つらつらわらじ(備前熊田家参勤絵巻)のネタバレ解説・考察まとめ

『つらつらわらじ』とは『月刊モーニングtwo』(講談社)で連載されていたオノ・ナツメによる時代劇漫画である。時は寛政、備前岡山藩主の熊田治隆は参勤交代のために江戸に向かうことになった。そして、隠居して江戸で暮らす計画を立てているため、江戸までの旅を楽しもうと考えていたのだ。しかし、江戸までの道のりは波乱の連続だった。『ACCA13区監察課』や『レディ&オールドマン』など人気作品を生み出してきたオノ・ナツメが描く、2年に1度の参勤交代エンターテインメントだ。

岡山藩の家老職につく6つの家。藩主一門である熊田家と日木家、戸倉家、行木家の6つの家から構成されている。この中で、天城熊田家が最も家格が高い。

参勤交代

参勤交代とは、江戸時代において各藩の主である大名などを交替で江戸に出仕させる制度。大名家が2年ごとに江戸に参覲し、1年経ったら自分の領地へ引き上げる交代を行う制度である。一年おきに江戸と自分の領地を行き来しなければならず、江戸を離れる場合でも正室と世継ぎは江戸に常住しなければならなかったため、治隆の息子や妻は江戸にいる。

御庭番

御庭番とは、江戸時代の第8代将軍・徳川吉宗が設けた幕府の役職で、将軍から直接の命令を受けて秘密裏に諜報活動を行った組織のこと。身分を隠して情勢を視察したり、隠密に得た情報を将軍に報告する役割を担っていた。久作は、熊田家参勤行列に身分を偽り紛れ込んでいた。

『つらつらわらじ』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

熊田治隆「よい肝じゃ。なかなか太うなってまいったのう」

「居眠りとはのう、こやつめ。よい肝じゃ。なかなか太うなってまいったのう」長旅で疲れていたのか、堂々と居眠りをしている熊田和泉に対して熊田治隆が放ったセリフ。以前は治隆の前で気を張っていた和泉が旅を通じて人間的にも、家老的にも成長している過程を表しているセリフだ。殿の前で居眠りをしているにもかかわらず、咎めもなくというのは治隆の懐の深さがうかがえる。

熊田治隆「隙間がない」

「越中守様をどういう人物をお考えで」と熊田和泉に聞かれたとき、熊田治隆は「隙間がない。窮屈そうである」と言った。「隙」でなはく「隙間」と言ったのは、襖も箪笥もわずかな隙間が必要なのに、越中守にはそのような隙間はなく窮屈そうに見えると考えたからだ。隙間なく風通しが悪くては空気は淀み、息苦しくなる。そのような環境では自分の首を絞めるだけだという、的確な意見を述べている。家臣たちを振り回している自由奔放な性格からは想像できないほど、惹かれる要素を含んでいるセリフだ。

行木長門「和泉殿にとって必ずや糧となりましょう」

参府の旅に出る前に行木長門が熊田治隆に言ったセリフ。もともと、息子の元八郎を同行させる気でいた治隆に、「どうか和泉を、殿のお側にいてこそ学べることがございます。それは和泉にとって必ずや糧となりましょう」と和泉を連れていくように進言。治隆の側で多くを学び、治隆の側に少しでも長くいられるようにと和泉が成長する機会を与えた。このことは治隆しか知らず、旅の途中で和泉にも明かしているが、感情が表に出ない長門なりの気遣いともとれるセリフだ。

熊田和泉「己が情けのうて悔しゅうございます」

治隆を乗せた籠が谷底に落ち、治隆のもとに駆け寄ったときの熊田和泉のセリフ。これより前に、自分を推薦したのが長門だと知った和泉。家老首座を奪われ長門のことを良く思っていなかった和泉だったが、「長門殿は私を気遣ってくれていた。己が情けのうて悔しゅうございます」と後悔が表れている。籠が谷底に落ち、追いかけている時に「まだ多くのものを殿と共に見たいのだ」と考えていた和泉の成長がわかるセリフだ。

熊田和泉「槍は武家の命ぞ」

和泉を助けた久作に対して、和泉が言ったセリフ。川の深いところを馬に乗り渡っていた和泉。バランスを崩し馬の百楽に振り落とされそうになったところを久作が助けたのだ。しかし、久作が武士の命である槍を放り出したのを見て「槍は武士の命ぞ。その槍を放るとは何事か」と久作を叱責した。隠密として行列に紛れ込んでいた久作が咄嗟にとったこの行動が、馬の口取り役に命じられたり、治隆に菓子談義をすることになったりと、後々の展開に影響を及ぼしている。この作品の一つの転機ともいえる場面だ。

熊田治隆「野営いたす」

岡崎に到着したときに治隆が放ったセリフ。岡崎に到着した熊田参勤行列だったが、同じく伊勢神宮代参使として岡崎中根本陣に来ていた宮野家が治隆たちが泊まるはずだった宿に入った。別の宿を探すことも可能だったのだが、急に宿に押しかけては宿にとっても迷惑がかかるから、とそうしなかった。そして、治隆自身が「野営いたす」と決意しその場で陣幕を張り野営することになったのである。一介の殿様なら無理を言ってでも宿に入りそうなものだが、治隆の懐の広さ、臨機応変さがにじみ出ている場面だ。

『つらつらわらじ』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

登場人物たちのモデル

『つらつらわらじ』には、たくさんのキャラクターが登場する。その人物たちの多くには、モデルとなった人物が存在しているのだ。例えば、主人公の熊田治隆は、備前岡山藩5代藩主であった池田治政(いけだ はるまさ)をモデルにしていると言われている。また、大坂の豪商である鵬池善左衛門は、江戸時代の代表的豪商の一つである摂津国大坂の両替商・鴻池家の鴻池善右衛門(こうのいけ ぜんえもん)がモデルになっていると言われている。このようにモデルとなった歴史上の人物が多くいるため、史実と照らし合わせながら楽しむことができるのだ。

電子書籍『つらつらわらじ/特別編』

honomama4
honomama4
@honomama4

Related Articles関連記事

さらい屋 五葉(漫画・アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ

さらい屋 五葉(漫画・アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ

『さらい屋 五葉』とは『月刊IKKI』(小学館刊)で連載されていた時代劇漫画、およびそれを原作としたテレビアニメである。時は江戸時代、藩主から暇を出され江戸にやってきた侍・秋津政之助は、誘拐組織「五葉」の頭である弥一の用心棒をすることになった。渋々、弥一の仕事を手伝う政之助だったが、この出会いをきっかけに人として成長していくのである。『ふたがしら』や『ACCA13区監察課』など人気作品を生み出してきたオノ・ナツメが描く、かどわかしを生業にした個性豊かな登場人物たちの時代劇エンターテインメントだ。

Read Article

ACCA13区監察課(漫画・アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ

ACCA13区監察課(漫画・アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ

『ACCA13区監察課(オノ・ナツメ作)』とは『月刊ビッグガンガン』(スクウェア・エニックス刊)にて2013年~2016年まで連載された漫画、およびそれを原作としたアニメ作品である。ACCA本部監察課副課長のジーン・オータスの過ごしていた平和な日常が少しずつ世界の陰謀に巻き込まれていく。その軸となるのは巨大統一組織「ACCA」と「タバコ」を巡る男たちの’’粋’’様だ。食えないキャラクターたちが勢ぞろいする大人な雰囲気の作品となっている。

Read Article

レディ&オールドマン(LADY and OLDMAN)のネタバレ解説・考察まとめ

レディ&オールドマン(LADY and OLDMAN)のネタバレ解説・考察まとめ

『レディ&オールドマン』とはオノ・ナツメが『ウルトラジャンプ』で連載していた男女バディ・エンタテインメント漫画作品。連載時期は2015年~2019年までで全8巻で完結。オノ・ナツメ原作の『ACCA13区監察課』や『BADON』とはまた違ったかなりハードボイルドな内容だ。舞台は1963年のロサンゼルス郊外。父親譲りのおせっかいな性格のシェリー・ブライトと100年間刑務所に入っていたというロバート・ウィンツ。この二人の出会いが全ての始まりだった。

Read Article

ふたがしら(漫画・ドラマ)のネタバレ解説・考察まとめ

ふたがしら(漫画・ドラマ)のネタバレ解説・考察まとめ

『ふたがしら』とは、『月刊IKKI』(小学館刊)また増刊『ヒバナ』(小学館刊)で連載されていた時代劇漫画、およびそれを原作とした連続テレビドラマである。時は江戸時代。盗賊「赤目一味」の頭目だった辰五郎が死去。その際に、手下である弁蔵と宗次二人に一味のことを託したことからすべては始まった。『ACCA13区監察課』や『レディ&オールドマン』数々の人気作品を生み出してきたオノ・ナツメが描く、巧妙な駆け引きと巧みな騙しあいが織りなす時代劇盗賊エンターテインメントだ。

Read Article

リストランテ・パラディーゾ(GENTE〜リストランテの人々〜)のネタバレ解説・考察まとめ

リストランテ・パラディーゾ(GENTE〜リストランテの人々〜)のネタバレ解説・考察まとめ

『リストランテ・パラディーゾ(GENTE〜リストランテの人々〜)』とは、『マンガ・エロティクス・エフ』(太田出版)で連載されていたオノ・ナツメによる、老紳士たちが織り成すハートフル漫画である。幼くして両親が離婚し祖父母に預けられたニコレッタは、母親の再婚相手を一目見るためローマにあるリストランテにやってきた。そこで働き始めたニコレッタは、従業員全員が老眼鏡着用必須のリストランテであることを知ったのである。数々の人気作品を生み出してきたオノ・ナツメが描く、老眼鏡紳士たちによるおもてなし漫画だ。

Read Article

ハヴ・ア・グレイト・サンデー(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

ハヴ・ア・グレイト・サンデー(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『ハヴ・ア・グレイト・サンデー』とは『月刊モーニングtwo』(講談社)で連載されていたオノ・ナツメによる、ある男たちの日曜日の出来事を描いたハートフル漫画である。初老の作家・楽々居輪治は、長くニューヨークで暮らしていたが、ある事情を抱え単身東京に戻ってきた。そして、一人暮らしを謳歌しようと思っていた輪治のもとに、息子のマックスと娘婿のヤスがやってきたのだった。『ACCA13区監察課』や『レディ&オールドマン』など人気作品を生み出してきたオノ・ナツメが描く、男だけの週末エンターテインメントだ。

Read Article

目次 - Contents