蜘蛛ですが、なにか?(小説・漫画・アニメ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『蜘蛛ですが、なにか?』とは、馬場翁が『小説家になろう』に投稿したweb小説である。KADOKAWAからライトノベルが発売、その後、漫画化・アニメ化された。2021年8月にはシリーズ累計発行部数が430万部を突破している。女子高生だった前世の記憶を持って、蜘蛛に転生した主人公が成長していく過程を描く。作中に張り巡らされた多くの伏線の謎が解き明かされていく展開は、非常に魅力的である。

『蜘蛛ですが、なにか?』の概要

『蜘蛛ですが、なにか?』とは、馬場翁が小説投稿サイト『小説家になろう』に投稿したweb小説である。また、それを原作として、ライトノベル、漫画、アニメが制作されている。
web小説は、2015年5月から2022年1月まで連載された。
2015年12月には、「カドカワBOOKS」より単行本が発売。イラストは輝竜司が担当。全16巻が発売された。宝島社が発行している『このライトノベルがすごい!』では、2017年に単行本部門新作ランキングで第1位を、2018年に単行本・ノベルス部門ランキングで第2位を獲得している。
漫画は、2015年12月よりKADOKAWAの『ヤングエースUP』にて連載が開始された。作画はかかし朝浩が担当。
2021年の1月から7月には、全24話の連続2クールでTVアニメが放送された。
ある日、日本のとある高校の教室で爆発が起こり、教室にいた者たちは異世界へ転生する。そこは、スキルやステータスが存在し、「システム」に支配される世界。
主人公の「私」は魔物が蔓延るダンジョンの中で目を覚まし、自分が蜘蛛に転生していることに気付く。「私」は過酷な環境で生き抜くために、知恵とスキルを駆使したサバイバル生活を始めた。そうして成長を続けるうちに「私」は、この世界の真実を知ることになる。
本作では「私」の成長過程が丁寧に描かれており、最弱の魔物が強く成長していく姿が魅力的である。また、作中には様々な伏線が張り巡らされており、「私」は何者なのか、なぜ転生したのか、世界の真実とは何か、といった多くの謎が読者の興味をひく。

『蜘蛛ですが、なにか?』のあらすじ・ストーリー

エルロー大迷宮でのサバイバル生活

魔王と勇者の戦いが続く世界で、次元と時空を操る希少な次元魔法の使い手が魔王と勇者の双方の座についた。双方の魔法がぶつかり合い、両者とも滅んだ。その余波は別世界にまで及び、とある高校の教室で大爆発を起こし、26人の生徒と教師は命を落とした。犠牲となった彼らの魂は時空を渡り、魔王と勇者が争う世界で新しい命として生まれ変わる。

主人公の「私」は、古文の授業中に突然激痛に襲われた。しかし、目が覚めると蜘蛛に転生していることに気付く。持ち前のポジティブさを発揮して現状を受け入れると、生き抜くために、兄弟であろう蜘蛛の死骸を食す。その後、頭の中に直接「現在所持スキルポイントは100です」と声が響く。ゲームのような仕組みがこの世界にあることを知り、私はレベルを上げて多くのスキルを手に入れることを決意する。

スキル「蜘蛛糸」を使って罠を張り、魔物と戦った。倒した魔物はどれだけ不味くても、毒があっても生きるために食べた。そうして私は多くのスキルを獲得し、Lv.10になると「スモールタラテクト」へ進化した。また、スキル「鑑定」のレベルが上がったことで、世界最大の「エルロー大迷宮」にいることが判明する。
迷宮内を彷徨い、マグマ地帯の中層へ辿り着く。魔物との戦闘の成果で、私は高い戦闘力と隠密性を持つ「ゾア・エレ」になると、スキル「並列意思」が進化して「並列意思」になり、複数の独立した意思でそれぞれ思考が可能になった。私はそれらを体を動かすための「体担当」、情報整理を行う「情報担当」にした。スキル「鑑定」の進化や派生が起こらず残念がっていると、「要請を上位管理者Dが受諾しました」という天の声が響き、スキル「叡智」と称号「叡智の支配者」を獲得した。まるで、管理者Dが私を監視し、愚痴に合わせて新しいスキルを作ったようで困惑した。

称号「叡智の支配者」の獲得に伴い、スキル「魔導の極み」を得て、魔法が使用できるようになる。スキル「並列意思」のレベルアップによって増えた意思を「魔法担当」にした。
魔法を駆使し、戦闘スタイルの幅が広がった私は、強敵・火龍レンドに勝利する。その後、私の前に黒い男が転移してきて何か話すのだが、その言葉が理解できない。すると、突然スマートフォンが現れ、管理者Dと名乗る女性の声が聞こえてくる。黒い男は管理者Dと何か話すと去っていった。そして、管理者Dは私に自称世界最悪の邪神である自分の目的は娯楽だと告げた。
私の行動は管理者Dの興味を引いた為、スキル「叡智」はそのご褒美だった。尋ねたいことは山ほどあるものの、スマートフォンは消えてしまう。

さらに大迷宮の中を彷徨い、私はようやく上層への道を発見する。レベルも上がり、小型の蜘蛛型魔物「エデ・サイネ」へ進化した。その後、ついにスキル「禁忌」がLv10に達し、その効果をした。この世界についての多くの情報が、一気に脳内へインストールされる。それによって私は、この世界が崩壊寸前であることを知った。崩壊を止めるため、スキルやレベルを上げて強くなることを決意する。

エルロー大迷宮からの脱出

大迷宮からの脱出が目前に見えてきたが、その前に片付けなければならない問題があった。私と今世の母親、クイーンタラテクト(マザー)の間には彼女による支配関係が構築されているのだ。私は支配関係を繋いでいるパスを通してマザーの精神へ並列意思を送り込み、精神体を直接攻撃してマザーの弱体化を図る。私の本体は大迷宮を脱出する前に挑まなくてはならない強敵、地龍アラバに挑み、激闘の末に勝利を掴む。

マザーの弱体化を待ちつつ私は大迷宮の外へ出たが、マザーも私を追って出てきた。攻撃を逃れるため、私は転移魔法で一時的に大迷宮内へ戻る。すると、そこにもマザーの眷属が待ち構えており、人形を操る非常に強い魔物のパペットタラテクトに苦戦を強いられる。それによってレベルが上がり、不死の魔物「ザナ・ホロワ」に進化。それと同時にスキル「不死」を獲得した私は、この世界のシステム内では死ななくなった。

すると突然スマートフォンが現れ、管理者Dと繋がる。「不死になったお祝い」と言って、私にこの世界や転生者について話す。私は初めて自分が転生した理由が、この世界の勇者と魔王にあると知る。管理者Dは、この世界を管理している者へシステムを提供したと話した。
さらに、管理者Dの正体は、私が死んだ時に教室にいた誰かであることが判明。自分に向けた勇者と魔王の魔法に多くの人が巻き込まれたことに罪悪感を覚え、彼らの魂をこの世界へ導き、記憶を維持できるようにスキル「n%l=W」とそれぞれの適正に合ったスキルを付与して転生できるようにした。「願わくば、生き残ってもっと私を楽しませてください」と言って、スマートフォンは消えてしまう。

今世で初めての外を満喫していた私の前に、現魔王のアリエルが現れる。彼女は地龍アラバをも倒せるようになった私でも、到底敵わないほどの相手だった。マザーはアリエルの眷属で、彼女に助けを求めたのだ。アリエルが腕を一振りしただけで、私は木っ端微塵にされるが、スキル「不死」のおかげで死を免れた。私はアリエルから逃げつつ、マザーを倒しに向かう。精神体を攻撃していたおかげで、私のステータスはマザーを上回り、倒すことができた。また、マザーを倒す直前、並列意思の1人「体担当」がアリエルの精神体へと侵入し、攻撃を開始した。

マザーを倒して意気揚々と外へ出た私は、盗賊に襲われている馬車を助ける。その馬車に乗っていた赤ん坊、ソフィア・ケレンは、私と同じ転生者で、前世では根岸彰子(ねぎし しょうこ)という名前だった。彼女は領主夫妻の元に吸血鬼になって転生していたが、エルフに命を狙われていた。私は新しく獲得したスキルを試しつつ、彼女を助けることにした。ソフィアの両親が領主をしているサリエーラ国は、女神サリエルを神とする女神教を信仰しており、蜘蛛の魔物が仕えていたとされている。そのため彼女の母親は、私を神獣の再来だと言って崇めるようになる。
神獣の存在が広まると、周辺各国の貴族が私を自国へ連れ帰ろうと画策する。オウツ国から公式の使者が私の所有権を主張するが、その横柄な態度に腹を立てた私は使者を殺してしまう。これにより、サリエーラ国とオウツ国の戦争が勃発。戦争の原因が自分であることに罪悪感を抱いた私は、サリエーラ国軍に加勢し、オウツ国軍を退ける。しかし、その戦場にアリエルが現れ、魂ごと消滅させる究極の魔法「深淵魔法」で私を倒した。深淵魔法は、「不死」のスキルを持ってしても、死を免れない。私はマザーから得たスキル「産卵」で作成した自分のコピーに自我を移植して復活を遂げた。

私の前に、再び黒い男が現れる。スキル「禁忌」の情報で男がこの世界の管理者、ギュリエディストディエス(ギュリエ)だったと判明する。彼は、アリエルの精神を侵食するのを止め、人族とも関わらずにどこかでひっそりと暮らしてくれないかと話を持ちかける。私が拒否すると、ギュリエは大人しく引き下がっていった。

多くの人間を倒したことで、私は下半身が蜘蛛、上半身が人型の「アラクネ」へ進化する。私が再びソフィアの様子を見に行くと、領主の屋敷がエルフたちに襲撃されていた。領主夫妻は殺害され、従者のメラゾフィスが瀕死の状態でありながら、身を挺してソフィアを守っていた。ソフィアはメラゾフィスの血を吸って吸血鬼にすることで、彼の命を助けた。そこへ私も参戦し、2人を助ける。私は襲撃してきたエルフ、ポティマスと戦う。彼に傷をつけることに成功すると、その傷口から金属の体が露出。世界を崩壊させる機械技術を用いていたことが判明する。ポティマスが魔法やスキルを封じる結界を張り、私が苦戦していると、突然アリエルが現れる。彼を憎んでいる様子のアリエルは、機械の体をバラバラにしてしまう。しかし、その体は複数あるうちの1つでしかなく、本体はどこかで生き延びているとのことだった。

アリエルは私の並列意思に精神を侵食され、融合してしまった。そのため、私の前世の記憶を持ち、性格や思考が影響を受けていた。私に対する戦意を喪失しており、休戦して手を組まないかと提案した。さらに、アリエルはソフィアとメラゾフィスにも「私の元へ来い」と声をかける。こうして4人で、魔族領を目指す旅に出発する。

世界を救う方法

旅の道中、私はソフィアを強くするため、様々な訓練を施す。また、魔王は私のことを「白(しろ)ちゃん」と呼ぶようになっていた。
ある時、私の前にギュリエが現れ、以前私が作った自分のコピーたちが町で暴れていると告げた。自分と相容れない考えを持つならば最早他人だと、私はコピーたちを殲滅する。精神を侵食したマザーやアリエルの影響により、コピーたちは「この世界を救うには、皆殺しにするのが1番早い」と主張していた。

魔族領を目指し、1年が経過する。エルフは高度な機械技術を持っており、アリエルの動向を探るべく何度も監視装置が差し向けられていた。
荒野を通っていた時、私たちは蟻の魔物の巣へ落ちてしまう。その先には、ロボットや戦車、超巨大なUFOらしき飛行物体など失われたはずの古代兵器があった。さらに、UFOからは無数の戦闘機が向かってきており、アリエルの他にも、神言教教皇ダスティン、ギュリエ、ポティマスが一時的に協力してUFOのような兵器Gフリードの対処に当たる。Gフリードは、MAエネルギーを取り込み、星を破壊するほどの威力を持つGMA爆弾を積載していた。MAエネルギーとは、星が持つ生命力である。過去の人々はMAエネルギーを大量に使い続けたのだが、使いすぎると星が滅びるという事実を知る。爆弾を爆発させることがないよう処理しようとしていた時、ポティマスが裏切り、私を庇って攻撃を受けたアリエルが倒れる。私は爆弾を飲み込み、爆発する前に消化しようとした。するとスキル「神性領域拡張」がLv10に達し、神化が始まる。
神の領域へと至った私は、強制的に管理者Dの元へ連れて行かれた。そこで管理者Dから「白織(しらおり)」と名付けられる。この世界に生きる生物としての枠を超えて神になった私はシステムの適応外になり、今までに獲得したスキルやステータスが一切使えなくなってしまった。

2年後、白織たちの訪れた街にオーガが出現し、街道が封鎖され、雪崩が起こったことで白織はアリエルと逸れてしまう。そこへ鬼人が現れ、戦闘になる。白織はそれが前世のクラスメイト、笹島京也(ささじま きょうや)だと気づく。白織とソフィアは戦闘の末に気絶した京也を連れ、魔王城へと向かう。

魔王城へ着いた白織は、魔法やスキルを使えるようになっていた。京也が目を覚まし、アリエルからこの世界についての説明を受ける。
京也はゴブリンのラースに転生し家族と幸せに暮らしていた。しかし、レングザント帝国の召喚士ブイリムスによって村は襲撃、ラースたちは死よりも辛い調教を受けた。負の感情によってスキルを得たラースは、ブイリムスの支配から脱することに成功し、復讐を果たした。その後は、理性を失った狂戦士となり、討伐部隊に追われていたのだ。
アリエルは京也に同情していた。彼はアリエルの仲間に加わった。

神化し、魔法やスキルが使えるようになった白織は、「空間転移」のスキルを使って日本にいる管理者Dに会いに行く。管理者Dは、若葉姫色(わかば ひいろ)の部屋でゲームをしていた。白織は偽物として、記憶を与えられていただけだと判明。
管理者Dは仕事をサボり、若葉姫色という高校生のふりをして遊んでいた。そこへ先代の勇者と魔王の魔法が飛んでくる。その場にいた26人の人間が死亡し、転生することになる。しかし、そのうちの1人の管理者Dが死亡していないため、魂の流れに違和感が生じてしまう。そこで彼女は、教室にいたただの蜘蛛に若葉姫色の記憶を植え付け、自分の偽物に仕立て上げた。これが白織の転生の真相だった。地球から戻ってきた白織はアリエルに協力して、世界を救うために行動を開始する。

かつて、この世界では機械による文明が発達していた。人々は文明の発展の為、MAエネルギーを利用しようと考えるが、サリエルという女性だけはその危険性を説いた。しかし、人々は話を聞き入れず、過ちに気付いた時にはもう手遅れだった。世界の崩壊を防ぐため、人々はサリエルに救いを求め、彼女を犠牲にした。こうして彼女は女神サリエルとなり、人々の信仰の対象となった。そして今も、エルロー大迷宮の最奥に囚われ、システムを稼働させている。
システムとは管理者Dが作り上げた超巨大な魔法だった。この世界に生きる全ての生物の輪廻転生を歪め、スキルやステータスを与える。その死後、生前に集めたスキルやステータスをエネルギーとして回収し、星の生命力であるMAエネルギーに変換して世界を支える。エネルギーを生み出すために、この世界で転生を繰り返してきた魂たちは摩耗し、限界を迎えていた。

白織と魔王はシステムを破壊し、それを稼働していたエネルギーを星の再生に充てて世界を救おうと考える。しかし、星の再生にはエネルギーが足らず、大量の死者を出すことで不足分を補うことにした。管理者として、ギュリエも計画に協力する。
この計画の為に白織たちは人族と魔族間の戦争、人魔大戦を引き起こす。そして、シュンたちやエルフの里に保護されている転生者たちに被害が出ないよう手を回しつつ、ポティマスを倒す準備を整える。

白織は分身体を使って、システムの調査を行う。その掌握には、支配者権限を得ることができる「支配者スキル」が必要だと判明。さらに、システムの中に「システム自爆プログラム」が存在することを突き止めた。発動させるには、全ての支配者スキルのキーが必要になる。白織はピッキングでキーをこじ開けられないかと考えて実行したが、システムの防御機構が働き、失敗に終わる。

アリエルはポティマスの遺伝子と、様々な生物を掛け合わせることで生み出された。しかし、体内で生成される蜘蛛の毒を分解することができず、寝たきりの生活を送る。ポティマスがデータを収集し終えたら、処分される運命だった。そんな時、アリエルはサリエルによって救い出される。彼女は他にもポティマスの実験動物にされていた子供たちを孤児院で保護した。命を救われたアリエルは、「お母さん」と言って彼女を慕い、サリエルを救うために奮闘する。

もうひとつの転生物語

その日、山田俊輔(やまだ しゅんすけ)は古文の授業を受けていた。頭上にできた亀裂に気づくが、それが大きさを増して盛大に割れた時、激痛を感じて死んだ。
気がつくと、前世の記憶を持ったまま別世界に赤ん坊として転生していた。皆が当たり前に魔法を使う世界で人間が統治する王国、アナレイト王国の第4王子、シュレイン・ザガン・アナレイト(シュン)になっていた。

シュンは、この世界についての知識を調べ、次にスキルを集めてレベル上げを始めた。
「鑑定の儀」で鑑定を行うと、シュンは非常に優れたステータスの持ち主であると判明する。前世ではシュンの友人、大島叶多(おおしま かなた)だったアナレイト王国の公爵令嬢、カルナティア・セリ・アナバルド(カティア)もまた優れたステータスを持っていた。
前世からの友人ということもあり、シュンとカティアは親交を深める。ある日、カティアは『スキル大全』という本を持って、シュンに会いに来る。そこには、判明しているスキルの詳細だけでなく、効果や取得条件などが書かれていた。2人はスキルに戦闘用のものしか存在していないことに気づき、世界が戦いを奨励しているように思え、わずかに恐怖を感じた。

アナレイト王国にエルフの親善大使がやってくる。ポティマス・ハァイフェナスという男性のエルフと、フィリメス・ハァイフェナスという少女のエルフだ。フィリメスは、シュンやカティアと同じ転生者で、前世でのシュンたちの担任教師、岡崎香奈美(おかざき かなみ)だった。フィリメスは、他の転生者たちも見つけ出し、エルフの里で保護していると言う。行方がわかっていないのは、あと6人だけとのことだった。

王国には特権階級の者のみが通い、一般教養や戦闘技術を学ぶ学園がある。シュン、カティア、フィリメスの入学と同時に、他にも2人の転生者が入学した。
1人目は前世でクラスの男子の中心的存在だった夏目健吾(なつめ けんご)。今世ではレングザント帝国の王太子、ユーゴー・バン・レングザンドである。2人目は前世で普通の女子生徒だった長谷部結花(はせべ ゆいか)。今世では聖アレイウス教国の次期聖女候補、ユーリーン・ウレン(ユーリ)である。
捨て子だったユーリは、教会で育てられた。そのためか、ユーリは「神言を聞くためにスキルを伸ばす」という教えを持つ神言教にはまっていた。スキルやレベルを上げた時に聞こえる天の声は、人間たちにとっては神の言葉として信仰の対象になっている。ユーリは、シュンたちにも頑張ってスキルを上げるように迫る。
初めての課外活動で、ユーゴーがシュンを殺そうと襲いかかる事件が起こった。ユーゴーはここは自分が頂点に立つための世界なのだと言い、自分と同等の地位や力を持つシュンを排除しようとした。しかし、フィリメスによって阻まれ、ユーゴーが集めたスキルが全て剥奪されて事態は終結する。その後、彼は学園から姿を消した。

ある日、シュンの頭の中に突然「『勇者』の称号を獲得した」という天の声が響く。それは彼が心から尊敬する兄であり、先代の勇者であるユリウスの死を意味していた。王城へ戻ったシュンは、兄が魔王軍との戦いで謎の白い少女から攻撃を受けて戦死したことを知る。
勇者としていつでも出陣できるよう、シュンは王城で待機していた。ある日、スーの愛称で親しまれているシュンの妹スーレシアが、シュンの目の前で国王を殺害する。その場にユーゴーも現れ、スーが洗脳されていたことがわかる。なんとか逃亡したシュンたちは、フィリメスの勧めでエルフの里へ向かう。

エルフたちは、フィリメスが行う転生者の保護活動に協力している。転生者たちの安全を確保したい彼女と、彼らを管理者に利用されるのを回避したいエルフたちの利害が一致した結果だ。エルフたちの間には、この世界のシステムについての伝承がある。管理者はシステムを使って戦いの中で人々を成長させ、多くの死者を出すためにスキルを作った。スキルや力は、死後管理者によって回収される。伝承通りだとすると、生まれながらに高いステータスを持つ転生者たちが死ぬと、管理者に大きな力が渡ることになる。エルフたちはそれを阻止したかった。

保護されている転生者たちは、エルフの里で畑仕事をしていた。シュンたちを温かく迎える一方、フィリメスには拒絶の態度を見せる。彼らのほとんどは、お金で買い取られたり誘拐されてきた為、彼女に対して不信感を抱いていたのだ。

エルフの里は、ユーゴー率いるレングザント帝国の帝国軍と魔族軍の侵攻を受けていた。結界で守られているため、それを解除しなければ敵が入ってくることはない。エルフたちは、結界を守るために動き始め、シュンたちもそれに協力する。その時、里と外を繋ぐ転移陣が破壊され、エルフは逃げられなくなった。結界も消失し、エルフと帝国軍、魔王軍の戦争が始まる。

この戦いにおいて、フィリメスには絶対にやらなければならないことがあった。
転生した時、彼女は教師として生徒たちを守らなければならないと考えた。管理者Dに与えられたスキル「生徒名簿」は、生徒たちの現在、過去、未来を大まかに見ることができる。そして、生徒全員が20年以内に死亡することを知った彼女はポティマスに助力を求めた。そうして、人身売買や誘拐のようなことをしながらも、エルフの里に転生者たちを保護していたのだ。さらに、「生徒名簿」のユーゴーの欄には、彼がまもなくエルフの森で戦死すると記載されている。フィリメスはその未来を変えようと、奮闘する。

シュンとユーゴーの戦いは、シュンの勝利で終わる。しかし、その直後にソフィアが現れ、数で大きく勝るシュンたちを容易く翻弄する。さらに前世での友人だった京也は鬼人に転生し、魔族軍の第8軍団長ラースになっていた。彼は、シュンたちにエルフこそが害悪だと話すが、フィリメスはそれを否定する。そこへ、シュンにとって兄の仇である白い少女が現れる。その少女は、シュンたちの前世のクラスメイト、若葉姫色だった。

人魔大戦の終結と最後の審判

白織たちはポティマスを倒すため、エルフの里の襲撃計画を決行。転生者の草間忍(くさま しのぶ)の協力で先に転移陣の破壊を行い、白織が結界を破壊して里に侵入し、エルフを殲滅する。アリエルは単独でポティマスのいる地下へ向かい、大量の機械兵と対峙。体に大穴を開けながらも機械兵を破壊していく。ポティマスは世界が崩壊することを理解した上で、自分だけ星を脱出する方法を準備し、崩壊を早めるようなことも平然と行なってきた。アリエルと参戦した白織に追い詰められた彼は、宇宙船に乗って逃げ出そうとする。しかし、白織の放った糸がそれを捕らえ、アリエルが内部へ侵入した。宇宙船の中には、ポティマスの本体である無数の管に繋がれたエルフの老人の姿があった。アリエルは確実に彼を倒すため、深淵魔法を放つ。こうして、エルフ全員を倒すことで人魔大戦は終結した。

転生者は1箇所に集められ、この世界のことや、ポティマスが行っていた悪行について説明を受ける。その時、全ての生物へ向けて「ワールドクエスト発生。世界の崩壊を防ぐため、人類を生贄に捧げようと画策する邪神の計画を阻止、もしくは協力せよ」という天の声が響く。それを聞いたギュリエは、「人類を守る」というサリエルの願いを叶えるため、白織の前に立ちはだかった。異空間へ移動し、白織とギュリエによる神同士の戦いが勃発。人類は強制的に「禁忌」をインストールされ、全員がこの世界の真実を知った上で、「人類の半数を犠牲にしてサリエルを救う」白き神か、「サリエルを犠牲にして人類を救う」黒き神のどちらかに祈りを捧げて助力するよう迫られた。

アリエルはサリエルを守るために、大迷宮の最下層で守りを固める。転生者たちは、犠牲を出さない第3の方法が無いかと模索していた。フィリメスがスキル「生徒名簿」を閲覧してみると、「邪神Dの最後の審判の鐘が鳴る。人類の半数が邪神Dの手により消滅する」と記載されていた。人々は「邪神」が白織であると解釈していたが、邪神は管理者Dだと判明。また、管理者Dは白織やギュリエより高位の神のため、犠牲を出さない手段があるのではないかと考える。シュンたちは判明した事実と予想を白き神と黒き神へ伝える。そして、システムの中枢にアクセスし、管理者Dである若葉姫色と対峙した。そこで白織はただの蜘蛛だということが明らかになった。また、管理者Dの話から、白織が勝ってもギュリエが勝っても、人類の半数は犠牲になることが避けられないとわかる。しかし、管理者Dには人類に犠牲を出さず、サリエルも救うことが可能だった。管理者Dはシュンたちが自分に規定以上のダメージを与えられたら、犠牲を出さずに世界を救うことを約束する。

全員が死力を尽くして戦うが、規格外のステータスを持つ相手に大きなダメージを与えることは叶わない。その時、突然管理者Dの足元に白い蜘蛛が現れる。白織はシュンに分身体をくっつけており、全ての状況を把握していた。ギュリエとの戦いを中断すると、すぐさまDに攻撃を仕掛ける。管理者Dは規定以上のダメージを受け、その後、システムは消滅。人類もサリエルも救われた。今後、システムのなくなったこの世界では、混乱と激動の時代が始まる。
一方、白織は管理者Dの眷属にされ、虫籠に入れられていた。面白いことにしか関心のない管理者Dは、白織に執念とも言えるほどの興味を向けている。白織の苦労の生活は続く。

『蜘蛛ですが、なにか?』の登場人物・キャラクター

転生者

「私」/白織(しらおり)

CV:悠木碧
本作の主人公。日本の高校の教室で爆発に巻き込まれて死亡した後、蜘蛛に転生してしまった。非常に弱い魔物でありながら、前世の記憶を駆使して、スキルやレベルを上げていく。
「スモールレッサータラテクト」→「スモールタラテクト」→「スモールポイズンタラテクト」→「ゾア・エレ」→「エデ・サイネ」→「ザナ・ホロワ」→「アラクネ」→「神」の順で進化を遂げる。アラクネに進化した時に得た人間の姿は、若葉姫色の姿だった。
性格は、非常にポジティブで明るく、楽観的な面もある。しかし、本人曰くコミュニケーション障害のため、他人と接するのが苦手。他人との会話では、片言になってしまう。お酒に酔うと、饒舌に話すようになるが、本人は酔っている間のことを覚えていない。
前世で若葉姫色だった記憶を持っているが、その記憶は管理者Dによって与えられたもの。本当は、前世でも蜘蛛だった。教室に巣を作っていて、爆発に巻き込まれた。管理者Dによって、身代わりにするために転生させられた。
前世で蜘蛛だった時、岡ちゃんに助けられたことがあり、恩義を感じている。そのため、転生してフィリメスになった岡ちゃんを助けたり、フィリメスのために転生者に害が及ばないように立ち回る。
神になった時、管理者Dに「白織」と名付けられたことで、名前を得る。また、管理者Dの眷属となって庇護を得る代わりに、アリエルに協力するよう命じられた。
アリエルは、全体に敵わない相手と認識しており、休戦状態にあった。しかし、共に旅をして過ごすうち、友情を抱くようになる。アリエルからは「白ちゃん」と呼ばれている。

シュレイン・ザガン・アナレイト/シュン

CV:堀江瞬
アナレイト王国の第4王子。
前世の名前は、山田俊輔(やまだ しゅんすけ)。カティア(大島叶多)やラース(笹島京也)とは親友だった。ゲームが好きで、夜更かしすることもしばしばあった。
今世では、恵まれた環境で育ち、スキルやレベルを上げることにやり甲斐を感じる。転生直後の赤ん坊のことから大人の話を理解し、勉強や訓練を行なっていたため、周囲からは天才だともてはやされていた。明朗快活で、自分の周囲の人々をとても大切にする性格のため、他者からも好かれやすい。勇者である兄、ユリウスを心から尊敬し、慕っていた。ユリウスの死後、「勇者」のスキルを獲得する。
その後、ユーゴーやポティマスの謀略によって、国王である父親を殺され、その殺害と叛逆の罪を被せられる。フィリメスの勧めでエルフの里に避難し、里を襲撃してきたレングザント帝国軍との戦闘に参加する。その際、ユーゴーと大戦し、勝利した。
エルフの里襲撃事件後、白織たちから世界の真実を聞くが、白織たちとは違って誰も犠牲にならない方法で世界を救いたいと考える。

ソフィア・ケレン

CV:竹達彩奈
サリエーラ国の領主、ケレン伯爵の娘。
前世の名前は、根岸彰子(ねぎし しょうこ)。痩せた体で、肌が青白かったために、クラスメイトたちから「リホ子(リアルホラー子の略)」と呼ばれ、孤立していた。今世では容姿端麗に生まれ、他人を見下すようになる。
転生時にスキル「吸血鬼」を獲得したため、人族の両親を持ちながら、吸血鬼に転生した。
赤ん坊の頃、エルフたちに屋敷を襲撃され、両親を亡くした。その際、重傷を負いながらも自分を守ろうとしてくれたメラゾフィスを救うため、彼の血を吸い、彼を眷属の吸血鬼にした。
その後、アリエルに保護され、アリエルや「私」と共に魔族領への旅に出る。旅の途中、「私」からスキルやレベルを上げるための厳しい英才教育を受ける。その結果、シュンたちを容易く翻弄できるほどの実力を身につける。

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