ふたがしら(漫画・ドラマ)のネタバレ解説・考察まとめ

『ふたがしら』とは、『月刊IKKI』(小学館刊)また増刊『ヒバナ』(小学館刊)で連載されていた時代劇漫画、およびそれを原作とした連続テレビドラマである。時は江戸時代。盗賊「赤目一味」の頭目だった辰五郎が死去。その際に、手下である弁蔵と宗次二人に一味のことを託したことからすべては始まった。『ACCA13区監察課』や『レディ&オールドマン』数々の人気作品を生み出してきたオノ・ナツメが描く、巧妙な駆け引きと巧みな騙しあいが織りなす時代劇盗賊エンターテインメントだ。

『ふたがしら』の概要

『ふたがしら』とはオノ・ナツメが『月刊IKKI』(小学館刊)また増刊『ヒバナ』(小学館刊)で連載していた漫画、およびそれを原作とした連続テレビドラマである。2011年7月号から『月刊IKKI』が休刊するまでの2014年11月号、さらに2015年に創刊した『ビッグコミックスピリッツ』増刊『ヒバナ』にて2016年9月号まで連載された。なお単行本は7巻で完結となっている。今まで『ACCA13区監察課』や『レディ&オールドマン』など、ハードボイルドなテイストの作品が多かったが、今回は痛快な騙しあいがクセになる「江戸活劇」だ。主人公の弁蔵と宗次の掛け合いが絶妙で、今まで多くの魅力的なキャラクターを生み出してきたオノ・ナツメ作品の中でも屈指のコンビといえる。

作品の舞台は江戸時代。盗賊「赤目一味」の頭目、辰五郎の死に立ち会った弁蔵と宗次。辰五郎は死の間際、二人に「一味のこと、まかせた」と言い残してその生涯を終えた。しかし多くの手下が見つめる中、跡目に選ばれたのは辰五郎の弟分、甚三郎だった。これに対して納得のいかない弁蔵と宗次は一味を離れ「でっかいことをやる」ために、旅立つ決意をするのであった。これはオノ・ナツメが描く時代劇盗賊エンターテインメントだ。

『ふたがしら』のあらすじ・ストーリー

1巻「先代の死」

弁蔵と宗次の手を握り遺言を告げる、盗賊一味「赤目」の頭目・辰五郎

「一味のこと、まかせた」その言葉を最後に盗賊「赤目一味」の頭目、辰五郎はその生涯を閉じた。その言葉をそばで聞いていたのは辰五郎の手下、弁蔵と宗次だ。その後、ほかの手下たちが見守る中、誰が一味を束ねるのか後釜について辰五郎の内儀である姐さんは「甚三郎にまかせる」と言い放った。甚三郎とは頭目であった辰五郎の弟分だ。しかしこの決定に弁蔵と宗次は納得がいかず「甚三郎がカオになった一味の名前なんて名乗らない」と言い、二人でその場を去っていくのであった。

二人は知り合いの頭に会いに行くべく大坂へ向かうことになったが、まずは弁蔵が金の世話をした男、亀吉がいるという平塚を下っていくことにした。しかしいっこうに亀吉は見つからず二人は旅籠へ戻ってきた。人のよさそうな主人に出迎えられ、食事を済ませた二人だったが宗次の分は宿代があるものの、弁蔵は一文無しに近いというのだ。「泊まり逃げ」しないで済むようにと弁蔵は一人宿場町へ繰り出し、亀吉を捜しに行くことにしたのだった。あてもなく歩いていた弁蔵はたどり着いた「高麗寺山」の近くで噂になっている賭場のことを思い出し、何か面倒なことに巻き込まれているのではと考えを巡らせていた。

すると二人の男に声をかけられた弁蔵は、そのうちの一人が目的の人物亀吉だと気づいた。どうやら近くの寺の賭場に住みついているようだ。しかし昔貸した金を返してくれるわけでもなく、小銭数枚を地面に落とし弁蔵のことを小ばかにしたように亀吉はその場を立ち去った。弁蔵はその数枚の小銭を旅籠屋の主人に正直に差し出した。風呂炊きでもなんでもするからこき使ってくれと言った弁蔵に対し、主人は将棋の相手になってくれとだけ言った。

宗次と弁蔵に「お金を預かってもよいか」という提案をする叶屋喜兵衛

その頃宗次は一人、亀吉がいる賭場にやってきて弁蔵がたかられた分をきっちり取り返していた。その帰り、町民の男が叫んでいることに気が付いた宗次は、どうやら騙された上に、妹を女郎屋に売り飛ばされてしまったらしいと悟った。その後旅籠屋に戻ってきた宗次と、将棋の相手に疲れた弁蔵は主人から賭場のことについて聞いていた。寺が賭場として貸し出して稼ぐことはよくあることだが、住職までもが一緒になって悪さをしているというのだ。しかも宿場だけでなく農村も難儀しており、旅人にまで被害が出ているのだ。そんな話を聞いた二人は、今後の旅で必要になる金を作るため、そして弁蔵が貸した分を取り返すために寺に忍び込む決意をした。しかし意気揚々と寺に忍び込んだ二人だったが、怒りが頂点に達した百姓が押しかけてきたのだ。そんな百姓たちをよそに、二人はきっちり金を取り返したのであった。

翌朝、取り返した分以外にもまだまだ寺に金が残っていることを話していた弁蔵と宗次だったが、持ち歩くには多すぎるためどうしようかと悩んでいた。宗次が、将来一味をまとめあげるための資金として役立てたいという提案をしたとき、気配もなく襖が開きそこには主人がいた。その大量の金を預かってもいいかという提案だった。なんと主人は名を喜兵衛(きへえ)といい表向きは旅籠「叶屋」を営み、裏では盗賊宿として金品の隠し場所を提供しているというのだ。そんな喜兵衛に驚きつつも、弁蔵と宗次は両名一致で金を預けることにしたのだった。

2巻「いざ大坂へ」

変装をした弁蔵(左)と宗次(右)

叶屋の主人、喜兵衛に金を預け西へ向かっていた弁蔵と宗次は道中、役人が血を流して倒れているところに遭遇した。彼は放火などの取り締まりをする火付盗賊改方の役人で、護送中の咎人を奪われたというのだ。そして虫の息になった役人は最後の力を振り絞り二人に何かを手渡したのだった。そこに寺の和尚をひきつれた「先生」と呼ばれる男がやってきた。二人が看取った役人以外にもけが人がいたらしく、弁蔵と宗次も力を貸しまとめて寺に運び入れた。医者が来るまでいるように言われた二人だったが、急ぎ江戸に戻らければならないと和尚に告げる。江戸から来たはずなのに、と怪訝な顔をする和尚に二人は役人から渡されたものについて説明した。手形を用意してもらいさらに宗次は侍の格好になり、弁蔵は侍の召使い中間(ちゅうげん)として江戸へ戻ることになったのである。

真っ先に立ち寄った「叶屋」の主人喜兵衛に「縁もゆかりもない役人のために引き返すなんて」と馬鹿にされながらもその後関所を抜けた二人は、途中立ち寄った戸塚の旅籠で食事を済ませた。その後、弁蔵は酒を飲むために宿場町へ繰り出してゆき、宗次は部屋で一人いた。しばらくしたら弁蔵も帰ってくるだろうと思っていた宗次のもとに、弁蔵が暴れているとの知らせが入った。役人があちこち弁蔵を捜す中、宗次は木の根元にもたれかかっている弁蔵を発見する。酔って騒ぎを起こしたり、財布を落としたりと赤子並みに手に負えない弁蔵に宗次は憤慨し、お互いに別行動をとる始末となってしまった。そしてそんな二人の様子を、火付盗賊改方の役人を襲った三人組が見ていた。宗次は侍から旅人の装いになっても一切の隙はなく、その顔の良さから女性の姿もちらほらと見受けられた。一方、文無しの弁蔵は財布を掏り、簀巻きにされていたのだった。しかし宗次はいとも簡単に弁蔵を助け出し、金まで奪ってしまった。その様子に意を決したように二人の前に現れたのは役人を襲った三人組だった。役人から預かったであろう文を渡せ、という男たちだったが実際に弁蔵と宗次が預かったのは、役人が江戸で待つ女房への土産として買った簪だったのだ。

唖然とする三人組をよそに「死に目に遭った俺たちが託された」と言って立ち去っていく弁蔵と宗次は翌日、しっかり江戸で待つ女房へ土産を渡した。そんな二人のもとに、また三人組が現れた。なんと手下にしてほしいというのだ。盗みや殺しをして身を潜めていたが、仲間の一人が捕まって自分たちの名前を吐かれる前にどうにかしようとしたようだ。しかし道すがら仲間の名前を役人に言いふらしたため、その名前をしたためた文を取り返すために役人を襲ったというのだ。しかし「半端ものを預かる気はない」と言って弁蔵と宗次は三人を手下にすることはなく、立ち去るのであった。

翌日、街に繰り出していた弁蔵と宗次は「大和屋」という店が強盗にあい、しかも死傷者もでていることを知った。そしてそれがかつて自分たちがいた「赤目」の仕業だと気づき西への出立を決意したのである。

そして、箱根を越え己の足と船を使いやっとのことで大坂にたどり着いた弁蔵と宗次が盗賊一味「夜坂」を捜しに行こうと船を降りようとしたとき、船がぐらつき弁蔵は海に落ちてしまった。船頭に謝罪され舟宿へ案内された二人は、そこで夜坂の現在の頭目、鉄治郎と出会う。さらに舟宿から隠居がいる屋敷へ案内された弁蔵と宗次は、前の頭目である夜坂の隠居と再会した。どうやら赤目の頭目が変わったことで挨拶状を持ってきたと思っているようで、二人は正直に一味を抜けたことを明かしたのだった。弁蔵たちは「手下になるためにきたのではなく辰五郎の遺志を継いだでっけぇ一味を引き連れたい」と隠居に説明すると「自分はもう引退したから話は明日だ」と言って世話役の芳(よし)を呼びつけた。そして芳に連れられ大坂の町に繰り出した弁蔵と宗次は古着屋の女将おときを紹介されたのち、緊張の糸が切れたのか弁蔵と宗次は芳とともに飲み明かすのであった。

翌日「何を盗む気だ」と隠居に言われた弁蔵と宗次は「俺たちにいるもの、全て」と答え、しばらく考えたのち一味に入る許可を得たのである。舟宿のほうへ向かうと、弁蔵と宗次は芳のことを「兄貴」と慕っている船頭四兄弟に出迎えられた。そして「隠居がなんと言おうが、頭はわしや」という鉄治郎に対し弁蔵と宗次は「ここで学びたい!」と一味を率いる心得とその術を教えてほしいと頼み込んだ。そんな二人に、鉄治郎は手並みをみせてもらうと言って去っていくのであった。

3巻「修行生活」

地図を広げ大坂の町を歩く弁蔵と宗次

「お手並みを見せてもらおう」と鉄治郎に言われた弁蔵と宗次は、右も左もわからない大坂の町で地図を広げていた。そして商人町で盗めそうな店に目星を付けようと歩いていると、古着屋の女将おときに声をかけられる。古着の買い取りに付き合わされたあと、おときと共にお茶屋にきた二人は、そこで町を廻りながら髪結いをやっている平七という男と出会う。平七は宗次のことを「役者面」と言い、自分がよく出入りしている「角屋」という店の主人が芝居好きで美形好きだというのだ。そして宗次の静止もきかず平七は弁蔵と宗次を角屋の旦のもとへ連れていき、二人はどぎまぎしながらも酒を口にするのであった。

宗次が角屋の座敷を立ち手水をしていると後ろから一人の男に声をかけられる。「星野屋」という店の同じく旦という人物だった。弁蔵の元には戻らず成り行きでお酒に付き合うことになった宗次。その後お開きになった後は弁蔵も宗次も死んだように眠るのであった。

翌日、自分が紹介した主人に吞まされたお詫びとしてタダで髪を結ってくれたのは平七だった。宗次は酒が抜けないのか宿で寝ているというが、髪を結っていた弁蔵に庭師の男が近づいてきた。人手が足りないという庭師に弁蔵は嫌な予感がした。そして案の定、昨日出会った角屋の庭の手伝いをさせられ、挙句の果てには酒も呑まされた弁蔵はぐったりした様子だった。翌日、先日立ち寄ったお茶屋の近くで平七と遭遇した弁蔵は、ぎょっとした。また庭師の仕事をさせられるのでは、と一目散に逃げていくがそんな弁蔵を宗次は引き止め、庭師の仕事を引き受けたのである。一仕事を終えた二人が厠にいくと、宗次が星野屋から聞いたことを話し始める。角屋には娘がいて近く祝言をあげるそうで、しかも2年前に盗みに入られたことがあるようだ。そして、二人はその祝言の日を狙って盗みを敢行することに決めたのである。

しかし、いざ盗みに入ってみると驚くほど簡単だった。そんな様子に「罠か」と不安な様子の宗次と弁蔵は、ふと思い立ちなにも盗まずに角屋を後にするのであった。舟宿にいる鉄治郎のもとへやってきた二人は、お手並みとは盗みが目的ではなく見つけた獲物の細見を持ち帰ることだ、と気づいた。金を盗むことが自分たちの力量ならば夜坂で学ぶ必要はないのだ。隠居の指示らしいが、鉄治郎たちは最初からすべてわかったうえで盗みに入らせたのだった。そして町で出会った角屋や星野屋も庭師もみんな夜坂の仲間だったのだ。

翌日から弁蔵は船頭として、宗次は舟宿の料理人として働くことになった。そして二人が大坂にやってきてひと月が過ぎ一味の顔ぶれもわかってきたところで、船頭として舟に乗っていた弁蔵は船頭四兄弟の一人から「角屋と星野屋は一味ではない」と聞かされ驚いた。夜坂が組まれた当時の初代手下のうちの二人が角屋と星野屋だという。二人とも夜坂には世話になったからその恩返しとして、分け前もないのに手を貸しているそうだ。

一方、舟宿では鉄治郎と芳が言い争いをしていた。跡を継いでしばらくたつのに、まったくつとめを果たそうとしない鉄治郎に芳は憤慨したが、そんな芳の怒りに鉄治郎は「今はまだあかん」と言葉をこぼすのであった。

そして年越しまであと四日を切ったころ町を歩いていた弁蔵と宗次は、去年の暮れと比べて自分たちの生活が様変わりしたことに思いをはせていた。しばらくして年も明け、みんな各々が新年の挨拶をすませるなか、隠居が住む屋敷にいた弁蔵と宗次は東の赤目が押し込みをしたということを知った。しかも店の主人たちを全員殺したというのだ。その事実に驚いた二人は町に繰り出し現頭、甚三郎に怒りを隠せなかった。普段は冷静な宗次でさえ動揺を隠せないでいたが、突然弁蔵の手を誰かがつかんだ。その男の顔をみた瞬間弁蔵は猛スピードで逃げ出したが、あっけなく捕まってしまった。弁蔵の故郷である備中高梁松山藩で大坂留守居役をしている男、大月源十郎だった。

源十郎は、弁蔵が自分の領民であることを鉄治郎に説明し、さらに足軽として雇っていたのに逃げ出したことを明らかにした。源十郎は「弁蔵を引き取らせてもらう」と鉄治郎に頼み込んだが鉄治郎は「まだ年も明けたばかりなので日を改めて」と説得した。それまでは夜坂で預かるというのだ。その後、鉄治郎と三人で酒を交わしていた弁蔵と宗次は、船頭四兄弟が捨て子だったことに驚いた、しかも弁蔵は宗次の家が医者だったことを知りさらにびっくりした様子だった。そんな二人に鉄治郎は「つとめはするがまだ先」と告げる。

そして突然思い立ったように弁蔵は立ち上がり「俺の故郷をみせてやる」と言い出した。宗次は訳も分からず旅支度を整え急遽里帰りをすることになった。弁蔵の故郷は備中(現在の岡山県の西部)にあったがその道中、山の中を歩いていると一人の女性が二人に声をかけた。弁蔵は驚いたが、なんと自身の妹だったのだ。そして自宅へ久方ぶりに帰ってきた弁蔵は、父親の剣幕に押され羽交い締めにされてしまう。そして翌日から、弁蔵だけではなく宗次まで畑仕事に駆り出されていた。二日ほど滞在していたが「二度とここに戻ることはない。別れだけはしっかりしておけ」と宗次に言われた弁蔵はうなずいた。いよいよ出発の時、弁蔵は涙を流しながら「達者でなあ!」と家族に手を振りその場を後にしたのである。

備中から無事に戻った宗次と弁蔵は舟宿が静かなことに気づき裏から入ると、鉄治郎が芳の胸倉につかみかかっていた。

4巻「夜坂の解散」

鉄治郎との喧嘩の原因が自分であると言う芳

弁蔵と宗次が大坂に戻ると鉄治郎と芳は対立し合っていた。芳が頭目の鉄治郎に黙ってつとめを果たしたというのだ。弁蔵と宗次は、一人無表情で座っている芳のもとにやってきた。そして芳に「八王子に戻るのか」と聞かれた弁蔵と宗次は、亡き頭の思いを継いで一味を作ることを宣言した。その夜、弁蔵と宗次が夜の大坂の町を歩いていると町方の役人が何者かを追っているところに遭遇する。そして裏道を通っていた二人は、頭上の瓦屋根を颯爽と飛び越えていく影を目撃し、その瞬間ひらりと着物が落ちてきたかと思ったら、その着物めがけて降りてくる人物が二人いた。その二人を見て弁蔵と宗次は驚きを隠せないでいた。なんと古着屋を営むあの女性、おときと一緒に古着屋を営んでいる女性だったのだ。実は盗んだ着物を売って商売をしており、しかもおときが思いを寄せている芳は知らないというのだ。

そんな騒ぎもあった後、宗次は弁蔵に「夜坂が俺らの今の巣だ」といい、二人は一味のために何とかする決意をしたのである。そして芳のつとめに手を貸した四兄弟も沈んでばかりではいられず、船頭として仕事に戻ったのである。

それからしばらくして、弁蔵と宗次は四兄弟や庭師たち一味をそろえて鉄治郎の元へやってきた。「目当ての細見を持ってきた」という弁蔵とともに一花咲かせたいと奮起する手下たちがそこにいたのだ。実は、前もって弁蔵と宗次はある人物たちにつとめについて確証を得ていた。それは頻繁に伏見と大坂を行き来している男二人組だった。宗次と弁蔵が二人に初めて出会ったのは、髪結い師の平七に無理やり連れていかれたあの角屋だ。一人は女装しているがれっきとした男、そして「先生」と呼ばれる人物だった。伏見にいる女のもとに通っているだけという二人だったが、実は鉄治郎に言われ次のつとめの目当てを探っていたというのだ。その話を聞いた弁蔵は、先生たちが目当てをつけている複数の箇所を一つに絞り込んで鉄治郎に叩きつけてやると意気込んだ。そんな弁蔵を宗次ですら止めることはできず、さらに弁蔵は四兄弟やほかの仲間たちにも頭の腰を動かしたいと進言する。

そして鉄治郎が目星をつけていた三つのうち全てを調べ上げ、一番妥当なところを選んで今に至るのだ。鉄治郎は四兄弟たちの様子ををみて弁蔵と宗次がけしかけたのだとすぐに気づいた。そして鉄治郎は意を決しつとめを果たすことを決め、手下たちにてきぱきと指示を出していく。そしていよいよ決行の日、何事もなく盗みというつとめを果たした夜坂一味だった。そして盗賊一味「夜坂」はこのつとめをもって解散したのである。

いつもと変わらぬように弁蔵は船頭、宗次が板前として働いていると突然「兄貴!」と声をかけられた。箱根で出会い手下にしてほしいと言っていたあの三人組だ。「なぜすぐにでも大坂を離れて一家かまえないのか」と聞かれた弁蔵たちは「しばらく動けない」とだけ言い、隠居の元へ向かった。弁蔵と宗次はかつての赤目の頭目辰五郎が忘れていったという煙管と煙草入れを渡された。疲れたから横になると言って布団に入り込んだ隠居に、弁蔵たちは「一味というものはどういうものなのかを教えられた」と告げた。そして二人が部屋を去った後、残った芳に鉄治郎を呼んで酒を飲もうと提案する隠居だったが、その日、夜坂を引っ張ってきた隠居の生涯は幕を閉じたのである。

一味総出で墓参りを済ませたそのそばには、鮮やかな曼珠沙華が咲き誇っていた。その場にいた先生は万葉集にもある「道の辺の 壱師の花~」と歌い、それを聞いていた弁蔵と宗次は「壱師…」と曼珠沙華を見ながら思いをはせるた。

しばらくして、お茶屋の看板娘のしのは一味を作るという弁蔵と宗次の手下になると言い出した。「頭はどちらが?」というおときの質問に、頭はひとりではなくふたりで頭をやるというのだ。そして芳も二人に付いて一味に入る決意をし、おときに別れを告げたのである。さらに鉄治郎のもとを離れ四兄弟も手下に加わるというのだ。そしていよいよ弁蔵と宗次一味、夜坂の別れの時がやってきた。「達者でな」そう一言言い残し大坂を去っていくのである。

そして弁蔵と宗次が作った一味「壱師」の名前は遠く離れた八王子の赤目にも届いていた。頭が二人いる一味「壱師」ときいた甚三郎は「さぞ毒の弱い花なんだろう」と冷笑を浮かべていた。そして府中にいた弁蔵は蜘蛛の羽織を着て宗次の隣に座り「壱師の花を咲かせよう」と一味全員に声をかけたのである。

5巻「壱師という花」

峠を越えている弁蔵と宗次、そして芳

「壱師」という名前もそろそろ広まり始めたころ弁蔵と宗次、そして芳の3人は峠を越え平塚にいる叶屋のもとへ向かっていた。しかしそこには旅籠「叶屋」ではなく別の旅籠屋があった。どうやら空き家になっているところを店の主人が借りたようだ。弁蔵たちは叶屋がどこに行ったかわからないまま、宿で今後のことを話し合っていた。この先江戸でつとめをするならそれより西に離れたくない、しかもお金を預けられる叶屋が江戸に近い川崎にいれば一番いいと考えていた頭二人だった。すると、芳が「そう考えるなら叶屋は川崎あたりにいるのでは」と2人に告げたとき、部屋の外から男の声が聞こえてきた。「頭の叶屋喜兵衛は川崎にいるので明日案内する」というものだった。そして後日、久しぶりに弁蔵と宗次は叶屋と再会した。そして叶屋と初対面の芳は「自分の身を預けられるかどうかわからない」と本音をこぼした。いつも満面の笑みで腹で何を考えているかわからない叶屋に対しては、当然の反応なのだ。そして叶屋と芳は頭二人について縁側で話し込んでいた。「思い切りがあって、勘もいい」という芳に、「芳がついているからこの先二人は心配ない」と付け足した。

その後、弁蔵と宗次も交えて壱師の最初のつとめとして、叶屋は獲物ごと売り込んできた。本来ならば、いくつか目星をつけて細見を、というところだがあまりにも時間がかかることなどの理由から、店の図面ごと用意していたのだ。しかし買ったものだとしても、そこから腕の見せどころだと意気込む弁蔵と宗次、そして芳であった。

それから初仕事の詰めは根城を移してからということになり、宗次と芳は八王子のほうから戻ることになった。弁蔵とは小田原で合流するようだ。しかし八王子経由で戻っていた宗次と芳はその道中、赤目で下働きをしているお蔦と出会った。そして宗次は、壱師が江戸でのつとめを終えたのち、お蔦を迎えに来るという弁蔵からの伝言を残して去っていくのであった。そして清々しいほどあっさりと目星をつけていた「近江屋」を襲撃した壱師は、「壱師」という文字と「曼珠沙華」が彫られた木札を置いてその場を後にしたのである。その木札を彫ったのは船頭四兄弟の末っ子、銀五郎だった。そしてそれからというもの次々とつとめをこなしていく壱師だった。

そして赤目の頭、甚三郎の耳にも壱師の活躍は届いており、それに手を貸しているのが叶屋というよろず屋であることも聞き及んでいた。

川崎で旅籠を営んでいる叶屋喜兵衛

叶屋は手下の男から、壱師についての動向を聞かされていた。表向きは旅籠として営んでいる宗次たちだったが、そんななか弁蔵は根城を空けることが多く、小田原に通い続けているというのだ。そして当の弁蔵は、八王子からやってきた赤目にいた半七という人物を含め3人と出会う。どうやら赤目をやめて壱師に入りたいということだった。その件を宗次に話し、さらに芳にも相談をしに行った弁蔵は、芳から八王子で会ったお蔦のことを明かされたのである。弁蔵はすかさず「お蔦はお前の駒か」と宗次に詰め寄った。しかし「手引きをするために赤目に残したのではないし、糸を引いていたわけでもない」と宗次は冷静に答えた。話が読めない弁蔵は宗次に順を追って話すように告げる。もともとお蔦は二人が赤目を去る際、一緒についてくるつもりだったそうだ。しかし宗次は、いつか一味を立ち上げたときに邪魔になると考え、それならば赤目の情報を流すようにと伝えていたのだ。しかも弁蔵からの言伝だと嘘をついてまでだ。「なぜそんな嘘をついたのか」という弁蔵の質問に対し「自分が惚れた女がほかの男のものになるのは勘弁」と宗次は本音をこぼした。お蔦は弁蔵に惚れ、そんなお蔦に宗次は惚れていたのだ。

弁蔵と宗次がそんな話をしていたころ、手下にしてほしいと頼み込んできた元赤目の3人は山に潜み壱師から声がかかるのを待っていた。もし壱師がだめだとしても赤目には戻らないと決意した3人だったが、その背後から何者かが近づいてくる。そして甚三郎のもとに、3人の始末をつけたと知らせが入った。甚三郎はその夜、お蔦と床を共にしていたが「半七たちがいないと静かだな」と声をかけさらに、なぜ半七たちがいないのかとお蔦に尋ねた。「お蔦が手引きしたから」と甚三郎が言った途端、お蔦の顔は青ざめそのまま布団の上で殺されてしまったのである。

そして叶屋の手下を通してお蔦が殺されたことを知った芳は、弁蔵と宗次にその事実を告げた。弁蔵は宗次に「お前のせいだ」と掴みかかったが、宗次は「そうだな」としか答えなかった。激しく言い合う二人をその場にいた芳が止めに入り、つとめをするぞと切り替えさせたのだった。その後、でかいつとめをするための準備として弁蔵が下見をしてくるというが、実際は叶屋のところに行って図面をもらうというものだった。しかし叶屋は一人で来た弁蔵に遠州屋の図面を渡さず、しばらく待ってほしいと告げたのである。それに納得し弁蔵が叶屋を後にしたのと入れ違いに、甚三郎の手下である猪三郎という男が現れ叶屋に刀をつきつけ、壱師と手を切り赤目と手を組むように頼み込んできたのだった。

6巻「仲間との別れ」

居酒屋から帰る弁蔵、宗次、芳

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