PandoraHearts(パンドラハーツ)の名言・名セリフ/名シーン・名場面まとめ

『PandoraHearts(パンドラハーツ)』は、『月刊Gファンタジー』にて連載された望月淳による漫画作品である。『不思議の国のアリス』などの童話をモチーフにしつつも、残酷な描写が随所にみられるダークファンタジーとなっている。成人の儀で闇の監獄へ落とされた後に10年後の世界に生還を果たした少年、オズ・ベザリウスを主人公に、自らの存在の意味を問う彼がその真実を見つけ、世界の危機を救うまでを描く。物語全体にわたる伏線が読む人を魅了し、単行本累計発行部数500万部を超えた人気作である。

これ以上自分が知らぬ間に誰かを傷つけることを恐れた白いアリスは、黒うさぎのオズの力を使って自分の記憶を壊すことを決める。しかし、オズにこれ以上の破壊行動をさせたくなかったアリスは、オズの力を吸収して自身が新たな黒うさぎのチェインとなり、その手で白いアリスの記憶を壊そうとした。その意図を汲んだ白いアリスは、自ら攻撃を受け入れようと、涙を流しながらアリスに向かって手を伸ばす。そしてアリスもまた泣きながら、白いアリスに向かって手にした鎌を振り下ろした。しかしそのとき、アリスの攻撃は強い光とともに阻まれた。白いアリスの躰を器にその中に存在していたアヴィスの意志は、「傷つけないで…アリスを…」と言い、彼女が自分自身を傷つけることを許さなかったのである。記憶を壊すだけなのだと告げてもかたくなに首を振るアヴィスの意志に業を煮やしたアリスは、「駄々をこねるな!!このわからず屋があぁぁぁぁぁぁっ!!!」と叫びながら渾身の一撃を繰り出した。その結果、白いアリスの記憶の破壊は実現したものの、彼女の本来の望みであった記憶の消滅は叶わず、記憶がバラバラに引き裂かれるという中途半端な状態にとどまってしまった。不完全に残された白いアリスのジャックへの想いはさらなる混乱を生み、白いアリスと魂のつながりをもっていたアリスまでもが、「黒うさぎのアリス」としての間違った自覚だけを残して記憶を失うこととなってしまったのだった。

「アリスは…わたさない。ずっとずっと一緒にいる」

異形へと姿を変えたアヴィスの意志

アリスによって白いアリスを壊すことを告げられたアヴィスの意志の言葉である。100年前の過去に渡ったアリスは、その時代に存在していたアリスの元へとたどり着く。ジャックによって世界を保つ鎖が壊されたことによって世界が崩壊へと向かう混乱の中、過去のアリスは頭を抱えて部屋にいた。存在する時間軸が異なる今のアリスは、過去のアリスの眼には視えない。しかし、アリスの中に存在し、時間軸に縛られることがないアヴィスの核の眼には、その姿が視えていた。アリスの呼びかけに反応して顔を挙げたアヴィスの核は、アヴィスの意志から白いアリスを開放するという彼らの目的を知る。「この子と一緒にいられなくなるのか」と問うたアヴィスの核に、アリスは、心と躰が崩壊寸前になっている白いアリスはもう核の力を受け止めていられないこと、アリス自身が開放されるのを望んでいることを告げた。しかし、白いアリスのことを「ちゃんと壊れないように大事にしている」と言うアヴィスの核はその事実を頑なに否定する。「ヒトリにもどるのはいやだ」と言って本来の力を行使し始めたアヴィスの核は、「アリスは…わたさない。ずっとずっと一緒にいる」と言ってアリスに襲いかかったのである。その恐ろしく様変わりした姿に、白いアリスの中に封じられたアヴィスの核の不気味さが露わになった場面である。

「まっしろで…まっくろで…どうしようもなく…寂しいひと。やっと、あなたをみつけた」

ジャック(下)に微笑みかけた白いアリス(上)

本当の心の内をさらけ出したジャックに対する白いアリスの言葉である。アヴィスの深淵で待つ白いアリスとその中に存在するアヴィスの意志の元にたどり着いたジャックは、オズやアリスの言葉に耳を貸さないようにと告げ、アヴィスの核の力を借りて世界の崩壊を防ぐという彼らの計画を阻止しようとする。しかし、ジャックの考えることとは裏腹に、彼の口から出てきたのは、これまで隠し通してきたその本心であった。ひとたび語り出したジャックはもはや自分でもそれを止められず、自分が今までアリスに嘘をついていたこと、ただレイシーにもう一度会いたい一心でアリスに近づき黒うさぎのチェインを作らせたこと、アリスのためと言ったり迎えに行くと言ったりしたことも全てが嘘であり、ただ生きていたい自分のためにやったのだということを赤裸々に語り続けたのである。しかし、あたかも懺悔のようなジャックの話を聞き終えたアリスは、彼を責めることもなく、「まっしろで…まっくろで…どうしようもなく…寂しいひと。やっと、あなたをみつけた」と言って優しく微笑みかけた。ジャックのことが大好きであるにもかかわらず彼のことが何もわからないことに、白いアリスはずっと恐怖を感じていた。たとえこれまでのことが嘘だと分かったとしても、ジャックの本当の心を知ることができたアリスは、ようやく孤独から抜け出すことができたのだった。

「―――”オズ”。私の、アリスの、愛しい黒うさぎ」

契約を結ぶためにオズの名を呼ぶアリス(奥)と白いアリス(手前)

オズと契約を交わした二人のアリスの言葉である。世界がアヴィスに堕ちるのを防ぐため、オズ達は白いアリスとして存在しているアヴィスの意志の躰を黒うさぎの力で壊して、封じられている核の力を開放し、その力を利用して鎖の崩壊を防ごうとしていた。躰が壊されるということは、つまりは白いアリスの存在が消滅するということである。しかし、白いアリスもまた、アヴィスの核から解放されることを望んでいた。
自らの片割れであるアリスからオズ達がやろうとしていることを聞いた白いアリスは、それを受け入れ、「オズ、私と契約を」と言いながら黒うさぎとなったオズに向かって手を伸ばす。オズは「オレの大切なアリス、名前を呼んで」と優しく語りかけ、二人のアリスもまた穏やかに笑いながら、「―――”オズ”。私の、アリスの、愛しい黒うさぎ」と返したのだった。

チェシャ猫の名言・名セリフ/名シーン・名場面

チェシャ猫の概要

チェシャ猫

チェシャ猫は、100年前にアリスの親友であった黒猫が姿を変えて生じたチェインである。アリスと同様に特別なチェインであり、確立した人格を持つ。また、アリスは人を喰らうことを必要としないのに対し、チェシャ猫は契約者を必要としない。アヴィスの意志を護ることを望んで人の形をとっているが、弱ったときには黒い猫の影のような本来の姿に戻る。黒猫だったときにヴィンセントによって両眼を奪われたが、チェインとなった後にアヴィスの意志が奪ったブレイクの左眼を与えられる。当時のアリスの記憶から作られた特別な空間に留まり、その記憶のもっとも深い部分を護っていた。アヴィスの意志の狂信者であり、アヴィスの均衡を侵すものを良しとせず、彼女に害を為すであろうものを徹底的に排除しようとする。

「あの子は、アリスは、全てを忘れてしまいたかったんだ!!だから…自分の意志で記憶を破り捨てたんだよ!!」

オズ(中央)に向かって嘘つきと連呼するチェシャ猫(右)

アリスの記憶を探すオズにチェシャ猫が発した言葉である。アリスの記憶から成る空間でオズ達に襲い掛かったチェシャ猫は、「おまえ達はアリスの記憶を集めているんだろう?なぜそんなことをする」と問う。「アリスがそれを望んでいるからだ」というオズの答えを聞いたチェシャ猫は、狂ったように「嘘つき」と連呼し、「あの子は、アリスは、全てを忘れてしまいたかったんだ!!だから…自分の意志で記憶を破り捨てたんだよ!!」と言い放った。思ってもみなかった事実に驚愕するオズに、チェシャ猫は、彼がここで護っているのはアリスがもっとも消し去りたかった記憶であることを明かす。その記憶とは、100年前にアリスが命を絶たれ、全てを失ったときの記憶であった。チェシャ猫のこの言葉は、後に発覚するアリスの悲しい過去に繋がる伏線となっている。

「おまえは変な人間だな」「…たしかにここにいるのに、どこにもいない」

チェシャ猫の言葉に翻弄されるオズ

オズとの戦闘中にチェシャ猫が告げた言葉である。オズをいたぶるように攻撃していたチェシャ猫は、オズにどことない不自然さを感じ、「おまえは変な人間だな」と言う。どれだけ傷つけても平気そうに笑い、自分のことであってもどうでもよさげな様子のオズを見たチェシャ猫は、彼のことを「…たしかにここにいるのに、どこにもいない」と表現した。感覚的な描写ではあるが、この言葉を聞いたオズは、以前ブレイクに「君は一体どこにいるんだい」と問われて何も答えられなかったことを思い出す。初対面のチェシャ猫にさえも自分が自分のことが何も分かっていないことを見透かされたオズは、またもや戸惑うこととなるのだった。

「チェシャはあの子のためだけにここにいる。あの子のために、おまえらを殺すんだ!!」

ブレイク(右上)を倒そうとするチェシャ猫(左下)

ブレイクに対峙したチェシャ猫が発した言葉である。ブレイクとの戦闘中、オズがアリスの記憶の空間を壊そうとしていることを察したチェシャ猫は、「あの金髪(オズ)を殺しに行く」と言い、「おまえも黒うさぎも鴉もチェシャがみんな殺してやる」と叫んだ。「チェシャはあの子のためだけにここにいる。あの子のために、おまえらを殺すんだ!!」と「あの子のため」を繰り返すチェシャ猫の言葉には、なんとしても自らの責務を果たそうとする意志と、歪なほどに強い「あの子」、すなわちアリスへの執着が現れている。

「君をかなしませるもの…傷つけるもの…ぜんぶ…ぜんぶチェシャが…!」

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