ACCA13区監察課(漫画・アニメ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ACCA13区監察課(オノ・ナツメ作)』とは『月刊ビッグガンガン』(スクウェア・エニックス刊)にて2013年~2016年まで連載された漫画、およびそれを原作としたアニメ作品である。ACCA本部監察課副課長のジーン・オータスの過ごしていた平和な日常が少しずつ世界の陰謀に巻き込まれていく。その軸となるのは巨大統一組織「ACCA」と「タバコ」を巡る男たちの’’粋’’様だ。食えないキャラクターたちが勢ぞろいする大人な雰囲気の作品となっている。

『ACCA13区監察課』の概要

『ACCA13区監察課(オノ・ナツメ作)』とは『月刊ビッグガンガン』(スクウェア・エニックス刊)にて2013年~2016年まで連載された漫画、およびそれを原作としたアニメ作品である。『月刊ビッグガンガン』(スクウェア・エニックス刊)2013年vol.7から2016年Vol.11まで連載した後、同誌にて2017年Vol.1から同年Vol.11まで番外編『ACCA13区監察課 P.S.』が連載された。単行本は本編が全6巻、番外編が全2巻発売されている。なおテレビアニメは2017年1月から同年3月まで放送され、2017年8月6日には、アニメ全12話の脚本を手掛けた鈴木智尋が物語を再構築した朗読音楽劇『ACCA13区監察課-Piece of Mind-』も制作された。また2019年10月には、ACCAアニメスタッフとキャストが再集結しオリジナルストーリーで描き出す後日談『ACCA13区監察課 Regards』が朗読音楽劇として展開され、2020年2月14日から全国「13」の映画館で1週間限定で劇場公開されるなど数々のメディアミックス展開もされた。また2017年11月には原作やアニメをもとに舞台化され、荒木宏文演じるジーンをはじめロッタの声はアニメと同じく悠木碧が演じた。
さらにスイーツパラダイスとコラボし『ACCA13区監察課』の世界観を表現したメニューなどが販売され、また2019年12月からは大阪、名古屋、東京にて『ACCA13区監察課』と『BADON(『月刊ビッグガンガン』連載中)』のコラボカフェを開催するなど飲食業界にも展開している。
巨大統一組織「ACCA」と「タバコ」を巡る陰謀にACCA本部監察課副課長、ジーン・オータスは平穏な日常から少しずつ巻き込まれていく。

『ACCA13区監察課』のあらすじ・ストーリー

テレビアニメ『ACCA13区監察課』

視察開始

ドーワー王国ではタバコは高級品で金持ちの道楽とされているが、周りの目を気にすることなく、地方の監視を担当している監察課の副課長・ジーン・オータスは道端でタバコを吸っていた。そんなある日ジーンが、政治とは独立した民間の組織・ACCAの本部を訪れるとACCA5長官会議で「監察課の廃止」が決定されたことを耳にする。しかし廃止が決まっても当初予定していた13区への視察は行ってほしい、と課長のオウルに言われジーンは広大な土地が広がるファーマス区へ向かうことになったのである。ファーマス支部駐在員リーダーのエイダーと合流し、視察を開始するがその途中で西署からのデータ送信時間がいつもより5分ずれていることにジーンは気づく。そして監察課員の改ざんと駐在員の不正を発見したジーンはなんとか視察を終えバードンに戻ってきた。そしてジーンは「監察課の廃止」がなくなり白紙に戻ったことを聞かされるのであった。

「監察課の廃止」を提案したグロッシュラー長官が、地方に不正があった場合にいち早く監察課が気づくことができるから、という理由で廃止を撤廃したことに疑問を持つリーリウムを含めた5長官達。そしてジーンは課長のオウルから、今までは2年に一度だった視察が今回は半年で残りの12区の視察をしてほしいと告げられ帰宅する。翌朝、5長官からのお達しに対して妹のロッタに「上から嫌われたんじゃない?」と言われげんなりするジーン。そんなジーンの次の視察先はACCA本部があるバードン区だった。
視察の途中でACCA本部のカフェに立ち寄ったジーンとACCA監察課バードン支部駐在員のグルスは、そこで5長官のうちのリーリウム、パインと遭う。リーリウムは監察課の廃止反対派でそれに関してグロッシュラーとは対立しているのだとジーンに告げる。しかしジーンは監察課廃止推進派のグロッシュラーの意見に賛同し「別の課への異動願を出しているが受理されない。監察課がいらないことは事実だ」と本音を明かす。そして残りの東署への視察を明日に持ち越し、ジーンは友人・ニーノと飲みに来ていた。

引き続きバードン区で視察を続けていたジーンは無くしたライターをレイル局員から取り戻した後、行きつけの食パン屋の前でニーノと遭遇する。そしてジーンは「最近見張られてる気がする」と元探偵でフリー記者のニーノに相談し「監察課が監察されてるのか」とニーノはからかうも、調査することに。それから間もなくしてジーンは視線を感じなくなった。その頃、ACCA上層部では臨時の5長官会議が開かれていた。グロッシュラーはACCA本部のクーデターに関する信憑性の高い情報を手に入れ、そして監察課の副課長のジーンが視察で地方に赴きクーデター派とコンタクトをとりクーデターに加担している、と明かしたのだ。そしてジーンに対してグロッシュラーは内務調査課の覆面局員を監視につけることにした。その正体は「クロウ」と名を変えたニーノだった。

引き続き、ジュモーク区に視察に向かったジーンはホテルで1本のタバコを受け取る。視察の途中でカメラマンとして来ていたニーノと出会い、仕事が終わったら飲みに行こうと約束する。その頃、ジーンが視察で留守にしている間、ロッタは監察課の課長オウルに声をかけられ、木の実がたっぷり入ったケーキを食べていた。オウルは、自分が乗り物に弱いことでジーンに視察を任せ留守にするため、ロッタに寂しい思いをさせている、とロッタに謝罪するがロッタは「気にしないでください」と笑顔で答えるのであった。
仕事を終えニーノと合流したジーンはお酒を飲みながら「お互いにずっと変わらない」とニーノとの高校時代のことを思い出していた。そして視察を終え、バードンに戻ってきたジーンは食パン屋に足を運びそこでACCA本部長のモーヴと遭遇する。そして彼女から食事に誘われるのだった。

食事に誘われたジーンはモーヴから「クーデターの噂を耳にしたことは?」と聞かれる。モーヴは独自で調査をするうちにただの噂ではないことを突き止めたがグロッシュラーからこれ以上の調査をやめるように通達を受けたため、ジーンが各支部を周りそこで得た情報を内々に伝えてほしい、と協力を依頼される。モーヴは、王位継承権を持つシュバーンが次期国王になっては平和な世の中とはいかない、クーデターの原因はそれを懸念する地方の有力者たちによるものだとジーンに告げる。そしてクーデターの噂は、ドーワー王室にも届いていたのだった。
ドーワー王室では王位後継者のシュバーン王子の成人記念式典が行われることになりACCA本部からは5長官、本部長と副本部長そして監察課からジーンとノットが出席することになったのだった。そして式典の取材に行くためニーノもジーンの妹・ロッタを連れてドーワー区へ向かうことに。式典が終わり、晩餐会の席でジーンはタバコを吸う、と言い自分に向けられる視線から逃げるように外へ出る。そして5長官の一人、リーリウムから「君はクーデター派の橋渡し役なのだ」と聞かされる。そしてリーリウムはさらに、クーデターの噂を作り広めたのはグロッシュラーなのだ、と告げる。

そしてドーワーから戻ってきたばかりのジーンは次なる視察先、スイツ区へ出向いていた。伝統と格式を重んじるこの区では外部との接触が制限されており、ジーンもその閉ざされた町の雰囲気を感じていたのだ。視察に向かうためにスイツ支部駐在員・ウォーブラーと合流する。視察を進めていたジーンは昼食を買うためにウォーブラーが離れた一瞬のうちに、クーデターについての話をしていたスイツ区民によって拉致されてしまう。閉ざされたスイツ区を変えようとする区民たちの思いを聞き「5長官のいう’’クーデター’’とは違う」そう感じたジーンは、自らが管理人をつとめるマンションの住人は有力者揃いでスイツを変えるのに一役買ってくれるだろうと提案する。
しかし時すでに遅くクーデターが勃発してしまったのだ。スイツ区における「クーデター」とは区と平民たちとの衝突だと知ったジーンはウォーブラーとともに裏道を通って逃げていたが、平民たちに再び巻き込まれる。しかしそれを助けたのは一人の男だった。なんとか暴動は鎮圧し、スイツ区の現状に疑問を覚え反体制派と内通していたウォーブラーは「自分を逃がしてくれ」とジーンに懇願する。それを聞いたジーンは今回の暴動の件を外に持ち出さない代わりに、逮捕した者を開放するようにスイツ区支部長と交渉したのだ。そのおかげでウォーブラーの反体制派との内通の情報はもみ消されスイツ支部に残ることになったのである。

視線

ある日、王室近衛兵のマギーは部下をバードンへ向かわせ、ロッタの情報を集めるように指示していたが、白玉クリームあんみつに気を取られた部下はロッタを見失ってしまう。それに憤慨したマギーは自らバードンへ足を運ぶことになったのだ。いつも通りロッタがカフェでお茶をしているところをマギーは監視していたが同じくロッタにお近づきになろうとしていたレイルもその場にいたのだ。レイルは「なぜロッタを尾行しているのか」と聞くも、マギーは答えず、なんと食パンに夢中だったのだ。こうして食パンとトーストについて意気投合した二人はロッタについての情報を共有しあう仲になったのだ。
一方、スイツ区から戻ったジーンは課長のオウルに、今まで幾度となく出している異動願について、視察がすべて終わったら受理されるだろうかと尋ねる。しかし思うような答えは得られなかった。そしてジーンはACCA本部からの移動途中で車から声をかけるリーリウムと出会う。ジーンはその車中で「グロッシュラーとクーデターがつながらない」とリーリウムに告げ、さらに、自分につけている監視員はACCA局員なのか、と問う。そしてリーリウムは「君はその目に慣れすぎていて気付いていない」と明かしたのである。
そしてジーンは次の視察先、雪深いビッラ区へ。そこにはジーンの監視役として当然ニーノも来ていた。ホテルの前で立ち尽くしなかなかホテルに入らないジーンを不思議に思うニーノだったが、その瞬間遥か遠くからカメラを構えた自分に向かってなんとジーンは視線を向けたのである。ニーノは今まで全然自分の視線に気づかなかったジーンが、気づいてしまったことに唖然。

そんなニーノを知ってか知らずか、ジーンはACCA監察課ビッラ支部の駐在員リーダー・ダンリンとともに視察を開始する。そして視察と食事を済ませたジーンは雪深い山の中へ入っていく。「一日ぐらい食事に誘ってくると思ってた」と木の陰に隠れていたニーノに声をかけ、さらにスイツ区での暴動騒ぎの中助けてくれた奴の背中に見覚えがあった、と告げるジーン。「俺がお前を見ているのはACCAの務めじゃない。それ以上は今は言えない」とだけ告げ二人は雪山を後にするのだった。
ビッラ区から戻りロッタ、ニーノと食事をしていたジーンは年末が近づいているというのに休みもなく次の視察先、ロックス区へ向かうのだった。ACCA監察課ロックス区支部の駐在員リーダー・サンドパイパーやグロッシュラーと同じく長髪サラサラの男性が多いこの区の視察途中、ジーンは里帰りしていたグロッシュラーと出会う。そこでジーンは、13年前に隣のペシ区との区境で起きた列車事故で自分の両親は亡くなったことを明かした。ペシ区は何一つ責任を負おうとせず、ペシ区との争いを避けるためにロックス区が全責任を負い、そして当時支部長だったグロッシュラーは、国鉄をACCA傘下に加えることを提唱し実現、それ以降の鉄道事故が減少したことにジーンは感謝していると伝えるのだった。

ロックス区から視察を終え戻ったジーンはすぐさま行きつけの食パン屋へ向かい、そこでモーヴ本部長と会う。何も報告することがないと言ったジーンに対して「案外君は役に立たんな」と見切りをつけられてしまう。

そして監察課では、新年のカウントダウンをどうやって過ごそうかと話が盛り上がっていた。大手百貨店の支配人やらが住んでいるジーンのマンションでパーティが開催されることを知った、アトリ、ケリ、モズはノットとその家族とともにパーティに参加するのであった。そこには課長オウルの姿も。監察課のみんなや住民たちとジーンやロッタ、ニーノはつかの間の休息を得るのだった。そして年が明け、鐘が鳴り響き「ACCA誕生100周年」の年がスタートするのであった。
「ACCA誕生100周年」の挨拶を終え、グロッシュラーは、なぜジーンが監視をつけていることに気づいたのか、考えていた。そして普段姿を現すことのない談話室へやってきたグロッシュラーはリーリウムに「なぜ監視について漏らしたのか」と尋ねる。「動きが欲しいと思ったからだ」と告げるリーリウム。
その頃、長寿の区・ハレ区を訪れていたジーンはACCA監察課ハレ支部の駐在員リーダー・パルスとともに支部長や区長からおもてなしを受けていた。モーヴに何か報告できることがないかと支部長らからクーデターについて聞き出そうとするが何も収穫は得られなかった。

真実

次の視察先であるドーワー区で、ジーンは自分がクーデター派の橋渡し役になっていることや各長官たちの思惑について考えていた。しかし今後の情勢は「王室次第」だと考えることをやめ、視察に出るのであった。ロッタへのお土産を買おうと街を歩いていたジーンのもとにニーノが声をかける。お土産を買うには時間が遅いから明日にしようと告げられ、翌日ジーンとニーノはカフェにやってきていたがその日は「国王様のお出まし」がある日だった。お出ましの度に贔屓にしている菓子店を訪れる国王様はその場に居合わせたジーンとニーノに声をかけ一緒にケーキを食べることになったのだが、ニーノは国王様とジーンがケーキを食べているのをカメラ越しに見つめていた。

ドーワーから戻りロッタにお土産を渡すジーン。そんなジーンの次の視察先はチョコレートの名産地であり女性の活躍が著しいコロレー区だった。そしてジーンはモーヴ本部長と遭遇し「君は王族の人間だ」と衝撃の事実を明かされる。ジーンは、自分のことを語らせるべきやつがいる、とモーヴに告げる。

その頃王室では、次期国王シュバーンは第二王女の血を引いているかもしれないロッタが自分にとって邪魔になる存在なのかどうか調べるためにバードンへ行きたいとマギーに告げる。王族の血を引いていたとしても自分の王位継承権は変わらないと余裕を見せるシュバーンだが、マギーは「年の離れた兄がいる」と告げるのであった。

過去

雨の中、ニーノはコロレー区で「聞かせてくれる?」と言ったジーンに33年前のことを語り始める。

33年前、コロレーの短期留学から戻った王室のシュネー第二王女は、王家の人間はもっと自分の目で城の外を見るべき、とし自由と革新の思想を持っていた。そんなある日、シュネーのお付きであるアーベントは枢機院長のクヴァルムから極秘の任務を与えられる。ペシ区から順番に外遊するシュネーを小さな船に乗せ事故に見せかけ死を偽装し、除籍、さらにバードンへ逃げるように計画していたのだった。そしてアーベントは自分の従者をバードンへ同行させることにしたが、それは幼いころのニーノとその父親だった。
身分を隠しバードンへやってきたシュネーとアーベントだったが、シュネーはそれぞれの生き方を全うするためその場で別れようとアーベントに告げ振り返ることなくシュネーはバードンの街へ消えていったのである。シュネーのバードンでの姿を国王様に報告する大事な役目を与えられたニーノの父親は、バードンで暮らすシュネーが食パンやチョコに夢中になり、さらに食パン店で出会った青年と恋をするなど、毎日のように国王様に写真と報告書を送っていた。そしてジーンが生まれその成長の様子をニーノは陰から見守っていた。そして父親のほうもパン教室に通うシュネーを見守っていた。

ほどなくしてロッタが生まれ、ジーンも高校生になった。そしてある日、父親からジーンと同じ高校に通い写真部に所属しながらそばで写真をいっぱい撮ってくるようにと頼まれた25歳のニーノは、アーベントからもらったカメラでジーンやロッタの写真を撮りながら、友人としてそばで見守り続けてきたのであった。そんな幸せな日々を送っていたニーノだったが、悲劇が起きた。

ペシ区とロックス区の区境で列車事故が起きたのだ。そしてシュネーと夫、そして自分の父親までもが事故に巻き込まれたのだと知る。しかしそんな悲劇があってもニーノはジーンとロッタ、二人を見守ることにしたのだと告げる。

陰謀

ある日、ジーンが視察で長く留守にしている間、シュネー第二王女の姉にあたる第一王女の親衛隊がロッタを狙っていると王室近衛兵・マギーからACCA新人局員のレイルの元に連絡が入る。ロッタを守ろうとレイルは動き出し安全な場所に連れて行こうとするが、その途中で行きつけのカフェの店主に出会う。ロッタは制服では目立つと言い、いったんマンションに戻ることに。しかし、マンションに侵入者が現れレイルは急いでロッタを連れ出すが二人はあえなく捕まってしまう。その車中、ロッタは自分が「ドーワー家の血筋」だと知らされる。しかしそこに、人混みに酔った課長のオウルが現れ機転を利かし二人は難を逃れたのである。
そのころACCA本部では臨時の5長官会議が開かれていた。グロッシュラーは、クーデターを起こすのであればACCA主体で実行すべき、と告げる。ACCAを廃止し王家の独裁を目指す次期国王シュバーンが王座につくのを阻止するためクーデターを起こす、つまり除籍されているジーンを王座へ擁立するのかグロッシュラーは問う。リーリウムをはじめとする5長官は全会一致で賛成したのだった。その後、祝杯をあげていたリーリウムとグロッシュラーは、次はモーヴ本部長を黙らせようとしていた。そしてこの時のために3人の長官の前で対立を見せてきたと告げるリーリウムはついに本性を見せる。

一方、ヤッカラ区へ視察へ訪れていたジーンは区長からタバコをもらい受けるが休む暇もなく次の視察先、岩と砂しかない厳しい環境下で区民はみんな地下に街を作り生活をしているというプラネッタ区へ。広大な土地がありながら食物は育たず、財政難のため区民は地下資源が発見されることに期待を寄せているこの区にジーンは思いを馳せる。そしてまたタバコを受け取るのであった。
ジーンは視察を終えバードンに戻り、ロッタから自分がいない間に起きた出来事を聞かされる。そしてジーンもニーノはドーワー王室に仕えていること、枢機院長の命令で自分たちを見守ってきたことを伝える。そしてジーンは最後の視察先であるフラワウ区へ足を運ぶのだった。

急転直下

最後の視察先、フラワウを訪れていたジーンは区長と支部長を務めるリーリウム兄弟にもてなしを受けていた。区民たちの表情も明るく朗らかで花が咲き誇るフラワウ区に、ジーンはどことなく見えない「力」が動いているのではないかと感じていた。そして密かにジーンに危機が迫っていた。

その夜、区長たちとの会食を終えたジーンだったがそこに暗殺の手が忍び寄る。間一髪のところでジーンをかばったのはニーノだった。凶弾に倒れたニーノは意識を取り戻し「自分の役目は見守るだけ」と言ったニーノに対しジーンは「見守るだけ?もうやめろよ、お前の人生はドーワー家のためのものじゃない」と無表情のまま告げげ、ジーンはフラワウ区長から最後のタバコを受け取る。
バードンに戻ったジーンから13本のタバコを見せられたリーリウムはACCAや国民を守るのは、国王の座に就くのは君しかいない、とジーンに告げる。そしてACCA誕生100周年記念式典への出席のため5長官や13区の代表が集まり準備が着々と進められていた。そして国王に代わって王室代表としてシュバーン王子もマギーとともにバードンに向かっていたのだった。

グロッシュラーと密会していたリーリウムはジーンを王座に擁立し、ジーンを操り国を動かしフラワウが実権を握るのだ、とついに本音を明かした。そして式典当日張り詰めた空気の中、区長前広場にはたくさんの民衆がつめかけ、ドーワー王国の命運を握る計画が遂行されようとしていた。

国歌斉唱、5長官の挨拶、本部長の挨拶が終わりシュバーンが式辞を述陽とした瞬間、突然シュバーンを取り囲んだ衛兵たち。そんなシュバーンに対しリーリウムは「ACCAを廃止しようとしている王子からACCAを守り、国を守るためですよ」と静かに告げる。そしてシュバーンは、自分を失脚させて別の者が王座に就くことを悟った。

そんな王子のもとにモーヴ本部長が歩み寄り、「この国に王子はあなた一人です」と告げたのだ。国の象徴であるドーワー家を守るため、王子を守るため、そしていつどこから狙われるか常に警戒心を持ってほしいとのメッセージを込めこのような寸劇まがいの演習をしたのだと明かすのだった。「我々は未来を王子にゆだねます」そのモーヴ本部長の言葉にリーリウムとその兄弟たちは戸惑いを隠せないでいた。
「大博打をうつには少々小細工が過ぎたな」そんなスペードの言葉を聞いたリーリウムはジーンがこの計画を仕組んだのだと悟った。ジーンは、自分が王族の血筋だとコロレーでモーヴに知らされた時からこの作戦を決めた、と告げる。フラワウ区主体だったゲームをACCAのゲームに移行させ、ACCAの存続が保証されることによってこのゲームにあがることができるのだと、そしてフラワウ区が実権を握ること阻止できるのだと、ジーンはリーリウムに明かす。そして「ゲームから降りるよ」と告げリーリウムは立ち去るのだった。

この式典をきっかけにACCAの新体制が確立。5長官制度は廃止され最高責任者はモーヴのみとなり、引責辞任を表明したグロッシュラーはモーヴの強い希望で相談役として長官職にとどまることになった。さらにフラワウ区が独立し13区から12区になり、各長官たちは故郷に戻り区長になる者、ギャンブルに走る者、それぞれの道を選ぶのだった。

一方、ニーノはある人物と会っていた。彼は「国王様にもう写真は必要ない、君を役目から解放しよう」そうニーノに告げる。そして彼は「金髪に染めるのも一苦労」とつぶやきジーンから受け取った異動願を破り捨ててしまう。
ロッタがドーワーを訪問しているため、監察課のみんなはジーンを食事に誘うが「どうせ一人で飲んでたら、悪友がふらっと姿を見せるから…」とつぶやいたのだった。

OVA『ACCA13区監察課Regards』

ACCAアニメスタッフとキャストが再集結し、オリジナルストーリーとなる後日談が新作OVAとして劇場公開された。みんながかつて交わした’’約束’’と、それぞれの’’つとめ’’。組織に残った者もいれば離れた者もいたがそれぞれの思いが交錯する中、止めていた時間がゆっくり動き出すのだった。

5長官制度が廃止されてから1年が経ち、ジーンはACCA新体制1周年の祭典の準備に忙しくしていた。しかしそんなジーンのもとにロッタの担任教師が訪ねてきて最近のロッタの様子が変だと告げられる。そしてジーンはドーワーにいるロッタに連絡するが何も聞けず持ち越しになってしまう。
ジーンは新人局員パロットとともに、ACCA新体制1周年の祭典に向けて各区から特産品などが届くため早朝から港で積み荷の仕分けをし、手違いで空輸されてしまったジャガイモを空港に取りに行くのであった。次の日、様々な不安を抱えたままジーンは雪降りしきるビッラ区へ出張へ来ていた。異動になったサンドパイパーの案内で、支部長と記念式典に出す特産品の打ち合わせをしていたのだ。順調に仕事を済ませサンドパイパーに夕食に誘われ、そこで旧友・ニーノと再会を果たす。三人は学生時代の思い出に花を咲かせていた。

その帰り道、ジーンは「なぁニーノ、俺たちはあの頃どうしてたっけ?」と自分たちがロッタと同じぐらいの年齢の時のことを問いかける。「お前ら兄妹は聞かれたこと以外は答えない」とニーノに言われしまう。そしてお祭りムードに沸く一方で、5長官そろってバードン入りするという噂が囁かれていた。

その頃、ニーノは母校を訪ねかつての写真部の顧問で、現在はロッタが通う高校の校長先生のヴィントと再会する。そしてニーノはロッタから進路について相談を受けた、とヴィントから聞かされる。ニーノはヴィントの話を聞きながら自分の学生時代やジーンのことを思い出していた。
ジーンはパロットから5長官に関する噂について聞かされるが「新体制になっても権力を集中させてしまったのではないか」とパロットは持論を告げる。そしてジーンは「なら直接聞きに行こう」と提案しあろうことか噂の真意をACCAの長・モーヴに聞きに行くことにしたのだった。そしてモーヴから「これはただの同窓会」と驚愕の事実を聞かされ、今までの憶測や不安は杞憂だったと告げられるパロット。さらに今回の同窓会を主導したパインはフラワウにも声をかけたのか、とジーンは問いかけ、フラワウは対立したいわけではない、とモーヴは告げる。

そして久しぶりに帰ってきたロッタから、進路について悩みながらコロレー区に行ってみたり、西区にできた新しいパン屋さんの「バイト募集」の張り紙を見ていたらご主人に声をかけられたり、といろいろ考えすぎていたため中々ジーンに相談ができなったのだと告げられる。

「なぁジーン、あの頃俺たちは何を考えてたっけ。今度ゆっくり聞かせてくれる?」とニーノの声だけが流れる。

『ACCA13区監察課』の登場人物・キャラクター

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