PLUTO(プルートウ)のネタバレ解説・考察まとめ

『PLUTO』とは、手塚治虫の作品「鉄腕アトム」の中のエピソード「史上最大のロボット」を原作とした浦沢直樹の漫画作品。
舞台は人間とロボットが共存する世界。世界最高水準の能力を持つ7体のロボットが、次々と何者かに破壊される事件が起きる。7体のロボットの1人・ドイツ刑事ロボットのゲジヒトは、一連の事件に深く関わっているとされる謎のロボット「プルートウ」の正体に迫っていく。

『PLUTO』の概要

PLUTOとは、手塚治虫の作品「鉄腕アトム」に収録されているエピソード「史上最大のロボット」を原作とした浦沢直樹の漫画作品。全8巻。2003年から2009年にかけて、ビックコミックオリジナルで連載されていた。
基本的に原作に沿ったストーリーだが、原作では脇役の1人だったロボット・ゲジヒトを主役に据えていること、「ブラウ1589」や「サハド」などのオリジナルキャラクターが登場することなどの、本作品独自の設定もある。

第9回手塚治虫文化賞マンガ大賞、平成17年度文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞、第41回星雲賞コミック部門など、数々の賞を受賞している。
また、「このマンガを読め!2005」で1位を獲得し、さらに2006年版「このマンガがすごい!」でもオトコ編1位を獲得している。
2010年にイルミネーション・エンターテインメントより、本作品のハリウッド実写CG映画化が企画・製作中であると発表された。
2015年には「プルートゥ PLUTO」のタイトルで舞台化され、2018年に再演された。さらに、イギリスやオランダ、ベルギーなど、日本国外でも公演された。

『PLUTO』のあらすじ・ストーリー

世界最高水準のロボット

ロボットと人間が共存する世界。
ロボット技術の発達により、ロボット達は人間に近い豊かな感情や優れた知性を持っており、外見も人間に近いものになっていた。更に人権が保証され、結婚をしたりビジネスを行う等、人間と変わらない生活をしていた。
数多くのロボットの中でも、スイスのモンブラン、スコットランドのノース2号、トルコのブランド、日本のアトム、ギリシャのヘラクレス、ドイツのゲジヒト、オーストラリアのエプシロンの7体のロボットはいずれも世界最高水準の技術を持って作られた優秀なロボットである。
彼らは4年前、大国・トラキア合衆国と独裁国家・ペルシア王国の間で起こった戦争に招集され、鎮圧や平和維持活動に従事した。
トラキア合衆国側の兵士や世界最高水準の7体のロボットの働きにより、甚大な被害を受けたペルシア王国はついに崩壊し、戦争はトラキア合衆国側の勝利という形で幕を閉じる。
その後、7体のロボットはそれぞれの生活に戻り、各々が平穏な日常を送っていた。

襲撃者

そんなある日、そのうちの一体・モンブランが何者かによって殺害されてしまう。
さらに、ロボット擁護団体の指導者、ベルナルド・ランケも何者かにより殺害された姿で発見される。
ドイツに住んでいた世界最高水準のロボット刑事・ゲジヒトは、これらの事件に「被害者の頭部に棒状のものが2本突き刺さり、まるで角のような状態になっている」という共通点があることに気が付く。
さらに、ランケの殺害現場に人間の痕跡が全くなかったことから、モンブランとランケ殺害の犯人は人間ではなくロボットであると判断する。
しかしロボットは人間を殺せないようプログラミングされていたため、一大事となってしまった。
ゲジヒトは、8年前に史上初にして唯一人間を殺害したロボット・ブラウ1589のもとへ、一連の事件のヒントを得るため、面会に訪れる。そこでブラウから「遺体を冥王『プルートウ』になぞらえている事」「世界最高水準のロボットの破壊を目論んでいる事」を告げられた。
ブラウの言葉通り、ノース2号やロボット開発の権威が次々殺害される。ゲジヒトは日本に住むアトムに危機を知らせたあと、ドイツへ戻った。
アトムは日本の法学者・田崎純一郎が何者かに殺害され、2本の棒が頭に角のように刺さった状態で発見されたと知り、彼の殺害現場の現場検証に参加する。
田崎が死亡する直前には、田崎の家の近くで巨大な竜巻が起こっていた。
そして、田崎は第39次中央アジア戦争を引き起こすきっかけとなった発見をした団体・ボラー調査団のメンバーであり、さらに以前に何者かにより殺害されたベルナルド・ランケも同じくボラー調査団のメンバーだったということが明らかになる。さらに田崎の自宅にボラー調査団のメンバーの名刺が大量にばらまかれていたことから、田崎やランケはボラー調査団のメンバーの殺害を企てる何者かによって殺害されたのだということが明らかになる。

第39次中央アジア戦争とは、大国・トラキア合衆国により、「大量破壊兵器を開発しており、国連で承認された大量破壊ロボット製造禁止条約に反している」とでっち上げられたペルシア王国が攻撃され、多数の死傷者を出した戦争のことである。
「ペルシア王国が大量破壊兵器を開発している」という主張の根拠になったのが、トラキア合衆国の依頼を受け、ペルシア王国を視察していたボラー調査団が発見した、ペルシア王国のとあるモスクの地下で発見された大量のロボットの死骸だったのだ。

一方、ゲジヒトは世界最高水準の7体のロボットのうちの一体・ギリシャのヘラクレスを訪れ、彼の身に危機が迫っていることを伝える。

そんな中、トルコのブランドをプルートウが襲う。親友だったモンブランの敵討ちとしてプルートウに挑んだブランドだったが敗れ、殺害されてしまった。
ブランドは死の直前に、プルートウとの戦いで得た情報を自身に搭載された通信機能によりゲジヒトやアトム、ヘラクレスに送っていた。その中の情報の1つに、ジグザグとうねった黒い線のようなデータがあった。アトムはこのデータを、プルートウの持つ「巨大な苦しみ」だと分析する。ブランドの死後、ペルシア王国の科学者・アブラー博士が日本を訪れる。彼は第39次中央アジア戦争で大けがを負い、実際の肉体のほとんどを失ってしまい、ロボットにも近い姿になってしまっていた。
偶然アブラー博士とすれ違ったアトムは、アブラー博士が人間なのかロボットなのか判断できなかったと呟く。
口からゴキブリを出す、謎の男を従えているアブラー博士。アブラー博士はこの男を使って、ひそかに「プルートウ」と呼ばれるロボットを探していた。

ボラー

ドイツでは、反ロボット団体・KR団に所属しているアドルフ・ハースという男が、2年前に連続幼児ロボット誘拐殺人事件を犯して最後は何者かによって殺害された兄の遺体を警察から引き取っていた。
ハースは兄の遺体がかなりひどく損傷しているのを見てショックを受ける。遺体を検死した医師の話によると、人間に対してこれほどのダメージを与えることができる武器はゼロニウム弾だけだという。
犯人を調べていたハースは、息子の教科書に載っていた「高い殺傷能力を持つゼロニウム弾の使用者は限られており、刑事などしか発弾できない」という内容から、兄が死亡した2年前にユーロ圏でゼロニウム弾を発弾できたのは刑事ロボット・ゲジヒトだけであることを知る。
ハースは、高い耐久性を持つ特殊合金・ゼロニウムでできたゲジヒトをも殺害できる武器・小型クラスター砲を手に入れ、兄の仇としてゲジヒト殺害を目論んだ。

一方、ゲジヒトはエプシロンに危機が迫っていることを伝える。
平和主義だったエプシロンは戦争を拒否し、事後処理や遺児の保護活動をしていた。彼は、自分が保護している子供の1人・ワシリーが戦争による精神的なダメージにより言葉がほとんど話せなくなり、彼が戦場で見たという巨大な影の名前である「ボラー」という言葉だけを繰り返しつぶやいているとゲジヒトに伝える。

アトム死亡

一方、アトムの妹のロボット・ウランは、記憶をなくしてしまっているというあるロボットと友達になる。
やがて、そのロボットは草木に生命力を与えるという能力を持っていることが明らかになる。
しかしその一方で、戦場を横切る巨大な影という、「死のイメージ」も強く持っているという。そして、そのイメージのことをボラーと呼んだ。

ウランからそのロボットの話を聞いたアトムは、そのロボットは危険なロボットなのではないかと直感する。アトムがウランとともにいたそのロボットのもとを訪れ、ウランの口からアトムの名前が発せられると、そのロボットは形相を変え、唸り声をあげる。しかし、頭から角のような2本の光が発せられた後、気を失う。
直後にその場にやってきたある土木作業中のロボットにより、そのロボットは土木作業中のロボットの人間生活用のボディであり、ロボットの脳である人工知能が抜かれていた状態だったということが明らかになる。
つまり今まで、何者かがこの人工知能が抜かれたロボットのボディを遠隔操作していたというのだ。一方、口からゴキブリを出す男の協力により、「プルートウ」の居場所をつかんだアブラー博士。プルートウはアブラー博士が開発したロボットで、今まで人工知能の抜けたロボットのボディを遠隔操作していたのだという。
新宿中央公園の池の中にうずくまる、2本の角が生えた巨大なロボット・プルートウと再会したアブラー博士は、プルートウに「命令通りアトムを殺せ」と指示する。

その数日後、ウランの開発者・お茶の水博士のもとをゴジと名乗るロボットが訪れる。お茶の水博士は、殺害されてしまったベルナルド・ランケや田崎純一郎と同じく、ボラー調査団のメンバーだった。
ゴジは自分はペルシア王国の博士で、ペルシア王国を破壊させた第39次中央アジア戦争に関わった団体・ボラー調査団のメンバーが憎いのだと話す。
さらに、アトムを自分のもとへ連れてくるようにとお茶の水博士に命令する。
その時、お茶の水博士の危機を感じ取ったアトムがお茶の水博士のもとにやってくる。するとゴジは気絶してしまい、さらにゴジのボディに挿入されていた人工知能は大量のゴキブリによってどこかに運び去られた。
お茶の水博士は、ボラー調査団のメンバーが次々と殺害されている一連の事件の犯人はゴジであると確信する。
その時、お茶の水博士の孫・隆史の家の近くでプルートウによるものと思われる巨大な竜巻が起こる。
隆史や彼のペットのロボット犬・ボビーを心配したアトムは隆史の家へ向かい、そこでアトムを待ち構えていたプルートウと対決する。
しかし、アトムは戦いに敗れ、死亡してしまった。

黒幕

一方、ドイツにてゲジヒトの暗殺を企てるアドルフ・ハースだったが、「ゲジヒトを生かし、後に彼を反ロボットのプロバカンダに利用する」というKR団の計画を邪魔したとして、KR団から命を狙われてしまう。
ハースが、命を狙われているということを警察に相談したところ、ハースの護衛として、刑事であるゲジヒトがハースのもとに派遣された。ハースの護衛をするゲジヒトは、ハースが貿易の仕事関係で偶然手に入れたある映像を見せつけられる。
その映像とは、第39次中央アジア戦争後、トラキア合衆国の管轄であるカラ・テパ収容所に身柄を拘束されている元ペルシア王国国王・ダリウス14世の姿が映った映像だった。ダリウス14世は、一連の事件で被害にあったボラー調査団のメンバーの名前を繰り返しつぶやいていた。
かつてペルシア王国の指導者だったダリウス14世が映っていることに加え、一連の事件に巻き込まれた人物の名前が読み上げられていることから、事件に何らかの関係がある重要な映像に違いないと推理するゲジヒト。
ゲジヒトは、この映像の重要性を全く分かっていないハースに、なぜこの映像のことを警察に言わなかったのかと問い詰める。
その時、映像の中のダリウス14世が、ゲジヒトの開発者・ホフマン博士の名前をつぶやく。
ゲジヒトは、これまでの犠牲者と同じようにホフマン博士も命を狙われていると知り、動揺する。
その時、ハースとゲジヒトを、ハースを狙うKR団による誘導光熱弾が襲う。ゲジヒトの素早い対処により2人の命は助かるものの、ハースはすっかり怯え切ってしまった。
そして、ゲジヒトに自分が反ロボット団体に属していること、その団体から命を狙われていることを告白し、自分と家族の安全を守るよう要請する。

ゲジヒトがハースを安全なセーフハウスに連れて行っている途中、気分が悪くなったハースはトイレに立ち寄る。
しかし、そのトイレの中にはKR団により操作された掃除ロボットがいた。
自分に対し「ゲジヒトを殺せ」と指示するその掃除ロボットに恐怖を感じたハースは、恐怖のあまり掃除ロボットに暴行を加える。
その時、ハースのもとにゲジヒトがやってくる。掃除ロボットを暴行するハースを見たゲジヒトは、ものすごい形相でハースをにらみつけ、ロボットへの暴行をやめるよう命令する。
ゲジヒトの変貌っぷりを見たハースは、ゲジヒトに対し、「そんな顔で兄を殺したのか」と言い放つ。
動揺するゲジヒトに対し、ハースはゲジヒトが2年前、自身の兄を殺害したと話す。

一方、ホフマン博士は、プルートウの関係者によって研究室を爆破されるものの、エプシロンによって保護され、ヘラクレスのいるギリシャに連れてこられていた。
エプシロンは、ホフマン博士に、かつてホフマン博士が自分の開発者・ハワード博士と、アトムの開発者・天馬博士とともに開いたという会談について質問する。
ホフマン博士の話によると、3人の博士は戦争を根絶するためのロボットを開発するため、お互いの研究内容を報告し合うという目的で会談に参加していた。
ホフマン博士とハワード博士は自分たちの研究内容を報告したが、天馬博士だけは自分の研究の内容を報告せずにその場を立ち去ってしまった。
その後、天馬博士は闇社会に姿を消したのだという。

ホフマン博士が安全な場所に保護された後、プルートウがヘラクレスを襲ってきた。ヘラクレスはプルートウの片腕をもぎ取るなど健闘したものの、不意を突かれて爆死させられてしまう。

ゲジヒトの罪

そのころゲジヒトは、自分の過去を思い出していた。
2年前、連続幼児ロボット誘拐殺人事件を捜査していたゲジヒト。
子供を作ることができないロボット同士の夫婦や、子供のいない人間の夫婦の多くが、幼児ロボットを養子として迎えていた。
ゲジヒトと妻のヘレナも幼児ロボットを養子に迎え、自分たちの子供として育てていた。
しかし、彼らの子供が連続幼児ロボット誘拐殺人事件に巻き込まれ、誘拐されてしまった。
必死に捜査し、ハースの兄が犯人であるということを突き止めたゲジヒトは、ついにハースの兄を追い詰める。
しかしその時、ハースの兄が自分に投げつけた大きなバッグから、バラバラに破壊された自分の子供の遺体が落ちた。
子供の遺体を見て憎しみに駆られたゲジヒトは、自身に搭載された武器・ゼロニウム弾を使用し、ハースの兄を殺害してしまう。
その後、人間を殺せないよう設計されているはずのロボットが人間を殺したという事実を伏せたがったユーロポールにより、ゲジヒトやヘレナから、ゲジヒトが犯した殺人の記憶や殺害されてしまった子供の記憶など、事件に関する記憶が消去された。
しかしゲジヒトの記憶は完全に消去しきることができず、事件に関する断片的な記憶がフラッシュバックや悪夢としてたびたび蘇り、彼を苦しめていたのだった。

その後ハースと彼の家族をより安全な場所へと移動させるゲジヒト。しかしそんな彼らを、KR団の追手が襲う。
追手はゲジヒトの素材である、高い耐久性を持つ特殊合金・ゼロニウムでさえも破壊できるという強力な武器・小型クラスター砲を持っていた。
追手は小型クラスター砲をゲジヒトとハースに発砲する。しかし、ゲジヒトがゼロニウム弾を発砲し、自身に向かって発砲された小型クラスター砲を破壊した。ゲジヒトとハースの命は助かり、彼らの命を狙ったKR団の追手は逮捕される。
小型クラスター砲によるダメージを受け、ゲジヒトのボディは傷を負っていた。ハースは、ゲジヒトを殺害しようとした自分を体を張って守ってくれたゲジヒトの行動に心を打たれ、涙を流す。
そんなハースに、ゲジヒトは人間の憎しみは消去されるのかと尋ねる。
ゲジヒトが一番恐れていたのは、「憎しみ」という感情を持ってしまった自分自身だった。

偏った感情

アトムの遺体は、プルートウにより犠牲になった他のロボットたちとの遺体とは違い、外的なダメージが少なく、原形を留めていた。しかし、内部のダメージにより、昏睡状態のように意識がない状態に陥っていた。
お茶の水博士の要請に応え、アトムの遺体が安置されている科学省に訪れた天馬博士はアトムの蘇生を試みる。

天馬博士は、かつて人間のような複雑な感情を持つ「完全なロボット」を作ったことがあるという。しかし、プログラミングされたデータのあまりの複雑さ故に、そのロボットは昏睡状態を続け、目覚めなかった。
天馬博士は、昏睡状態に陥ったロボットを目覚めさせるには怒りや悲しみ、憎悪といった「偏った感情」のデータを挿入する必要があると考えていた。
そして昏睡状態を続けるアトムを目覚めさせるためにも「偏った感情」の挿入は必要であるが、「偏った感情」の挿入によって目覚めたアトムは、以前のアトムとは違う「化け物のようなロボット」になってしまうかもしれないと考える。

プルートウの正体

プルートウとヘラクレスの戦闘時に2体のロボットの近くにいたエプシロンは、戦闘中にプルートウから発せられた様々なイメージを収集し、分析する。
そのイメージはほとんどが憎しみの感情に関係するものだったが、その中に一つだけ、青年が花畑の中で微笑みながら立っているイメージがあった。
この青年がプルートウと何らかのかかわりがあると判断したエプシロンは、そのイメージをゲジヒトに伝える。

殺害されたボラー調査団のメンバー・田崎純一郎の死の直前に彼と会っていたことなどから、一連の事件に何らかのかかわりがあると思われるアブラー博士と面会するため、ペルシア王国のサマルカンドを訪れるゲジヒト。ゲジヒトはアブラー博士にエプシロンから送られた花畑に立つ青年のイメージを見せ、この青年を知らないかと尋ねるが、アブラー博士は知らないと答える。
しかしその後サマルカンドにて花売りをしている壊れかけのロボット、モハメド・アリから、アブラー博士に見せたイメージの中の花畑に立つ青年を知っていると言われるゲジヒト。
モハメド・アリの話によると、その青年はサハドという名前で、植物学を学ぶためオランダに留学していたのだという。
ゲジヒトは、サハドの留学先であるオランダに向かう。オランダを訪れたゲジヒトは、サハドが温厚かつ勉強熱心な性格のロボットで皆に慕われていたこと、砂漠に覆われた故郷・ペルシア王国を緑化させることを夢見て、どんな過酷な環境にも耐えうる植物を開発するための研究をしていたことなどを知る。しかし、サハドは第39次中央アジア戦争が勃発した後、「父が戦争で死んだ」と言い残してペルシア王国に帰ってしまったという。
サハドと、彼が「父」と呼んでいた彼の開発者がともに写っているという写真を見せてもらうゲジヒト。
しかし、その写真にサハドとともに写っていた「父」とは、アブラー博士だった。
ゲジヒトは、ついさっき会ったはずの、サハドの父ことアブラー博士が死んだということになっているということに違和感を覚える。
そして、自分が会ったアブラー博士を名乗る男は第39次中央アジア戦争で亡くなったアブラー博士とは別人で、この男こそが一連の事件の首謀者であると推理する。

オランダのザアンダムの地下を歩いていたゲジヒトは、アブラー博士を名乗る男の部下・口からゴキブリを出す男に襲われる。男が何かを守っていると判断したゲジヒトは、男の攻撃を避けつつ、さらに奥に進む。そして、プルートウと遭遇する。
自身に搭載された強力な武器・ゼロニウム弾などを使い、プルートウを無力化するまで追い詰めるゲジヒト。その後、プルートウにより発せられたイメージから、プルートウの正体がサハドであること、サハドがプルートウになった経緯を知る。

第39次中央アジア戦争勃発時に、父・アブラー博士が死亡したという知らせを聞いて帰国したサハドだったが、帰国後に死亡したと言われていたアブラー博士と再会する。アブラー博士は、自分は戦争で肉体のほとんどを失ったが、かろうじて命はとりとめたのだという。しかし妻や我が子として育てていた2人のロボットを戦争で亡くし、世界への憎しみに支配された。アブラー博士は、サハドに博士自身が開発した兵器ロボット・プルートウにサハドの人工知能を移し替えて、プルートウとして戦争に関わった世界最高水準の7体のロボットを殺害することを命じる。最初はアブラー博士の命令を拒否するサハドだったが、結局は肉親の情に逆らえず、アブラー博士の命令通りプルートウとなって世界最高水準の7体のロボットの殺害に手を染めていった。

その後、ゲジヒトのもとにゲジヒトの開発者・ホフマン博士がアブラーと名乗る男に遠隔操作されてボディを乗っ取られてしまったロボットにより襲われ、危機に面しているという知らせが届く。ゲジヒトは、「プルートウにとどめを刺さず、解放すればホフマン博士のことは助けてやる」というアブラーと名乗る男の取引に応じ、プルートウにとどめを刺さずにその場を立ち去る。
プルートウとの戦闘によりボディにダメージを受けた状態でオランダのアムステルダムの道を歩くゲジヒト。しかし、彼の目の前に、ペルシア王国のサマルカンドで出会った花売りのロボットのモハメド・アリが突然現れる。アブラーと名乗る男の遠隔操作により、ボディを乗っ取られてしまっていたモハメド・アリは、手にしたクラスター弾でゲジヒトを殺害する。

完璧なロボット

ゲジヒトの死後、ゲジヒトの妻・ヘレナと会う天馬博士。
天馬博士は、ヘレナからゲジヒトの記憶が記録されているメモリーチップを受け取る。

天馬博士は第39次中央アジア戦争が起こる直前の出来事を回想する。
当時、天馬博士は知り合いであるアブラー博士の依頼により、人間のように複雑な感情を持つ「完全なロボット」を開発しようとしていた。
アブラ―博士は当時ペルシア王国国王・ダリウス14世により、砂漠に覆われたペルシア王国を緑化させるための環境改造ロボットの開発を命じられていた。しかし開発作業があまりにも困難だったため、開発を手伝ってくれる助手が欲しいと思っていた。そして天馬博士に、自身の助手になれる優秀な人工知能を持つロボットの開発を依頼したのだった。
しかし、プログラミングされたデータのあまりの複雑さゆえに、天馬博士が開発していたそのロボットは目覚めなかった。
そのうちに第39次中央アジア戦争が勃発し、アブラー博士が戦争の犠牲となり、家族とともに死亡したという知らせが天馬博士のもとに入る。死の直前に撮影されたと思われる映像の中でアブラー博士が語った遺言に従い、天馬博士は昏睡状態を続ける「完全なロボット」に、アブラー博士のとある記憶を記録したメモリーチップを挿入する。すると、そのロボットは目を覚ましたのだった。
天馬博士は、ゲジヒトのメモリーチップを用いて、昏睡状態のアトムを目覚めさせようとする。

エプシロンの死とアトムの復活

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