ピアノ・レッスン（映画）とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

エイダ・マクグラスは6歳の頃から話すことをやめた。彼女は言葉を話さない代わりにピアノを弾くことで自分自身の感情を表現しているのである。
映画のオープニングシーンでエイダは、「私自身は自分に声がないと思っていない。ピアノがあるから」と言う。
言葉を話すことが当たり前の人から見ればエイダの考え方は奇妙であるが、エイダ自身はピアノを弾くことで己の感情を表現しているので声がないと思っていないのだ。
ピアノを弾くことでエイダの内に秘める感情が強く感じられるシーンだ。

雨の中でエイダ・マクグラスとアリスディア・スチュアートが写真に収まるシーン

スコットランドから遠い異国ニュージーランドへ嫁いだエイダ・マクグラスはアリスディア・スチュアートと写真に収まる。雨が降る中で写真に収まる2人だが、エイダはスチュアートが「重すぎる」という理由で運ぶことを拒否し、海岸に残されたままのピアノが気になって仕方がない。
結婚という祝福に満ちた行事であるはずが、エイダにとってはピアノが大事であるということが伝わってくる。

ジョージ・ベインズ「ピアノを取り戻す方法がある。ピアノを取り戻したいだろう？」

エイダが奏でるピアノの音色に心を奪われていったベインズはエイダに「ピアノを取り戻す方法がある。ピアノを取り戻したいだろう?」と持ちかけた。
ベインズがエイダに持ちかけた提案とは、鍵盤の数だけベインズがエイダに好きなことをするというものであった。
自身の喜怒哀楽を表現するピアノを取り戻したいエイダはベインズの提案を受け入れた。

ベインズの提案を受け入れたエイダはピアノを教えるという目的でベインズが住む小屋を訪ね続ける。
エイダは鍵盤の数に応じてスカートを上げる、ベインズに自分の体を触らせるなど、ピアノを教えるという目的の裏で情事を重ねていった。

ベインズのエイダに対する抑えがたい気持ち、エイダと情事を重ねていたいという思いが伝わってくるセリフである。

『ピアノ・レッスン』の裏話・トリビア・小ネタ／エピソード・逸話

エイダ役の初期候補はシガーニー・ウィーバー

映画『ピアノ・レッスン』で口が利けない女性エイダ役の候補に挙がっていたのはシガーニー・ウィーバーであった。『エイリアン』や『デーヴ』などの映画に出演しているシガーニー・ウィーバーをエイダ役としてジェーン・カンピオン監督はイメージしていたが、エイダ役に興味を持った女優ホリー・ハンターはカンピオン監督に熱心に売り込みをかけた。ハンターはスコットランド訛りの英語でセリフを話す自身の映像とピアノを弾く映像をカンピオン監督に送って熱心に売り込んだ結果、エイダ役を演じることが実現した。

受賞当時史上2番目の若さでアカデミー助演女優賞を手にしたアンナ・パキン

映画『ピアノ・レッスン』でホリー・ハンター演じる口が利けない女性エイダ・マクグラスの娘フローラ・マクグラスを演じていたのはアンナ・パキンである。
アンナ・パキンはこの映画でアカデミー助演女優賞を受賞した。
受賞した当時は11歳であり、1973年の映画『ペーパー・ムーン』でアカデミー助演女優賞を受賞当時10歳で手にしたテイタム・オニールに次ぐ史上2番目の若い受賞者となった。

ジェーン・カンピオンは公開当時史上3人目のアカデミー監督賞を受賞した女性

映画『ピアノ・レッスン』で監督と脚本を務めたのがジェーン・カンピオンである。彼女は本作『ピアノ・レッスン』で第66回アカデミー脚本賞を受賞している。
2021年の映画『パワー・オブ・ザ・ドッグ』で第94回アカデミー監督賞を受賞した。
2008年の映画『ハート・ロッカー』でキャスリン・ビグローが、2020年の映画『ノマドランド』でクロエ・ジャオがアカデミー監督賞を受賞している。
ジェーン・カンピオンは史上3人目のアカデミー監督賞を受賞した女性監督となった。

『ピアノ・レッスン』の主題歌・挿入歌

主題歌：Michael Nyman 「The Heart Asks Pleasure First」

映画『ピアノ・レッスン』の主題歌「The Heart Asks Pleasure First」は、ホリー・ハンター演じる主人公エイダが海辺に置き去りにされたピアノで演奏している曲である。
イギリス人音楽家マイケル・ナイマンが手掛けた主題歌は流れるような曲調が印象的で、耳にするだけで映画のシーンが目に浮かんでくる。

主人公エイダがピアノを弾く喜びが伝わってくる曲で、ピアノに対するエイダの愛情を感じさせる。

映画『ピアノ・レッスン』を華麗に彩る主題歌「The Heart Asks Pleasure First」はトヨタ自動車のテレビコマーシャルにも使用されたことがある。

挿入歌：Michael Nyman 「Big My Secret」

挿入歌「Big My Secret」は映画『ピアノ・レッスン』のオープニングシーンで、ホリー・ハンター演じる主人公エイダがピアノで演奏しているシーンで使用されている。
作曲を担当したのはイギリス人音楽家マイケル・ナイマンである。

重厚な曲調でありながらも、暗闇や見知らぬ地であるニュージーランドへ嫁ぐことへの不安や困難な旅を予感させる。

まだ見ぬ夫がいる未開の地ニュージーランドへ一人娘と共に嫁ぐことになったエイダが、旅の途中で弾けなくなってしまうことを思って一心不乱に演奏している。
自身の喜怒哀楽を表現するピアノはエイダにとって大切な存在であることが伝わってくる。