ブルーバレンタイン(映画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ブルーバレンタイン』とは2010年公開のアメリカの恋愛映画。あるカップルの出会いから結婚、破局までを描く切ないストーリー。価値観の違い、気持ちの温度差、方向性の違い、仕事の格差から冷め切った夫婦をライアン・ゴズリングとミシェル・ウィリアムズが演じ、過激な性描写や体重増量も辞さない迫真の演技で、2人とも第68回ゴールデングローブ賞にノミネートされた。デレク・シアンフランス監督は10年かけて脚本を練り上げ、第63回カンヌ国際映画祭では「ある視点」部門に出品された。

キューピッドの入り江

ディーンが予約したホテルで空いていた2部屋のうちの1部屋。こちらは選ばれなかった。

未来ルーム

ディーンが予約したホテルで実際に予約した部屋。宇宙をイメージした窓のない悪趣味な部屋。
暗く閉塞的な空間が、崩壊しそうな2人の関係を悪化させる。

『ブルーバレンタイン』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

ディーン 「男は女よりロマンチストだ 。結婚する時は1人しか目に入らない。この女を逃したら俺はバカだと思う 。でも女は男を値踏みし選り好みする 。王子様を待ち続けるが結局選ぶのは稼ぎのいい男さ」

引越し屋のバイトが決まり、同僚と話すディーン

ディーンがシンディと出会う前、引っ越しの仕事をしていた時に同僚を話していた言葉。
その後を予見するような言葉で、この話をした直後、ディーンはシンディに出会い。一目ぼれをし、シンディが別の男の子供を妊娠しているにも関わらず、結婚することを誓う。
結婚後、やはり収入や向上心のなさをシンディに嫌われ、離婚を言い渡される。
シンディは必ずしも収入の面だけで、ディーンのことを嫌いになったわけではないであろうが、ディーンの収入の低さは離婚の大きな要因である。
ロマンチストな男と現実的な女。
この映画で伝えたいことの1つがこの言葉に表れている。

シンディ「いつか消える感情なんて信じられる?」 シンディの祖母「愛を見つけるには感情を持たなくちゃ 。愛を信じる権利がある。 自分を信じるの」

信頼できるおばあちゃんと愛について語るシンディ

シンディは信頼を寄せる祖母に「愛ってどんな気持ち?」と尋ねる。まだ私は見つけていないと答える祖母はシンディにアドバイスをする。
「気をつけなさい。よく選ぶのよ 恋に落ちる相手があなたにふさわしいか」
両親の不仲を見て育った愛を信じられないシンディが信頼できる祖母の言葉で、自分にふさわしい男=ディーンを選んだはずだったが、結局それはいつか消える感情だったいうことに後に気づくことになる。
シンディの愛に対する考え方がよくわかるセリフである。

ディーンとシンディが偶然同じバスに乗り合わせバスを降りて並んで歩き、ブライダルサロンのショーウインドウの前でディーンのウクレレに合わせてシンディが踊るシーン。

「You always hurt the one you love」 The Mills Brothers

ディーンは運命を感じているシンディとバスで偶然乗り合わせる。チャンスとばかりにシンディに近づき、自分のことやシンディのことをいろいろ話した。
シンディと同じバス停で降り、2人は街を歩く。お互いに好意を感じながら、ドアにハートの飾りが飾ってあるブライダルサロンのショーウインドウの前で、ディーンがウクレレを弾きながら歌い、それに合わせてシンディがタップダンスを踊る。
出会ったばかりの2人の希望に満ちた楽しくキラキラした様子が美しく、現在の冷え切った状態との対比になって、印象的な場面である。

花火とともに幸せだったころの映像が浮かび上がるエンドクレジット

映画『ブルーバレンタイン』エンド・クレジット

離婚という結果になり、去っていくディーンの寂しそうな後ろ姿が印象的なラストシーンの後のエンドクレジットが大変美しい。
花火の映像とともに、幸せだったころのディーンとシンディの姿が浮かび上がる。
幸せで美しかった頃を花火とともに映すことによって、幸せが浮かんでは花火のように儚く散る。
この映画が訴える現実の厳しさ、切なさが痛いほど伝わってくる。

エンドロールの曲はグリズリーベア(Grizzly Bear)のアリゲーター(Alligator)
タイトルデザイナーは Jim Helton 。

『ブルーバレンタイン』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

映画はある年の7月3日から4日の独立記念日にかけての話である

映画のラストで上がっている花火は独立記念日の花火であることから7月3日から4日にかけての話だということがわかる。

脚本を書いた理由はデレク・シアンフランス監督が20歳の時に経験した両親の離婚

デレク・シアンフランス監督は両親の離婚で傷つき、映画製作を通して、男女の関係がどのようにして始まり終わっていくのかを理解したいと考え、12年の歳月をかけて67版に及ぶ推敲をして脚本を執筆した。

デレク・シアンフランス監督はしっかりした脚本があるにも関わらず、ディーンとシンディの口論のシーン、歌とダンスのシーンなどは即興でやってくれと頼んだ

口論のシーンではデレク・シアンフランス監督はライアン・ゴズリングとミシェル・ウィリアムズを別々の部屋に呼び、ライアン・ゴズリンには「なんとしてでも、説得しろ」と指示し、ミシェル・ウィリアムズには「何としてでも議論をやめ、部屋から出るようにしろ」と指示。即興で口論させ緊張感の高い映像を撮った。

歌とダンスのシーンではお互いの特技を隠しておくように指示した。このシーンは撮影に丸一日をかけ、夜明けまで撮っていたが、実際に使われたシーンは2分だった。

きちんとした台本があるのに即興で演技することについて、セリフを覚えるのが苦手なライアン・ゴズリングは歓迎したそうだが、脚本を気に入っていたミシェル・ウィリアムズは少しがっかりしたようだ。

ライアン・ゴズリングは2005年にミシェル・ウィリアムズは2003年に出演を約束した。

hamanokeizi6
hamanokeizi6
@hamanokeizi6

Related Articles関連記事

NEW
グレイテスト・ショーマン(映画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

グレイテスト・ショーマン(映画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『グレイテスト・ショーマン』とは2017年に公開された、アメリカで19世紀に活躍した興行師「P.T.バーナム」をモデルとしたミュージカル映画である。奇抜なアイデア故に奇人扱いされていた「P.T.バーナム」は、ピンチをチャンスに変えて「史上最大のショー(The Greatest Show)」を作りあげていく。主演は『レ・ミゼラブル』でも活躍したヒュージャックマンが務め、音楽は『ラ・ラ・ランド』も担当したベンジ・パセック&ジャスティン・ポールのコンビである。

Read Article

ヴェノム(Venom)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

ヴェノム(Venom)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ヴェノム(Venom)』とは、2018年に公開されたアメリカ合衆国のスーパーヒーロー映画である。日本での公開は2018年11月2日。ソニー・ピクチャーズの保有するマーベル・コミックのキャラクターを実写映画化した『ソニー・ユニバース』シリーズの第1作品目。 地球外生命体シンビオートに寄生され、ヴェノムに変身する特殊能力を手に入れたジャーナリストエディ・ブロックの闘いを描く。

Read Article

ラ・ラ・ランド(La La Land)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

ラ・ラ・ランド(La La Land)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ラ・ラ・ランド』とは2016年公開のミュージカル映画。売れないジャズピアニストのセバスチャン(セブ)が弾くピアノに惹かれてバーに入った女優志望のミア。後日あるパーティ会場でミアはセブに再会する。2人は急速に恋に落ち、互いの夢のために励まし合いながら共に暮らすが、ミアの夢を叶えるチャンスを掴むために別れる決断をする。往年の名作ミュージカル映画をオマージュした美しい映像や楽曲、ミアとセブの表現力溢れる歌声やダンス、切ないストーリーで観るもの全てが恋に落ちる極上のエンターテイメント。

Read Article

きみに読む物語(The Notebook)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

きみに読む物語(The Notebook)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

2004年制作。アメリカ映画。出演のジーナ・ローランズは本作でゴールデン・サテライト賞助演女優賞を受賞した。療養施設にいるデュークは、認知症の老女に物語の読み聞かせをしている。その物語とは、1940年代のある若いカップルの話だった。話を聞くうち、老女は時折記憶を取り戻す。原作はニコラス・スパークス。

Read Article

秘密への招待状(映画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

秘密への招待状(映画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『秘密への招待状』とは、2019年アメリカにて公開されたヒューマンドラマである。インドで孤児院を経営するイザベルに、ニューヨークのメディア会社で長年辣腕を振るってきたテレサという実業家から大口の寄付の話が舞い込む。イザベルはテレサの強引な要請で、契約をまとめるためにニューヨークに飛ぶ。そこでイザベルを待ち受けていたのは、心の奥底に封じ込んでいた自らの過去だった。18歳で訳あって別れた元恋人オスカーと、2人の間に生まれた娘グレイスとの突然の対面に揺れるイザベルの心を、テレサの愛情が溶かしていく。

Read Article

ラ・ラ・ランドのオマージュしたミュージカル映画まとめ

ラ・ラ・ランドのオマージュしたミュージカル映画まとめ

2016年に全米で公開されたミュージカル映画「ラ・ラ・ランド」。 母国アメリカをはじめ世界中で大ヒットを記録し、アカデミー賞では監督賞をはじめ6部門で賞を受賞しました。そんな「ラ・ラ・ランド」にはミュージカル映画の名作のオマージュがちりばめられていて、それも見どころになっております。 今回は、「ラ・ラ・ランド」でオマージュされている映画について紹介します。

Read Article

切なさが心にしみる映画・ブルーバレンタインの主題歌・劇中歌まとめ

切なさが心にしみる映画・ブルーバレンタインの主題歌・劇中歌まとめ

2月14日はバレンタインデー。女性が愛する男性にチョコレートをプレゼントし、告白をするという一大行事だ。一方バレンタインデーをテーマにしたほろ苦い映画『ブルーバレンタイン』という作品もある。永遠の愛を誓ったはずの若い夫婦が破綻への道を歩むという、切ないストーリーだ。本記事では『ブルーバレンタイン』の中で使われていた楽曲をまとめて紹介する。

Read Article

【MCU】スパイダーマンの原作に登場するヴィランまとめ【マーベル・コミックス】

【MCU】スパイダーマンの原作に登場するヴィランまとめ【マーベル・コミックス】

マーベル・コミックスの代表的なヒーロー、スパイダーマン。ここではスパイダーマンの原作に登場するヴィランについてまとめました。サム・ライミ監督版「スパイダーマン」三部作や、「アメイジング・スパイダーマン」シリーズに登場したヴィランをはじめ、ヴェノムやカーネイジなど、映画「ヴェノム」シリーズに登場したキャラクターなども紹介しています。

Read Article

おすすめの恋愛映画15作品をまとめて紹介!素敵なときめきタイムで心と体に潤いを

おすすめの恋愛映画15作品をまとめて紹介!素敵なときめきタイムで心と体に潤いを

大好きな人にときめきを感じて、脳を刺激すると分泌されるドーパミン。女性の場合ドーパミンが作用すると成長ホルモンが通常よりも多く放出され、肌や髪に潤いを与える効果がある。そこで本記事では思わずときめきを感じてしまうような、おすすめの恋愛映画を15作品ピックアップし、あらすじ・ストーリーやおすすめポイントを掲載した。ぜひドキドキする素敵な時間を楽しんでみてほしい。

Read Article

【雪の華】Twitterで話題の「バレンタインに観たい恋愛映画」まとめ【きみに読む物語】

【雪の華】Twitterで話題の「バレンタインに観たい恋愛映画」まとめ【きみに読む物語】

Twitterで話題の「バレンタインに観たい恋愛映画」をまとめてみた。 「平成最後のバレンタインに観たい映画No. 1」とも言われた「雪の華」、身分の違う恋人同士の純愛作品「きみに読む物語」など。作品のファンや視聴済みの方たちのオススメツイートと共に、国内外問わず名作と言える作品を紹介する。

Read Article

目次 - Contents