのリーダーは真っ赤なつけ鼻を渡された。かと思えば第1ヴァイオリン奏者は、巨大なゴリラの手をわたされてしまい、それをはめたまま弓をつかむ羽目なった」「ポールが全員、調子もテンポもできるだけバラバラに外してほしいと指示すると、演奏者たちはびっくり仰天とまではいかなくても、ひどく困惑していた。何回か練習を繰り返して、オーケストラはようやくビートルズの要求にぴったりの無秩序でむちゃくちゃな音を出すことが出来た」

オーケストラ・リーダーのエリック・グルーエンバーグ「彼らは楽譜に書くのが非常にむずかしい、独特な効果を弦楽器奏者に要求したが、自分達の口で何が欲しいのかを説明してくれた。それは音の強化、あるいはピッチの上昇ともいうべきものだった。半音の渦から始まって、徐々に上がっていく螺旋コードというのがあるだろう? あの一種だ。その効果は、ある意味、個々人が勝手に演奏することで得られた。なぜならさまざまな要素のミックスこそが、この特殊な効果を生み出す鍵となっていたからだ」

ポール「他の部分はちゃんと譜面にすべきだけど、あの15小節だけは、ひとこと『最低音からはじめて、最高音で終わってくれ』と指示を与えるだけでいいんじゃないか、と僕が提案してね。その音にどう到達するかはオーケストラの一人一人に任されたけど、うまい具合にあのクレイジーなクレッシェンドになった。面白かったのは、トランペット奏者。トランペット奏者というのは基本的に酒好きで、ノンシャランなタイプが多いんだけど、あの時も他のみんなより早く、一番高い音に到達していた。その反対が弦楽器奏者だ。彼らは子羊みたいに心配そうにお互いを見て『もう少し上げるかい?』『うん。じゃ、僕もそうする』って感じで音を上げていく。そして『もうちょっと上げる?』『うん』それでまたもう少しあげる。みんな、とてもデリケートかつ慎重でね。全員が一斉に上がっているんだ。だけどあのトランペットを聞いてごらんよ。あれは本当にイカれていた」「あのオーケストラのクレッシェンドは、シュトックハンゼンとかの理論をちょっとしたヒントにしているんだ。あっちのほうがずっと抽象的だけど」

エンジニアのジェフ・エメリック「最後のオーケストラのクレッシェンドでは、慎重にフェーダーを操作し、だんだんと音量を大きくしてピークにもっていきました。あの時の僕のテクニックはちょっと心理的なものでしたね。というのも、ある点まで音量を上げると、それから少しフェーダーを戻してレヴェルを落とすというようなことをやっていたんです。そうするだけの時間的余裕があったからできたんですが、ああいうのは技術というより、やっぱりどれだけ音楽を感じられるかがポイントだと思いますね」

マーティン「最後のピアノのコードは、出来るだけ長く延ばしたかった。それで私はジェフ・エメリックに、ここはビートルズじゃない、君の腕の見せ所だぞといったんだ」

広報担当のデレク・テイラー「最後のコードは、スタジオ内でビートルズの4人とジョージ・マーティンがピアノを一斉に叩いて出した音で、3台のピアノが使われた。全員がコードを同時に、それもできるだけ強く叩く。するとその瞬間、エンジニアが音声入力のフェーダーをぐっと下げて、それから徐々に音が小さくなるにしたがって、フェーダーをゆっくり最高レヴェルまで上げる。これ1回で45秒かかるが、それを3度か4度繰り返し、ぐっと厚みのある音に重ねていったんだ。1台のピアノが終わると次のピアノといった具合に、全部のピアノで同じことを繰り返した」

マーティン「(オーケストラのシークエンスについて)私のある部分は『ちょっと好き勝手にやりすぎたんじゃないか。いくらなんでもこれじゃ限界を超えている』といい、別のある部分は『こいつはめちゃくちゃにすごい! まったく素晴らしい!』という。そこで私は全部一緒にまとめる前に、アメリカからの訪問客に『A Day In The Life』を少し聞かせてみた。そしていよいよあの部分になると、なんと彼は逆立ちをしてね。それで私の懸念はすっかり消し飛んでしまったというわけだ」「リンゴのタムタムの使い方もまた革新的だった。『A Day In The Life』ではタムタムでティンパニーのような音を出しているが、あれなんかとても個性的じゃないか」

ポール「新聞に成功した幸運な男の記事が載っていた。そしてその脇にはでっかい車の中に座っている男の写真があった。そしてジョンはその写真を見た時、ただ笑うしかなかったのさ。そう、あれはブラック・コメディなんだ。次のパートは本来まったく別の曲だった。だけど偶然、最初の部分とよくマッチしてね。実際には走ってバスに飛び乗り、一服してから授業に出るというのがどういうものかを回想してるだけなんだけど。でも僕らは『ホンモノの恍惚ソングてのを作ってやろうじゃないか』と心に決めていた。あれは学校時代の想い出だ、本当に僕はあの頃ウッドパインを吹かしてしたし、誰かの話を聞きながら、夢心地になっていたんだ。意図的にみんなを挑発しようとして書いたのは、あのアルバムだとこれしかない。でも僕らがみんなに目覚めて欲しかったのは、マリファナなんてちゃちなものじゃなくて、真実だったんだけど」「『I'd love to turn you on』という歌詞に気が付かなかったわけじゃない。『今はこれぐらいにしておこう。これ以上書くと危険だ』と思ったのをよく覚えてるよ。そしたらBBCはこの曲を放送禁止処分にしたんだ」

アメリカの作曲家、指揮者であるレナード・バーンスタイン「『A Day In The Life』の3小節がいまだにわたしを支え、わたしを若返らせ、わたしの五感と感受性を刺激する」

*レコーディング詳細
1967年
・1月19日
第1~第4テイクをレコーディング。
・1月20日
第4テイクをテープ・リダクションして第5~第7テイクを作成。第6テイクにジョンのヴォーカル、ポールのヴォーカルとベース、リンゴのドラムスをオーヴァー・ダブ。
・1月30日
第6テイクを元にモノ・ミキシングを作成。
*このミキシングはラフ・リミックスであり、マスターとしては使用していない。
・2月3日
第6テイクにポールのヴォーカルとベース、リンゴのドラムスをオーヴァー・ダブ(1月20日に行った分をボツとし、録り直しをしている)。
・2月10日
第6テイクをテープ・リダクションして第7テイクを作成。第7テイクにオーケストラをオーヴァー・ダブ。
・2月13日
第7テイクを元にモノ・ミキシングが行われる。
*このモノ・ミキシングは未使用に終わっている。
・2月22日
編集用パートの第1~第9テイクをレコーディング。
*この編集用パートには、エンディングのピアノの残響音がレコーディングされている。
第6、及び第7テイクを元にモノ、及びステレオ・ミキシングが行われる。
モノ・ミキシングによって作成されたモノ・リミックス9と編集パートのテイク9を元にテープ編集。
*モノ・ミキシングは使用されるが、ステレオ・ミキシングは未使用に終わっている。
・2月23日
第6、及び第7テイクを元にステレオ・ミキシングが行われる。
・3月1日
第6テイクにピアノをオーヴァー・ダブ。
*用途不明のオーヴァー・ダブであり、未使用に終わっている。

Magical Mystery Tour

Side A
1. Magical Mystery Tour
2. The Fool On The Hill
3. Flying
4. Blue Jay Way
5. Your Mother Should Know
6. I Am The Walrus

Side B
1. Hello, Goodbye
2. Strawberry Fields Forever
3. Penny Lane
4. Baby You're A Rich Man
5. All You Need Is Love

イギリスでは1967年12月8日に3曲入りの2枚組EPとしてリリース(全6曲収録)され、アメリカでは10日程早い11月27日にアルバムとしてリリースされている。
1987年のオリジナル・アルバムのCD化の際に、このアメリカ・キャピトル編集盤が「オリジナル・アルバム」と見做されてCD化されたので、ここでも9枚目のオリジナル・アルバムとして扱うことにする。
シングル「All You Need Is Love」「Hello Goodbye」の後にリリースされ、シングルの楽曲は全て収録されている(イギリス盤EPには「Hello Goodbye」のB面である「I Am The Walrus」以外は収録されなかった)。
アメリカ盤の構成は、A面にイギリス盤EPの6曲を収録、B面にシングル「All You Need Is Love」「Hello Goodbye」の楽曲(「I Am The Walrus」はA面に収録されている)、そして前作「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band」のリリース前のシングル「Strawberry Fields Forever/Penny Lane」(両A面シングル)の両面の楽曲を収録している。

レコーディング経過は以下の通り。

●1966年

11月24日
以下をレコーディング。
・Strawberry fields Forever

11月28日
以下をレコーディング。
・Strawberry fields Forever
以下のモノ・ミキシング。
・Strawberry fields Forever

11月29日
以下をレコーディング。
・Strawberry fields Forever
以下のモノ・ミキシング。
・Strawberry fields Forever

12月8日
以下をレコーディング。
・Strawberry fields Forever

12月9日
以下をレコーディング。
・Strawberry fields Forever
以下のモノ・ミキシング。
・Strawberry fields Forever

12月15日
以下をレコーディング。
・Strawberry fields Forever
以下のモノ・ミキシング。
・Strawberry fields Forever

12月21日
以下をレコーディング。
・Strawberry fields Forever

12月22日
以下のモノ・ミキシング。
・Strawberry fields Forever

12月29日
以下のステレオ・ミキシング。
・Strawberry fields Forever
以下のレコーディング。
・Untitled (のちの「Penny Lane」)
以下のモノ・ミキシング。
・Untitled (のちの「Penny Lane」)

12月30日
以下のレコーディング。
・Penny Lane
以下のモノ・ミキシング。
・Penny Lane

●1967年

1月4日
以下をレコーディング。
・Penny Lane

1月5日
以下をレコーディング。
・Penny Lane

1月6日
以下をレコーディング。
・Penny Lane

1月9日
以下をレコーディング。
・Penny Lane
以下のモノ・ミキシング。
・Penny Lane

1月10日
以下をレコーディング。
・Penny Lane

1月12日
以下をレコーディング。
・Penny Lane
以下のモノ・ミキシング。
・Penny Lane

1月17日
以下をレコーディング。
・Penny Lane
以下のモノ・ミキシング。
・Penny Lane

1月25日
以下のモノ・ミキシング。
・Penny Lane

2月17日
シングル「Strawberry Fields Forever/Penny Lane」リリース。

4月25日
以下をレコーディング。
・Magical Mystery Tour

4月26日
以下をレコーディング。
・Magical Mystery Tour

4月27日
以下をレコーディング。
・Magical Mystery Tour
以下のモノ・ミキシング
・Magical Mystery Tour

5月3日
以下をレコーディング。
・Magical Mystery Tour

5月4日
以下のモノ・ミキシング
・Magical Mystery Tour

5月9日
以下をレコーディング。
・Untitled
*7時間のインストゥルメンタル・ジャム・セッション。未発表。

5月11日
以下をレコーディング。
・Baby, You're A Rich Man
以下のモノ・ミキシング
・Baby, You're A Rich Man

5月12日
以下をレコーディング。
・All Together Now
以下のモノ・ミキシング。
・All Together Now
*「All Together Now」は「Magical Mystery Tour」には収録されず、アニメーションのサントラである「Yellow Submarine」に収録された。

5月17日
以下をレコーディング。
・You Know My Name (Look Up The Number)
*「You Know My Name (Look Up The Number)」は「Magical Mystery Tour」には収録されず、約3年後にリリースされたシングル「Let It Be」のB面に収録された。

5月25日
以下をレコーディング。
・Too Much (のちの「It's All Too Much」)
*「It's All Too Much」は「Magical Mystery Tour」には収録されず、アニメーションのサントラである「Yellow Submarine」に収録された。

5月31日
以下をレコーディング。
・Too Much (のちの「It's All Too Much」)

6月1日
以下をレコーディング。
・Untitled
*インストゥルメンタル・ジャム・セッション。未発表。

6月2日
以下の2曲をレコーディング。
・It's All Too Much
・Untitled
*「Untitled」はインストゥルメンタル・ジャム・セッション。未発表。

6月7日
以下をレコーディング。
・You Know My Name (Look Up The Number)

6月8日
以下をレコーディング。
・You Know My Name (Look Up The Number)

6月9日
以下のモノ・ミキシング
・You Know My Name (Look Up The Number)

6月14日
以下をレコーディング。
・All You Need Is Love
以下のモノ・ミキシング
・All You Need Is Love

6月19日
以下をレコーディング。
・All You Need Is Love

6月21日
以下のモノ・ミキシング
・All You Need Is Love

6月23日
以下をレコーディング。
・All You Need Is Love

6月24日
以下をレコーディング。
・All You Need Is Love

6月25日
以下をレコーディング。
・All You Need Is Love

6月26日
以下のモノ・ミキシング
・All You Need Is Love

7月7日
シングル「All You Need Is Love/Baby, You're A Rich Man」リリース

8月22日
以下をレコーディング。
・Your Mother Should Know

8月23日
以下をレコーディング。
・Your Mother Should Know

9月5日
以下をレコーディング。
・I Am The Walrus

9月6日
以下の3曲をレコーディング。
・I Am The Walrus
・The Fool On The Hill
・Blue Jay Way
以下のモノ・ミキシング。
・I Am The Walrus

9月7日
以下をレコーディング。
・Blue Jay Way

9月8日
以下をレコーディング。
・Aerial Tour Instrumental (のちの「Flying」)
以下のモノ・ミキシング。
・Aerial Tour Instrumental (のちの「Flying」)

9月16日
以下をレコーディング。
・Your Mother Should Know
以下のモノ・ミキシング。
・Blue Jay Way

9月25日
以下をレコーディング。
・The Fool On The Hill
以下のモノ・ミキシング。
・The Fool On The Hill

9月26日
以下をレコーディング。
・The Fool On The Hill

9月27日
以下の2曲をレコーディング。
・I Am The Walrus
・The Fool On The Hill
以下のモノ・ミキシング。
・The Fool On The Hill

9月28日
以下の2曲をレコーディング。
・I Am The Walrus
・Aerial Tour Instrumental (のちの「Flying」)
以下の2曲のモノ・ミキシング。
・I Am The Walrus
・Aerial Tour Instrumental (のちの「Flying」)

9月29日
以下をレコーディング。
・Your Mother Should Know
以下の2曲のモノ・ミキシング。
・I Am The Walrus
・Your Mother Should Know

10月2日
以下のモノ・ミキシング。
・Your Mother Should Know
以下をレコーディング。
・Hello Hello (のちの「Hello Goodbye」)

10月6日
以下をレコーディング。
・Blue Jay Way

10月12日
以下の2曲のモノ・ミキシング。
・It's All Too Much
・Blue Jay Way
*「It's All Too Much」は「Magical Mystery Tour」には収録されず、アニメーションのサントラである「Yellow Submarine」に収録された。
以下をレコーディング。
・Accordion (Wild) (のちの「Shirley's Wild Accordion」)
以下のモノ・ミキシング。
・Accordion (Wild) (のちの「Shirley's Wild Accordion」)
*「Accordion (Wild) (のちの『Shirley's Wild Accordion』)」はレコード等でのリリースはなし。映画「Magical Mystery Tour」の中の挿入歌として使用された。

10月19日
以下をレコーディング。
・Hello Hello (のちの「Hello Goodbye」)

10月20日
以下の2曲をレコーディング。
・The Fool On The Hill
・Hello Hello (のちの「Hello Goodbye」)

10月25日
以下のモノ・ミキシング。
・The Fool On The Hill
以下をレコーディング。
・Hello Hello (のちの「Hello Goodbye」)

11月1日
以下の2曲のモノ・ミキシング。
・All You Need Is Love
・Lucy In The Sky With Diamonds
*アニメーション映画「Yellow Submarine」のサントラ盤用の作業。ただし収録はされなかった。
以下の2曲をレコーディング。
・Untitled Sound Effects
・Hello Goodbye
*「Untitled Sound Effects」はアニメーション映画「Yellow Submarine」用の作業。
以下のステレオ・ミキシング。
・The Fool On The Hill

11月2日
以下をレコーディング。
・Hello Goodbye
以下のモノ・ミキシング。
・Hello Goodbye

11月6日
以下の4曲のステレオ・ミキシング。
・Hello Goodbye
・I Am The Walrus
・Your Mother Should Know
・Magical Mystery Tour

11月7日
以下をレコーディング。
・Magical Mystery Tour
以下の3曲のステレオ・ミキシング。
・Blue Jay Way
・Flying
・Magical Mystery Tour
以下のモノ・ミキシング。
・Blue Jay Way
・Magical Mystery Tour

11月15日
以下のモノ・ミキシング。
・Hello Goodbye

11月17日
以下のステレオ・ミキシング。
・I Am The Walrus

11月24日
シングル「Hello Goodbye/I Am The Walrus」リリース。

11月27日
アルバム「Magical Mystery Tour」アメリカでリリース。

11月28日
ファンクラブ向けの「Christmas Time (Is Here Again)」をレコーディング。

12月8日
2枚組EP「Magical Mystery Tour」イギリスでリリース。

ジャケットは動物の着ぐるみを被ったメンバーの写真が使用されている。前面のセイウチがジョン、後方向かって左のカバがポール、中央のウサギがジョージ、右のトリがリンゴになる。華やかな印象のジャケットではあるが、今までのザ・ビートルズのジャケットにあったようなアート性には乏しい。

イギリスでのアルバム・リリースはなく、3曲入り2枚組EPという変則的な仕様でリリースされた。アメリカではイギリス盤EP収録の6曲をA面に、既発のシングル3枚をB面に収録した独自の編集盤でリリースされた。
前作「Sgt. Pepper's ~」リリース時に「同一ジャケットで同一内容のアルバムを全世界でリリースすること」という内容が契約書に明記されたが、これは「イギリス・オリジナル・アルバム」に準ずる規則であり、今回はイギリス・オリジナル・アルバムのリリースではなかったため、このようなアメリカ独自編集が可能になったと思われる。
このアメリカ編集盤はイギリスで好評で輸入盤としてかなりのセールスを収め、1976年11月19日にはイギリス国内盤としてリリースされた。1987年のCD化の際にはイギリス盤公式オリジナル・アルバムと同等に扱われ、2009年9月9日のデジタル・リマスター時には正式にオリジナル・アルバムとして認められている。

日本盤はイギリス・オリジナル盤の2枚組EPと、アメリカ仕様によるアルバムがリリースされたが、どちらもモノラルではなくステレオであった。モノラル盤のEPは1982年8月1日リリースの「ザ・ビートルズEPコレクション」で国内初リリースとなる(ステレオとモノラルの両方が収納されている)。アメリカ編集盤と同仕様によるアナログ・アルバムのモノラル盤は1982年1月21日にオリジナル・モノ・シリーズとして限定リイシューされたのが初めてになる。

イギリスのメロディ・メーカー誌のチャートでは、EPチャートにおいて1967年12月16日に17位に初登場。翌1968年1月13日に1位に輝いている。

アメリカのビルボード誌のチャートでは、1967年12月23日に157位に初登場。翌1968年1月6日に1位に輝くと、その後2月24日まで8週間1位に君臨していた。

ザ・ビートルズ主演によるテレビ番組「Magical Mystery Tour」のサントラ盤。ポールのアイディアによるこのテレビ番組は、マネージャーであったブライアン・エプスタインの死後初となるプロジェクトであった。
ザ・ビートルズのメンバーとその関係者がサイケデリックに色取りされたバスに乗り込んで、予測できない旅に出る、というコンセプトであったが、脚本もプロの監督もいない状況での撮影であり、まとまりに欠けた作品になっている。評判も悪く、イギリスでは放映されたものの、アメリカでの公式のテレビ放映は1976年までなかった。

日本では1968年9月28日に武道館で初上映、同年10月6日にはTBS系列で「ビートルズの不思議な旅」のタイトルで放映されたが、音と映像にズレが生じるミスが発生したため、10日に急遽再放送されている。

ポールのこのアイディアには元ネタがあり、ポールが子供の頃に参加した運転手だけが行き先を知っている「ミステリー・ツアー」という催しに参加した時の思い出、及びアメリカのサイケデリック集団「メリー・プランクスターズ」が行ったアメリカ横断バス・ツアーがそれである。「メリー・プランクスターズ」のリーダーは映画「カッコーの巣の上で」の監督でもあるケン・キージー。このアメリカ横断バス・ツアーとは「FURTHUR号」と呼ばれているサイケデリックに塗装されたバスに乗り込み、まだアメリカでは合法だったLSDをやりながら全米各地を回り、道中の出来事を撮影するというものだった。

アルバムのA面に収録されている6曲はテレビ番組内で使用されている。ジャケットの着ぐるみを被ったメンバ-による「I Am The Walrus」を演奏するシーンや、ダンス・ホールでの「Your Mother Should Know」のシーン、詞の内容を映像化したような「The Fool On The Hill」のシーンなどを現在の視点で見直すと、MTVの元祖と言えなくもない映像が見られる。

映画に関してジョンは「かつてないほど高価なホーム・ムーヴィー」と批判している。

B面に収録された5曲は直近にリリースされた3枚のシングル「Strawberry Fields Forever/Penny Lane」「All You Need Is Love/Baby, You're A Rich Man」「hello Goodbye/I Am The Walrus」から構成されているが、「I Am The Walrus」はテレビ番組内で使用されたため、A面に収録されている(「Hello Goodbye」は番組のエンディング・クレジットで使用されている)。

アメリカでモノラルとステレオの両タイプがリリースされた最後のアルバムであり、次作「The Beatles」以降はアメリカではステレオ盤のみのリリースであった。

映像作品としてはあまり評価はされなかったが、ポールの「The Fool On The Hill」やジョンの「I Am The Walrus」、「Strawberry Fields Forever/Penny Lane」の超強力なシングル曲が収録されているなど、音楽的には非常に優れた内容を持つ一枚である。

ジョージは「この頃のポールは、誰かが何かをやらなくちゃならない、と思っていたんだ。でも僕は本当に参加していたとは言えない。僕はおまけだったんだ。でも一つだけいいことがあった。あれで僕らには仕事ができた。ポールが全員を引っ張ってくれたんだ。」と語っている。

ジョンは「僕はまだ感覚がおかしかったんだ。ブライアンが『そろそろレコードを作ろう』って言いに来るような気がしてたんだ。でも代わりにポールがそれをやり始めた。『さあレコードを作ろう。さあ映画を作ろう』ってね。ポールは自分が声をかけなきゃ、きっと誰もレコードを作ろうとしないと思っていたんだろうな」と語っている。

またジョンは「ポールは突然やってきたかと思うと『10曲書けたよ。今すぐ録音しよう』というようなところがあった。そうすると僕は『数日くれよ。何曲か書くから』と言うしかない。あいつは『Magical Mystery Tour』の構想をマル・エヴァンスと練った。そして後になって『これが僕のアイディアだ。こういうストーリーだ』と僕らに報告した。でもその時にはプロダクションも何もかも、すべて出来上がってたんだ。ジョージと僕は『くそったれ映画め。ま、でもやらなきゃならないんだろうな』と不満たらたらだった」と語っている。

収録曲概説

● Magical Mystery Tour
ポールの作品でリード・ヴォーカルもポール。ジョンが作詞を手伝っている。
ポール「ドラッグのトリップのことだよ。『Roll Up』には『ジョイントを巻く』という意味も掛けられるしね。ドラッグやトリップを暗示する言葉にもこだわったんだ」
ジョン「ポールが書いた。僕は作詞の一部を手伝っただけ」

モノラルとステレオではサウンド・エフェクトなどに微妙な違いがある。
2番に入るバスの音が、ステレオでは走る音に続いてブレーキ音、そして再び走る音が入っているが、モノラルでは最初の走る音のみしか入っていない。
簡素後の「Now」のパートで、ステレオではトランペットが8拍分入っているが、モノラルでは5拍分しか入っていない。
サビとエンディングの「The magical mistery tour is~」の歌声が、モノラルにははっきりとエコーがかけられているが、ステレオにはかけられていない。

*レコーディング詳細
1967年
・4月25日
第1~第3テイクをレコーディング。第3テイクをテープ・リダクションして、第4~第8テイクを作成。
・4月26日
第8テイクにポールのベース、メンバー全員とニール・アスピノール、マル・エヴァンスによるパーカッション、ジョン、ポール、ジョージによるバック・ヴォーカルをオーヴァー・ダブ。第8テイクをテープ・リダクションして第9テイクを作成。
・4月27日
第9テイクにポールのヴォーカル、ジョンとジョージのバック・ヴォーカルをオーヴァー・ダブ。
第9テイクを元にモノ・ミキシングが行われる。
*このモノ・ミキシングはアセテート盤作成のための作業。アセテート盤とはメンバーやスタッフのために作成されるテスト盤のこと。
・5月3日
第9テイクにブラス・セクションをオーヴァー・ダブ。
・5月4日
第9テイクを元にモノ・ミキシングが行われる。
*このモノ・ミキシングは未使用に終わっている。
・11月6日
第9テイクを元にステレオ・ミキシングが行われる。
・11月7日
第9テイクにポールのヴォーカルとサウンド・エフェクトをオーヴァー・ダブ。
第9テイクを元にモノ・ミキシングが行われる。

● The Fool On The Hill
ポールの作品でリード・ヴォーカルもポール。
ポール「マハリシのような人物を想起したと思う。『Perfectly still』の部分がいいね。
*マハリシとは、ヒンドゥー教に由来する超越瞑想]とその普及を行う諸団体の創立者「マハリシ・マヘーシュ・ヨーギー」のこと。ザ・ビートルズのメンバーは彼に会うためにインドに出向くが、「The Fool On The Hill」をリリースした時点ではまだマハリシとの接触は行われていない。よって上記のポールの発言は後付けということになる。
ジョン「これもいい詞だ。ポールには完璧な曲を書く能力があるってことさ」

*レコーディング詳細
1967年
・9月6日
第1テイクをレコーディング。
*この日はデモ・レコーディング。
・9月25日
第1~第3テイクをレコーディング。第3テイクをテープ・リダクションして第4テイクを作成。第4テイクにポールのヴォーカルとリコーダー、リンゴのドラムスをオーヴァー・ダブ。
第4テイクを元にモノ・ミキシングが行われる。
*このモノ・ミキシングはアセテート盤作成のための作業。アセテート盤とはメンバーやスタッフのために作成されるテスト盤のこと。
・9月26日
第4テイクをテープ・リダクションして第5テイクを作成。第5テイクにオーヴァー・ダブ。第5テイクをテープ・リダクションして第6テイクを作成。第6テイクにオーヴァー・ダブ。
*オーヴァー・ダブの詳細は不明だが、ピアノ、アコースティック・ギター、ドラムス、ベース、ポールのヴォーカルが「録り直し」されている)。
・9月27日
第6テイクよりモノ・ミキシングが行われる。
*このモノ・ミキシングは未使用に終わっている。
・10月20日
第6テイクにフルートをオーヴァー・ダブ。
・10月25日
第6テイクを元にモノ・ミキシング。
・11月1日
第6テイクを元にステレオ・ミキシング。

● Flying
メンバー4人全員が作曲にクレジットされた楽曲で、ハンブルク時代に録音された「Cry For A Shadow」や、解散後にリリースされた「Anthology 2」に収録された「12-Bar Original」を例外とすれば、唯一のインストゥルメンタル曲である(「Revolution 9」をインストゥルメンタル曲とカウントすれば話は変わってくるが)。
ポール「インストゥルメンタルが必要で、僕がメロディを書いた。で、メロトロンをトロンボーンの音色にセットして演奏した。歌のない曲のクレジットは4人全員の作品になるんだよ」
*モノラルとステレオの違いとして、コーラスが入ってくる前の12小節に、ステレオではマラカスが入っており、モノラルでは入っていない、と記述されている書籍があるが、私(著者)が聞いて確認したところ、どちらにもマラカスの音は入っているように聞こえる。

*レコーディング詳細
1967年
・9月8日
第1~第6テイクをレコーディング。第6テイクをテープ・リダクションして第7~第8テイクを作成。第8テイクにメロトロンをオーヴァー・ダブ。
・9月28日
第8テイクにメロトロン、ギター、パーカッションをオーヴァー・ダブ。テープ・ループや逆回転のオーヴァー・ダブを5テイクレコーディング。オーヴァー・ダブの第5テイクを通常の第8テイクにオーヴァー・ダブ。
第8テイクを元にモノ・ミキシングが行われる。
・11月7日
第8テイクを元にステレオ・ミキシングが行われる。

● Blue Jay Way
ジョージの作品でリード・ヴォーカルもジョージ。
ジョージはロス・アンジェルス・ハリウッド・ヒルズの「ブルー・ジェイ通り」にある借家で妻のパティと共に、友人(ザ・ビートルズの広報担当)のデレク・テイラーの到着を待っている間にこの曲を作っている。
ジョージ「テレクは遅れていた。電話してきて遅くなるというので、僕は『家はブルー・ジェイ通りだ』というと、彼は『大丈夫、見つけられるよ。いつでもおまわりに聞けるから』と答えた。僕はずっと待っていた。時差ボケで本当にぐったりしていたけれど、彼が来るまで寝ないつもりだった。霧が出てきて、夜も更けていった。それで目を覚ましておくために、ちょっとした時間つぶしのジョークのつもりで、ブルー・ジェイ通りで彼を待っていることを歌にしたんだ。最初は気が付かなかったけど、その借家の隅っこに小さなハモンド・オルガンがあって、そいつをいじくっているうちに曲ができた」「EとFを同時に弾くという変わった曲でね。『I Want To Tell You』や『She's So Heavy(I Want You (She's So Heavy)のことと思われる)』と同じようにね」

モノラルとステレオではサウンド・エフェクトの有無に違いがある。
ステレオには、コーラスを逆回転させたようなサウンド・エフェクトが随所に入っているが、モノラルには入っていない。

1967年
・9月6日
第1テイクをレコーディング。
・9月7日
第1テイクをテープ・リダクションして第2テイクを作成。第2テイクにオーヴァー・ダブ。第2テイクをテープ・リダクションして第3テイクを作成。第3テイクにオーヴァー・ダブ。
*オーヴァー・ダブの詳細は不明だが、オルガン、ジョージのヴォーカル、ジョンとポールのバック・ヴォーカルがオーヴァー・ダブされている。
・9月16日
第3テイクを元にモノ・ミキシングが行われる。
*このモノ・ミキシングは未使用に終わっている。
・10月6日
第3テイクにチェロとタンバリンをオーヴァー・ダブ。
・10月12日
第3テイクを元にモノ・ミキシングが行われる。
・11月7日
第3テイクを元にステレオ・ミキシングが行われる。

● Your Mother Should Know
ポールの作品でリード・ヴォーカルもポール。
ポール「母と子が簡単に憎みあうようになる。だから世代間の平和な関係を訴えたんだ」
ジョン「誰って? ポールに決まってるさ」

モノラルとステレオではドラムスのハイハットの音に違いがある。
モノラルではハイハットにフランジング効果が施されているが、ステレオには施されていない。
*フランジング効果:一つの音を微妙に遅らせて元の音と被せることにより、うねるような効果を生み出す方法。

*レコーディング詳細
1967年
・8月22日
第1~第8テイクをレコーディング。
・8月23日
第8テイクをテープ・リダクションして第9テイクを作成。第9テイクにオーヴァー・ダブ。
*オーヴァー・ダブの詳細は不明。
*この日はマネージャー、ブライアン・エプスタイン生前最後のレコーディング・セッションとなってしまった。
・9月16日
第20~第30テイクをレコーディング。
*リメイクのためテイク番号を繰り上げている。
・9月29日
8月23日に作成された第9テイクをテープ・リダクションして第50~第52テイクを作成(テイク番号を繰り上げている)。第52テイクにジョンのオルガンとポールのベースをオーヴァー・ダブ。
第52テイクを元にモノ・ミキシングが行われる。
*このモノ・ミキシングは未使用に終わっている。
・10月2日
第52テイクを元にモノ・ミキシングが行われる。
・11月6日
第52テイクを元にステレオ・ミキシングが行われる。

● I Am The Walrus
ジョンの作品でリード・ヴォーカルもジョン。
ジョン「詞の1行目はある週末にアシッドでトリップしているときに書いた。2行目はその次の週末のアシッ・トリップで、そしてヨーコに出会って全部埋まった。セイウチ(walrus)は『セイウチと大工』からきている。『不思議の国のアリス』のね。僕にとっては美しい詞だったのさ。あとで僕はお話の中のセイウチは悪いやつで、大工がいいやつだってことに気付いた。思ったね、あぁ、クソ、間違ったやつを取り上げちまった。『I Am The Carpenter(僕は大工)』にするべきだった、って。だけど、それじゃ全然違ってたんじゃないかな」「この曲は好きだな。ハレ・クリシュナとかに入れあげてた時代の曲さ。以来、そういうのはやってないけど」

バック・ヴォーカルの「Everybody's got one (誰にでもひとつはある)について。
ジョン「なんとでもいえばいいのさ。ひとつのペニスとでも、ひとつのヴァギナとでも、ひとつのケツの穴とでも。なんだってかまわないよ」

ジョンの友人、ピート・ショットンによると、この曲の起源は、彼とジョンが母校のクォリー・バンクの学生からきたファンレターを読んだときにさかのぼる。手紙には、学校の国語の授業でビートルズの曲を分析しているとあり、彼らをいたく喜ばせた。この手紙がきっかけで、彼らは在学中によく歌っていた歌を思い出した。「Yellow matter custard, green slop pie. All mixed together with a dead dog's eye (黄色い膿みたいなカスタード、緑はグチャグチャのパイ、死んだ犬の目ん玉も全部混ぜろ)」。
ショットンによると、ジョンはその時「Yellow matter custard dripping from a dead dog's eye (黄色い膿みたいなカスタード、死んだ犬の目から滴り落ちる)」のくだりと殴り書きした。それからジョンはこれまでで最高にばかげたイメージ「semolina (パサパサのプディング)」、「pilchard (通常は猫の餌になるイワシ)」を思いつき、その結果が「Semolina Pilchard climbing up the Eiffel Tower (セモリナ粉のイワシがエッフェル塔に上がっていく)」となる。これはみんな母校の教師たちを混乱させようとしてのことだった。

ポール「『sitting on a cornflake』なんて、かなり混乱した状態の歌詞だよね」

この曲のリズムのインスピレーションになったのは、ジョンが家にいるときに遠くから聞こえてきたパトカーの甲高いサイレンの音だった。そのサイレンは上がったり下がったりするふたつの音の繰り返しだった。

ザ・ビートルズの楽曲の中でも、最も異なるヴァージョンが存在する曲になっている。以下、そのヴァージョンが収録されているソフトと共に簡単に列挙してみる。

A)イントロのメロトロンのリフが4回。
・イギリス盤モノラルEP
・イギリス盤アナログ・シングル
・アメリカ盤モノラルLP
・アメリカ盤ステレオLP
・アメリカ盤「1967-1970」LP
・アメリカ盤アナログ・シングル
・CDシングル
・「The Beatles Compact Disc EP Collection」(4回と6回の両方を収録)
・2009年リリースのモノラルCD
・ヴィデオ「Magical Mystery Tour」

B)イントロのメロトロンのリフが6回。
・ステレオEP
・イギリス盤「1967-1970」LP
・アメリカ盤「Rarities」LP
・「1967-1970」CD
・「The Beatles Compact Disc EP Collection」(4回と6回の両方を収録)
・旧CD
・2009年リリースのステレオCD
・ドイツ盤LP
・「The Beatles Box (リヴァプールより愛を込めて ザ・ビートルズ・ボックス)」LP

C)1回目の「I'm crying」の後にハイハットとスネアとタンバリンが聞こえる。
・ステレオEP
・イギリス盤「1967-1970」LP
・「1967-1970」CD
・「The Beatles Compact Disc EP Collection」
・旧CD
・2009年リリースのステレオCD
・アメリカ盤ステレオLP
・アメリカ盤「1967-1970」LP
・ドイツ盤LP
・アメリカ盤「Rarities」LP
・「The Beatles Compact Disc EP Collection」(殆ど聞こえないヴァージョンの収録)
・ヴィデオ「Magical Mystery Tour」

D)1回目の「I'm crying」の後にハイハットとスネアとタンバリンが殆ど聞こえない。
・イギリス盤モノラルEP
・イギリス盤アナログ・シングル
・アメリカ盤モノラルLP
・アメリカ盤アナログ・シングル
・CDシングル
・「The Beatles Compact Disc EP Collection」(聞こえるヴァージョンも収録)
・2009年リリースのモノラルCD

E)2回目の「I'm crying」の後にベース、ドラムス、タンバリンが聞こえる。
・ステレオEP
・イギリス盤「1967-1970」LP
・「1967-1970」CD
・「The Beatles Compact Disc EP Collection」(全てカットのヴァージョンも収録)
・2009年リリースのステレオCD
・旧CD
・アメリカ盤「Rarities」LP
・「The Beatles Box (リヴァプールより愛を込めて ザ・ビートルズ・ボックス)」LP
・ヴィデオ「Magical Mystery Tour」

F)2回目の「I'm crying」の後、左チャンネルのドラムとタンバリンがカットされ、中央のベースとドラムのみが入っている。
・アメリカ盤ステレオLP
・アメリカ盤「1967-1970」LP
・ドイツ盤LP

G)2回目の「I'm crying」の後のベース、ドラムス、タンバリンが全てカットされている。
・イギリス盤モノラルEP
・イギリス盤アナログ・シングル
・アメリカ盤モノラルLP
・アメリカ盤アナログ・シングル
・CDシングル
・「The Beatles Compact Disc EP Collection」(全て聞こえるヴァージョンも収録)
・2009年リリースのモノラルCD

H)「Yellow matter custard」の前に1小節の間奏が入る。
・アメリカ盤アナログ・シングル
・アメリカ盤「Rarities」LP
・「The Beatles Box (リヴァプールより愛を込めて ザ・ビートルズ・ボックス)」LP

I)「Yellow matter custard」の前に1小節の間奏が入らない。
・イギリス盤モノラルEP
・イギリス盤アナログ・シングル
・アメリカ盤モノラルLP
・アメリカ盤ステレオLP
・イギリス盤「1967-1970」LP
・アメリカ盤「1967-1970」LP
・CDシングル
・「The Beatles Compact Disc EP Collection」
・「1967-1970」CD
・2009年リリースのモノラルCD
・2009年リリースのステレオCD
・旧CD
・ステレオEP
・ドイツ盤LP
・ヴィデオ「Magical Mystery Tour」

上記の全ヴァージョンを入手しようとした場合、2009年リリースのモノラル、ステレオの両CDを購入すると、「A)B)C)D)E)G)I)」のヴァージョンは揃う。残念ながら「F)H)」に関しては現行リリースされているCDでは入手不可であり、アナログで揃える必要が出てくる。

*レコーディング詳細
1967年
・9月5日
第1~第16テイクをレコーディング。
・9月6日
第16テイクをテープ・リダクションして第17テイクを作成。第17テイクにジョンのヴォーカル、ポールのベース、リンゴのドラムスをオーヴァー・ダブ。
第17テイクを元にモノ・ミキシングが行われる。
*このモノ・ミキシングはアセテート盤作成のための作業。アセテート盤とはメンバーやスタッフのために作成されるテスト盤のこと。
・9月27日
第17テイクをテープ・リダクションしてオーヴァー・ダブを加え、第18~第24テイクを作成。第20テイクをテープ・リダクションして第25テイクを作成。第25テイクにオーヴァー・ダブ。
*オーヴァー・ダブの詳細は不明だが、ヴァイオリン、チェロ、コントラバス・クラリネット、ホルン、16声の合唱がオーヴァー・ダブされている。
・9月28日
第25テイクをテープ・リダクションして、これを第17テイクにオーヴァー・ダブ。
第17テイクを元にモノ・ミキシングが行われる。
*このモノ・ミキシングは未使用に終わっている。
・9月29日
第17テイクを元にモノ・ミキシングが行われる。全部で17通りのリミックスを作成、そのうちモノ・リミックス10とモノ・リミックス22を編集、更にラジオから録った音声をオーヴァー・ダブして、モノ・リミックス23を作成。
・11月6日
第17テイク、及びモノ・リミックス22を元にステレオ・ミキシングが行われる。
*このステレオ・ミキシングは未使用に終わっている。
・11月17日
第17テイクを元にステレオ・ミキシングが行われる。

● Hello, Goodbye
ポールの作品でリード・ヴォーカルもポール。
ポール「最後のタムタムに思い切りエコーをかけたら曲が生きたね」

ジョンはこの曲を嫌っていた。この曲がシングルのA面となり、自作の「I Am The Walrus」がB面に追いやられてしまったのが一因である。ただしエンディングだけは認めている。
ジョン「全然大した曲じゃない。いいのはみんながスタジオでアドリブをやっている最後のところだけだ」「エンディングが抜群だ。お気に入りの『Ticket To Ride』とおなじようにね」

*レコーディング詳細
1967年
・10月2日
第1~第14テイクをレコーディング。第14テイクをテープ・リダクションして第15~第16テイクを作成。
・10月19日
第16テイクに2本のギター、ポールのヴォーカル、ジョンとジョージのバック・ヴォーカルをオーヴァー・ダブ。第16テイクをテープ・リダクションして第17テイクを作成。
・10月20日
第17テイクにヴィオラをオーヴァー・ダブ。
・10月25日
第17テイクをテープ・リダクションして第18~第21テイクを作成。第21テイクにポールのベースをオーヴァー・ダブ。
・11月1日
第21テイクをテープ・リダクションして第22~第25テイクを作成。
・11月2日
第22テイクにポールのセカンド・ベースをオーヴァー・ダブ。
第22テイクを元にモノ・ミキシングが行われる。
・11月6日
第22テイクを元にステレオ・ミキシングが行われる。
・11月15日
第22テイクを元にモノ・ミキシングが行われる。
*第22テイクからヴィオラを削除。
この処理はプロモーション・フィルム上にヴィオラ奏者が登場しないため、当時のイギリスのミュージシャンズユニオンによる『テレビでの疑似演奏禁止』という規定に引っかかる可能性が非常に高かったため、削除を行った。
よって、「Hello, Goodbye」のプロモーション・ヴィデオにはヴィオラの音は収録されていない。
いずれにしてもこのプロモーション・フィルムは「ポールが口をパクパクさせているだけで実際にはうたっていない」という理由で、BBCでは放送禁止処分になっている。

● Strawberry Fields Forever
ジョンの作品でリード・ヴォーカルもジョン。
「Strawberry Field」とは、ジョンが幼い頃に育ったミミ伯母さんの家の近くにあった、救世軍(プロテスタント系の社会事業団体)の孤児院の名前であり、「Strawberry Fields」と複数形になると、その建物や回りの木立なとを含む一帯のことを指す。2005年に孤児院の役目は終了、現在は修道施設になっている。

ジョンにとって、ビートルズの全作品の中で「正直な」曲と言えるのは「Help!」とこの「Strawberry Fields Forever」だけだと語ったことがある。
ジョン「この曲で僕が表現したかった思いは……なんていえばいいのかな、つまり僕はある面、いつもヒップな人間だったってこと。幼稚園の時もそうだった。他のみんなとは違っていた。生まれたときからずっと違っていたんだ。2番の歌詞に『No one I think is in my tree (僕の木には誰もいないみたいだ)』とある。そう、僕は恥ずかしがり屋で、自分を疑ってかかっていた。誰も僕をヒップじゃないみたいだってことをいってたんだ。つまり僕は狂人か天才のどっちかだったのさ。次に『I mean it must be high or low (きっと高すぎるか、低すぎるんだろう)』ってくだりがあるだろ。きっと自分に何か問題があるからだと思っていた。何故って他の人間には見えないものが、僕には見える気がしたんだ。とうとう狂ってしまったか、異常なうぬぼれやなんだと思ったね。人には見えないものが見えるんだから」

この曲はキーもテンポも異なる二つのヴァージョンをピッチ調整することにより一つにまとめる、という経過をたどって完成した曲である。
マーティン「あの年(1966年)の11月にジョンがスタジオに入ってきて、私たちはいつもの仕事に取り掛かった。私は高いスツールに座り、かたわらにはポールが立っていた。そしてジョンが私たちの前に立ち、アコースティック・ギターの弾き語りで『Strawberry Fields Forever』を歌った。文句なしにステキな曲だった。それからリンゴのドラムスと、ポールとジョージのベースとエレクトリック・ギターを入れてやってみた。するとだんだんヘヴィーになり、もはや最初に訊いたときの優しい曲ではなくなってしまっていた。結局最後に出来上がったのは、とても強力なヘヴィー・ロックのレコードだった」
その1週間後に、ジョンは新しいアレンジでレコーディングをやり直したいといいだした。彼とマーティンは、チェロとトランペットを使うことにした。マーティンがスコアを書き上げ、ビートルズは再度この曲をレコーディングする。マーティンはこのヴァージョンに満足したが、ジョンは最初のヴァージョンの冒頭部と、2番目の後半部の両方を気に入り、マーティンにこのふたつをくっつけてくれと頼んだ。マーティンは彼に、これらのヴァージョンはテンポが異なり、キーも半音違うことを指摘した。
しかし、マーティンはふたつのヴァージョンを聞き直し、そのふたつのテンポの違いは、キートおよそ反比例していることに気が付く。ゆっくりしたヴァージョンの速度を上げ、もう片方の速度を落とせば、キーの違いが相殺されることになる。こうしてマーティンはふたつのファージョンを、速度調整が可能なテープ・レコーダーを使用してつなぎ合わせたのだ。

つなぎ目は曲の開始から約60秒後、2度目の「Let me take you down. 'Cause I'm going to Strawberry Fields」の「'Cause I'm」と「going to 」の間である。

曲のエンディングでジョンが「cranberry sauce (クランベリー・ソース)」とつぶやいているが、これが「I buried Paul (僕がポールを埋葬した)」に聞こえると話題になり、ポール死亡説の一因とされた。
ポール「『I buried Paul』だなんて、ぜったにそんなことはないよ。ジョンがいっているのは『cranberry sauce』さ。あれはジョンお得意のユーモアなんだ。ジョンはよく突拍子もない『cranberry sauce』のような言葉を口にするんだ。ジョンが気まぐれに『cranberry sauce』といいだしかねない男だって知らずに、いきなりああいう変な言葉を耳にすると、みんなははぁん、ってなるんだろうな」

*レコーディング詳細
1966年
・11月24日
第1テイクをレコーディング。
・11月28日
第2~第4テイクをレコーディング。
第4テイクを元にモノ・ミキシングが行われる。
*このモノ・ミキシングはアセテート盤作成のための作業。アセテート盤とはメンバーやスタッフのために作成されるテスト盤のこと。
・11月29日
第5~愛6テイクをレコーディング。第6テイクをテープ・リダクションして第7テイクを作成。第7テイクのジョンのヴォーカルをADT処理し、ピアノとベースをオーヴァー・ダブ。
*ADT:Artificial Double Trackingの略。人工的にダブル・トラックングの効果を作り出すシステム。
・12月8日
第9~第24テイクをレコーディング(第8テイク、及び第19テイクは欠落している)。
・12月9日
第15、及び第24テイクをテープ・リダクションして第25テイクを作成。第25テイクにリンゴのドラムスとパーカッション、ジョージのソードマンテル(インドの楽器)をオーヴァー・ダブ。アセテート盤作成のために、第25テイクを元にモノ・ミキシング。その後、第25テイクに逆回転のシンバルをオーヴァー・ダブ。
・12月15日
第25テイクにトランペットとチェロをオーヴァー・ダブ。第25テイクをテープ・リダクションして第26テイクを作成。第26テイクにジョンのヴォーカルと「Cranberry souce」というつぶやきをオーヴァー・ダブ。
第25テイクを元にモノ・ミキシングが行われる。
*このモノ・ミキシングは未使用に終わっている。
・12月21日
第26テイクにジョンのヴォーカルとピアノをオーヴァー・ダブ。
・12月22日
第7テイクよりモノ・ミキシングでリミックス10を、第26テイクよりモノ・ミキシングでリミックス11を作成。キーもテンポも異なるこの2つのリミックスをピッチを微調整することで繋ぎ合わせモノ・リミックス12を作成、これがマスターとして使用される。
・12月29日
第7テイクよりステレオ・ミキシングでリミックス1を、第26テイクよりステレオ・ミキシングでリミックス2、及びリミックス4を作成。ステレオ・リミックス1とステレオ・リミックス4を編集し、ステレオ・リミックス5を作成。これがマスターとして使用される。

● Penny Lane
ポールの作品でリード・ヴォーカルもポール。
ポール「『Penny Lane』はリヴァプールのバス・ロータリーがある通りの名前で、そこには床屋があり、角には銀行がある。だから車に乗った銀行員のくだりを入れてみたんだ。事実を書いた部分もあるし、あの通りに対するノスタルジアのようなところもある。素敵なところだからね。郊外に広がる青空とか、今もそのままなんだ」

マーティンによると「ファンタスティックな高音のトランペットを使う」というアイディアは、ポールがバッハの「ブランデンブルク協奏曲」を聞いていて思いついた。ピッコロ・トランペットが使用されており、これは普通のトランペットよりオクターブ高い音がでる。
マーティン「私たちはトランペット用の譜面を何ひとつ用意していなかった。甲高い音を入れたいということだけで。その音を入れたい箇所ごとに、ポールが欲しいメロディを考え、私が(トランペット奏者の)デイヴィッド(メイスン)のために楽譜にしていったんだ」

歌詞の中には卑猥なスラングを意図的に使った箇所がある。ひとつは「finger pie」で、これは女性に関するリヴァプールの古い卑語。もうひとつは消防士が「keeps his fire engine clean (自分の消防車を磨いておく)」という「男性自身」を暗示した箇所である。
ポール「ジョークを1,、2か所入れたんだ。『Four of fish and finger pie (フィッシュ&フィンガー・パイを4つ)』とか、女の人は絶対にこんな言い方はしないだろうね。ひとりごとでいうならともかく。殆どの人にはわからないだろうけど「finger pie」はリヴァプールの連中に向けた、ちょっとエッチなジョークだったのさ」

モノラルとステレオでは間奏に入るまえのトランペットに違いがある。
モノラルは「It's a clean machine」から間奏に入るまでにトランペットは入っていないが、ステレオでは右チャンネルに中音域のトランペット・ソロが入っている。

アメリカとカナダのラジオ用のプロモーション・モノ・ミックスにはエンディングにトランペット・ソロが入っていたが、オフィシャルにリリースされたヴァージョンからは削除されている。このエンディングにトランペット・ソロが入っているヴァージョンは現在のところ「Rarities 2」と「The Beatles Box (リヴァプールより愛を込めて ザ・ビートルズ・ボックス)」にのみ収録されており、CDでの入手は不可能。

*レコーディング詳細
1966年
・12月29日
第1~第6テイクをレコーディング。
第6テイクを元にモノ・ミキシングが行われる。
*このミキシングはラフ・リミックスであり、マスターとしては使用していない。
・12月30日
第6テイクをテープ・リダクションして第7テイクを作成。第7テイクにポールのヴォーカルとジョンのバック・ヴォーカルをオーヴァー・ダブ。
1967年
・1月4日
第7テイクにジョンのピアノ、ポールのヴォーカル、ジョージのギターをオーヴァー・ダブ。
・1月5日
第7テイクにポールのヴォーカルをオーヴァー・ダブ。
・1月6日
第7テイクにジョンのギター、ポールのベース、リンゴのドラムスをオーヴァー・ダブ。第7テイクをテープ・リダクションして第8テイクを作成。第8テイクにジョンとマーティンのピアノ、手拍子、ジョン、ポール、ジョージによるスキャットをオーヴァー・ダブ。第8テイクをテープ・リダクションして第9テイクを作成。
・1月9日
第9テイクにフルート、トランペット、ピッコロ、フレンチ・ホルンをオーヴァー・ダブ。
第9テイクを元にモノ・ミキシングが行われる。
*このミキシングはラフ・リミックスであり、マスターとしては使用していない。
・1月10日
第9テイクにスキャット、ハンド・ベルなどをオーヴァー・ダブ。
・1月12日
第9テイクにトランペット、オーボエ、イングリッシュ・ホルン、ダブル・ベースをオーヴァー・ダブ。
第9テイクを元にモノ・ミキシングが行われる。
*このミキシングはラフ・リミックスであり、マスターとしては使用していない。
・1月17日
第9テイクにピッコロ・トランペットをオーヴァー・ダブ。
第9テイクを元にモノ・ミキシングが行われる。
*このモノ・ミックスはアメリカ盤プレスのためにキャピトルに送られたが、後日まだ不十分だったとしてやり直されている。正規盤のリリースには後日のモノ・リミックスの差し替えが間に合ったが、若干数のプロモーション用シングルはこのリミックスで作成されてしまい、コレクターズ・アイテムとなっている。
・1月25日
第9テイクを元にモノ・ミキシングが行われる。
*この曲のステレオ・ミキシングは1971年に西ドイツ盤「Magical Mystery Tour」作成時に初めて行われる。現行CDで聴くことが出来るステレオ・ヴァージョンはこの時のものであり、それまではモノ・ヴァージョンを元にした疑似ステレオ・ヴァージョンであった。

● Baby You're A Rich Man
ジョンとポールのそれぞれの楽曲を1つにまとめた作品。ジョンの「One Of The Beautiful People」という曲とポールの「Baby You're A Rich Man」のタイトルをリフレインするを曲1つにしている。ヴォーカルもジョンとポールで分け合っている。
ジョン「ポールのと僕の『One Of The Beautiful People』を無理やりくっつけた曲だ」
ポール「あの頃はビューティフル・ピープルに関する記事をよく見かけたよ」

「ザ・ローリング・ストーンズのミック・ジャガーがコーラスで参加している」と記述している書籍が多い。確かに特徴のあるミックらしい声がバック・コーラスの中から聞こえてくるパートもあるが、「これはジョンの声では?」と疑問を呈している書籍もある。マーク・ルイソン著による「ザ・ビートルズ レコーディング・セッションズ完全版」によると、「(Baby You're A Rich Man の)セッションは2本のテープに収められたが、その片方のテープボックスに、捨て置けない疑問が提示されている。ビートルズのグループ名に加えて『+ミック・ジャガー?』と書いてあるのだ。ジャガーがセッションに立ち寄ったのは間違いない。表向きは単なる見学だったにせよ、曲の終わり近くのコーラスに飛入りしてバックで歌ったことは、十分に考えられる」と記述されている。

元々はアニメーション映画「Yellow Submarine」のために書かれたが、シングル「All You Need Is Love」のB面に収録されたため、「Yellow Submarine」のサントラには収録されなかった。

イントロの中近東風のフレーズはジョンが弾いている「クラヴィオライン」という楽器。「クラヴィオライン」はアンプ付きのキー・ボードで、ごく初期のエレクトリック楽器とされている。モノフォニック・シンセサイザーと同じで単音しか出せない。約3オクターブまでカヴァーできる。
有名なところでは、トルネイドーズの「テルスター」はこの楽器をメインに使用している。またデル・シャノンの「悲しき街角」の間奏のキー・ボード・ソロはこのクラヴィオラインを改造した「ミュージトロン」が使用されている。

Telstar/The Tornados
クラヴィオラインがメインに使用されている。

Runaway/Del Shannon
間奏のキー・ボード・ソロは、クラヴィオラインを改造したミュージトロンが使用されている。

*レコーディング詳細
1967年
・5月11日
第1~第12テイクをレコーディング。第12テイクをテープ・リダクションして第1~第.2テイクを作成(テイク番号が元に戻っている要因は不明)。
第2テイクを元にモノ・ミキシングが行われている。
*この曲のステレオ・ミキシングは1971年に西ドイツ盤「Magical Mystery Tour」作成時に初めて行われる。現行CDで聴くことが出来るステレオ・ヴァージョンはこの時のものであり、それまではモノ・ヴァージョンを元にした疑似ステレオ・ヴァージョンであった。

● All You Need Is Love
ジョンの作品でリード・ヴォーカルもジョン。
1967年6月25日、宇宙通信衛星を利用した世界初の試みとして世界31か国に同時中継されたテレビ番組「Our World」でレコーディング風景を放映するために書かれた楽曲。テレビ放映に使用されたのは第58テイクである。
この「Our World」は、全世界24ヶ国、約4億人の人々が試聴した6時間のテレビ番組であり、ザ・ビートルズはイギリス代表として出演した。

マーティン「この曲のことは絶対に知られてはならなかった。視聴者がテレビでビートルズの新しいシングルのレコーディング風景をその目で見る、というコンセプトでやっていたからだ。近代的なレコーディングというものの性質を考えれば、本当にそうするのはどうあっても不可能だったからね。そこでまず最初に基本となるリズム・トラックを作ったんだが、あの時はちょっとした問題が持ち上がった。ジョージができもしないのにヴァイオリンを弾きたがって、抱え込んだまま離そうとしなかったんだ」「この曲のスコアを書いたのは私だ。ほんのわずかしか時間的猶予を与えられていなかったせいで、かなり適当になってしまったけれど……私はフランス国家、バッハの2声インヴェンション、グリーンスリーヴス、を切り繋ぎ、イン・ザ・ムードをほんのちょっと振りかけた。で、それを全部1曲にまとめたんだが、少しずつテンポを変えて、それぞれが独立しても聞こえるようにした」
ポール「僕らの曲にはいつもジョージ・マーティンが関わっているけれど、中には他より関わりが深い曲もある。例えば彼は『All You Need Is Love』の最後の部分を書いたんだけど、イン・ザ・ムードに著作権があったせいで、ちょっと困ったことになってしまった。僕らはランダムな感じを出したくて、ありがちなメロディをいろいろ思い浮かべていた。でもあわただしいセッションだったんで、具体的な暗示はせずに、ただ『最後の部分はいつまでも、延々と続く感じにしたい』とだけいったんだ。そうして彼が書き上げたアレンジは、思っていた以上に支離滅裂だった。で、それをまとめる段になって、僕ら『そのバッハの上にグリーンスリーヴスをもってこれないかな?』とか、『その上にイン・ザ・ムードをもってきたい』といいだしたのさ。まったくマーティンは賢者だね。時には僕らに賛成し、時には反対し、けどいつも僕らをうまく導いてくれる。といってみんなが思っている程、貢献が大きいわけじゃない。彼が全部アレンジを考えていても、僕らがあっさり変えてしまう、ということもあったからね」

ジョージ「ジョンは驚くべきリズム感をもっていて、いつもとても変わったリズムを考え出していた。たとえば『All You Need Is Love』だ。あの曲では、あちこちでビートがとんでるし、テンポも次々に変わる。でも実際どんなことをやっているのかと聞いても、彼は何も答えられない。ごく自然にああいうことをやっているんだ」
ポール「全世界の人に同時にこの曲のレコーディング風景を見てもらえるということだった。そこで僕だちは世界に向けたメッセージを、愛をテーマにした曲を書いたんだ。世界中でもっと必要なもの、それが愛さ」
ブライアン・エプスタイン「素晴らしくて美しくてぞくぞくするレコードだ。これなら誤解のしようもない。愛がすべてだとはっきりいっているんだから」

テレビ放映されたレコーディング風景のバック・コーラスには以下のような著名人が参加した。
ミック・ジャガー、キース・リチャーズ、ゲイリー・リーズ、マリアンヌ・フェイスフル、ジェーン・アッシャー、パティ・ハリスン、キース・ムーン、グレアム・ナッシュ、マイク・マッカートニー、ハンター・デイヴィスetc

*レコーディング詳細
1967年
・6月14日
第1~第33テイクをレコーディング。第10テイクをベストとしてテープ・リダクション。
・6月19日
第10テイクにリード、及びバック・ヴォーカル、ドラムス、ピアノ、バンジョーをオーヴァー・ダブ。
・6月21日
第10テイクを元にモノ・ミキシングを作成。
*このモノ・ミキシングはアセテート盤作成のための作業。アセテート盤とはメンバーやスタッフのために作成されるテスト盤のこと。
・6月23日
第10テイクをテープ・リダクション。第10テイクへのオーヴァー・ダブ用に第34~43テイクをレコーディング。オーケストラをオーヴァー・ダブしている。
・6月24日
第10テイクへのオーヴァー・ダブ用に第44~47テイクをレコーディング。リズム・トラックを追加オーヴァー・ダブしている。
・6月25日
第48~第58テイクをレコーディング。宇宙通信衛星を利用した世界初の試みとして世界31か国に同時中継されたテレビ番組「Our World」に使用されたのは第58テイク。BBCのリハーサル・テイクとして第1~第3テイクをレコーディング。第58テイクにリンゴのドラム・ロール、ジョンのヴォーカルの一部録り直しをオーヴァー・ダブ。
・6月26日
第58テイクを元にモノ・ミキシングが行われる。
・11月1日
第58テイクを元にモノ・ミキシングが行われる。
*アニメーション映画「Yellow Submarine」のサントラに使用される。
*この時点では、「All You Need Is Love」のステレオ・ヴァージョンは作成されていない。よってアルバム「Magical Mystery Tour」に収録されたのはモノ・ヴァージョンを元にした疑似ステレオ・ヴァージョンであった。
*ステレオ・ヴァージョンが作成されたのは1968年10月29日、アニメーション映画「Yellow Submarine」のサントラ作成時である。

The Beatles

yamada3desu
yamada3desu
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