PandoraHearts(パンドラハーツ)の名言・名セリフ/名シーン・名場面まとめ

『PandoraHearts(パンドラハーツ)』は、『月刊Gファンタジー』にて連載された望月淳による漫画作品である。『不思議の国のアリス』などの童話をモチーフにしつつも、残酷な描写が随所にみられるダークファンタジーとなっている。成人の儀で闇の監獄へ落とされた後に10年後の世界に生還を果たした少年、オズ・ベザリウスを主人公に、自らの存在の意味を問う彼がその真実を見つけ、世界の危機を救うまでを描く。物語全体にわたる伏線が読む人を魅了し、単行本累計発行部数500万部を超えた人気作である。

ブレイク(左)の窮地を救ったギルバート(右)

ユラ達がサブリエの悲劇を再来させるための計画を実行し、混乱の中、現れたバスカヴィルと一人対峙していたブレイクは、大怪我を負って絶体絶命の危機にあった。ブレイクが死を覚悟で所有するチェイン・マッドハッターを使い、バスカヴィルと相打ちになろうとしたその時、駆け付けてきたギルバートが飛び蹴りとともに彼を止め、「オレは、この馬鹿の左眼だ!」。ギルバートが鴉を呼び出して攻撃に打って出ようとしたため、それを脅威と見たバスカヴィルは退却する。ギルバートがオズではなく自分を助けに来たことに対して怒りを見せるブレイクだが、ギルバートはそれに負けないほどに、「オレが頭にきてるのは…おまえが誰も頼らずに、独りで戦って勝手に諦めたからだ!今のおまえには、こんな時に思い出すべき顔も呼ぶべき名前もあるはずだろうが」と、ブレイクが独りで戦ったうえに勝手に諦めて死を選ぼうとしたことに対する怒りを露わにした。自分のことを大事に思い、残される者のことを考えるべきだと諭すギルバートの言葉は、孤独に戦おうとしてブレイクが周りを頼れるようになるきっかけを与えたのであった。

「っふざけるな、この馬鹿があぁあ!!!」 「オレの幸せを!!おまえが!!勝手に決めるなよ!!!」

ヴィンセント(左)に激怒するギルバート(右)

兄の幸せのためにと繰り返すヴィンセントにギルバートが放った言葉である。グレンとして覚醒したリーオと共に現れたヴィンセントは、チェインを使うことによる身体への負担のためによろけたリーオに代わり、周りを巻き込むことも気にせずにオズ達を攻撃し始めた。リーオの手助けをするために愛する兄にまでも銃を向けたヴィンセントは、ギルバートにバスカヴィルと一緒にいる理由を問われ、「すべてはギルのため」「兄さんは幸せにならないといけない」と答えた。訳が分からずその真意を問うも「ギルは何もわからなくていい」と言われたギルバートは、激昂してヴィンセントにつかみかかり、「っふざけるな、この馬鹿があぁあ!!!」 「オレの幸せを!!おまえが!!勝手に決めるなよ!!!」と叫ぶ。ひとしきりヴィンセントの日頃の行動を詰った後、静かに「バスカヴィルなんかと一緒にいるのはやめろ」といったギルバートの言葉を聞いたヴィンセントは、どこかショックを受けたかのように見えた。なお、この後、実はヴィンセントとギルバートはバスカヴィルの一員であり、ヴィンセントにはその自覚が残っているが、記憶をなくしているギルバートは自覚を失っていたことが明らかになる。ヴィンセントは過去を忘れているギルバートの状況を知ってはいたが、自覚のないままに自らが属するバスカヴィルを否定したことに悲しみを覚えていたのだと考えられる。ヴィンセントに対してこれまで一度も見せなかったほどの強い怒りを露わにすると同時に、愛する弟を心配する強い想いが込められた言葉である。

傷を負ったギルバートがバスカヴィルとしての自覚を取り戻した場面

バスカヴィルであることを自覚したギルバート

パンドラの人間たちとともにバスカヴィルを追ったギルバートは、パンドラの地下にあった封印の石の隠し場所に行きつく。石を破壊しようとするバスカヴィル、守ろうとするパンドラの間で激しい戦いが繰り広げられる中、バスカヴィル側に立ったヴィンセントと対峙したギルバートは、自分のかつての主人はジャックであり、ジャックを護れなかった分もオズを護り抜くのだという決意を示す。何かを思うかのようにヴィンセントが兄の名を呼んだとき、その背後からパンドラの人間がヴィンセントを撃とうとしているのを目にしたギルバートは、咄嗟に彼をかばって銃弾を受けてしまった。その場に倒れこみ、自分の名を呼ぶヴィンセントの声、傷を負った身体の熱さを感じたギルバートの目の前に、100年前の過去の光景が浮かぶ。サブリエの悲劇のとき、血と炎にまみれた屋敷の中で主人を探していた幼いギルバートは、オズワルトとジャックが対峙する場に行きついた。友人同士であるはずの二人が争うのを目撃して思わず駆け寄ったギルバートに「来るな」と命じた人物、それは、敵であるはずのオズワルトであり、ギルバートに刃を向けたのは、主人であるはずのジャックその人であった。ジャックは「この程度の傷で君達は死んだりしない」と言い、それはギルバート自身が尋常ならぬ再生力をもつバスカヴィルの一員であることを示していた。その過去の光景を目にし、「…そうだ。オレは、この程度の傷で死んだりしない」と実際に記憶を失ってからの自分が本来であれば死ぬはずの場面で生きながらえてきたことを思い出したギルバートは、自分がバスカヴィルであるという自覚を取り戻す。その後、過去の光景の中での「君の小さな可愛い従者を私が殺してしまう前に」というジャックからオズワルトへの呼びかけにより、ギルバートが本当はオズワルトの従者であったこと、つまりは、100年後、記憶を失ったまま成長したギルバートにサブリエの幻影の中に現れたジャックが告げた話がまるっきりの嘘であったことが明らかになった。ギルバートが記憶を取り戻した瞬間、封印の石が破壊される。そして、壊された封印の石の中から現れたのは、誰もが予期していたジャックの首ではなく、オズワルトの首であった。皆が国を救った英雄として崇めてきたジャックの言葉の全てが嘘であり、この男こそが悲劇の元凶である。残酷な事実が明らかになった瞬間であった。

オズワルトの命によりギルバートがオズを撃った場面

無意識のうちにオズ(下)を撃ってしまったギルバート(右上)

ジャックの記憶の一部始終を目にしたオズは、自分自身が100年前のアリスの死の原因を作った張本人であったことを知り、後悔と自責の念に打ちひしがれていた。そんな彼の元に、オズワルトの従者であったと記憶を取り戻し、それでもなおオズを護ろうとしたギルバートが駆けつける。しかし、襲い掛かるバスカヴィルとオズの間にギルバートが立ちはだかった時、「ギルバート、撃て」と、オズを撃つように命じる声が響いた。声の主はリーオ、しかし、その意識はリーオの躰を乗っ取ったオズワルトのものであった。無意識のうちにその命令に反応したギルバートは、即座にオズを撃ってしまう。自らの行動に呆然とするギルバートに、オズワルトは、「おまえは私だけの従者であればいい」と告げた。唯一無二の従者であるギルバートに撃たれたオズ、何よりも大事だった主人であるオズを撃ってしまったギルバート、二人はそれぞれに、絶望の淵に立たされることとなったのである。

「今思い出しても吐き気のするようなおぞましいことが、沢山…沢山あった。おまえの存在を疎ましく思ってしまったことも、そんな自分が許せなくて死んでしまいたくなったことも。だが、それがオレだ。オレの一部だ。すべて、失くしてはならないものなんだ!ヴィンス、オレはおまえがいてくれてよかった」

ヴィンセント(下)に笑いかけるギルバート(上)

記憶を取り戻したギルバートがヴィンセントにかけた言葉である。腕を焼き切って鴉との契約を断ったギルバートは、駆け寄ったヴィンセントに、過去を取り戻すことを恐れて彼と向き合えずにいたことを謝罪する。しかし、自分がいたせいでギルバートが不幸になったのだという自責の念を抱き続けてきたヴィンセントは、「(過去は)思い出してほしくなかった」と苦しそうに話した。そんな彼に、ギルバートは「今思い出しても吐き気のするようなおぞましいことが、沢山…沢山あった。おまえの存在を疎ましく思ってしまったことも、そんな自分が許せなくて死んでしまいたくなったことも。」と告白したうで、「だが、それがオレだ。オレの一部だ。すべて、失くしてはならないものなんだ!」と言い、そして、「ヴィンス、オレはおまえがいてくれてよかった」という想いを告げたのだった。弟の存在を肯定するギルバートの言葉は、ヴィンセントの罪の意識を軽くしながらも、同時に彼のこれまでの存在理由を否定してしまうことにもなったのであった。

「お前を傷つけた腕だ、必要ない!!」

オズワルト(左)に背くことを決意したギルバート(右)

本来の主人であるオズワルトに背いてオズを護ることを決めたギルバートの言葉である。グレンとして覚醒したリーオが邪魔者であるオズを処刑しようとしたとき、ギルバートがその前に立ちはだかる。そしてオズが目にしたのは、左腕を失った彼の姿であった。驚愕するあまり何も言えずにいるオズに、ギルバートは、「お前を傷つけた腕だ、必要ない!!」と強く言い放つ。たとえ腕を失ってでも、唯一無二の主人であるオズに尽くす、その確固たる決意が現れた一言である。

「じゃあ、『本物』ってなんだ、オズ。そもそも、どうして『本物』でなきゃいけない。『偽物』だっていい。そんなことどうでもいいんだ。オレは、オズであればそれでいい!オレがいいと言っているんだからそれでいいんだ!何か文句があるか、オズ!」

オズ(中央上)に語り掛けるギルバート(左上)

その正体を知ったうえでオズを護ることを決めたギルが彼にかけた言葉である。オズ=ベザリウスという人間だと皆が思っていたのは、ジャック=ベザリウスの躰に黒うさぎのチェイン・オズの魂が宿っただけのかりそめの存在であった。自身の真の姿を知ったオズは、助けに現れたギルバートに、「偽物」である自分には護る価値などないのだと叫ぶ。だが、それを聞いたギルバートは、「じゃあ、『本物』ってなんだ、オズ。そもそも、どうして『本物』でなきゃいけない。」と問うたのである。自分が護りたいのはオズそのものなのだと気付いたギルバートは、何かが吹っ切れたかのように明るい表情で、「『偽物』だっていい。そんなことどうでもいいんだ。オレは、オズであればそれでいい!オレがいいと言っているんだからそれでいいんだ!何か文句があるか、オズ!」と、自らの想いを告げたのだった。

ギルバートが思いをこめてオズの名を呼んだ場面

オズ(中央)の名を呼ぶギルバート(上)

10年前、オズの従者として仕えるようになったギルバートは、オズのことを「マスター」と呼んでいた。はじめはそれが嬉しかったオズだが、次第に何かが違うと感じるようになり、自分の事は名前で呼ぶようにと命じる。しかし、主人を呼び捨てにするのはギルバートにはどうしてもできなかった。そこで、二人は「オズ坊ちゃん」という呼び方で折り合いをつけ、オズはギルバートにズ「オレ達が大人になるまでに、ちゃんと『オズ』って呼べるようになっておけよ!」と命じ、ギルバートもどこか嬉し気にそれを了承したのである。
そして、アヴィスに堕ちたオズが10年を経て生還した今、成長したギルバートは躊躇なくオズのことを名前で呼ぶようになってはいた。しかし、失っていた記憶を取り戻したギルバートは、本当の意味でオズの名前を呼んだことがなかったと気付く。自分はすでに本当に護りたいものが分かっていた。しかし、失った記憶に確信を持てずに怯えていただけだった。そのことを知ったギルバートは、一番大切な存在であるオズ=ベザリウスを護るという決意、そして心からの思いを込めて、何度も彼の名を呼んだ。幼少時、オズはギルバートに、「『絶対』なんて信じない」と告げていた。「オズ、オレは、バスカヴィルの民だ。だがそれでも、今のオレは、おまえだけの従者だ。それは変わらない。おまえが何者でも、何を言っても、変えさせない。『絶対』に…!」と、その「絶対」を自分が叶えるというギルバートの言葉は、壊れかけていたオズの心に深く響いたのであった。

「たとえ本当におまえの存在が消えてなくなったとしても、それでオレが幸せになるなんて絶対にあり得ないぞ!!なぜなら過去を改竄した時点で、弟という存在が消えた時点で、それはもう『おまえが護ろうとしているギルバート』ではなくなるからだ!おまえが消えたらここではないどっかのギルバートは幸せに生きるのかもしれんが、それは『オレ』じゃない!同じ姿をした全くの別人だ!!」「おまえが馬鹿みたいに悩んで気を遣ってくれたのは、助けようとしてくれたのは、『オレ』なんだろう!?なら死ぬな!!消えるなヴィンス!!」

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