愛がなんだ(小説・映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『愛がなんだ』とは、角田光代による恋愛小説、およびそれを原作とした今泉力哉監督による実写映画作品。
映画作品では、岸井ゆきのが主役のアラサーOL・テルコを、成田凌がテルコの片思い相手であるマモルを演じ、独立系の低予算作品としてはあまり例を見ないロングランヒットを記録した。テルコはマモルに一目惚れをしてからマモル一筋の毎日を送るが、マモルはテルコのことを都合のいい女と思っている。テルコとマモルのどうしても埋まらない距離感がリアルに描かれている。

『愛がなんだ』の概要

画像左側がテルコ(演:岸井ゆきの)、右側がマモル(演:成田凌)

『愛がなんだ』(英題:Just Only Love)とは、同名の角田光代の純度100%の恋愛小説およびそれを実写化した映画作品である。映画は2019年4月19日に全国の劇場で公開された。
制作は映画「愛がなんだ」製作委員会 。
配給はエレファントハウス。
主題歌は京都を拠点に活動する4ピースバンド・Homecomingsが提供している。
また、監督・脚本はリアルな恋愛模様を映し出し多くの共感を集める今泉力哉だ。

今泉力哉監督は1981年2月1日生まれで、福島県出身である。妻である今泉かおりも映画監督として活躍している。今泉力哉監督の主な作品としては『サッドティー』(2013年)、『退屈な日々にさようならを』(2017年)、『パンとバスと2度目のハツコイ』(2018年)が挙げられ、『パンとバスと2度目のハツコイ』(2018年)ではTAMA映画賞と最優秀新進監督賞を受賞している。また、松坂桃李が主演を務める映画『あの頃。』が2021年に公開予定である。

主要キャストとして岸井ゆきの、成田凌、深川麻衣、若葉竜也が出演している。特に主演・岸井ゆきのの自然な演技と成田凌演じるダメ男役が高い評価を得ている。2019年11月17日に開催された映画ファンの祭典であり国内外で活躍する監督、役者が勢揃いする「第29回 映画祭 TAMA CINEMA FORUM・第11回 TAMA 映画賞」では、『愛がなんだ』に出演した岸井ゆきのと成田凌が「最優秀新進男優賞」と「最優秀新進女優賞」をそれぞれ受賞した。

『愛がなんだ』は若い女性の間で大ヒットし、劇場は10代後半~30代の女性やカップルで埋め尽くされるという事態を生んだ。公開してから間もない頃はメイン館のテアトル新宿では満席となり、立ち見も出るほどの人気であった。さらに、登場人物の性格やそれぞれの苦悩が共感を生み、TwitterなどのSNS上では自分自身の経験が重なったという声が多く投稿された。口コミで注目を集め、ロングランで上映された話題作である。

アラサーOLのテルコは友人の結婚式の二次会で出会ったマモルに一目惚れをし、その日を境にテルコの世界はマモル一色に染まる。会社の電話は取らないのにマモルからの連絡は秒で対応する上、マモルから平日にデートに誘われたら平気で会社を休んでしまう。そのため会社をクビになる寸前であった。テルコはマモルの側に居ることができるならなんだってする。テルコはマモルが大好きで、優しいマモルの側に居られることが幸せだった。だが、マモルはテルコを好きではない。『愛がなんだ』にはテルコの全力な片思いと“正解のない恋の形”を模索し続ける大人たちの愛のすべてが描かれている。

『愛がなんだ』のあらすじ・ストーリー

テルコとマモルの出会い

山田テルコは28歳のOLで独身。田中マモルとの出会いは友人の結婚式の二次会であり、お互い周りの賑やかな雰囲気に馴染めない同士でそれとなく会話を始めたことがきっかけである。ひとりで座っているテルコはマモルに話しかけられる。テルコは自己紹介をした後、マモルに「テルコだからテルちゃんだ」と勝手にあだ名をつけられる。それを聞いたテルコは少し照れながらも「じゃあマモちゃんだ」とマモルに言い返す。この時テルコはマモルに一目惚れをし、全力の片思いがスタートする。

テルコの全力な片思いと心配する親友・葉子

画像左側が葉子。テルコからマモルについて相談を受けている。

テルコの生活はマモル一色に染まる。金曜日はマモルから連絡がくることが多い。テルコは一日中マモルからの連絡を期待している。当然仕事に集中できるわけがなくて上司からは注意を受けるが、それでもしきりに携帯電話を確認する。マモルから連絡が来た時にすぐ会いに行けるようにテルコは仕事が終わっても家に帰らず会社で時間をつぶす。
一方でマモルはテルコの片思いに気付いているのか気付いていないのかは不透明であるが、風邪をひいたから買い物をしてきてほしいなどと突然テルコに電話して家に呼び出す。
テルコはマモルからの突然の連絡に舞い上がり、もう会社から家へ帰ってしまったにもかかわらずちょうど残業が終わり今から帰るところだと嘘をついてマモルの家へ急いで向かう。
テルコは頼まれた買い物の他に、きっとマモルが喜んでくれるだろうと勝手に家事までこなす。しかしマモルは頼んでもない家事を勝手にされたことに対して急に不機嫌になる。テルコのことを「もう帰ってくれない?」と言って家から追い出し、テルコは深夜にひとりで家に帰らされる。
しかしマモルからの連絡は途絶えない。マモルはこの前看病してくれたお礼に奢りたいと言ってテルコを居酒屋に連れだす。そのまま終電を逃して朝を迎えてふたりでテルコの家に向かったり、テルコの仕事があるにも関わらず平日に動物園に行こうとテルコを誘う。テルコの前に現れ続けるマモル、マモルのことが大好きなテルコ、ふたりは曖昧な距離感を保ち続ける。
そんなテルコとマモルの関係をテルコの親友である葉子は心配していた。

葉子の年下の恋人、ナカハラの苦悩

葉子には年下の恋人、ナカハラがいる。ナカハラはカメラマンのアシスタントをしている。葉子からは突然呼び出されたりして都合のいいように扱われることもあるが、ナカハラは葉子のことが本気で好きである。
また、テルコとナカハラは相手のためなら何でも受け入れられると一方的に考えてしまう癖を持ち、お互いの苦しみを間接的に共有している者同士だ。
年末、葉子とテルコとナカハラは葉子の実家で一緒に年越しをしようと約束をするが、当日に葉子が急遽会社のパーティーに行くことになり、葉子の母とテルコとナカハラの三人で大晦日を過ごすことになる。 除夜の鐘の音を聞きながら、年越しそばではなく葉子の母の提案で餃子を食べる。葉子の母は「葉子にはこんな素敵なお友達がいて、あの子は幸せね」と嬉しそうな表情を見せ、食事の後片付けのため、すぐにその場を去ってしまう。計らず二人きりになってしまったテルコとナカハラ、会う時や遊ぶ時は必ず葉子を含めて三人であるので、二人の間には慣れない不自然な空気が流れる。話題は葉子についてになる。ナカハラは「自分は葉子が寂しい時に思い出してくれるような存在になりたい」と言うが、弱いところをあんまり人に見せない性格の葉子は寂しくなる時なんてないのではないかと考え、葉子にとっての自分の存在の意味を見つけ出せずにいる。

マモルに好きな人ができる

画像右側が塚越すみれ。三人で飲んでいる。

テルコとマモルは曖昧な関係を保ちながら体の関係を持つようになる。そしてマモルの家で生活をするようになる。テルコはマモルの恋人になれたと思い込み、頭の中はより一層マモルでいっぱいになり、ついには会社をクビになってしまう。テルコは会社をクビになったことで落ち込むどころか、これでずっとマモルのそばにいられると感じ、今まで以上に尽くすようになる。
テルコは会社をクビになったことを会社の後輩から心配される。出勤最後の日、会社の後輩から今までの感謝と最近の出来事として彼氏と婚約をしたことを伝えられる。それを聞いたテルコは身近で自分より年下の後輩がもう婚約をしていることに驚くと同時に、婚約という状況を自分に置き換えてもしマモルと結婚したらと妄想をし始める。
しかしテルコの幸せな生活は呆気なく終わる。マモルからテルちゃんと呼ばれていたのがある日を境に山田さんになり、マモルのテルコに対しての態度は冷たくなった。
テルコはマモルの家を追い出される。テルコはマモルとの同棲が始まるタイミングでこれから始まる2人の幸せな生活を妄想し、勝手に2人用の鍋を買いキッチンに置いていたのだが、その鍋は使われることがないままテルコが持ち帰り、ゴミ捨て場に捨てる羽目になる。そしてそれ以降マモルからの連絡は全く来なくなった。
テルコは葉子に相談するが、葉子は会社を辞めたりマモルのいいように扱われていたテルコを心配する必要がなくなり安心している。
テルコはマモルから嫌われて関係は完全に終わったのだと思い、マモルのことを諦める。そして再び働くためにアルバイトの面接を受け始める。
テルコは新しく銭湯での清掃のアルバイトをすることになる。仕事を教えてくれたのはママチャリに乗る主婦で、手際よく業務をこなす。主婦はテルコがマモルのことが忘れられず恋の悩みを抱えていることをテルコの表情から見抜いており、仕事終わりに一緒に湯船に浸かろうとテルコを誘う。テルコの話を聞いていた主婦であったが、実はバツイチであることを告白する。それでも新しい出会いがあり、仕事をしながら子育てをして普通に生活を続け、恋に失敗しても時が経てば受け入れられるのだからクヨクヨ悩む心配はない、人生何があるかわからないとテルコを励ます。
マモルには好きな人ができていた。名前は越塚すみれ。もうすぐ35歳でマモルより年上である。見た目は個性的な服装や髪形が目立つ。クラブに通い友達も多い。ヘビースモーカーであり、自由で大雑把な性格である。
ある日、テルコはマモルから唐突に誘われる。久しぶりの再会に心を躍らせるテルコだが、マモルの隣にはすみれが座っている。テルコはてっきりマモルとふたりで会えると思っていたので、マモルの隣に見たことのない女の人がいる状況に戸惑う。また、テルコはマモルがすみれに惹かれていることを瞬時に汲み取る。
そして、テルコはマモルとすみれの飲みに誘われたことを理解する。すみれの隣に座るマモルはまるで別人のように見える。マモルがすみれの楽観的なノリに合わせているのがテルコには不自然に伝わってくる。テルコはいつもと違う様子のマモルに自分の不器用さを指摘され、心がもやもやする。飲み会が終わりマモルとすみれと別れて一人で夜道を歩くテルコは、すみれに恋して変わってしまったマモルと、マモルの隣に何食わぬ顔で座っていたすみれに対しての晴れない気持ちをラップにする。
テルコは最初、マモルがなぜすみれのことを好きになるのか意味が分からなかったため恋のライバルであるすみれに腹を立てていた。しかしだんだんとテルコも自分と真反対の性格のすみれに惹かれていく。テルコはすみれから好かれて遊びに誘われるようになる。テルコはマモルと会えるからという理由で遊びに誘われても断ることはない。

ナカハラの恋の終わり

出典: www.google.co.jp

画像左側がナカハラ。テルコに葉子と別れたことを話す。

すみれの誘いでマモルの友達の別荘を借りてBBQを行うことになる。すみれの友達を大勢誘っていたが結局誰も来なく、メンバーはすみれ、テルコ、マモル、予定のある葉子の代わりで、葉子に「どうせ暇なら私の代わりに行ってきなよ」と言われ断ることができず、仕方なく行く羽目になったナカハラの四人だ。海の近くでBBQを楽しみ、線香花火をして夏を満喫する。
何気ない会話の中で話題はナカハラの恋愛事情になる。葉子がナカハラを自分の都合のいいように扱うことに対して、葉子が幸せであるなら自分はそれでいいと思うナカハラと、葉子の自分勝手な感情に振り回されているナカハラは可哀そうだと思うすみれ。加えてすみれは、葉子とナカハラの関係性はどこかおかしい、葉子はナカハラのことを考えていないと言う。ナカハラは自分と葉子の関係について何も知らないすみれに無責任に口出しをされたと思い腹を立てながらもすみれの言葉に心当たりがあり、葉子にとって都合のいい相手でしかない自分が情けなくなる。そしてナカハラは自分が葉子の近くにいることで葉子が悪く言われるのは嫌だと思い、葉子との関係を断つことを決める。
葉子との関係は終わりにする、葉子とはもう会わないとナカハラから聞いたテルコ。テルコは「葉子が手に入らないから諦めて、ナカハラの葉子への気持ちはそんな程度なのか」と思い、ナカハラの行動が理解できない。それと同時にさまよいながらもお互いそれぞれの好きな人を追いかける味方同士と思っていたナカハラが変わってしまったことで、テルコの心にはマモルのことは諦めないと今までより強い意志が芽生える。その一方で、ナカハラは「幸せになりたいっすね」と言い、テルコに背を向け歩き出した。

テルコの恋は報われなかった

ある日マモルが突然テルコの家に訪れる。「すみれのことが好きだからもうテルコと会うのをやめたい」と伝えるためであった。マモルからその言葉を聞いたテルコは、マモルのことが大好きであるのにも関わらず「私ももう好きではなかった」と本心と真逆のことを伝える。これはマモルに嫌われないようにするためのテルコなりの強がりである。しかしマモルはテルコの言葉をそのまま受け入れる。テルコはもう自分に気がないと分かり、マモルは安心した表情を浮かべる。
この時テルコは自分の恋は報われないと気づく。だが、テルコがマモルを好きであることに変わりはない。今後もマモルと繋がっていたいので、テルコはマモルとすみれの恋を応援することを決意する。
後日すみれは飲み会にテルコとマモルを誘い、そこに神林という男友達を連れてくる。四人で飲むことになるが、テルコの前には大好きなマモルがいて、その隣にはマモルの好きなすみれがいる。この光景を目の前にしてテルコは改めてマモルとの関係が終わったことを実感する。そしてテルコはこの後マモルとすみれをふたりきりにさせてマモルの恋を手助けしようと考え、神林に「この後ふたりで飲みなおそう」と誘う。

『愛がなんだ』の登場人物・キャラクター

主要キャラクター

山田テルコ(演:岸井ゆきの)

28歳のアラサーOL。マモルに一目惚れをしてからマモルのことしか頭になく、仕事をやめるなど自分の人生を犠牲にしてまでもマモルの側にずっといられることを願う。マモルへの恋が報われないと知っても繋がっていられるなら構わないと思っている。親友の葉子からは、テルコの思い切った恋とテルコがマモルに思わせぶりな態度を取られていることを心配されている。

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