王様のレストラン（ドラマ）とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

人生において起こることは、ほんの身近なところで起こっていることを表現した名言。壮大なことをしようとしなくても、今いる場所で人生における奇跡は起こりえるということも表現している。ドラマがレストランの中で完結していることも暗示している。

「まずい食材はない、まずい料理があるだけだ」

これはそのまま人間にも当てはめられる。人間も素材として考えると、自分自身の努力や周りの環境でどう成長するか、またどう活かすかが大切であるということを示している。
「ベル・エキップ」のスタッフは最初やる気もなく「まずい」状態だったが、千石や禄郎と成長し「料理」されていくことで「まずい」状態ではなくなったことも象徴している。

千石武

「お客様は王様である、しかし王様の中には首をはねられた者も大勢いる」

第1話にて、千石が禄郎と「ベル・エキップ」に来店した際、理不尽な注文と態度で店を困らせる客がいた。スタッフが対応に困っていると、千石が立ち上がり、テーブルクロスをエプロンに見立て、ギャルソンに扮して「お客様は王様である、しかし王様の中には首をはねられた者も大勢いる」と言い放った。その気迫と的を得た指摘にいたたまれなくなった客は逃げるように立ち去った。千石が只者ではないと印象付けた言葉でもある。ギャルソンとして客に対する敬意は忘れないが、すべての王が善人だったわけではないように、その場にふさわしくない行動に関してはギャルソンとはいえ委縮する必要はないという、スタッフを勇気づける言葉だ。店と客という場面だけでなく、すべての人間関係においても当てはめて考えることができる。

「この店は最低ではあるが、素晴らしい！」

最終話にて千石が失踪を経て、禄郎に連れられて来店した。メニューにない料理を次々に注文し、スタッフたちの成長を実感したときに「この店は最低ではあるが、素晴らしい！」とスタッフにむけて笑顔で伝えた。「ベル・エキップ」は最低な店と酷評していたところから、スタッフ全員が成長し、さらに素敵なお店になった奇跡を象徴する言葉であり、物語のしめくくりにふさわしい名言である。

三条政子

「Alors、 mon bebe .Ta bouche ne marche pas」

外国の要人が「ベル・エキップ」に来店した際、料理に口をつけなかった。はりきって料理を作ったしずかたちは落胆していた。その様子を見て、要人たちの態度に怒りを感じた政子が千石に「早く食べろはフランス語でなんていうのか」と聞いて要人たちに「Alors、 mon bebe .Ta bouche ne marche pas」と片言ながら発した。カタカナで表記すると「アローモンペペ、ダブーシュヌルマルシェパ」。政子本人は意味を理解していなかったが、これはフランス語で「坊や、お口が動いてまちぇんよ」と母親が子どもに言って聞かせる際に使う言葉だった。要人たちはその真剣さに圧倒され、食事をし、「ベル・エキップ」の料理のおいしさに気づいた。政子の仲間思いの心情が垣間見える、ドラマの中の名言である。

『王様のレストラン』の裏話・トリビア・小ネタ／エピソード・逸話

「ベル・エキップ」のモデルは代官山のレストラン「マダム・トキ」

「ベル・エキップ」の外観のロケ地は東京代官山に実在するレストラン「マダム・トキ」である。
劇中の料理を監修したのは服部幸應だった。当時登場する料理も話題になり、「オマール海老のびっくりムース」は渋谷の「シャンドマルス」というレストラン（現在は閉店）で実際に味わうことができた。そのほかにも劇中の料理や小道具を再現して味わえるレストランもあり、話題になった。
「ベル・エキップ」の意味はフランス語で「友情」、「良き友」と作品中で紹介されている。

「すべてレストランの中で完結させる」という三谷幸喜のこだわり

三谷幸喜は脚本に自ら制約を設ける書き方をしており、今回は「すべてレストランの中で完結させる」という制約だった。その通り「ベル・エキップ」の外観の描写はあるものの、登場人物はレストランの中から出ていない。客席・厨房・控室などシーンを変えながらもすべてレストランの中でドラマは進んでいく。
また、前作「古畑任三郎」でヒットし、三谷の希望がキャスティングにも多く反映されるようになった。三谷自身がファンであるドラマの主演だった松本幸四郎をキャスティングし、さらに山口智子・鈴木京香など有名俳優に加えて、小野武彦や梶原善など舞台で活躍している俳優を多くキャスティングしたことも話題となった。一般的に小野武彦のブレイクはこの後の「踊る大捜査線」と言われているが、三谷はこのドラマで見出したと考えている。
タイトルの『王様のレストラン』はTBS系ドラマの『天皇の料理番』から三谷がヒントを得たタイトルである。
ドラマの音楽を担当したのは服部隆之だが、三谷とコンビを組むのは『王様のレストラン』が初めてだった。その後ヒットを生み出す黄金タッグとしてともに活躍していくことになる。またエンディング曲に採用された「Precious Junk」は当時無名だった平井堅の曲だった。

レギュラー陣の名前の由来は戦国武将

鎌倉時代の戦国武将たちの名前がモチーフになっている。
千石武は「戦国」時代の「武」将、または「武」蔵坊弁慶が由来である。
原田禄郎は源の義経の通称「九郎」と源の「原」から。千石と禄郎の関係性は、義経と弁慶の関係をイメージして描かれている。
磯野しずかは義経の妾だった「静」御前とその母である「磯」禅師から由来されている。三条政子は源頼朝の継室の北条政子から。水原範朝は「源」のさんずいと原、源義経の兄である頼朝と範頼から一文字ずつ取っている。梶原民生は「梶原」景時、稲毛成志は「稲毛」重成、畠山秀忠は「畠山」重忠から。歴史上稲毛重成は畠山重忠の誅殺に関わっているが、劇中での稲毛と畠山は最初不仲の設定である。
大庭金四郎は「大庭」景義から、和田一は「和田」義盛から由来されている。佐々木教綱は「佐々木」高綱、デュヴィヴィエはレストラン名の由来となった映画『我等が仲間』の監督ジュリアン・「デュヴィヴィエ」から由来されている。

『王様のレストラン』の主題歌・挿入歌