さらい屋 五葉(漫画・アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ

『さらい屋 五葉』とは『月刊IKKI』(小学館刊)で連載されていた時代劇漫画、およびそれを原作としたテレビアニメである。時は江戸時代、藩主から暇を出され江戸にやってきた侍・秋津政之助は、誘拐組織「五葉」の頭である弥一の用心棒をすることになった。渋々、弥一の仕事を手伝う政之助だったが、この出会いをきっかけに人として成長していくのである。『ふたがしら』や『ACCA13区監察課』など人気作品を生み出してきたオノ・ナツメが描く、かどわかしを生業にした個性豊かな登場人物たちの時代劇エンターテインメントだ。

『さらい屋 五葉』の概要

『さらい屋 五葉』とは、『月刊IKKI』(小学館刊)で連載されていた時代劇漫画およびそれを原作としたテレビアニメである。原作は2006年1月号から2010年9月号まで連載されており、単行本は8巻で完結となっている。オノ・ナツメが手掛けてきた漫画は『リストランテ・パラディーゾ』といったイタリアを舞台にした群像劇などがあったが、今作はオノ・ナツメ初の時代劇作品だ。2010年にはノイタミナ枠でアニメが放送され、浪川大輔や櫻井孝宏が担当声優を務めていた。気弱な侍・秋津政之助(あきつ まさのすけ)が誘拐組織「五葉(ごよう)」一味と出会ったことで、人として侍として成長していく姿を描いている。一癖も二癖もあるキャラクターと、オノ・ナツメ独特の雰囲気がでている作品だ。

『さらい屋 五葉』の舞台は江戸時代。侍でありながら気弱な性格の持ち主・秋津政之助は藩主に暇を出されて江戸の町にやってきた。剣の腕前はあるため用心棒を希望していたが、気弱な性格のせいでクビになったり断られたりと仕事がない状態が続いていた。そんな時、ひょんなことから、かどわかしを生業としている誘拐組織「五葉」一味の頭目・弥一(やいち)と出会う。そして、政之助の意に反して弥一は政之助を用心棒として「五葉」に引き入れた。この出会いが政之助を人として成長させていく。これはオノ・ナツメが描く時代劇エンターテインメントだ。

『さらい屋 五葉』のあらすじ・ストーリー

出会い

用心棒の仕事を解任された政之助

口入れ屋(職業斡旋業者)の紹介で用心棒の仕事をしていた侍・秋津政之助。しかし、侍というにはあまりにも頼りない性格のため、わずか二日で用心棒を解任されてしまう。侍だからと日雇いの仕事は受けないと頑なになっている政之助。沈んだ気持ちで神社の参道に座り込んでいると、銀髪の遊び人風の男・弥一が「腹が減ってりゃなんでもうまいぜ」と団子を差し出しながら声をかけてきたのである。ちょっとした揉め事の渦中にいるという弥一は、政之助に「自分の用心棒をしてほしい」と告げる。そして夜も深くなり、弥一と政之助は揉め事の相手に会うために人目のない場所にやってきていた。二人の前に男が現れた。しかし男は大金を持っているというのに、用心棒の一人もつけていない。政之助がそのことを不思議に思っていると、木の陰から突然二人の用心棒が姿を現し切りかかってきた。刀を抜いた二人の用心棒だったが、政之助は弥一をかばうように前に立ち、あっという間に返り討ちにしてしまったのだ。

用心棒(左)を返り討ちにする政之助(右)

その様子をみた弥一は驚きを隠せなかった。藩主から暇を出されたということだったが、その力量からなぜ暇を出されたのか、わからなかったからだ。政之助曰く、人から注目を浴びるのが恥ずかしく、頼りない性格のため侍らしくないということだった。用心棒を返り討ちにされた男は金を弥一に差し出し「息子を返してくれ」と懇願。「馬鹿息子は近々返す」と言って弥一は金を持ち去った。弥一は先程の男の息子を誘拐しており、受け取った金はその身代金だった。弥一は、自分は誘拐を生業としている賊「五葉」の頭であると、政之助に自分の正体を明かしたのだった。身代金の一部をもらった上に「仲間に入ってもらう」と弥一に言われ政之助は、その夜「どうしたらよいか」と悩まずにはいられなかった。

梅造の娘・お絹(左)に朝食を出される政之助(右)

翌日の夜、「五葉」の一員で居酒屋の店主・梅造(うめぞう)の店で弥一と吞んでいた政之助は、朝まで店で眠ってしまった。起きたころには弥一はおらず、政之助は梅造の娘・お絹(おきぬ)に朝食を出されていた。どうやらお絹も「五葉」の仕事について知っているようで「元々のきっかけは私」と政之助に告げるのであった。お絹が、奉公先の次男に悪戯されそうになり袖にした(冷たくした)ため暇を出されたことがある。そのことを知り、父親である梅造がその息子を殺す勢いだったが、弥一が待ったをかけたのだ。弥一は梅造に拐かし(かどわかし)を提案し、金を巻き上げて仕返しをしたことから全ては始まった。その後も、難癖のある家の者を誘拐しては身代金を得るということを繰り返しているのだ。「五葉」が義賊だったという事実を知った政之助に「侍にこだわっているのか」と問いかける弥一。政之助は「侍として再士官したい」と答え、さらに以前もらい受けた身代金を郷里の家族のもとに送ったことを明かしたのだ。政之助の弟が借金を作ってしまったからだ。弥一は「金が必要なら自分たちと行動したらどうか」と政之助に提案した。

弥一(左)の住まいを尋ね、後を追う政之助(右)

いつものように梅造の店で呑んでいた弥一と政之助。居酒屋の客の入りが多くなる時間になると帰っていく弥一に、政之助は「住まいはどこに」と問いかける。「桂屋(かつらや)」という岡場所(おかばしょ 幕府非公認の遊郭)があり、そこに軒連ねているところに住んでいるという弥一。政之助は弥一と別れた後、弥一のあとをつけ岡場所にやってきた。遊女に声をかけられた政之助は、弥一が「桂屋」の用心棒兼居候だということを知ったのである。その翌日、頑なに断っていた日雇いの仕事をしていた政之助に「梅造の店にはいつでもきていいから」と弥一が声をかける。その夜、梅造の店で呑んでいた政之助の隣には「五葉」の一員である美しい女性・おたけが座っていた。かつては岡場所にいたそうだが、弥一に身請けされ自由になったというのだ。

買い出しにきた梅造(左)と政之助(中央)が、ご隠居(右)と食事している

そんなおたけの隣で食事をする政之助に、梅造は「タダ飯食べさせて貧乏浪人の世話をするなんて」と弥一のお人好しぶりに苦言をこぼしていた。梅造は憤慨しながら「タダ飯の見返りに翌日の買い出しに付き合え」と、政之助を連れ出した。翌日、一言も話さず黙々と歩き続け江戸の町から離れていく政之助と梅造。周りを畑に囲まれた民家にたどりつき中に入ると、一人の老人がいた。梅造は背負っていた竹籠に入っている旗本の子倅(こせがれ)を老人に差し出す。まさか人質が入っているとは夢にも思わなかった政之助は、仰天しひっくり返ってしまう。老人と梅造、三人で食事をしながら、知らず知らずのうちに加担していると悟った政之助は項垂れる。そして、縁側で一人空を見上げていた政之助に老人が声をかける。元々、梅造とは昔馴染みらしく、人質を数日間預かるだけだがいつしか手を貸すようになったそうだ。買い出しを済ませ店に戻った政之助は梅造の娘・お絹から、あの老人は「ご隠居」というそうで、昔は名のある盗賊の頭だったということを聞かされたのだった。

政之助(左)が落ち葉を拾うのを見ていた八木(右)

翌日、政之助はおたけに連れ出され舟遊びをしていた。そしてその夜も梅造の店に来ていた政之助は、梅造に頼まれ漬物番をしていた。そこへ、身代金を持って弥一がやってきた。先日、ご隠居のところに預けた子倅の身代金だ。翌日、再びおたけに連れ出されていた政之助は「五葉」のシンボルである楓の葉を拾い集めていた。脅迫状に入れて相手に送りつけるためだという。「団子を買ってくる」と言って立ち上がりおたけはその場を離れたが、侍が一人落ち葉拾いをしている滑稽な様子に、一人の男が声をかけてきた。
腰に刀を差し手桶を持ち墓参りに来ている様子の男は、自分の着物にくっついていた楓の葉を政之助に渡し「侍が小さくなって落ち葉を拾っている」と一笑いして去っていったのである。楓の葉を拾い終わり団子を食べていた政之助とおたけの前を、松吉(まつきち)という男が通り過ぎてゆく。それに気づいたおたけは松吉に声をかける。彼も「五葉」の一員で梅造の店の常連でもある。人より身軽なため潜入や見張りなどを担当しているが、普段は腕のいい飾り職人だ。自分で作った簪をその場でおたけにプレゼントしたが、隣にいた政之助には目もくれなかったのだった。

知らず知らずのうちに

政之助が用心棒をしている米問屋「近江屋」

政之助は弥一の紹介で米問屋「近江屋(おうみや)」で用心棒をしていた。そのおかげもあってか今度はすぐに暇を出されることもなく、仕事にいそしんでいた。偵察役の松吉も飾り職人として近江屋の屋敷を訪ねてきていた。そして、友太郎(ゆうたろう)という女中の子供と出会い、大層気に入られた政之助であった。しかし、ある日「五葉」の次の狙いが「近江屋の主」と、弥一から聞かされたのである。その事実に政之助は驚き、職につけたと思っていたのにと落胆するしかなかった。ある日、政之助が茶屋で一休みしていると、以前落ち葉拾いの時に出会った男が声をかけてきた。「自分家の風呂焚きがやめたばかりだから、職替えしないか」など、団子を食べながら他愛もない話をし、男の名前が「八木平左衛門(やぎ へいざえもん)」と知った政之助であった。

団子屋で談笑している政之助(左)と八木(右)

そして今日も飾り職人として松吉は近江屋の屋敷を訪ねていた。その時、近江屋の奥方から、屋敷で走り回っている子供は女中の子ではなく「養子として屋敷に迎え入れた子供」だと明かされる。その事実に、弥一は計画を変更し主ではなく子供を誘拐したのである。「子供はご隠居のところで元気にしている」と、おたけから聞かされた政之助は複雑な気持ちだった。知らず知らずのうちに「五葉」に加担していることや、用心棒として友太郎を守れなかったことを考えていたのだ。

涙を流す誠之進

今回、子供を誘拐したことで弥一は幼いころのことを思い出していた。まだ「誠之進(せいのしん)」という名前で三枝家(さえぐさ)の養子だったころ、母親の企てによって誘拐にみせかけて殺されそうになったことがあるのだ。男3人に誘拐された誠之進だったが、仁(じん)というリーダー格の男は「誠之進を殺すつもりはない」と言った。仁は「血の付いた着物を持っていき死を偽装し金だけもらう」と言い、江戸を出るというのだ。「一緒に来るか」と誠之進にも声をかけた仁だったが、誠之進は「弥一が守ってくれるから」という理由で屋敷に帰ると言い出した。「弥一」というのは、三枝家の使用人で、誠之進が唯一心を許していた人物だった。しかし、今回の誘拐の話を持ち掛けたのはなんと使用人の弥一だという。その事実にショックを受け、誠之進は涙を流すしかなかった。

手紙を預かり近江屋の主人(左上)に渡す政之助(右)

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