呪怨（映画）とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『呪怨』（映画）の概要

『呪怨』（映画）とは2003年に公開された日本のホラー映画作品である。正式名称は『劇場版 呪怨』。監督・脚本は清水崇。
2000年に東映ビデオから『呪怨 ビデオオリジナル版』と『呪怨2 ビデオオリジナル版』が発売されたが、当時は売り上げが伸びなかった。徐々に口コミで怖さが評判となり『劇場版 呪怨』が制作された。映画は大ヒットし後にシリーズ化している。さらにはハリウッドでリメイク化され、ノベライズやコミック化、ゲーム化・舞台化・ドラマ化などのメディアミックス展開をしている。
ボランティアでヘルパーをしている仁科理佳は、訪問した徳永家で徳永幸枝にのしかかる女の影を目撃する。幸枝は顔を両手で覆った姿で死亡し、女の影と目が合った理佳は失神してしまう。それ以後、理佳は不気味な女や少年の姿を何度も目撃するようになる。
一方、徳永家では徳永幸枝以外の家族も不審死や謎の失踪を遂げ、警察はかつてその家で起きた殺人事件の捜査を担当していた元刑事の遠山に協力を求める。しかし遠山も、遠山に協力を依頼した刑事たちも伽椰子の姿を見、途轍もない恐怖を体験する。そして遠山の娘もまた、父と同じ恐怖を体験して父と同様に伽椰子に連れ去られてしまう。
ただその家に関わっただけなのに襲い掛かる心霊現象は理不尽なまでに恐ろしく、その呪いはどんどん関係者へと感染していく。
キャッチコピーの「総毛立つ快感」の通りに、全編を通して様々な恐怖を目撃することになる。

『呪怨』（映画）のあらすじ・ストーリー

プロローグ

ボランティアでヘルパーをしている女子大生の仁科理佳（にしなりか）は、福祉センターの広橋（ひろはし）に徳永幸枝（とくながさちえ）のところに行ってくれないかと頼まれる。ボランティアにすぎない自分が1人で行くことに難色を示す理佳だったが、幸枝を担当していた正規のヘルパーと連絡がとれなくなってしまい困っているのだと言う。「顔を見てくるだけでいいから」と押し切られて向かった徳永家に不穏な気配を感じる理佳だったが、玄関を開けて入った屋内はゴミが散乱していた。そしてガラス戸にカリカリと爪を立てながら倒れ込んでいる幸枝しか人はおらず、理佳は幸枝の世話と掃除を始めることにする。痴呆がすすんでいる幸枝とは会話が成り立たず、里香に体を拭いてもらうのに身を任せるだけだった。
掃除機をかけていた理佳は夫婦と黒猫を抱いた男の子の写真を見つけるが、母親の顔の部分は切り抜かれていた。そのまま2階の掃除に向かった理佳だったが、ガムテープで目張りをされた押入れに閉じ込められている少年と黒猫を発見する。その少年は家族写真に写っていた子供だった。幸枝に子供のことを聞いても返答は得られず、福祉センターに電話をする。そこに徳永家の固定電話に徳永仁美（とくながひとみ）からの電話が入り、そのまま留守番電話に幸枝の様子を尋ねるメッセージが残される。仁美は幸枝の娘であるらしかった。
理佳に名を問われた少年は「俊雄（としお）」と答えるが、その顔は理佳の方を向かず、幸枝がいる部屋の方をじっと見つめている。理佳は幸枝の元へと向かい、悲鳴をあげる幸枝にのしかかる女の影を目撃する。「あ゛あ゛あ゛あ゛」と呻き声をあげるその影と目が合った理佳はそのまま気絶してしまった。そして気絶した理佳を俊雄が見下ろしていた。

徳永家を襲う伽椰子

サラリーマンの徳永勝也（とくながかつや）と専業主婦の徳永和美（とくながかずみ）の夫婦は、勝也の母親である幸枝と同居している。夜中に起きて物音を立てる幸枝のせいで夜中に起こされてしまう和美は不満が募るばかりだった。「ヘルパーに相談してみるか」と言う勝也に、「今日は勝也の妹の仁美が家に来るんだから、なるべく早く帰ってきてね」と言って勝也を仕事に送り出す。
昼寝をしていた和美はカップが倒れる音で目を覚ます。また幸枝のせいかと思った和美だったが、どこからか黒猫が家に入り込んでいた。猫を追って二階への階段を昇る和美の前で、誰かの手が猫を抱き上げていく。「誰なの？」と声をかけながら恐る恐る2階に上がった和美の前を白い少年が駆けていく。そして後を追った和美の絶叫が響き渡る。
夜、勝也が帰宅した時に和美の返事は無く、幸枝が布団でぼんやりとしているだけだった。室内は散らかったままであり、2階に上がった勝也はベッドに倒れ込んでいる和美を発見する。和美は声を出すこともできない状態だった。救急車を呼ぼうと携帯を取りだした勝也の後ろを白い少年が走り抜ける。不審な人の気配に室内を見回す勝也だが、そんな彼の後ろでは真っ白い少年が和美の顔を覗き込んでいた。勝也が怪しい気配に振り向いたときは誰もおらず、ベッドの周りを見て回る勝也の前に、猫の唸り声をあげる真っ白い不気味な少年が現れる。「何してる」と詰問する勝也の前で少年の口から猫の鳴き声が響き渡り、襖がひとりでに勝手に閉まる。そして和美の息は途絶えていた。和美の死に怯えを見せる勝也だったが、その表情はすぐに不気味なものに変貌する。
仁美が約束通りに徳永家を訪れる。しかし家の中は散らかっており、和美からの返事はない。母の幸枝は布団でぼんやりと座り込むだけだった。夕食の支度を始める仁美だったが、2階では勝也が和美の死体を寝室から運び出していた。ドアの閉まる音に階段を見上げた仁美は、階段に座り込む勝也を見つける。
急用ができたという勝也に家を追い出された仁美は渋々雨の中を帰っていき、仁美を追い出した勝也の表情は凶悪なものに変化していく。2階へと上っていく勝也の姿を白い女の影が見つめていた。

恐怖は関係者にも広がっていく

仁美は会社から勝也の家に電話をかけ、留守電に母の容態を尋ねるメッセージを残す。帰宅しようと廊下を歩く仁美の背後から不気味な音が聞こえ、女子トイレに飛び込んだ仁美の携帯に兄から電話がかかってくる。しかしその電話からは「あ゛あ゛あ゛あ゛」という不気味な呻き声しか聞こえてこない。隣の個室に謝罪しながらトイレを出た仁美だったが、バッグに付けていた熊のストラップを落としてしまう。それを拾い上げようとした仁美の前で個室のドアが開き、不気味な女が姿を現した。警備員室に逃げ込んだ仁美をその場に残し、警備員が5階の女子トイレへ向かう。その様子を防犯カメラで見ていた仁美は、警備員が謎の黒い影に襲われる姿を目撃する。
悲鳴をあげて飛び出した仁美は、マンションに帰り着くとエレベーターで自分の部屋へと向かう。7階まで上がっていく仁美を、各階のエレベーター前にいる真っ白い少年が見つめていた。
仁美が部屋に帰り着いたところに勝也から電話がかかってくる。「マンションの前まで来てるんだけど何号室だっけ」と尋ねる勝也に「702号室。ねえ、すぐ来て」と仁美は頼む。チャイムが鳴り、ドアスコープの前に立つ勝也の姿を確認した仁美はドアを開けるが、そこには誰も居なかった。そして携帯からは不気味な呻き声が聞こえてきた。
布団に潜り込みTVを点ける仁美だったが画像はどんどん荒れていき、女性リポーターの顔が不気味に変化していく。TVを消し、頭まで布団に潜り込んだ仁美はトイレに落としてきたはずの熊のストラップを見つける。恐怖に震える仁美を、布団の中にいた伽椰子が引きずり込んでいった。

伽椰子は刑事にも襲い掛かる

徳永家を訪問した広橋は、幸枝の遺体とその傍で放心している理佳を発見する。広橋の呼びかけにも答えず、理佳はぼんやりと空を眺めるだけだった。
警察が徳永家にやってきて現場検証が始まる。刑事の中川（なかがわ）と五十嵐（いがらし）は勝也の携帯に電話をかけるが、コール音は2階の天井裏から聞こえてくる。そこには勝也・和美夫妻の遺体があった。
入院している理佳のところに親友の露木真理子（つゆきまりこ）が見舞いに訪れるが、そこへ中川が事情聴取に訪れる。あの家で俊雄という子供を見かけたという理佳に、中川は徳永夫妻には子供は居なかったと告げる。家にあった家族写真も徳永家の物ではなかった。
五十嵐が調べてみたところ、徳永夫妻の前にもあの家に住んでいた家族や関係者が死んだり失踪していたりするという。勝也の妹も連絡がとれず、彼女の勤め先でも警備員が1人死んでいた。
あの家では昔、佐伯剛雄が妻の伽椰子を殺害した上に路上で変死していたという事件があった。佐伯夫妻の一人息子の俊雄は現在行方不明である。そして伽椰子の死体が発見された場所も天井裏であった。
小学生の娘のいづみと過ごしている遠山雄治（とおやまゆうじ）を五十嵐が訪ねてくる。遠山は刑事だった頃に佐伯家の事件を担当していた。「佐伯家の事件について話を伺いたい」という五十嵐に「放っておいてくれないか」という遠山。だがあの家でまた人が死に、当時の話を聞ける人が今はもう遠山しかいないのだという。
中川は理佳に佐伯俊雄の写真を見せ「あなたが徳永家で見たのはこの子ですか？」と問いただす。少年が見つかったのかと聞く理佳に、中川はこの少年は5年前に行方不明になり、まだ見つかっていないのだと告げる。生きているとすれば11歳になっているはずだった。
そして福祉センターでは広橋の変死体が発見される。
五十嵐が遠山を警察署まで連れてくる。徳永仁美の会社の防犯カメラの記録映像を3人で見ながら、今回の事件について五十嵐が説明する。カメラに写っている徳永仁美も自宅マンションから姿を消したという。中川と五十嵐が呼び出され1人で映像を見る遠山だったが、映像の中の伽椰子と目が合ってしまう。
夜中にふと目覚めた理佳は自分を見つめる真っ白い少年を目撃し、更には真上から自分を見下ろす伽椰子と目が合ってしまう。
深夜、遠山は徳永家にガソリンを運び込む。ガソリンを家中に撒き散らす遠山だったが、ガラス戸を開けた先は昼間の明るい室内があり、家から逃げ出そうとする女子高生と目が合う。彼女は友人と肝試しに来ていた遠山の娘のいづみだった。驚愕の表情を浮かべたいづみはそのまま外へ逃げて行ってしまう。後を追おうとした遠山だったが、足を踏み入れた先は深夜の徳永家の室内だった。
2階から聞こえる女子高生の声に遠山は階段を上っていく。半分開いたドアの向こうは昼間になっており、3人の女子高生が絶叫を上げながら消えていった。そして這い寄ってくる伽椰子を目撃した遠山は階段を転がり落ちてしまう。そこに急に姿を消した遠山を探していた中川と五十嵐が駆け付けたが、彼らも階段を這いおりてくる伽椰子の姿を目撃する。

伽椰子に襲われる女子高生

女子高生のいづみは学校の廊下に張り出された修学旅行の写真を確認するが、自分が写っているものが1枚もなかった。友人の美雪（みゆき）と千春（ちはる）は教師にいづみの写真がないことについて問いただす。暗い表情で下校するいづみだったが、行方不明になっている3人の女子高生に関する張り紙を目にするや否や、自宅に向かって駆け出していく。家では仏壇の前で母親がぼんやりと座り込んでいた。不安な表情を浮かべたいづみはカーテンを閉め切り、体を小さく丸めるのだった。
美雪と千春は修学旅行の写真を持っていづみの家を訪れる。いづみの部屋はカーテンが閉められ、開けようとするのをいづみが悲鳴を上げながらとめる。更には窓ガラスには新聞紙がびっしりと貼りつけられていた。いづみが言うには、行方不明になった沙織たち3人が部屋を覗くのだという。実は3人が行方不明になったとき、いづみも彼女たちと一緒にいた。修学旅行の帰りに高宮沙織（たかみやさおり）の提案で、4人でお化け屋敷に行ったのだという。いづみは今はもう、その家がどこにあったのかも思い出せない。それでもいづみは美雪と千春はあの家には近づかないようにと忠告する。そしていづみは「怖くて自分だけその家から逃げだしてしまったのだ」と叫び暴れだす。
暗い表情で帰ろうとする2人は、いづみの母から父親も同じように部屋の窓を塞いで死んだと告げられる。修学旅行の写真を取り出してみた2人だったが、いづみの写真は全て目が黒い影で覆われていた。写真を投げ捨てて2人は逃げ去ってしまう。
自室を出て和室を覗いたいづみは死んだ父の姿を目撃する。いづみの父は遠山雄治だった。彼女は父に「私あの時、父さん、見たんだよ」と告げる。そこで目が覚めたいづみは、新聞紙の隙間から部屋を覗き込む3人と目が合ってしまう。変わり果てた姿の3人に追いかけられたいづみは和室に逃げ込むが、仏壇から現れた伽椰子に頭を掴まれると、そのまま仏壇の中へと引きずり込まれてしまった。そして仏壇には遠山父娘の顔が浮かび上がるのだった。

理佳が迎えた終焉

理佳は大学卒業後、福祉センターで働いていた。入所者の斎藤の散歩の付き添いをするが、痴呆が進んでいる彼は誰もいない方を向いて「いないいないばあ」をするだけだった。その夜、髪を洗っていた理佳は自分以外の手が頭を掴んでいたような気がして振り向くが、当然風呂場には理佳以外の誰もいない。
翌日、久しぶりに親友の真理子と出かけ互いの近況を語り合う。真理子は念願の小学校教師になっていた。真理子の受け持つクラスには、1人だけ家庭訪問が終わらない児童がいるのだという。その時、テーブルの下から猫の鳴き声が聞こえ、テーブルの下を覗き込んだ理佳は不気味な白い少年と目が合ってしまう。家に帰りぐったりと休む理佳だったが、猫の鳴き声に目が覚めると部屋の中には沢山の黒猫がいたという夢を見る。
真理子から理佳の様子を心配する電話がかかってくるが、真理子は今、家庭訪問が終わっていない児童の家にいるのだという。その電話口から不気味な猫の鳴き声が聞こえてきた。理佳は急いで真理子のところへ向かうために家を飛び出す。
真理子がいるのは徳永家だった。彼女の後ろのソファには傷だらけの少年が座っている。電話が終わって振り向くと消えていた少年を探すために「俊雄君」と呼びかけながら、真理子は2階への階段を上っていく。KEEP OUTのテープを潜り抜けて徳永家へ飛び込んでいく理佳。理佳が目撃したのは、2階の天井裏に引きずり込まれていく真理子の暴れる足だった。そして理佳は、自分の方へ這い寄ってくる伽椰子を目撃する。逃げようとした理佳は、幸枝や斎藤の様子と自分の体験を思い出し、手で顔を覆うと伽椰子を見るのだと気付く。試しに顔を手で覆ってみた指の隙間からは、自分の腹から這い出ようとする伽椰子の姿が見えた。手を下ろせばその伽椰子は見えなくなったが、理佳の目の前で血塗れの恐ろしい形相の伽椰子が階段を這いおりてくる。再び指の隙間から覗き見た伽椰子は美しい女性だった。
いつのまにか伽椰子は姿を消し、今度は血塗れの佐伯剛雄が階段を下りてくる。そして理佳は彼が伽椰子を殺したのだと気付く。そんな2人を手すりの隙間から俊雄が見ていた。自分へと延びる剛雄の血塗れの手に理佳は絶叫するのだった。
外は平穏な世界が広がっているのに、その家の天井裏では血塗れの伽椰子が眠っている。

『呪怨』（映画）の登場人物・キャラクター

主要登場人物

仁科理佳（にしなりか／演：奥菜恵）

ボランティアでヘルパーをしている女子大生。訪問した徳永家で徳永幸枝（とくながさちえ）が女の影に襲われるところを目撃する。それ以後、不気味な伽椰子（かやこ）や俊雄（としお）の姿を目撃するなどの心霊現象に襲われるようになる。親友の露木真理子（つゆきまりこ）も一連の心霊現象に巻き込まれていると気付き助けに行くが、真理子は伽椰子に連れ去られてしまった。その後、理佳の元にも伽椰子が這い寄ってきたが、その後に現れた佐伯剛雄（さえきたけお）に襲われた。

徳永仁美（とくながひとみ／演：伊東美咲）

OL。勝也の妹。兄夫婦と同居している母を見舞うために、時々徳永家を訪問している。会社で不審な人影を見たため警備員室に逃げ込むが、様子を見に行った警備員が不気味な影に襲われるところを防犯カメラで目撃する。自宅マンションに戻ってからも不気味な心霊現象に襲われ続け、布団に潜り込んだところを布団の中に潜んでいた伽椰子に襲われた。

遠山いづみ（とおやまいづみ／演：上原美佐）