PLUTO(プルートウ)のネタバレ解説まとめ

『PLUTO』とは、手塚治虫の作品「鉄腕アトム」の中のエピソード「史上最大のロボット」を原作とした浦沢直樹の漫画作品。
舞台は人間とロボットが共存する世界。世界最高水準の能力を持つ7体のロボットが、次々と何者かに破壊される事件が起きる。7体のロボットの1人・ドイツ刑事ロボットのゲジヒトは、一連の事件に深く関わっているとされる謎のロボット「プルートウ」の正体に迫っていく。

KR団

ロボットの人権法廃止を訴える極右集団。
メンバーの中には社会的地位のある知識人や文化人もいる模様。
反ロボットのプロバカンダや、ロボット判事の殺害などに関わっている。

偏った感情

怒りや悲しみ、憎しみなどの、強い負の感情。
昏睡状態に陥ったロボットを目覚めさせるには、これらの感情をロボットに挿入する必要がある。

『PLUTO』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

「1体500ゼウスで良いよ。」

ゲジヒトの脳裏に繰り返しフラッシュバックする印象的なセリフ。

後に、ゲジヒトがゴミ収集車の中から廃棄されかかっていたロボット・ロビタを発見し、彼を息子として引き取ろうとしたときにゴミを収集していた老人によって言われたセリフだということが明らかになる。

ゲジヒトと彼の妻のヘレナは、ロビタを息子として大切に育てていたが、ロビタはロボットを憎むアドルフ・ハースの兄によって惨殺されてしまう。
ハースの兄に激しい憎悪を感じたゲジヒトは、ハースの兄を殺害してしまった。
ロボットが人間を殺害したということを伏せておきたいと思ったユーロポールにより、ゲシヒトとヘレナの記憶は操作され、ロビタに関する記憶など、ゲジヒトが犯した殺人に関する記憶は消去されてしまう。
しかし、記憶を完全に消し去ることはできず、事件に関する断片的な記憶がしばしばゲジヒトの脳裏にフラッシュバックしていた。

「ピアノの練習の時間だよ。」

穏やかに暮らしていたダンカンとノース2号だったが、彼らのもとに突然プルートウがやってくる。
プルートウの気配を感じたノース2号は、ダンカンの屋敷の上空にてプルートウと戦うが、プルートウにより爆破され木っ端みじんになって死んでしまう。
爆破されるとき、ノース2号はダンカンの母が幼き日のダンカンに歌っていたという曲を口ずさんでいた。

ノース2号がプルートウの攻撃によって木っ端みじんになり、死んでいくという残酷な場面だが、盲目のダンカンには自分の屋敷の上空で何が起こっているかが分からなかった。ノース2号の歌を聞いたダンカンは、ノース2号が上空でただのんびりと歌を歌っているだけだと思い込んでいた。ばらばらになったノース2号の部品が空から落下するという壮絶な風景の中、ダンカンは穏やかな表情でノース2号の歌を聞き、「そんなところで歌っていないで早く帰っておいで」「ピアノの練習の時間だよ」と語りかけるのだった。
ノース2号が木っ端みじんになり、殺害されるという凄惨な出来事がとても静かに美しく描かれた、印象的な場面である。

「アトムが死んで私も悲しい……」

ゲジヒトの死後、ゲジヒトのメモリーチップを受け取るためにゲジヒトの妻・ヘレナと会う天馬博士。
ヘレナは天馬博士に、ゲジヒトが死んだということが受け入れられないと相談する。
天馬博士は、ヘレナに人間のように泣くことで悲しみを整理するべきだという。
ゲジヒトを思い泣くヘレナに、天馬博士はアトムが死んで自分も悲しいのだと言って涙を流す。
天馬博士も、涙を流すことでアトムが死んだ悲しみを整理していたのだった。
天馬博士がアトムに深い愛情を持っていることがうかがえる感動的なシーンである。

「人間の憎悪は消えますか……?消去しても消去しても消えないものですか?私が一番恐れていたのは……憎しみを持ってしまった、自分自身なんです。」

兄の仇として自身を殺害しようとしていたアドルフ・ハースを、彼の命を狙うKR団の攻撃から体を張って守ったゲジヒト。
その後、ゲジヒトの行動に心を打たれ、涙を流すハースに、ゲジヒトは人間の憎しみは消えないものなのかと尋ねる。

かつて強い憎しみにより、ハースの兄を殺害してしまったゲジヒト。
かつてアトムは、最初にプルートウと戦った時にゲジヒトに「あなたとプルートウは同じ?」というメッセージを送っている。
ゲジヒトの中にも、プルートウと同じように人を殺害してしまうほど強い「憎しみ」という感情があったのだった。
ハースと関わることで殺人の過去を思い出したゲジヒトは、自分の中にそれほど強い暴力的な感情があることに戸惑う。
そして、自分が犯した罪や自分の中にある「憎しみ」という感情と向きあうことを決めたのだった。
ゲジヒトの、過去に殺人を犯したことや「憎しみ」という感情を持ってしまった自分に対する強い葛藤が感じられる印象的なセリフである。

「モンブラン………ノース2号………ブランド………ヘラクレス………エプシロン………ゲジヒト………そしてプルートウ……きっとみんな祈っています……そんな日が来ることを………みんなが……」

サハドとしての自我を取り戻したプルートウが、自分を犠牲にしてボラーを破壊し、世界を守ったことを見届けた後のアトムの台詞。

一連の事件は、第39次中央アジア戦争で死亡したアブラー博士の強い憎しみによって引き起こされたものだった。
戦争によって家族を失い、自身も重傷を負ったアブラー博士は、世界への強い憎しみを感じながら死亡した。
アブラー博士が最期に感じていた強い憎しみが記録されたメモリーチップを挿入されたことで目覚めたゴジは、世界への復讐として兵器ロボットのプルートウや惑星改造ロボットのボラーを開発し、世界最高水準の7体のロボットやボラー調査団のメンバーの殺害を計画した。
犠牲になった世界最高水準の6体のロボットや、プルートウの正体であるサハドはそれぞれに穏やかで幸せな生活を送っていたが、亡きアブラー博士の強い「憎しみ」という感情に巻き込まれ、死亡してしまった。
アトムは、犠牲になった7体のロボットの冥福を祈りながら、世界中から憎しみがなくなる日が来ることを祈るのだった。
本作の本編最後の台詞であり、本作を締めくくるような重要なセリフである。

『PLUTO』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

手塚治虫版の世界最高水準の7体のロボット

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