PandoraHearts(パンドラハーツ)の名言・名セリフ/名シーン・名場面まとめ

『PandoraHearts(パンドラハーツ)』は、『月刊Gファンタジー』にて連載された望月淳による漫画作品である。『不思議の国のアリス』などの童話をモチーフにしつつも、残酷な描写が随所にみられるダークファンタジーとなっている。成人の儀で闇の監獄へ落とされた後に10年後の世界に生還を果たした少年、オズ・ベザリウスを主人公に、自らの存在の意味を問う彼がその真実を見つけ、世界の危機を救うまでを描く。物語全体にわたる伏線が読む人を魅了し、単行本累計発行部数500万部を超えた人気作である。

ヴィンセントに悪態をつくブレイク

ヴィンセントがシャロンを攫ったことを知ったブレイクの言葉である。チェシャ猫の住処から帰還したブレイクは、留守番していたはずのシャロンが行方不明になったことを知る。自室を訪れたブレイクが見たのは、荒らされた部屋と一面に撒かれた黒い薔薇、そして、黒の騎士のチェス駒だった。黒の騎士はシャロンが所有するチェインである一角獣、つまりは何者かがシャロンを攫ったことを意味しており、黒い薔薇はそれが植えられている場所に来るようにというメッセージであった。過剰なまでの演出から一連の所業がヴィンセントの仕業であることを瞬時に見破ったブレイクは怒りを露わにし、「ナイトレイの溝ネズミめ…!」と吐き捨てるように呟く。ナイトレイ家やヴィンセントに対する「溝ネズミ」という形容はブレイクの言葉の中にたびたび登場し、彼のもつ憎しみの深さを如実に表している。

ケビン=レグナードが過去を変えて欲しいとアヴィスの意志に願う場面

アヴィスの意志に願いを叫ぶブレイク

ブレイクの本名はケビン=レグナードといい、留守の間に殺された主人を取り戻すために違法契約者となった過去があった。望み叶わずアヴィスに堕ちることなったブレイクは、行きついたアヴィスの深淵で、アヴィスの意志に遭遇する。アヴィスの意志は白い少女の姿をとり、「アリス」と名乗った。親しげにブレイクに話しかけていたアヴィスの意志は、突如、彼の顔に手をのばし、左目を奪い去る。混乱の中で自らが過去を変えようとした理由を思い出したブレイクは、「手でも足でも、おまえが望むものを与えよう。だからどうか…!おまえの力で…アヴィスの意志…!アリス!!」と強く願った。それを聞いたアヴィスの意志は、それまでの我を失ったような様子を一変させ、「本当に?本当に私の願いをかなえてくれる…?なら…お願い…私は…っ。――――――」と涙ながらにブレイクに手を伸ばす。なお、この場面では彼女の「願い」の内容に関する描写はない。この後にブレイクが語った時になってはじめて、「もうアヴィスの意志でいたくない」「アリスを助けて」であることが明らかになる。

「人は『誰かのために』と生きることで強さを得る。ならば何が正しいのか、何を心に留めるべきなのか…。それはきっと、『誰かのために』を『言い訳』にしないことだよ―――」

オズ達に自らの考えを告げるブレイク

過去を変えたことを後悔するブレイクがオズ達に告げた言葉である。以前ブレイクがチェシャ猫に告げた「『誰かのために』という言葉が大嫌いだ」という考えは、「主人のために」というわがままで過去を変えたことでより悲惨な過去を生み出したという過去の経験がもとになっていた。しかし、ブレイクの話を聞いたオズが「自分のためだけに生きられる程人は強くない」と言ったことで、彼の自らの過ちに対する罪の意識は少し軽くなる。「誰かのために」を振りかざすのは誤りであるが、「誰かのために」が無ければ生きられない。「人は『誰かのために』と生きることで強さを得る。ならば何が正しいのか、何を心に留めるべきなのか…。それはきっと、『誰かのために』を『言い訳』にしないことだよ―――」というのは、このことに対してブレイクが出した結論である。そしてこの言葉は、自らの在り方に悩むオズやギルバートの心に深く響いたのであった。

「君にとって必要なのは、本当にオズ=ベザリウスなのか?」

ギルバートに疑問を呈するブレイクの言葉

主人の害になる者は殺すと執拗に言い続けるギルバートにブレイクが発した問いかけである。「あれ(オズ)がどうなろうと知ったことではない」と言い放ったザイに激昂をしたギルバートは、去って行ったザイの後を一人追い、彼に向って銃口を向けた。そこに割って入ってギルバートを連れ出したブレイクに対し、ギルバートはザイのことを「敵だ」と言い、ただひたすらに「主人の敵は殺さなければ」と繰り返した。ギルバートの言動に異様さを感じたブレイクは彼に、「君にとって必要なのは、本当にオズ=ベザリウスなのか?」と問う。実は、ギルバートがオズを害するものを殺そうとするのはグレンの従者であった幼いころにジーリィにそのように仕込まれたためであり、「オズを害するもの」ではなく「主人を害するもの」を排除するようにと無意識のうちに考えていたのであった。ブレイクのこの問いかけは、ギルバートの心の深くにある呪縛を突き付けるものであり、それに打ち勝たない限りはいずれ大切なものを失うことになるという忠告である。

「私にとって、この罰は救いですから」

レイム(下)に自らの考えを告げたブレイク(中央)

サブリエからの帰還後に目が視えなくなったブレイクが発した言葉である。サブリエでのバスカヴィルとの戦闘でチェインを酷使したブレイクはその場で倒れ、目を覚ましたとき、彼の視力は失われていた。周りの多くの者には気づかれなかったものの、オズとレイムにだけはそのことを知られてしまう。彼の身を案じるレイムだが、ブレイクは、「もともと視覚から得る情報は信用していないのだからたいした害はなく、数日あれば以前のように生活することも戦うこともできるようになる」と自信満々に宣言する。そしてブレイクは、目が視えなくなったことに「ホッとしている」のだと呟いた。その真意を測りかねた様子を見せるレイムに、ブレイクは、「私にとって、この罰は救いですから」と呟き、「最も辛いのは犯した過ちを贖うことも許されないことなのだ」と話す。視力を失うという事実を「罰」であり「救い」だという彼の言葉には、日頃は陽気な様子を見せるブレイクの内に秘められた悲しみと自責の念が強く現れている。

リリィの手にかかったレイムの元にブレイクがたどり着いた場面

怒りの形相でリリィ(右)と対峙するブレイク(左)

かの国の人、ユラの屋敷でオズの社交界デビューパーティーが執り行われることになり、封印の石を探すためにブレイク、レイムを含むパンドラの者達はパーティーに潜入していた。滞りなくパーティーが進んでいるように思われたのもつかの間、石の捜索にあたっていたはずのパンドラの者が首無しの死体で見つかる。表には出さないながらもレイムの身を案じていたブレイクは、混乱の中で誘うかのような何者かの足音を耳にした。その音を追って地下に入ったブレイクは、バスカヴィルの一人、リリィとレイムがいる部屋に行きつく。しかし、彼が到着したとき、リリィからの容赦ない攻撃を受けたレイムは、すでに見るも無残な姿になっていたのであった。周囲の状況からそのことを察したブレイクは、「ああ―――君のせいで、私の予定がめちゃくちゃだ」と言って日頃の冷静さをかなぐり捨て、激怒の表情で居合わせたバスカヴィルらに刃を向けた。唯一の友であるレイムの死を目にしたブレイクが本作の中も最も強い怒りの表情を見せた場面である。

「…ねぇ、オズ君。以前と同じ質問を、もう一度君にしてもいいかな。『――君は』『一体どこにいるんだい?』」 オズ「…オレは」

オズ(右)に改めて問いかけるブレイク(中央)

苦難を乗り越えて強くなったオズにブレイクが再び発した問いかけである。自らの存在の真実を知ったオズ、辛い過去を思い出したアリスとギルバート。ひどく過酷な道のりを乗り越えてきた彼らは、それぞれに以前とは比べ物にならないほどの強さを身に付けていた。サブリエでの決戦を目前にオズ達と再会したブレイクは、そのまとう雰囲気から三人の成長をはっきりと感じ取る。そしてブレイクは、「…ねぇ、オズ君。以前と同じ質問を、もう一度君にしてもいいかな。『――君は』『一体どこにいるんだい?』」と、初めて出会った頃と同じまったく同じ問いをオズに発した。君はいったいどこにいるのか、そう尋ねられたとき、以前のオズはただ戸惑うだけであった。しかし今、再び同じことを問われたオズは、迷うことなく笑顔で答えを返す。そのオズの言葉は、ブレイクの胸のうちに深く響き、もはや闇しか映らなくなった眼の中にあたかも眩しい光が浮かぶかのように、彼の心を明るく照らし出したのだった。
なお、この場面にオズのセリフはなく、 「…オレは」とただ何かの答えを返した描写があるのみであるため、読者にその答えがはっきりと示されているわけではない。ただし、この場面のブレイクの「私はまだ生きていますよね?」のセリフに「ここにいますよね?」のルビが降られていること、後にオズが父親に発する「それでも、オレは今ここにいます」のセリフ、ブレイクが最後に発する「まだここにいたいです」とのセリフなどから、このときのオズの答えは「オレはここにいる」であると推測されている。

「そうやって過去に救いを求めてばかりいるから、貴様は前に進めないいんだ!いい加減に気づけ。どれだけ過去に手を伸ばしても、そこに貴様の未来はない!!」

ヴィンセント(左上)を叱咤するブレイク(右)

自ら死を選ぼうとするヴィンセントにブレイクが放った言葉である。過去を改ざんしようとするオズワルトを追ってかつてのサブリエに赴いたオズ達は、幻影の中でばらばらになってしまう。その中で一人、ブレイクは、バスカヴィルの所有する最後の扉が存在する空間に行き着く。その時すでに、扉の前にはオズワルト、そして、扉を開けるために彼に連れられてきたヴィンセントがたどり着いていた。過去を変えることを是としないブレイクに、ヴィンセントは、「過去を変えれば多くの者が救われるにもかかわらずどうしてそれを邪魔するのか」と問いかける。それを聞いたブレイクは、ヴィンセントの言葉をただの「言い訳」だと切り捨てた。
ブレイクは全力を尽くしてオズワルトとヴィンセントを阻もうとするも、彼らの手によって扉は開かれ、オズワルトはその中へと向かう。共に進もうとするヴィンセントを「ここまででいい」と止めたオズワルトは、その場で彼を殺そうとした。もとより自分を消し去ってもらうことを求めていたヴィンセントは笑って受け入れるが、それを止めたのは、死力を振り絞ったブレイクであった。「そのまま死んでも良かったのに」と怒りを見せるヴィンセントに、ブレイクは、「そうやって過去に救いを求めてばかりいるから、貴様は前に進めないいんだ!いい加減に気づけ。どれだけ過去に手を伸ばしても、そこに貴様の未来はない!!」と言い放つ。事態が急を要すると見たオズワルトは彼ら二人を放置して扉の中へと進み、それに気づいたヴィンセントもまた、とっさに後を追ってブレイクの前から姿を消した。何も変えられないまま終わったかに思えたブレイクの言葉であるが、その実はヴィンセントのこれまでの決意を揺るがすほどの大きな衝撃を彼に与えていたのである。

ブレイクの最期の場面

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