PandoraHearts(パンドラハーツ)の名言・名セリフ/名シーン・名場面まとめ

『PandoraHearts(パンドラハーツ)』は、『月刊Gファンタジー』にて連載された望月淳による漫画作品である。『不思議の国のアリス』などの童話をモチーフにしつつも、残酷な描写が随所にみられるダークファンタジーとなっている。成人の儀で闇の監獄へ落とされた後に10年後の世界に生還を果たした少年、オズ・ベザリウスを主人公に、自らの存在の意味を問う彼がその真実を見つけ、世界の危機を救うまでを描く。物語全体にわたる伏線が読む人を魅了し、単行本累計発行部数500万部を超えた人気作である。

空間の外にいるオズ達に手を伸ばすブレイク

レイム(左下)とシャロン(右下)に抱えられて力尽きようとするブレイク(上中央)

オズワルトとヴィンセントがアヴィスにつながる扉の中へと消え、残されたブレイクはもはや満身創痍であった。しかし、力が尽き果てようとしたブレイクの耳に、どこからかオズ達の声が聞こえてくる。ブレイクがいる扉の前の空間は周りとは一線を画す異空間であり、彼が空間に入ることができたのはその禍罪故であった。一方のオズ達は、すぐ近くにいながらも空間にたどり着くことができなかったのだ。「「だからせめて、繋がせてくれ」という言葉とともにブレイクが残り僅かな力を振り絞って伸ばした手はオズの手に届き、彼らもようやく空間にたどり着くことが叶う。そして、オズ達を扉の中へと送り出して後を見届けたブレイクは、今度こそ力を使い果たしてその場に横たわった。
自分にはもったいない幕引きだと満足気にブレイクが死を受け入れようとしたそのとき、彼を呼ぶ声が聞こえ、シャロンとレイムが駆け寄ってくる。この場にいるはずのない二人の姿を見止めたブレイクは、驚きながらも最期の力で体を起こし、彼らを抱きかかえるように倒れこんだ。命尽きようとするブレイクが発した一言、それは「私は―――死にたくない。まだ、ここにいたいです…」という願いであった。自らの罪の意識に苛まれながら死をものともせずに過ごしてきたブレイクは、最期の瞬間になってようやく、自分の本当の想いに気づいたのである。そしてブレイクは、後に残される者達の希望ある未来を願いながら眼を閉じたのだった。

イカレ帽子屋(マッドハッター)の名言・名セリフ/名シーン・名場面

イカレ帽子屋の概要

イカレ帽子屋(マッドハッター)

イカレ帽子屋(マッドハッター)は、ブレイクが契約しているチェインである。闇が帽子とマントを身に付けたような姿をしており、中央に大きな目が一つある。アヴィスに関わる全ての力を否定して消滅させる力を持ち、チェインはもちろん、人間でありながらチェインに近い存在であるバスカヴィルにとってもその能力は脅威となる。本作随一の強大な力をもつチェインであるが、ブレイクにとってイカレ帽子屋との契約はアヴィス堕ちから生還した後の二度目の契約であることから、その力を行使することはブレイク自身の躰に大きな負担がかかる。そのため、ブレイクの戦闘手段はおもに剣と体術になっており、イカレ帽子屋の力を発動させるのは、チェインやバスカヴィルを相手にし、なおかつやむを得ない場合に追い込まれた場合に限られる。

チェシャ猫の前にイカレ帽子屋が姿を現した場面

ブレイク(右下)の背後に現れたイカレ帽子屋(右上)

アリスの記憶の世界に連れ込まれたブレイクは、記憶が作り出す幻影に取り込まれてしまったかに見えたが、それはすべて演技であった。ブレイクの元に現れたチェシャ猫が彼を攻撃しようとした瞬間、ブレイクはいとも簡単にチェシャ猫を切り捨てたのである。その動きを封じたブレイクがチェシャ猫をいたぶっている間にその背後から黒い影が湧きだし、その影に当たった人形達は崩れ去っていく。そして、「こんな胸糞悪い夢を見せてくれた君へのちょっとしたご褒美」とブレイクが言った直後にイカレ帽子屋が姿を現し、大きな目を見開いた。すべてのチェインにとっての脅威となるイカレ帽子屋の力が初めてはっきりと現れた場面である。

ユラの屋敷で決死のブレイクがイカレ帽子屋の力を使った場面

ブレイク(中央)の背後に現れて周りを闇で包むイカレ帽子屋(上)

ユラの屋敷で一人バスカヴィルと相対することになったブレイクは、攻撃を受けて重傷を負い、死を覚悟する。長きにわたる契約の影響でブレイクの身体はすでにボロボロであり、たった一度イカレ帽子屋の力を使うことにさえもかなりの負担を強いられるまでになっていた。それでも、唯一の親友であるレイムがバスカヴィルの手にかかったことに激怒していたブレイクは、せめてバスカヴィルを道連れにしようとイカレ帽子屋を発動させる。人間でありながらもチェインと似た性質をもつバスカヴィルにとってイカレ帽子屋の能力は驚異的なものであり、その発生させる闇に飲まれそうになったファングとリリィは窮地に陥ることとなる。すんでのところで乱入したギルバートがブレイクを止めたために二人の命が奪われることはなかったものの、この後、イカレ帽子屋の力をのせたブレイクの剣に貫かれたファングは、躰が崩れ去って消滅することとなるのである

力を取り戻したイカレ帽子屋が周りのバスカヴィルを次々と消滅させる場面

バスカヴィルに襲い掛かるイカレ帽子屋(上)

ルーファスの手によってレインズワースが所有するアヴィスの扉の力が遮断され、その扉を通じて契約したレインズワースのチェインの力は封じられることとなった。チェインを使えなくなったブレイク達はバスカヴィルに囚われ、オズ達をおびき出すための人質とされてしまう。しかし、これらはすべて、オズ達に生き延びるチャンスを与えるべく、ルーファスが企んだことであった。
ルーファスが託した暗号を読み解いたオズ達は彼がひそかに届けていたレインズワースの鍵を見つけ、その鍵が壊されたことによって、せき止められていたレインズワースの扉の力が再び流れ出す。絶体絶命の危機にあったブレイク達であるが、扉の力が戻ったのをその身に感じたことにより、元通りにチェインを使えるようになったことを知る。瞬時にすべての状況を理解したブレイクは、「全くらしくないことをする」と言いながら、イカレ帽子屋を出現させた。焦ったバスカヴィルは次々とチェインをイカレ帽子屋にぶつけるが、チェイン殺しの力をもつイカレ帽子屋は、いとも簡単にすべてのチェインを消滅させていく。イカレ帽子屋、そしてブレイクの驚異的な強さを象徴する一場面である。

ジャック=ベザリウスの名言・名セリフ/名シーン・名場面

ジャック=ベザリウスの概要

ジャック=ベザリウス

ジャック=ベザリウスは100年前に生きたベザリウス家の人物であり、本作の黒幕的存在である。ベザリウス家の第三子として誕生したが、母親が妾であったために不義の子と蔑まれ、貧しい生活を送っていた。周りのすべてを憎んで生きてきたが、人生に絶望しているなかでレイシーに出会い、その魅力に憑りつかれる。レイシーと共にあり続けるためにすべてを捧げ、彼女が存在する世界に生きる意味を見出していた。サブリエの悲劇から国を救った英雄として後世に名を残しているが、実はサブリエの悲劇を引き起こした張本人である。レイシーがオズワルトの手でアヴィスに堕とされた後、レイシーが愛した世界を彼女の元に届けるため、世界をアヴィスに堕とそうとした。
本作においては開始当初から故人として扱われており、アリスの記憶の中に残る魂の断片として登場する。現在はオズの精神の中に宿っており、オズの躰をのっとることもある。しかし実際にはオズの躰はジャック本人の躰が巻き戻ったものであり、抜け殻になったジャックの躰に彼が契約していたチェイン・黒うさぎのオズの魂が宿ったのが、今のオズ=ベザリウスという人間である。はじめのうちはオズやアリスを助ける優しげな人物として描写されているが、その話す内容や行動は嘘に塗れている。物語が進むにつれて、その無慈悲な一面が明らかになり、バルマ公によってサブリエの悲劇に関わる100年前の所業が明らかにされることとなる。

「――私の名前はジャック。バスカヴィルと剣を交え、サブリエの悲劇をこの目で見てきた証人―――…ジャック=ベザリウスだ!!」

オズの躰を借りて周りに名乗りを上げたジャック

ジャックが公の場に初めて姿を現したときの言葉である。チェシャ猫の住処から帰還したオズとアリスだったが、落ちた先は四大公爵家の会議の真只中であり、公爵たちの命を狙う逆賊と勘違いされた二人はパンドラに追われる身となる。オズたちが追い詰められて窮地に陥ったとき、チェシャ猫の住処で出会ったジャックの声がオズの頭の中に響き、その意識は沈んでいった。そして、オズに代わって彼の身体を支配したジャックは、パンドラの人間たちの前で「――私の名前はジャック。バスカヴィルと剣を交え、サブリエの悲劇をこの目で見てきた証人―――…ジャック=ベザリウスだ!!」と、自ら名乗りをあげる。これによってオズの中にジャックの魂が眠ることが周りの人間の知るところとなり、オズは英雄の生まれ変わりとして賛美されることとなるのである。

「そして彼らは再び巻き起こす、サブリエの悲劇をこの大地に!…だが私の魂は常にこの少年と共にある。彼は君達を導き、やがてバスカヴィルを倒すための柱となるだろう。オズ=ベザリウスを護り抜け。それこそが四大公に仕えし気高き騎士達の…使命だ!!」

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