イエスタデイ(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『イエスタデイ』はイギリスで制作されたスタイリッシュでハートフルなラブコメディ映画である。売れないシンガーソングライター、主人公のジャックはある日バスに跳ねられる。意識不明の状態から回復したものの、目覚めた世界には伝説のバンド「ビートルズ」が存在していなかった。なぜかジャックだけがビートルズを憶えている。記憶を頼りに披露した曲「イエスタデイ」をきっかけに、ジャックの平凡な人生が徐々に変化していく。ファンタジーな要素とリアルを織り交ぜながら友情、恋愛、苦悩をビートルズの名曲と共に楽しめる映画だ。

『イエスタデイ』の概要

『イエスタデイ』とはイギリスで製作され、日本では2019年に公開されたコメディ映画である。製作費2,600万ドルに対し、世界で1.5億ドルの興行収入となったヒット作だ。監督は「トレインスポッティング」「スラムドッグ$ミリオネア」のダニー・ボイル。脚本は「ラブ・アクチュアリー」「ノッティンヒルの恋人」のリチャード・カーティス。この二人がタッグを組み、公開前から話題となった。
そんな話題作の主人公、ジャック役に抜擢されたのが、新鋭のヒメーシュ・パテルだ。作中ではビートルズの名曲を感情豊かに歌い上げている。ジャックの歌声に惚れ込み、長年彼を献身的に支え続けるマネージャー兼ドライバーの幼馴染、エリー役にはリリー・ジェームズを起用。芯が強く可愛らしいエリー役を見事に演じている。この二人を取り巻く登場人物達も皆個性的で、魅力的だと視聴者をはじめ各方面からの評価が高い。
話は主人公ジャックが自作の曲を歌うシーンから始まる。舞台はイギリスの小さな田舎町。ジャックはスターを夢見るシンガーソングライターだ。夢を追い求めて頑張っていたが、なかなか芽が出ない現実に見切りをつけようとしていた。そんなある日、世界中が謎の12秒間の停電に見舞われる。その一瞬にジャックは運悪く事故に遭う。無事に意識不明の状態から回復したが、目覚めた世界にはジャック以外の人々の記憶から有名バンド「ビートルズ」の存在が消えていた。そこから少しずつ平凡だったジャックの人生が変わり始める。
この映画には監督ダニーと脚本リチャードの強いビートルズ愛を感じさせる表現が散りばめられている。コアなビートルズファンであれば作中でのオマージュに気が付き、宝探しをしているような気分になれる。ビートルズに初めて触れる視聴者でもファンタジーな要素を含みつつも、リアルな感情や表現に引き込まれるストーリー展開になっているので楽しめる。
更に本人役として、イギリス出身の世界的ミュージシャン、エド・シーランが起用されているのにも注目だ。主人公の運命のターニングポイントになる重要な役どころで、随所に登場している。また、音楽を作品の軸に置いているだけあって、シーンに合わせて流れる挿入歌も楽しめる。ビートルズの名曲が惜しみなく使われているだけではなく、作中後半ではエド・シーランがこの映画の為に書き下ろした「One Life」が収録されており、最後まで見所、聴きどころ満載の映画となっている。

『イエスタデイ』のあらすじ・ストーリー

スターを夢見る主人公、ジャック

スターを夢見るジャックとマネージャー兼ドライバーのエリー

売れないミュージシャンの主人公ジャックが町中で歌うシーンから始まる。歌っているのは自作曲。よくあるメロディーと歌詞のフォークソングで誰も耳を傾けない。そんなジャックの様子を側で見守る人物がいる。幼馴染のエリーだ。エリーはジャックの歌声に惚れ込み、中学校の教職の傍らジャックのマネージャー兼ドライバーとして彼を支えている。
以前はエリーと同じく教師をしていたジャックだが、現在は音楽に専念するため、スーパーでアルバイトをしている。身だしなみには無頓着だが、人柄の良く真面目なジャックは顧客から人気だ。嫌味な店長から「フルタイムにしてやっても良い」と声を掛けられるジャックだが素直に頷けない。彼はスーパーの正社員ではなく、ミュージシャンになりたいからだ。そんな時、エリーが朗報を持ってくる。

ラティチュード・フェスに出演

ジャックのステージの前で遊ぶ子ども達

朗報は、ラティチュード・フェスへのジャックの出演が決まったという知らせだった。小さいテントではあるが、地元サフォークで開かれる有名フェスへ参加出来る事を喜び、期待するジャックとエリー。入念に準備をし、いざ本番当日を迎える。
しかし蓋を開けてみれば、ジャックの舞台客は友人数人と休憩中の子どもだけ。演奏終了後に舞台を降り、落胆するジャック。側で元気付けるエリー。
そこへ古い友人、ロッキーが登場する。ロッキーは元アル中、ドラッグ依存でどうしようもないやつだったが、今は更生し、バンドの付き人をしているという。職に就き、やる気で満ちているロッキーは意気揚々とジャックを舞台裏へ案内してくれる。しかし旧友との話に夢中になってしまい、段取りを間違え、その日のうちにバンドの付き人もクビになってしまう。再び無職になってしまった気の毒なロッキー。なんとも言えない気持ちで会場を後にするジャック。
期待していたフェスでの成功も夢に終わり、ジャックの心は折れていた。この舞台での演奏を最後に、ミュージシャンを諦める決意をしたのだ。帰宅途中、エリーにその気持ちを伝えるが、ジャックの可能性を信じているエリーは反対する。説得に応じないままジャックはエリーの運転する車から降り、自分の自転車に乗り換える。夜道の帰路を走る自転車。その時、突然世界規模での12秒間の停電が発生する。そしてその一瞬に運悪く、ジャックは自転車と背負っていた愛用のギターごとバスに跳ねられたのだった。

ビートルズの存在しない世界

快気祝いにギターをプレゼントしてくれる友人達

病院で目覚めたジャック。幸運にも致命的な傷は無かったものの、トレードマークだった髭と、前歯2本を失った。見舞いに来たエリーから事の次第を聞くジャック。エリーが帰る間際に付き添ってくれた感謝と「64歳まで一瞬にいてくれる?」とジョークを言う。このジョークはビートルズの「When I’m Sixty-four」という曲にかけたものだったが、エリーはそれに気が付かない。「なぜ64歳?」と尋ねる。更には退院時にジャックが「ビートルズは無理でも一度くらいは喝采を浴びたかったな。」の発言に「何は無理って?」と返すエリー。違和感を感じるジャック。
事の重大さに気が付いたのは、その後友人達と快気祝いをした時だった。友人達が、事故で壊れた愛用のギターの代わりに新しいギターをプレゼントしてくれたのだ。ミュージシャンを諦めようと思っていたジャックは素直には喜べなかったが、せっかくなので一曲演奏する。弾いた曲はビートルズの名曲「イエスタデイ」。ジャックからしたら定番中の定番曲を歌っただけだったが、友人達の反応がおかしい。驚きすぎて言葉が出てこないのだ。エリーに関しては「今の曲は何?いつ書いたの?」と涙ながらに感動している。皆口々に「最高だ」「なんて美しい曲」と絶賛するが、ジャックは全く理解できない。「俺じゃない、ビートルズの曲だ」と説明するが、一同に「何?車?それとも虫?」と話が全く噛み合わない。その後もどんなに説明しても埒があかない。混乱し、イライラするジャック。
だが次第に仮説を思いつく。居ても立っても居られなくなったジャックは家に帰るなりインターネットで「ビートルズ」を検索する。ヒットするのは虫や車。ビートルズの曲を検索しても全く出てこない。遂にジャックは世界からビートルズの存在が消えていて、それを知っているのが自分だけだと言うことに気が付いたのだ。

ビートルズの曲を演奏するジャック

ギャビンのスタジオでレコーディングするジャックとエリー

パニックにはなったものの、そこからのジャックの行動は早かった。何かに追われるように、必死でビートルズの曲と歌詞を思い出し、メモに書き出した。ジャックは再びギターを手に取り、ミュージシャンとしてビートルズの曲を演奏することにしたのだ。事情を知らないエリーは、再び曲に情熱を傾け出したジャックの様子に喜ぶ。
そして事故後初の舞台が決まった。ジャックが出かけようとすると両親に声を掛けられ一曲披露するよう促される。渋々だが、ピアノの前に座り「Let It Be」を披露しようとする。だが息子は可愛いが、息子の曲にそれほど興味がない両親はあまり真面目に聞こうとしない。度々客人の訪問などで演奏を止められる。「名曲を最初に聞く人物になるんだぞ」とつい声を荒げてしまったが、効果なし。消化不良のまま出かける羽目になる。事故後初舞台の曲は「I Want To Hold Your Hand」を演奏する。別のカフェでは「Let It Be」を披露。どちらも名曲中の名曲だが、ジャックが期待した反響はなく、以前と変わらない観客の反応だった。名曲を演奏しても変わらない現状に、結局原因は自分にあるのだと卑下する。
だが一人、カフェのジャックの演奏に胸を打たれた人物がいた。曲のプロデュースをしているギャビンだ。小さいが、自分のスタジオを持っている彼は是非そこを使ってCDを作ろうと提案してくれる。大きく一歩踏み出せる事へ大喜びするジャックとエリー。

エド・シーランとの出会い

ジャックの自宅を訪ねてきたエド・シーラン

ギャビンの全面的な協力で、3人でのCD作りは終始楽しく順調に進む。全曲ビートルズの名曲で構成されたミニアルバムが完成すると、ジャックはアルバイト先のスーパーで景品のオマケとして無料で配布する。
それが話題になり、ジャックはテレビのトークショーに出演する事になる。ビートルズの「In My Life」を演奏したが、司会者からは「歌詞に洗剤が出て来なかったね。“僕の店“という曲は作らないの?」と冗談混じりにあしらわれてしまう。帰り道、あくまで自分はミュージシャンではなく、「歌うスーパーの店員」として呼ばれたんだなとがっかりするジャック。
その時、彼の携帯が着信を知らせる。かけてきたのはなんと、世界的有名ミュージシャンのエド・シーランだった。テレビでのジャックのパフォーマンスを観て連絡をとってきたのだ。俄には信じられなかったが、その日の晩にエド本人がジャックの家を訪問。トークショーで披露した曲に可能性を感じたエドはスーパーのサイトで他の曲も聞き、感動し、ジャックの才能を確信。エド自身のツアーの前座をしてみないかと、直接打診しにきたのだ。こんなビッグチャンスはないとジャックは快諾。すぐにエリーにも報告。自分の事のように喜ぶエリー。
当然のようにエリーとツアーを回るつもりだったジャックだったが、エリーは行けないという。なぜなら出発が直ぐだったから。エリーは本職の教師という仕事がある。困り果てたジャックが付き人に選んだのはこんな急展開にも対応できる、無職のロッキーだった。

ツアーへの参加。モスクワへ

アフターパーティーでのジャックとエド・シーラン

ロッキーを付き人に選んだ為に、一抹の不安を抱えたジャック。出発当日、2人はエドのプライベートジェットに乗り込み挨拶を交わすが、空気の読めないロッキーの一言で不穏な空気に。エドの懐の深さにより事なきを得るが緊張が解れないまま、モスクワ入りをする。
しかしその不安を払拭する様にジャックは「Back In The U.S.S.R」を演奏し会場を盛り上げ、見事前座を勤め上げる。これにはエドも大満足。この様子は観客達によってSNSで拡散され、ジャックの名が世界に注目され始める。皆一同が大盛り上がりの会場だったが、観客の中に一人だけ、ビートルズの曲を熱唱するジャックに戸惑いを隠せない男性がいた。彼もビートルズを覚えていた一人なのだ。広い世界でジャック“だけ“ではなかったという事になる。ただその場では何も起きることはなく、ジャックの前座が大成功で終わる結果となった。
ライブ後、アフターパーティへ参加したジャックに主役のエドが労いをかけに来る。ジャックが「Back In The U.S.S.R 」を移動中の飛行機の中で即興で作ったと話すことが俄に信じられず、実力試しの為にゲームを持ちかけるエド。ルールはお互い10分間で曲を作り、みんなの前で披露するというシンプルな内容だ。
10分後、それぞれが曲を披露。実力勝負だったが、ビートルズの既存の曲を披露したジャックの完成度の高い演奏を聴き、パーティ参加者は聴き惚れる。才能溢れるエドはその曲がどれ程素晴らしいかが分かってしまう。自身の負けを認め、ジャックを讃えた後会場を後にする。そして罪悪感が残るジャックの元へ、才能を嗅ぎつけたエドのマネージャー、デブラがやって来てビジネスを持ちかける。

ビジネスチャンスとイギリスからの旅立ち

ジャックをスカウトするデブラ

デブラは嗅覚鋭いビジネスウーマンで、とにかく成功とお金が大好き。ジャックの才能が金になると確信したデブラは彼女のオフィスがあるロサンゼルスへ来るように指示する。
ビジネスチャンスをお土産に、モスクワから生まれ故郷イギリスのサフォークに戻ったジャック。自宅でパーティーを開き、ロサンゼルス行きを家族と友人が祝ってくれる。当然のごとく一緒に行こうとエリーを誘うジャックだが、あっさり断られる。エリーはイギリスを離れる気は無いのだ。
パーティーも終盤になり、時間の無いジャックは2階の自室で荷造りを進める。そんな折、エリーが質問をする。自分はジャックの彼女にはなれないのかと。エリーはジャックの歌声だけではなく、彼自身にも惚れ込んでいたのだった。そのことに全く気が付いていなかった鈍感なジャックはとても驚く。彼にとってエリーは幼馴染で妹のような存在で、微塵も恋愛感情がなかったからだ。返答に困っていると、1階からジャックを呼ぶ声がする。パーティーの締めだから降りてこいと。真剣に返事がしたいジャックだったが皆んなの勢いに負けて、エリーから逃げるように部屋を出てしまった。

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